
皆様こんにちは。
オフなどでお会いした方などに良く聞かれるモノに
xx変えたらセッティングは必要ですか?
xxかえたらセッティングしなおしたほうがいいですか?
といった話があります。
その裏にはまずはxxを変える、とかそういった雑誌や仲間の情報を元に先行してGTパーツを装着しているといった背景があると思うのですが、残念なことに「より慎重になるべきパーツほど安易に変更してしまう傾向」を見受けられます。
よく言われるのが給排気をかえたライトチューン。
Q:何かいじってますか?
A:吸気と排気を変更している”だけ”のライトチューンです。
皆さんも上のような会話、よく耳にしませんか?
セッティング記事で度々話題に挙げているつもりなのですが排気系統に比べて吸気系統は大きく燃焼へ影響します。
排気系統だけならば、計測され、それに見合った燃料を噴射し、燃焼させた「後」の排気の慣性力などの変化に読み込み位置のズレ(立ち上がり曲線が変わります)に留まりますが、吸気側をいじってしまうとその計測が正しく行いにくくなる事により燃焼状態そのものへ強く影響します。
過度のズレがおきれば純正のECUは異常とみなし点火時期を遅らせ、燃料を濃くしてエンジンの破損リスクを下げるような制御に入りますが、そのようなフェイルセーフモードではパワーが出るわけもありません。
序盤は問題なくともそのような制御が常に行われると燃焼室周辺にはカーボンがたまり、O2センサーなどを劣化させ、より正確な制御は不能になり、ついには複合的な不具合を起こしてしまいます。
急にエンジンが吹けなくなった。
アイドリングが安定しない。
エアクリーナー周辺が汚れやすくなる。
このような状況がおきやすくなるわけですね。
長い前置きを書きましたが今回はさまざまなパーツたちとセッティングへの影響を考察する参考にしていただけたらと思います。
内容が重複している部分はありますがセッティングの一例として参考になれば幸いです。
ころばぬ先の杖篇





各種油や水をはじめとする排気や吸気の温度や圧力を把握したり
A/F計などはセッティングに限らず車の状態を把握するのに役立ちます。
セッティングをする上では最低限A/F計がなければ始まりません。
これらの機器の情報を元にセッティングをすることになるので取得できる情報は多い事に越した事はないですね。
排気系統篇



タービンアウトレットやフロントパイプ、スポーツ触媒に、スポーツマフラーといったお馴染みのアイテム群。
排気効率の変化によりブーストの立ち上がりやトルクに大きく影響してくる部分です。言い換えれば回転の上がり易さ等に繋がりますのでマップ上の読み込み位置の移動速度などにも影響します。
ここには取り上げていませんが強化クラッチなどに組み合わされるフライホイールなども回転モーションの変化に関係しますので同様の影響がでてきます。
吸気系統篇




置き換え型クリーナーやむき出し型クリーナ。
サクションパイプやエアフロメーターなどのほかブローオフバルブ等も含みます。
キノコ形状のエアクリやブローオフは著しく燃調を崩しますので見た目優先でつけるべきでは無いと思ってます。
エアフロに関しては言うまでも無くECUの書き換えが必須となりますし、パワーFCなど簡易的に変更データの利用できるものでも個別の調整が必要となるものです。
少なくとも制御について知識を深める前に手を出すべきではないと思ってます。
その他補記類篇




プラグやイグニッションコイル、ブーストコントローラーや燃料レギュレター、ポンプなど。オイルクーラーなどの冷却系も厳密には温度管理の観点から点火時期やA/F値に影響してきますのでそういう意味では影響がないとは言えないでしょう。
注意が必要なのはやはり燃料系とブーストコントローラーですね。
ここにはありませんが強化アクチュエーターやインタークーラーもこの手の部類にいれてよいかと思います。
■実践と考察
さて、ざっくりとパーツを分類したとこで現車あわせの手順を思い出してみましょう。
(ここではパワーFCによるセッティング前提に書いています。)
(セッティングの手法は様々ありますが個人的に用いている手法に沿って考察しています)
まずは車両の現状を基準に使えるようにするところからです。
O2フィードバックを無効化して、基準となるそのエンジンのアイドル点火時期の調整、燃料圧力の調整などを済ましたら純正比での基準データの入力です。
基準となる燃料圧力で純正インジェクターを1として、使用しているインジェクターの容量比を求めます。
純正370ccで使用しているインジェクターが550ならば370÷550=0.67となります。
ポンプを大容量のものにしている場合、燃圧を調整していないのならば上昇分をここに加味してもよいですが、燃料噴射時間変換係数で微調整することも可能です。
私の場合に限れば燃圧を調整して合わせ、残りは前記した燃料噴射時間変換係数とエアフロ電圧側で調整しています。
次に使用しているエアフロメーターを選択します。
データが事前に用意されていないエアフロを利用する際には事前に調査が必要となります。
これられの調整で基本的には始動が可能になりますので始動後暖機してアイドルの空燃比を調整します。
後々燃調を変更しやすくするためにはアイドル読み出し位置の燃料マップ100とした場合に、A/Fが14.57となるようにエアフロ電圧と燃料噴射時間変換係数(K定数のようなもの)で調整します。
どちらか一方のみで合わせる事もできるのですが、トライ&エラーで燃料マップの値を変更したときに一番その数値とズレのないようなバランスで調整します。
基本的にアイドル周辺の基準合わせが完成したら以後そのセッティング中には燃料噴射時間変換係数は固定として、エアフロ電圧、もしくはエアフロデータの微調整でA/Fをセッティングします。
アイドル(無負荷)状態でざっくりとA/Fが決まったら実走行にてマップをトレースしながら目標A/F値と実A/F値が一致するようにエアフロ電圧の調整をしていきます。
このときアクセル開度の急激な変化は避け(一時的な補正処理があるため)一定速度での走行状態で調整すると調整しやすいかと思います。
街乗りでしんどくない車両にするためには特に4000回転以下、負荷10段目程度までの範囲を念入りに調整しておきます。
一定速度でのA/F合わせが完了したら加速状態に移行した際に発生するA/Fズレのセッティングを出します。
パワーFCでは瞬間的にアクセル開度が変わった時に足りなくなる燃料分を補完する加速増量設定という項目が設けられていますので、タービン容量や吸気系統の効率などを加味しながら各回転域毎に設定しておきます。
加速増量は回転域ごとに2つの要素からなっており、初期噴射量と次ステップにおける噴射量(減算量分を引き去った数値噴射します)の設定が可能です。
加速増量5.200ms 減算量2.000msならば
1ステップ目 5.200ms余計に噴射
2ステップ目 3.200ms余計に噴射
3ステップ目 1.200ms余計に噴射
といったような制御が行われます。
吸気効率を良くした車両ではアクセルの踏みはじめで急速に空気が流入しますので理論値より薄い燃焼状態になりがちです。
そのような場合は加速増量を増やし、減算量を減らすようなセッティングとなります。
このとき中間域などでA/Fの低下をある程度抑制したい場合は減算量を大きくしてやると早く増量制御が停止されます。
マップ上の目標A/F値と実際のA/F値の擦り合わせが終了したら点火時期のセッティングに入っていきますが、詰められる範囲は車両の状態により変化します。
また回転フィールなどを併せて考えると理論上の限界点火時期が最適という事ではなく、各パルブの作動時間なども影響してきます。
実際に点火時期セッティングに入る前にはセッティングの方向性や想定する耐久力などを考慮し、また点火時期の変動によるA/F値のズレなども考慮する必要があります。
これは1サイクルあたりの燃焼時間の変動にも影響してきますが、限られた燃焼行程の中で燃焼時間が長くなればより完全燃焼しやすく、短くなればより不完全燃焼しやすくなる事と、燃焼=酸化反応という考えから オクタン(燃料)が酸化される速度には上限があることなども考慮しなければいけないという事を示しています。
そこに加えて燃焼室内の温度を考慮する必要もあり、状況に応じて点火時期を遅らせるのか、進ませるのか、または燃料を増量するのか減量するのかといったバランスの取り方に関係しています。
巷では取り付ける部品によりパワーアップするといった考えが一般化してしまっていますが、実際には燃焼温度や酸素密度の兼ね合いから結果的に突き詰めた方向へセッティングが可能になるといった事に他なりません。
例えるならば、IC導入により同じ圧力環境下では吸気温度が下がれば酸素密度を高くすることができ、結果的に反応させる事のできる燃料が増え、燃料が増えることで気化熱効果で熱を奪えるために点火時期を進める事が可能になったり、よりパワー空燃比に近い燃焼が行えるという事になります。
その辺りの見極めについては深く触れませんが排気温度や油温、水温などが影響することは想像するに難しくないかと思います。
逆説的な話をしてしまうと純正のECUでは複数のエンジン防護のための設計がなされていますが、その一例は高負荷時の点火時期を極端に遅く設定する、燃料を極端に濃くするなどが挙げられます。
ですからそういった部分を正しく処理しなければ単純にブーストをあげたりしても却ってパワーが出なくなるということが当然のように発生します。
ですから点火時期はその車両に見合うような場所に山場を置くかよく考慮して、その間の「つながりの良さ」の部分を詰めていくとセッティングが出しやすいかと思います。
それらを考慮するために自分の走らせ方の質や、現状の不満点などを把握してそのネガティブ部分をまず消す事から始めると良いかと思います。
Posted at 2011/03/30 20:44:22 | |
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