連日の様にフォルクスワーゲンの排ガス不正問題がニュース番組で取り上げられ、巨額の損害賠償やリコール対策費用が発生し、もはや自動車会社1社の問題ではなく、ドイツ経済全体にも大きな影響を与えそうな勢いである。日本でもワーゲンの9月新車登録台数が9%減ったと言う情報もあり、この問題はそう簡単に収まりそうもない。幸いな事に、国内正規輸入車に問題の不正ソフトウェアを搭載したディーゼルエンジンが導入されていないので実質的な被害はないが、TSIと呼ぶガソリンエンジンの排気ガスは大丈夫なのか...とか不安払拭は簡単ではない。ドイツの企業はトラブルに際しても強気の姿勢を崩さない事が多く、CEOの辞任などは聞こえてきても、世界中のワーゲン・オーナーに対する謝罪のメッセージが感じられないのは問題。北米では再販価値下落分の損害賠償を求める集団訴訟がかなりの規模になりそうとか。
さて、日本で「フォルクスワーゲン」と言えば「質実剛健」のイメージで、常に愚直かつ正しいクルマ作りをしていると信じられてきた。そういう意味で、ワーゲンが今回の不祥事で失ったブランドイメージは甚大であり、早々のリカバリーは不可能に近い程の出来事だろう。なにせ、一番「やらなそう」な奴がどんでもなく大規模な悪事を働いていたのだから。即刻「命」に関わる問題ではないと考える方も居るようだが、やはり環境問題は技術革新の最優先課題であるし、メーカーの信頼を担う根幹である。本当に残念な出来事だし、到底許されるものではない。
私が8台も乗り継いだワーゲン車から完全撤退して既に三年以上が経過。理由は色々あった様に思うが、根幹は「日本のクルマと大きな差異を感じなくなった」から。以前よりその差は縮まったとはいえ、維持費も含め割高で故障率の高いクルマでも「是非コレを買いたい」と思わせるだけの魅力を感じなくなった。ワーゲン車は日本国内でも年々販売台数が増え、見た目の品質表現はかなり器用になったが、本来持っていた圧倒的なドイツ品質とでも表現したくなる肉厚な「イイモノ感」は逆にどんどん薄れていった様に思う。今になって思うのは「ワッペングリル」を始めた2006年頃からワーゲンのクルマ作りは徐々にダメになったと思う。具体的にはB6「パサート」で感じた違和感を思い出す。(B5.5「パサート」は地味ながら過剰品質と言える位に素晴らしいクルマだったが、B6は派手な見た目と裏腹に随分軽薄なクルマになったと感じた)
トヨタも未だその後遺症を抱えている部分があるが、販売台数世界一を目指す中で、丁寧にクルマを開発・販売していくよりも、手っ取り早く台数を稼ごうとする過ちをワーゲンも犯したのではないか。「ワーゲン」のプレミアムブランド化を急ぐあまり、肝心の内容が追いついてなかったと感じる。日本でもEOSやシロッコの価格設定は異常だった。販売店もノルマ達成に必死で、大幅値引きを乱発する一方、セールスマンの入替えも激しく、丁寧に説明し時間をかけて売る事をしなくなった。結果、中古車市場では値崩れが進み、以前の様なリセールの強さも失われた。一方で、その頃から不気味なくらい自動車雑誌等ではワーゲン車を絶賛する記事が増えてきた。偶然だと思いたいが....。
フォルクスワーゲンもトヨタも「世界一」を目前にして大きなトラブルに直面したわけで、「世界一」の称号には魔物が取り憑いているのかとすら思うが、果たして「世界一」の称号がそんなに大切だろうか。どちらも大衆車をベースに成長してきた自動車メーカーとして、販売台数ではなく顧客満足で世界一を目指して欲しいものだ。
私が初めてリアルにワーゲン車に触れた90年代後半の頃は国産車と比べ、安全装備・ボディ剛性・ステアリング・ブレーキ・足回り....どれもカルチャーショックを受ける程に違っており、価格差も当然と思わせるだけの「凄味」を感じた。残念ながら、昨今のワーゲン車にそこまでのオーラは感じない。ワーゲンが足踏みしたか、国内メーカーが頑張ったのか。(まぁ両方か)当面ワーゲン車に復帰する予定はないが、長らく愛用し応援していたメーカーの不祥事なだけに複雑な思いである。
↓ゴルフ6のバリアント。エンストに悩まされた。細部の造りも雑になってガッカリした記憶がある。

↓パサートB5.5ワゴン。本当に上品で隅々まで作り込まれた名車だったと思う。
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2015/10/06 23:07:26