
車の形状の呼び名は、押しなべて馬車由来であると言われていますね。その中でも屋根の開く車の呼び名について、改めてまとめてみました。
■コンバーチブル(Convertible)
英語の「convert(変形する、転換する)」が語源。
《ニュアンス》快適性や実用性を考慮した一般的な乗用車の派生モデルとしてルーフを開閉できる仕様になっているものを指すことが多い。4座であることが通常で、ときに2座。ソフトトップまたはハードトップを備える。
■カブリオレ(Cabriolet)
フランス語の「cabrioler(跳ねる、軽快に動く)」が語源。
《ニュアンス》コンバーチブルとほぼ同義だが、欧州メーカーが好んで用いる。一般にエレガントで洗練された印象の高級オープンモデルに使われる傾向が強い。
■ロードスター(Roadster)
英語で「road(道)」+「ster(何かをする人)」という構成。元々、軽量でシンプルな2座のオープンカーを指す。
《ニュアンス》スポーツ志向の2シーターで、軽量・低重心・機能美を重視した車。快適性より走りの楽しさにフォーカスした車。
■スパイダー(Spyder / Spider)
諸説あるが、18世紀の馬車の一種「Spider phaeton」から派生したと言われる。馬車の構造がクモの脚のように見えたことが由来。
《ニュアンス》ロードスターと似ているが、主にイタリアメーカーが使用する用語。エキゾチックで官能的な響きを持つ名称。
■バルケッタ(Barchetta)
イタリア語で「小舟」を意味し、スポーツカーのシンプルなオープントップスタイルを指す。
《ニュアンス》ロードスターやスパイダーよりもさらにミニマルなオープンカーを表し、ドライビングの純粋な楽しさを追求したモデルに使われることが多い。
■ドロップヘッド・クーペ(Drophead Coupe)
英語の「drophead」は、折り畳み式の屋根を指す。
《ニュアンス》イギリスで使われる用語で、クラシックで格式高い高級車に使われることが多い。Coupeと称す通り、通常2ドアのスポーティでエレガントなボディスタイルを指すが、高級車では4座のモデルにも適用される。
■タルガ(Targa)
ポルシェが商標登録した名称。イタリア・シチリア島でのレース「タルガ・フローリオ(Targa Florio)」から取られた。
《ニュアンス》フルオープンではなく、着脱可能なルーフパネルを備えたセミオープンの設計。安全性を考慮しつつオープンカーの魅力を楽しめる形態。
■ランドレー(Landaulet / Landau)
馬車の「ランドー(Landau)」から派生し、後席部分だけが開く構造を持つ車を指す。
《ニュアンス》リムジンや高級サルーンの特別仕様に使われることが多く、後席乗員のためのオープン構造が特徴。メルセデス・マイバッハなどの超高級車に採用される。
と言ったところでしょうか。
これを国別にまとめ直してみると、
●イギリス(UK)
- Drophead Coupe(ドロップヘッド・クーペ):高級車の屋根開きモデルに使用され、エレガントな2ドアまたは4座のラグジュアリーカーに適用される。(例:ロールス・ロイス・ファントム・ドロップヘッド・クーペ)
- Roadster(ロードスター):スポーティな2座オープンカーの一般的な呼称。(例:MG-B)
- Convertible(コンバーチブル):全般的なオープンモデルを指す汎用的な名称。(例:ジャガー・Fタイプ・コンバーチブル)
●フランス(France)
- Cabriolet(カブリオレ):フランス語由来のエレガントなオープンカーの呼称で、特に高級車に使われやすい。(例:プジョー・504カブリオレ、シトロエン・DSカブリオレ)
- Roadster(ロードスター):スポーツ志向の2座オープンカーに使われる英語の呼称。(例:ルノー・ウィンド)
●ドイツ(Germany)
- Cabriolet(カブリオレ):ドイツでもよく使われる呼称で、高級車のオープンモデルに適用。(例:メルセデス・ベンツEクラス・カブリオレ、BMW 4シリーズ・カブリオレ)
- Roadster(ロードスター):スポーツカーに用いられる名称。(例:BMW Z3 Roadster)
- Targa(タルガ):セミオープン構造の名称で、ポルシェが商標登録。(例:ポルシェ911タルガ)
●イタリア(Italy)
- Spyder / Spider(スパイダー):ロードスターに近いが、イタリア車特有の官能的な響きを持つ。(例:アルファロメオ・スパイダー、フェラーリ・488スパイダー)
- Barchetta(バルケッタ):シンプルでピュアなドライビング体験に特化したオープンカーを指す。(例:フィアット・バルケッタ)
●アメリカ(USA)
- Convertible(コンバーチブル):アメリカでは最も一般的な呼称で、多くのオープンカーに適用される。(例:フォード・マスタング・コンバーチブル)
- Roadster(ロードスター):クラシックカーやスポーツモデルに使用。(例:ACコブラ、シェルビー・ロードスター)
と言ったところでしょう。
で、日本は?
オープンカー ですね。
屋根が開く車の中のカテゴリーとして、
車の形状や性格の違いを表す言葉は日本語にはないですね。上述の
他国で使われる用語をそのニュアンスとセットで借用することはあっても、日本で広く概念が認知される言葉にはなってはいないでしょう。それかもしくは、
固有名詞として車名として使われるかでしょう。
日本語の「オープンカー」は屋根が開く車全般を指す包括的な表現ですが、逆に、
他の言語では同じ概念を持つ単語は一般的には存在しないようです。
・英語では 「Convertible」 が最も近いですが、技術的には「開閉式ルーフを持つ車」という意味が強く、完全な上位概念ではありません。「Open-top car」 や 「Open vehicle」 という表現があるにはあるそうですが、一般的な用語ではないようです。
・フランス語では 「Cabriolet」 が広い意味を持ちますが、スポーティな車に限定されることが多いようです。「Voiture décapotable(直訳:屋根を取り外せる車)」という一般表現もあるそうですが、日本語の「オープンカー」のように広く定着しているわけではないそうです。
・ドイツでは、「Cabriolet」 が最も広い意味のようですが、「オープンカー」ほど広い概念ではなく、やはりコンバーチブル寄りの意味合いのようです。「Offenes Fahrzeug(直訳:開かれた車両)」も使われることがあるそうですが、やや技術的な表現で日常的に使われてはいないようです。
・イタリア語では 「Spider」 や 「Barchetta」 がありますが、これらはロードスター的な車に限定されます。汎用的な表現として「Auto scoperta(直訳:覆いのない車)」が使われることもありますが、日本語ほど広い定着はしていないそうです。
こうしてみると、日本語の「オープンカー」はその汎用性が際立っていますね。他の言語では特定のカテゴリに寄った単語が多く、屋根が開く車すべてを包括する完全な統一用語はないと言えそうです。
いっそのこと、
日本で生まれた和製英語という名の日本語の「オープンカー」を逆に世界に広めてはどうでしょう‥‥‥無理か‥‥。
唐突になんでこんなブログを書き始めたのかというと、
一昨日、麦の話を書いていて、そういえばオープンカーもだなぁと思ったのです。
日本語の「麦」は、小麦、大麦、ライ麦、燕麦等を包含する概念の単語ですが、英語にはこれに該当する単語がないのです。英語では、
- 小麦:Wheat
- 大麦:Barley
- ライ麦:Rye
- 燕麦/オート麦:Oats
とそれぞれ別に表す表現しかありません。
GrainやCerealという単語が近い意味だと思いますが、それらは麦類だけを表すのではなく、米や粟やトウモロコシ等を含む穀物全体の概念です。
※Grainは加工前の種子である穀物そのもの、Cerealは加工形態も含む。
なんか、面白いなぁと。
さて、私が買ったロードスターは、まだインド洋のマダガスカル沖にいて、なかなかやってきません。
英国文化のロードスターを復活させたマツダは素晴らしいですが、マツダ・ロードスターだけがロードスターではなく、スピットファイアの方が昔からロードスターなのでした。
あっそうそう、タイトル画像は間違い探しになっています。