15万キロ弱走行車にチタニックのケミカルオーバーホール(シリンダーボアの平坦化によりトップリングとのすり合わせを改善する目的)の、ステップ1~3が全て完了しました。

●平たく言うと
Step1.摺動面をミクロン単位で平らに仕上げ
Step2.チタンでフラッシング後チタン保護膜でコーティングして
Step3.チタン系エステルをオイルに入れてヌルスコにする

ステップ1は720キロまで走行

ステップ2は45分アイドリングで完全暖気、45分開放
新油1Lにフラッシング1L×4缶
ステップ3はチタニックワンショット2本投入
※濃度的には1.5本だが、開栓保管できない(空気に触れると反応するらしい)ため、今回は2本全量いれました。次回から1本。オイルの動粘度は15.5にセット。回しきるにはちと重すぎた。13~14.5位が理想的と思います。
と、各工程少し多めに念入りにやりました。
●総評
興味本位ではやるな!
・エンジンが全く別物になり怒涛のトルクが新車以上のレベルで襲ってきます。あのくたびれてもっさりしたエンジンがグイグイ食いつくエンジンに変身します。これが角が取れて丸くなり続いてくれれば狙い通りのうれしいところです。
・これだけトルクが出始めると、機械的負荷がもとに戻るのか?それ以上になるので、オイル管理は極シビアに距離管理から希釈管理に変えるなど、工夫が必要と感じます。シャバシャバオイルでは受け止められません。
・踏もううが踏むまいが1500rpm強から過給が立ち上がり、抜けが少ないエンジンになりますので楽しすぎて必ず踏みすぎた結果燃費大幅にが悪化してしまいます。本来は燃費が良くなります。
・加給の掛かりが少し早くなりアクセルの付きが良くなったと感じる以上に、そこから3000rpmまで抜けの少ないエンジンによりもたつかずにどーおーっとトルクがで続けます。
・ステップ1の施工は実に難しい。溶かしが足りなかったり溶かし過ぎたり見えないところを鏡面ボア仕上げで、クロスハッチの5~7μm溝に対し、1~1.5μmを溶かして平坦化する事の難しさ。足りないと効果が出ず、やりすぎると逆に0.2μmの極薄油膜をきれいに張る事ができませんので不安しかありません。720キロで止めましたが果たしてそれが正解なのか?良く解らないというのがミソ
これをアクセルフィーリングで感じ取る。神業です
・この0.2μmの極薄油膜をきれいに張る事ができるようになると、油膜中の液体チタンや有機チタンが摺動部に作用して最も厳しい上死点トップリングの潤滑を十分に行えるという話し。
・ステップ1ではエンジンには振動共鳴ポイントが必ずあるので事前にチェックしておき丹念にその回転でならす。例1350rpmなら1350とその倍数の2700rpmのあたり。
・インマニ系が詰まっている車両は不可先にDSCをお勧めします。無負荷ISV開度率3%台が判断値。4%以上はインマニ詰まり。過給が始まると大量の吸気が必要で、エアが来ないと不完全燃焼しながらPMが爆上がりし、全くふけ上がりません。
・オイルラインや燃焼室周りが汚れている車両は不可。カーボンポリッシングですぐに鏡面ボアが傷つきます。
・ステップ3では有機モリブデンが高濃度配合されているオイルではチタニックの有機チタンの保護膜形成と摺動部への吸着競合(たぶん)を起こし、安定した保護膜形成の完了にかなりの日数を要します。1+1=2ではなく、1.5とか効果をスポイルする。はじめかなりギクシャクしますが我慢して数日走らせる。
・一番気を付ける点はW30ではDPF再生3回目くらいの希釈でトルクを受け止められなくなりますので、夏場はW40の動粘度13.0以上がのぞましい。W30では恐ろしいほど回りますが、オイルの粘度が500キロまでしか持ちません。
・エンジンの音と振動が大幅に減少します。これはうれしい。1500rpmでエンジン音が無音になります。(埼玉55は少々耳が遠い)
・峠の下りで3000~4500の高速回転域は官能的。恐ろしく静かに滑らかにピュンピュン回ります。これはもうディーゼルエンジンの廻り方ではないですね。調子こいて回しすぎて鏡面ボアが終わらないように祈ります。
ということで、鏡面ボアの慣らし中ではありますが、今のところ成功と思っております。
●チタニックステッププログラムの理論
ピストンの摩擦には2種あり、
1.上下工程の中央付近と
2.上下死点付近では潤滑理論が全く異なります。
今回はその内の2の上下死点付近の特に上死点付近の潤滑を改善し、燃焼室の密閉性を高めたいという目論見です。
●トヨタ三田氏の研究論文によると
ピストン速度が低く燃焼ガス圧やピストン側圧力の作用する上下死点近傍では固体接触・境界潤滑がそれぞれ支配的であり、★摩擦低減には、表面あらさを油膜厚さに対して十分小さくし、固体接触を回避することが有効である。
・本来は溶射でボア表面あらさを極限まで低減したミラーボアコーティング技術というものですが、それのまねごとを、鏡面ボアとしチタン被膜でコーティングする事により、上下死点近傍の固体接触時の摩擦と摩耗保護を目的とするものです。
●参考
SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGINEERS OF JAPAN Vol. 6 No. 3 2016への寄稿
ピストンリングーシリンダ間の摩擦損失低減と油膜挙動
三田 修三(株式会社豊田中央研究所)
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2023/08/03 00:02:14