
日本の夏の暑さは増すばかりで、暑い期間も長くなりましたね。この時期に355に乗っていると、しばしば
エアコンは効くのかと問われることがあります。
確かに今となっては29年も前の古い車なので、
エアコンが壊れていても不思議ではないかもしれません。あるいは
最初から弱いと思われているかもしれません。が、90年代設計の十分に新しい車[*]です。特別なことをしていなくても、エアコンが効かないというようなことはありませんよ。ちゃんと効きます。
とはいえ、少し古めの車において、「エアコンは効かない」とか「エアコンが壊れた」という話は、みんカラではそんなに珍しくなくしばしば目にしますね。
それは、なぜでしょうか?
釈迦に説法な方がたくさんいらっしゃいそうにも思いますが、ちょっと考察してみましょう。
まず、
週に1回5時間のドライブをする頻度で乗る
趣味車があるとしましょう。
そうすると、月に20時間、年間250時間ほど乗ることになります。平均車速が遅めの20km/hだとしても、年間5,000kmのペースです。これは、趣味車としては結構乗る方でしょう。その間、常にカーエアコンを付けていたとすると、エアコンの稼働時間も同じ年間250時間になります。
ここで、全館空調を入れている家で、年中空調を付けっぱなしにしている場合を考えてみましょうか。
あるいは、温度管理を要する製品製造のために、24時間空調のある工場というのでもいいです。
先の1年間で
250時間というのは、そういうエアコンの場合の
10日分ほどの稼働時間に過ぎません。もしも20年間その乗り方を続けたとしても、ざっくり半年分程度にしかなりません。
一方で、半年程度の連続稼働でそういった家庭用や工場用のエアコンが壊れたりなどしません。壊れると言えばの
可動部は、エアコンの中ではコンプレッサとなりますが、正常稼働している
コンプレッサの耐久時間はもっとずっと長いのです。少なくとも数年はもつことでしょう。
すなわち、その程度の車の乗り方、あるいはもっと低頻度の車の乗り方で、
基本的なエアコンの耐久時間を気にする必要はまったくないと思うということです。
その一方で、3年前にコンプレッサを交換したのにまたガス漏れが始まったとか、見ることがあります。
そういうときには、古い車だから仕方がないとかいう理由付けがなされていたりもします(が、因果関係はほとんどないと思います)。
趣味車のわずか数年程度の稼働時間なんて、
耐久時間的にはまったく問題ないレベルなのに、なぜかそうなるのかです。
ずばりそれは、
「エアコンをつけないでいるから」=「コンプレッサを稼働しないでいるから」
だと思います。
エアコンは適度に動かしておかないと、冷媒とともにエアコン内部配管内を循環しているオイルが落ち切ってしまって、コンプレッサが
オイル切れを起こすことがあります。金属は、オイル切れが起きている状態で摺動させると、あっという間に摩耗してしまいます。そういうオイル切れが起きる状況を作っておいて、その後に動かすようなことをしてしまって、コンプレッサを壊しているのだと思います。
3年でガス漏れが始まったというような類の話は、
・冬の間にエアコンを入れていない、
・車を複数台所有していて何か月も乗らないときがある、
・できるだけ動かさない方が壊れないだろうと温存したくて、エアコンをできるだけ動かさないようにしている、
といったような、何某かの原因が背後にあるのではないかと思います。自ら、コンプレッサのオイル切れが起きる状況を作り出しているということです。
もしも、最後のエアコンを壊したくない動機で動かしていないのならば、それはまったく逆効果だと思うので、すぐに入れた方がいいでしょう。
また、コンプレッサによりオイルが配管内の各所に巡ることは、各所の継手部のシールにも役立っているはずです。本来ならばオイルが巡っていれば漏れないようなほんの僅かな隙間にすぎないのに、動かしていないとそこからガス漏れが始まるようなことになるかもしれません。
関連して、「車には振動があるので、固定設置のエアコンよりはガスが漏れやすく、ごく僅かではあるものの漏れるのは仕方がない」と言われたりもしますが、正常であればそれは
本当に僅かだと思います。20年程度でエアコンの効きに影響するほどは漏れたりしません。もしも数年でガスが抜けるようであれば、それは異常でしょう。
さらには、ガスが漏れる状況をそのまま放置していると、その隙間から空気とともに湿気も入ってきて、エアコン
内部を腐食させてしまうことがあります。配管各所が腐食してしまうようなことになると、修理もままならなくなってしまいます。
では、趣味車ではなく、毎日片道1時間の通勤に使う車で、エアコンは常にONにしているというか、
オートエアコンのためあまりエアコンの存在すら意識していないような場合はどうでしょうか。知らず知らずのうちにコンプレッサを動かしている状況です。こういう車の乗り方をしていると、10年、20年、問題なくエアコンは壊れずに動くことでしょう。エアコンは動かしてさえいれば、そんなに簡単に壊れたりはしないと思うということです。
昔、87年式のE30の325iに乗っているとき(正規ディーラーの認定中古車)、
冬場でも最低月一回程度はエアコンを入れるようにと、ディーラーに何度も言われたことがあります。どうやら当時、E30のエアコン故障が頻発していたようでした。詳細は知りませんが、何かの問題でオイル切れを起こしやすかったようで、コンプレッサをとにかく回してくださいと言われていました。
オートエアコンではなかったし、エアコンには少なからずパワーを食われる気がしていて、寒いのになんでクーラー入れるの?という古い感性も手伝って、あまりまともに受け止めていなかった気がします。が、それでも、まあ定期的には動かしていたんでしょう。その後2年くらい乗っていましたが、エアコンに問題は起きませんでした。
その後、89年式のB6 2.7(これもE30)に乗り換えて少しした頃、エバポレータからのガス漏れが起きました。中古なので、どういう使い方をされていたのかはわかりませんし、そのガス漏れがオイル循環不足を発端として起きたものかもわかりませんが、やっぱり
エアコンが弱いんだなと思いました。それ以降、こまめにエアコンを付けるようになりました。その後はB6を手放すまでの9年程の間、何の問題もなくエアコンは使えていました。
その後の2002年式の996では、エアコンは常時ONでした。というか、オートエアコンをわざわざ消す行為をしなければOFFにはならないので、結果として常にONになるというのが、普通の乗り方だと思います。長年乗った996を手放す頃には車齢は19歳になっていましたが、エアコン周りはノーメンテで最後まで死ぬほど冷える車でした。今も乗っているインプレッサなんかよりも全然猛烈に効く車でした。
そして、今の355も、エアコンは原則常時ONです。冬でもです。
購入して1年後の2年程前に、コンプレッサからのオイル漏れが見つかり、そのときにコンプレッサを交換したことはあります(そのときは晩秋だったので、エアコンが効かなくなっていたかどうかははっきりしないのですが、直前の夏は効いていました)。そのときの車齢は27歳、それまでの使われ方もわかりませんし、買う前にショップに長らく展示されていたことも間違いないので、コンプレッサはダメージを蓄積していたのでしょう。
その修理の後は、今に至るまで、エアコンはちゃんと冷えます。
さて話が少し逸れますが、定期的にガス補充をしているという話もちょくちょく聞きますね。修理困難で致し方ない場合もあるかもしれませんが、ガス補充でごまかすのではなく、できる限り漏れ箇所を特定して修理したいところだと思います。車が古かろうが、ガスが漏れることは普通ではありません。漏れを一旦特定し修理すれば、その後にエアコンを動かすようにすれば、そうそう漏れるようにはならないと思います。
環境影響の小さいフロンに代わっているとはいえ、フロンは今でも回収すべき対象です。フロン排出抑制法では、ユーザーは機器の廃棄時に機器からのフロン類回収が義務付けられている(充塡回収業者に依頼する必要がある)くらいです。なので、コンプレッサ方式の除湿器なんかも、簡単には廃棄できません。車においても、ガスが漏れることを知りながら充填だけするというのは、あまりよろしくはないでしょう。
[*] 車はもちろん毎年古くなっていきます。が、何年経ったかではなく、設計・製造時期がいつかこそが重要だと思います。車の基本設計や各種コンポーネントに変化が大きかったのは、70~80年代あたりまでであって、90年代には今の車と大して変わらない設計になったと思っています。
また同じ理由で、1年前の
このブログ(https://minkara.carview.co.jp/userid/3409363/blog/47144312/)でも書いたように、エアコンだけではなく、エンジン冷却系も全然問題ありません。