
1989年4月、自動車税の改正が行われ、税金の基準からボディサイズが外されエンジンの排気量のみとなった。それに伴い、いわゆる〝5ナンバー枠〟(全長4700mm以下×全幅1700mm以下)というタガが外され、高級車市場に3ナンバー化の波が訪れた。直後に大ヒットしたのが
三菱 ディアマンテだったが、今回はそれ以前の〝5ナンバーフルサイズセダン〟たちにスポットを当てたい。
当時、公用メインのセンチュリーやプレジデントを除いたパーソナルユース向けの最上級セダンは、トヨタの「
クラウン」と日産の「
セドリック/
グロリア」だった。両者とも、大きめのバンパー/モールを嵌め3ナンバーボディとする3リッター車と、キツキツのバンパーを嵌め5ナンバー枠内ギリギリに収まる2リッター車とがそれぞれ1991年のモデルチェンジまで並存していた。その他、このクラス(ホイールベース2700mm以上)では、1985年登場の
ホンダ レジェンドの2リッター車、1986年登場の
三菱 デボネアVの2リッター車と
マツダ ルーチェが、5ナンバーフルサイズのボディで登場している(三者共に全長4690mm×全幅1695mm)。ルーチェに関しては、翌年に前四者に追随するように 大型バンパーを嵌めた3リッター車が登場している。以上が、最上級クラスの5ナンバーフルサイズセダンたちだ。
その一つ下、マークIIやローレルといったアッパーミドルクラスは、ちょうど80年代半ばに5ナンバーフルサイズに到達した。1980年のチェンジではそれぞれ4640mm/4635mmだったが、その次の1984年8月のチェンジでまずマークIIが4690mmに到達。ローレルは4650mmだったが、1986年のマイナーチェンジでバンパーを拡大し4690mmに到達した。ちなみにスカイラインは、1985年デビューの通称「
7thスカイライン」が4650mm。ローレルよりホイールベースが55mm短かった事もあり、フルサイズには到達していない(その後1989年のチェンジで縮小化)。マークIIはその次のチェンジ(1988年8月)も5ナンバーフルサイズで登場。日産は翌月〝
打倒マークII3兄弟〟を旗印に新車種「
セフィーロ」をリリース。遅れて12月にチェンジしたローレルと共に、5ナンバーフルサイズボディでマークII3兄弟に真っ向から勝負を挑んだ。 以上がアッパーミドルクラスの5ナンバーフルサイズセダンたちだ。
その他では、1989年10月にFRプラットフォームを持たないホンダが苦し紛れに出した(?)FFアッパーミドルセダン
アコード・インスパイア&
ビガーが、4690mm×1695mmの5ナンバーフルサイズでデビュー。 ....したのだが、約2年後の1992年1月、それに大型バンパーを装着し3ナンバーとした「ホンダ インスパイア」(2.5L&2L)をリリース。5ナン枠+2Lの「アコード・インスパイア」と二本立てという訳の分からなさだったが、これは開発時期のタイミングから1989年4月の税制改正に間に合わなかったが故の〝急場凌ぎ〟だったのだろう。約半年後の1990年5月、全車3ナンバーでデビューしたディアマンテと比べると「ヘタこいた~」という感じだが、当時のバブル景気のお陰もあってかこのアコード・インスパイア&ビガーも思いの外売れた。当然だが、次の1995年2月デビューの2代目では、全車3ナンバーボディに統一されている。
1989年4月の税制改正以後は、1990年10月にまずレジェンドがモデルチェンジで全車3ナンバー化。1991年5月、ルーチェが全車3ナンバーの「
センティア」に後を譲り消滅。6月にセドグロのハードトップがチェンジし、2Lモデルも含め3ナンバーボディに統一。10月にはクラウンのハードトップがチェンジ。2Lモデルが消滅し3ナンバーボディに統一。翌1992年10月、デボネアVが「
デボネア」へとチェンジし全車3ナンバー化。同月マークII3兄弟がチェンジし3ナンバー化。遅れてライバルのローレルも1993年1月にチェンジし3ナンバー化。その兄弟車セフィーロは1994年8月のチェンジでFF V6セダンであった
マキシマの後を継ぎ3ナンバー化。そして前述の通り、アコード・インスパイア&ビガーが全車3ナンバーの「
インスパイア&
セイバー」に後を譲り1995年2月に消滅。一部の保守層やビジネスユース向けに旧型のまま残ったセダン群(クラウン/セドグロ/マークII)を除き、パーソナルユース向けの5ナンバーフルサイズセダンはすべて消滅した。
〝5ナンバー枠〟という制約の中、各社が同じサイズの中で違いを出そうと切磋琢磨したこの時代。1989年の税制改正でタガが外され、高級セダンのデザインの自由度や融通性は格段に向上し各車のレベルは確実に向上したが、今になってみると、この〝5ナンバーフルサイズセダン〟という言葉の響きには懐かしさというか、〝80年代車〟への憧憬を胸に呼び起こすものがある。いま、カローラクラスにまで3ナンバー化の波が押し寄せているが、闇雲な肥大化を抑制する意味においても、この〝5ナンバー枠〟のような縛りは幾らかの必要性があるのではないだろうか?
Posted at 2007/10/11 00:01:52 | |
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