
10年程前にi-MiEVを試乗した頃から、日常使いの車は
そのうちには電気自動車に乗り換えるんだろうなぁと漠然と考えていました。ここでいう電気自動車とは、BEV(バッテリー式電気自動車)のことです。
‥‥が、なかなかそうはなりませんね
。内燃機関を楽しむ車が別にあれば、内燃機関へのこだわりはまったくありませんが、それでも、やっぱり選択できないでいます。どうしても下記のようなことを考えてしまうから。皆さんは払拭できているでしょうか?
■充電の呪縛
本当に短距離しか乗らないような場合や週末にしか乗らないような場合には、週1回程度の急速充電で済むかもしれませんが、基本的には、
夜中に車を駐めている駐車場で充電しておくというのが想定された使い方だと思います。賃貸に住んでいるとこれが一番のネックですが、今度、住み替えたならば解消できます。
そうできたとして、夜中に充電できれば、
通勤や近所の買い物で使う日常の間はまったく問題ないでしょうね。では
休日のドライブはどうでしょう?‥‥今の電気自動車の実効的な走行距離(エアコンON)は、300kmくらいでしょうか。

となると、高速で片道150km程度離れたところ(うちからだと東京まで行くとこれくらい)を降りていろいろ巡る日帰りドライブ旅行に行こうとすると、
帰るまでにどこかで充電しなければならないでしょうね。横浜、千葉、福島、軽井沢、いわき辺りまで行くと170km~になるのでもう確実に無理でしょうね。もうちょっと足を延ばすなら
計画的に充電を考えておかないと危なさそうです。ちょっと面倒になりそうで、これだけでも十分に躊躇します。
なお、休日ドライブは内燃機関の車の方にすればいいのでは?というのは一理ありますが、
996だと全国どこへでも行けましたが、355だとそうはいかないのです(雨不可/段差不可/駐車場にゆとり欲しい)。そしてもう一台の増車は却下。もう一台あるならきっと電気自動車に乗らなくなります。
それで、外での急速充電が必要として、Teslaの
スーパーチャージャーが使えればまあまあ問題なさそうです。
15分で275km分の充電ができるので十分でしょう。でも、
そもそもスーパーチャージャーは設置場所が少ないのが問題です。
「どこへでも」は明らかに言い過ぎ。

また、
Teslaはソフトや販売方法等ちょっと特殊なのと車種も少ないので、他の電気自動車にするとしましょう(
選択肢が急速に増えつつある)。そうすると日本に多いCHAdeMOを使うこととなり、
多くは50kWしかありません(90kWのものはごく少数)。規格上の最大値はもっと大きいんですけどね。

充電最大時間が30分なので
1回に充電できる電力量はスーパーチャージャーの2/5、Tesla試算計算だと110km分、他の車でも
精々150kmくらいでしょう。これでは、長距離旅行でバッテリーが本当に減った状態になると、
高速SAのたびに立ち寄って充電しないと不安になるレベルと思います。充電器が空いていないかもしれないし、待つ間の飲み物の飲み過ぎでお腹がタポンタポンになることでしょう。
バッテリー容量がいくら大きかろうが、1回の急速充電で補充できる電力量の制限は無関係なので大きな制約です。そんな旅行は滅多にないとも言えますが、
滅多にない旅行だからこそ制約を受けたくないとも言え、これだけでも十分に躊躇する理由になります。旅行のときだけレンタカーを借りるのは、自分の車でのドライブすることが目的の一部だから本末転倒です。
というわけで、
「継続走行距離を決めるバッテリー全容量」も「出先で実質的に追加充電できる容量」も両方ともに不十分に思います。特に後者の改善は、インフラに依存するので当面の間は難しいでしょう。
■電力依存になって本当にいいの?という思い
Teslaのスーパーチャージャーは250kWと猛烈で、6kVA(VA=W)契約の戸建に換算すると、
42軒分を一気に流すという中々恐ろしいものです。それなりなサイズの
工場並みの電力をたった1機の充電器が消費します。そこまでやってようやく実用的といっても良いレベルの急速充電になるイメージですね。この電力を太陽光発電で換算すると、変換効率が高いとされる東芝の
250Wモジュールだと1000枚必要です。・・・おっと、この換算は正しいのですが実効的ではないので(真正面照射での発電ができることはほぼない)、
電力ではなく電力量で考え直すとして、標準的な戸建用だと16枚設置した4kW出力で年間発電量は約4000kWhとのことです。なので、1日あたり平均の電力量は11kWh(最大効率条件で約3時間分)となり、スーパーチャージャー15分の充電は62.5kWh(=250kW×0.25h)なので、
約6日かけて発電した電力量を1回の充電で一気に使うということになります。なかなか強烈です。電力を使う方で考え直すと、1世帯の年間消費エネルギーの全国平均は4322kWhだそうなので、標準的な太陽光発電の年間電力量とほぼ同じです。約6日分の消費エネルギーを一回に使うということですね。それくらい車を動かすのにはエネルギーが必要だということですね。CHAdeMOや通常充電だと充電時の単位時間当たりの消費電力は抑えられますが、
車を同じだけ動かすときの総エネルギーとしては同じくらい必要なことに変わりはありません。
年間1万km走行するとして、1年間に必要な電力量はTesla試算で2272kWh(=10000km/275km*62.5kWh)となります。
だいたい電気自動車1台が0.5世帯分ということになりますね。全世帯が車をもっているわけではありませんが、標準的世帯の人が電気自動車を持つと電力消費量が1.5倍になるということです。
現状の日本の電気自動車の割合は0.15%とのことで、消費電力全体への影響は軽微なものに過ぎず全く問題ないレベルのようですが、今後普及していったならばどうでしょう? いろいろ試算があるようですが、
全自動車が電気自動車に置き換わったとすると、原発でプラス10基、火力発電でプラス20基分追加しなければならなくなるようです。
半分までの普及だったとしてもかなりなインパクトです。そうでなくても、日本の電力事情は厳しい状況が続いている最中ですから、
厳しい電力事情を好転させることとセットで推し進める必要があることは明らかでしょう。でも、その施策はなかなか見えません。将来が展望できるだけでもいいですが、これだけとっても
気持ち的に電気自動車に変えようという気持ちを削ぐには十分です。

自然エネルギーへの転換は、やりたくても容易には進まないのが現実だと思います。将来的に原発に依存するのもどうかと思いますし。
■リセールバリューと劣化と陳腐化
電気自動車のバッテリーは、ものすごく高価なこともあって交換を前提にすることはできないでしょう。

交換することは可能でしょうが、内燃機関のエンジンのように実質上は交換しない前提だと思います。一方で、今の技術では、
バッテリーの寿命はまだまだ車の本来の寿命には追い付いていないと思われます。
最新のバッテリーはかなり劣化が抑えられているようですが、それでも無視できない程度には性能劣化するでしょう。車検を2回通して、7年乗って売るとしましょうか。そのときのリセールはどうなっているのでしょう?
かなり悲惨なことになると思います。どなたか実例があると教えていただきたいです。実際、買う側の立場になると、7年落ちのBEVを積極的に買おうとは思わないです。
バッテリーやインバータ等の基幹部品の技術的進歩が激しいというのも、古い車を買いたくないことに拍車をかけます。また、
バッテリーを変えてまで乗りつぶす気にもなれないでしょう。これだけをとってみても、なかなか触手は動きません。
■価格
高価なバッテリーを大量に使うので仕方がないとはいえ、あるいは
補助金が出る/ランニングコストが安いとは言え、
やっぱり本体価格が高いと思います。リセールも期待できないわけですから、せめて初期費用が安くあって欲しいくらいなのに‥‥。
というわけで、
大局的にはBEVに移行していくことに反対はありませんし、究極的にはそれが望ましいかもしれませんが、
私自身はもうしばらく様子を見ると思います。まず
現行の技術はまだ少し足りないと思います(特にバッテリー)し、日本で乗るのならばエネルギー政策が見えない間はどうもしっくりきません。
というわけで、家を建てるにあたって、
充電設備をつけようかとも思いましたが、ちょっと保留です。
