![[試乗インプレッション]VW・UP! 贅沢なクルマに飽きたらお試しを。 [試乗インプレッション]VW・UP! 贅沢なクルマに飽きたらお試しを。](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/030/527/471/30527471/p1m.jpg?ct=347616fb5635)
ようやくVW「UP!」をテストする事が出来た。グレードは4ドアの「move UP!」で価格は169万円のモデルである。ボディ色はナイトブルーメタリックで内装色はブラックデニム/ベージュのツートーン。カタログで見るよりもアッサリしていて好感触であった。毎度、何年経っても、VW車に感心するのはボディの剛性感。特に、金庫の様にガッチリとした重厚感の有るドア開閉フィールは、それだけで安心・安全を感じるもの。 低価格の「UP!」にも共通して備わっていることは大したものである。
運転席に乗り込むと、「サッパリ」とした空間にホッとする。なかなか言葉にし難い部分であるが、ゴテゴテと飾り立てるのが流行りの昨今。必要なモノだけを当たり前の場所に配置しただけのシンプルデザイン。やはり実用車はこうあるべきだなぁと再認識。それでいて、メーター周りのスイッチレイアウトはほぼ他のVW車と同様に仕上がっている。 ゴルフやポロから乗り換えてもスンナリと扱えるはずである。
キーを捻ってエンジン始動。3気筒の1.0L(NA)エンジンは予想に反して、不快な振動は抑えこまれており、知らなければ3気筒であることを意識する事は無いかもしれぬ。トヨタ「iQ」「ヴィッツ」等に搭載される1.0Lの3気筒エンジンはプルプルと低級な振動が出てしまうのが不快だったと記憶している。
独特のポジションで構成される5速ASGミッション(シングルクラッチのロボタイズド)はクリープが無く、加速時の空走感というかギクシャクしたフィールが色濃く感じられるものの、過去の類似製品(スマートやフィアットパンダ/500等)に比較すると穏やかに感じられた。日本のCVTにもズルズルと滑るような違和感を感じさせるモデルが未だ存在するから、これは慣れるしか無い。ただ、予想外だったのは「UP!」の1.0Lエンジンはなかなかパワフルで、カタログスペック(75ps/6200rpm 9.7kg-m/3000-4300rpm)で想像するよりも、キビキビと走ってくれる。これなら、ミッションの癖さえ飲み込んでしまえば街乗りから高速道路を使ったロングドライブまで万能に使えるだろう。やはり、積極的にマニュアルシフトを駆使して走るのがこのクルマの場合正解なんだと思う。これを面倒な作業と感じる人はトヨタへ行くべきだ。
エンジンを回していった時のノイズはそれなりに高まるが、不快に感じる音質ではないし、CVTの様な回転数と速度のズレもないため、気にならなかった。ただ、私は騒音にかなり寛容なタイプだと思うので、一般的には賑やかなクルマかもしれない。VW車の常で、直進安定性は鉄板。「UP!」の様なコンパクトなモデルでも、矢のように直進していくのは流石。ステアリングも路面のフィーリングをソコソコ伝えてくるタイプなので、運転していて飽きてしまうタイプのクルマではないだろう。まぁそれでも潔くMTモデルを入れてくれれば....と思うのだが、販売台数は僅かだろうね。限定車でも良いから設定されることを期待しておく。
足回りもVW流儀で徹底されており、基本的には固めで積極的にロールを許すタイプでは無いが、タイヤが165/70R14とコンフォートなサイズを履いているからか、懐の深さは感じられる。どんな道でも安心して身を委ねられるセッティングだろう。上級グレードの「high UP!」は1インチアップの185/55R15を履くから、どの程度フィーリングが変わるのか、興味がある。惜しいのは、「UP!」には全車サイドカーテンエアバッグが設定されておらず、後席乗員に対するエアバッグが提供されないこと。安全性をアピールするVWにしてはお粗末な内容である。4ドアを設定するならば、確実にケアすべきだろう。
そろそろ結論を。正直、「UP!」は私が想像していたよりも大人びたフィーリングのコンパクトカーであり、永年VW車に乗っているユーザーのセカンドカーやダウンサイジング需要にキッチリと応えるだけの実力は持っていると感じる。しかし、5速ASGミッションの違和感というか癖は明確に存在するので、これまで国産のコンパクトカーしか知らない様なユーザーにとっては違和感が強い。これを味として楽しめるか、否かがこのクルマの評価を分けるポイントだろう。数年後にはDSGへ換装される様な気もするだけに、オススメしにくい所では有る。今回試乗した4ドアの「move UP!」は169万円であり、国産軽自動車ならば、「N ONE(Premium Tourer・Lパッケージ)」や「ムーヴカスタム(RS"SA")」のトップグレードに匹敵する価格帯である。これらは安全装備についても、「UP!」に負けない内容を誇っており、ターボエンジンの力強い走りもあって、侮れない存在。また、3年後・5年後の残価(リセール)は国産軽自動車の圧勝であろうことを考慮すると、3日3晩は悩めるくらいの問題である。そういう意味で、
スズキ・スプラッシュが128.7万円で提供されていることは奇跡なんだと思う。スプラッシュは完全にモデル末期であり、いつカタログ落としても不思議ではない。このクルマがもっと評価されることを期待している。

Posted at 2013/07/07 17:48:10 | |
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