
トヨタが21日で、セリカの生産を終了する。一昨日の新聞やYahoo!ニュースに躍ったこのニュース、みんカラでも多くの方が取り上げており、既にご存知の方も多いと思う。
私はと言えば、「遂に」と少し思ったが、以前からセリカやMR-Sはいつ生産を終了してもおかしくないと思っていたし、数日前にお友達の方がカー雑誌に載っていた旨を記されていたので、特に驚きも感慨もなかった。それに私は、現行セリカは特に好きでも嫌いでもなく、何の興味も持っていない。
...しかし、「トヨタ セリカが無くなる」という事実を、「自動車史」という観点から見れば、そうはいかない。「トヨタ セリカ」は、その存在そのものが「
THE スペシャルティカー」だった。「スペシャルティカー=セリカ」と書いても、決して言い過ぎではないのである。
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「トヨタ セリカ」は1970年デビュー。アメリカのマスタングのヒットに倣いトヨタが作った、
日本初の本格スペシャルティカーだった。厳密にはその前から「日産 シルビア」があったが、非常に少量生産かつ高価で、「スペシャルティカー」の礎を築いたとは言い難いらしい。当初は2ドアクーペのみだったセリカ。'73年に「リフトバック」という3ドアハッチバックボディを加え、以後3代目まで2ドアクーペ&3ドアリフトバックというボディバリエーションだった(クーペは4代目に廃止)。

私が記憶にあるのはこの3代目から。しかし当時の私(6歳くらい)は、近所の車体整備工場からカタログをよく拝借していたのだが、セリカのカタログがなく、コロナのカタログをもらっていた...はずなので、どちらかと言うとこのセリカより、兄弟車だったFRコロナ(カリーナ)の記憶の方がより強く残っている。当時は「セリカvsシルビア」よりも、「コロナ(カリーナ)vsブルーバード」の“BC戦争”の方が、市場的にも熱かったような気がする。むしろこの3代目は、「XX」(ダブルエックス)の方がずっと強く記憶に残っている。初代の丸っこいXXより 2代目のリトラクタブルのXXは格段にカッコ良かった。ほぼ同時期の
フェアレディZ(Z31)やRX-7(SA)と共に、“
憧れのスポーツカー” として、今でも強く印象に残っている。

本題からやや逸れたが、私の中で最も強く印象に残るセリカは、この4代目セリカだ。「
流面形ボディ」(「流線形」をもじった造語)のキャッチコピーの元、その美しいボディラインと「GT-FOUR」というラリーベースモデルの速さ、カッコ良さでカーマニアを虜にした。当時小学生の私もそのカッコ良さに憧れたものだ。当時はホンダのプレリュードや
日産シルビア、セリカの兄貴分
ソアラなどと共に、「スペシャルティカー」は正に全盛期だった。ソアラやプレリュードが「
女子大生ホイホイ」などと呼ばれたのもこの頃である。これらのナンパグルマと比べると、セリカはラリーのイメージもあってかやや硬派と言うか、女よりも男にウケる車だったように思う。
その後も5代目・6代目、そして現行7代目とモデルチェンジを重ねていったセリカだが、私的な印象は4代目をピークに、どんどん下がっていくばかりだった。6代目は流麗かつ筋肉質な美しいデザインだと思うが、それでも印象には強く残ってはいない。それは一にも二にも、時代がもはや「スペシャルティカーの時代」ではなくなっていたからなのかもしれない。熱狂的スペシャルティカーファンならともかく、普通の車好きなら、やはり時代の趨勢と共に車を捉えているのが自然だと私は思う。「勢い」とは、もちろんまず車が魅力的でなければ話にならないが、時代の波、後押しがなければ「勢い」たり得ない。'80年代のスペシャルティカー市場には「勢い」があった。
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お友達の方々とは既に何度も交わした話ではあるが、この「スペシャルティカー/スポーツカーの衰退」は、「ミニバンブーム/コンパクトカーブーム」と、密接な関係があるように思う。女性や高齢者のドライバーが増え、車が「男だけの嗜好品」でなくなって久しい。おまけに地球環境問題、原油高騰の荒波である。誤解を恐れずに極論を言えば、もはや「嗜好品」として、スポーツカーやスペシャルティカーを乗り回す御仁は「時代遅れの無法者」と取られてもおかしくないところまで、時代は来てしまっているのである。二人しか乗れない「嗜好品」のスポーツカーやスペシャルティカーが廃れるのは、もはや自明の理という見方も出来なくもない。
...しかしその反面、ガキの頃、スポーツカーやスペシャルティカーに憧れ「車好き」になった私自身の想いとして、「
今の子供たちは、果たしてどうなんだろう?」という想いがある。私は今の子供たちと接する機会がないので分からないが、このブログをお読みになられた子供をお持ちの方にお聞きしたい。
いま、あなたのお子さんは、車が好きですか? どんな車が好きですか?
私は、私自身がそうであったように、今の子供たちにも車好きになって欲しい。私がそうであったように、カッコいいスポーツカーやスペシャルティカーに、憧れを抱いて欲しい。
「昔は良かった」
そう言ってしまうのは簡単だ。そう口にした瞬間から、男は「若者」から、「オヤジ」になってしまうのかもしれない。しかし、29歳の私が「昔は良かった」と言うのは、まだ少し抵抗がある。「いくら何でも、まだ早すぎる」という想いもあるし、そんなことをのたまうと、車好きの諸先輩方から 「若造が何言ってんだ」 とお叱りを受けてしまうかもしれない。しかし、早晩そう言わざるを得ないところまで、自動車産業が急激な転換期を迎えているということは、もはや受け容れざるを得ない事実なのだろう...。
「
スペシャルティカー」とは一体なんだろう? セリカ、シルビア、プレリュード、ソアラ、レパード、コスモ、ギャランΛ、アルシオーネ、ピアッツァ ...そうだ、「スペシャルティカー」は、スタイリッシュな車じゃなきゃいけない。スポーツカーほど速くない。スペシャルティカーは、カッコ良くなきゃ始まらないんだ。 ...いま 「カッコいい車」 って、なにがあるだろうか....。
「トヨタ セリカ」は、間もなく死亡する。「プレリュード」も、「シルビア」も、「ソアラ」も死んだ。 その他のスペシャルティカーも、皆死んだ。
「スペシャルティカーの時代」が、またいつ巡ってくるかはわからない。来るかもしれないし、もう二度と来ないのかもしれない。しかし、「トヨタ セリカ」も、「ホンダ プレリュード」も、「日産 シルビア」も、もう帰ってはこない。 ...だが、我々車好きの胸の中で、彼らは今も、生き続けている。
“THE スペシャルティカー” トヨタセリカよ、永遠なれ!!
Posted at 2006/04/14 06:41:49 | |
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