私も含め全員がディーゼルエンジンはシリンダー内で霧化した軽油が燃焼していると思っていると思いますが、どうやら違うようです。
軽油は炭素数C5~C14の炭化水素であり、霧化しても爆発的燃焼はしないようです。シリンダー中の燃噴から着火までの数ミリ秒で全く知られていない化学反応が起きています。
この話は知ったところで特に意味はありません。
・以前から理想的な燃焼温度は1500~2000Kの範囲という話をしています。油田によりけりですが、中東原油はパラフィン系と芳香族系が混合しており、精製された軽油に芳香族炭化水素は20数%程度含まれている。これがNOxやPM発生の原因物質と言われております。
・高温高圧下のシリンダー内部で軽油が燃焼する過程において、噴射から数ミリ秒後に火がついて燃え始める時はすでに軽油は軽油では無く、化学変化後のC2H4(エチレンガス)などの低沸点ガス状炭化水素となっており、爆発的に酸化反応を起こす。
●軽油に精製されると概ね2種となる
・直鎖飽和炭化水素 炭素量C12~C14
・芳香族炭化水素 炭素量C5~C11 (20数%)
●高温高圧下での着火直前の化学変化
・直鎖飽和炭化水素100%の燃料は1500Kで全量がC1~C4の低沸点成分のガス状炭化水素となり、C2H4(エチレンガス)が最も多く生成される。燃料噴射から数ミリ秒の話しです。
・芳香族炭化水素は1500Kでも50%が未反応成分として残る。直鎖飽和炭化水素と比して150Kほど反応温度に差があるようです。両方の成分が混じった軽油では、直鎖飽和炭化水素の変化も妨げ、燃焼時のPM発生に大きな影響を及ぼす。
●燃料周辺酸素の欠乏
炭素は酸化に酸素2つCO2、水素は酸化に酸素1つH2O、C2H4の炭素水素(酸素6つ)より、C12の炭化水素の燃焼がより多くの酸素を必要とします。つまりエチレンガスに変化できなかった成分が多いほど、多くの燃料周辺酸素量を必要とします。
・噴射した軽油の全炭素量を燃焼させるに必要な酸素量はシリンダー中に過給で詰め込まれていますが、EGRと中途半端に混じりあい、酸素濃度の濃淡が発生し、C1やC2が酸化する酸素はそのガス分子の付近にありますが、C12を燃やしきる酸素は周辺空気だけでは足りずに、酸欠で燃え残りがPM発生の元となる。
・改良型エンジンはこのあたりの課題をピストン形状の変更、圧縮比のアップ、燃噴回数の増加により、よく空気とEGRが混ざり、燃焼温度を少し上げ、細切れにして燃やすことによりある程度改善している。
●何が言いたいのか
私は全くできていないのですが、要はいかに過給圧をスムーズに上げてシリンダーに大量の空気を送り込むのか?という話になります。低速高負荷の発進加速において、たぶん青いのが付くぐらいが過給と燃噴のバランスがとれており、DOCやDPFに堆積物が少ない状況となるのではないかと思います。
・付随的にDOC入口温度も180℃を超えてくる事により、発生した堆積物も酸化分解して行くものが増え、DPFの堆積が緩やかになると思われます。
●参考資料
流動反応装置によるディーゼル燃料の熱分解と酸化過程に関する研究
徳島大学大学院工学研究科 中 美智子ら
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Posted at
2024/01/31 18:11:26