本日私は誕生日を迎えました。
先日妻と買い物をした際に、
「55歳以上の方だとシニア割が適用されます」
と言われました。
お金を払う妻は得をしたと喜んでいましたが、免許証を提示した私は複雑な気分。自分にはそんなつもりがなくても、確実に老境が近づいていると実感しています。
何度も書いていますが、故徳大寺有恒氏は私が尊敬する自動車評論家で、1976年から毎年発刊された「間違いだらけのクルマ選び」は自動車評論に新たな地平を切り拓いて、38年あまりのロングセラーになった事を知っている方は多いと思います。
氏の著書は他にもたくさんあってサイフに余裕があると買っていたのですが、この本については以前は読む気が起きないので買っていませんでした。(58歳という年齢を見て避けていただけかも)
しかし上記のような心境の変化もあって、買ってみることに。
一読すると、氏が還暦を迎えられた頃、ドライビングに於ける肉体的衰えを痛感し、文章として残しておかねばならぬ、と上梓したことがよく分かります。
高齢社会になって老人の事故が多く、行政も免許返納を積極的に推し進めている昨今ですが、確かに普段路上にて高齢者マークを付けたクルマがフラフラと走っていて危ないと感じることはよくあります。
さすがに私はアクセルペダルとブレーキペダルを踏み間違えたことはありませんが、以前に比べ夜間に対向車のヘッドランプがまぶしく感じることが多く、どうも眼の焦点が合い難いと感じることも多いです。。
事故を起こしてからでは遅いと免許を返納、これは正論ではあります。公共交通機関がふんだんにある都会ならば自分で運転しなくても自在に移動可能ですよね。
しかしうちのように、私鉄は採算が取れずに廃線されて久しく、日中は1時間に1本未満のバスだけでは(これでも県庁所在地なのだが)、クルマが無くては買い物や病院への通院も極めて不便です。後期高齢者になった両親が未だ運転を続けているのも、そういう理由があってのことです。
当書では老いを甘受するだけでなく、考えて対処することでシニアのカーライフを過ごそうというのが主旨となっています。
この国では、ほとんど制限が無しで移動の自由があります。クルマは自分の意志での移動を行うツールとしては最右翼の存在。となるとシニアこそ移動の自由を享受するまたとない世代であることは確かです。
そうあるためには、運転を続けられるだけの身体のコンディションを維持するのが最低限の条件。私のように持病持ちには結構高いハードルです。
この本は1999年発行と既に20年の年月が過ぎていて、時流の変化に多少そぐわない部分もあります。そのことは氏も把握されていて、
「もっと齢を重ねたら、違った経験を得ることができるだろう。そして何年かたったら、本書に手を加えたいと思っている」
と端書に書いていますが、残念ながら2014年に鬼籍に入られたので、これ以上の改定は望めません。(実質的続編として「中高年のためのらくらく安心運転術」を2006年に発行されてはいるが)
ドライビングテクニックを記述した本というのはいくつもありますが、シニア向けという視点で書かれたものを私は他では見たこともありません。目の付け所が他の自動車評論家とは違うと感じる所以です。
自分もやがて否応なく運転を諦めなければならない時が来るとは思いますが、カーマニアからクルマの運転を取り上げるのは人生の楽しみの大半が無くなるのと同じなので、これ以上コンディションが悪化しないように身を戒めなければなりませんね。
Posted at 2019/04/19 00:15:57 | |
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