
先日の355のフロントフード内にあるヒューズの溶損とほぼ同時に起こったエンジンルーム側での発煙に関して、それらの原因がわかった気がします。
《前置き1》 まず、ヒューズとはどんなものか補足しておきます。
30Aのヒューズとは、「30Aで切れる」のではなく、「30Aで定常的に使えるヒューズ」のことです。小型ヒューズの国際規格では、定格電流を流したときに(規定時間以内に)溶断しないことと定められています。
では、どういうときに切れるのかというと、135%での切れるまでの時間、200%での切れるまでの時間、というように定格以上の電流を流したときの時間で定められています。
30Aの平型ヒューズの場合、

というのが規格です。
ここで重要な点は、溶断までの時間に幅があることです。これは、製造ばらつきや温度条件によって、溶断時間が変化するためです。なお、定格を超えても切れてはいけない最低時間があるのは、一時的な突入電流やノイズ的な過電流で過剰に切れてしまっては困るためです。
この幅内であれば規格通りなので、例えば、40.5A(定格135%)の電流がヒューズに流れたとして、ある個体は1秒で切れ、ある個体は9分経っても切れなかったとしても、両方とも正常品なのです。もっと言えば、60A(定格200%)が3秒流れ続けても切れなかったとしても正常です。
《前置き2》 次に、接触抵抗がどんなものか補足しておきます。
例えば、ヒューズ端子やホルダーの接点に、わずか0.1Ωの接触抵抗があったとします。一般的なスイッチでは「導通時0.1Ω以下」と規定されていることが多いので、日常の低電流回路なら問題なしと見過ごされる値です。しかし、ここに30Aもの大電流が流れると話は変わってきます。
・オームの法則: 30A * 0.1Ω = 3V (ここで3Vの電圧降下が発生)
・電力(発熱量): 3V * 30A = 90W
すなわち、その小さな接点に90Wもの熱が発生することになります。これは家庭用の大きめのハンダごてを樹脂のヒューズホルダーに直接押し当てているのと同じ状態です。当然、プラスチックはドロドロに融けてしまいます。
私のケースにおいては、50分は問題なくエアコンが使えていた後に発煙・溶損が起こったので、実際の発熱はせいぜい10Wとか20Wとかだったんじゃないかと思います(90Wなら一瞬で融けそう)。と言うことは、電流がもっと小さかった and/or 接触抵抗がもっと小さかったと推測されます。それでも、継続した熱がジワジワ続けば、50分後にホルダーを融かすには十分すぎるエネルギーでしょう。
《本題》
さて、本題です。
まだ、主治医から電話で聞いただけなのですが、
・オルタネーターやその周囲に異常はなく、
・コンプレッサーのマグネットクラッチから樹脂が融け出したようなものが、アンダーカバーに垂れていた、
そうです。発煙はそれで起こったので間違いないでしょう。コンプレッサー本体は手で回るし、特に異常はなさそうだとのことです。
なお、マグネットクラッチは、エンジンの動力をコンプレッサーに伝えるかどうかを電磁力でON/OFFするパーツです。
そもそも私は、当初ブロアモーターの類のものはそれ単独でヒューズがあるに違いないと思っていたんですが、355では他のHVAC系統(エアコンシステム)と共通の一つの30Aのヒューズを共用する作りのようです。
モーターやマグネットクラッチのように、コイルの電磁力を使うパーツは、経年で絶縁被膜(ワニス)が劣化して層間ショート(レアショート)を起こすかも知れませんし、軸受けが渋くなって負荷が増えるかも知れません。本来ならそう言うパーツは、個別にヒューズを分けるべきだと思うのですが、30年前のこの車はそうはなっていなかったようです。それぞれの経年劣化が重なると、あっという間に許容電流の余裕がなくなってしまいそうです。
で、このことから、どうやら土曜のブログを書いた頃に想定したシナリオである、
【当初想定】 ヒューズ部に何らかの要因(eg.: ブロアモーターの軸受け劣化)で大電流が流れ続け、ヒューズホルダーの接触抵抗での発熱により、徐々にヒューズが溶損し最終的には炭化した。炭化による短絡で、エンジンルーム内のオルタネーター周りの弱いところが二次被害を受け発煙した。
のではなく、
【想定A:可能性・高】 コンプレッサーのマグネットクラッチ(電磁コイル)が劣化によりレアショートを起こし、通常より多くの電流を食う状態になっていた(ただしクラッチ自体は吸着して問題なく動いていた)。
50分の走行中、自らの発熱でさらにレアショートが進み、ついに限界を迎えてクラッチ内部が溶損・発煙した。これにより電流はさらに増加し、ヒューズホルダー側の接触抵抗も相まって発熱がピークに達し、ヒューズもドロドロに溶け、炭化するにまで至った。
【想定B:可能性・低】 ヒューズホルダーの接触不良により、そこだけで電圧が大きくドロップ。末端のマグネットクラッチの電圧が不十分となり、半クラッチのような滑り状態になって摩擦熱で異常発熱、周囲に伝わり樹脂が溶損した。その結果としてさらに過電流になり、ヒューズホルダー側もトドメを刺された。
というようなことなのではないかと思います。たぶん想定Aだと思いますが、どちらにしても、かなり熱的な限界のせめぎ合いが起きていたのではないかと思います。主治医には、もう少し踏み込んで確認してもらうようお願いしています。
《リビルドの盲点と、355の定番ウィークポイント》
今のコンプレッサーは、3年半前にリビルド品に交換したばかりだったので、コンプレッサーは、大丈夫だろうと思っていました。
しかし少し調べてみると、リビルド時にシール類、ベアリング、圧縮部はオーバーホールされますが、マグネットクラッチはテスターで導通を確認する程度で再利用されることが少なくないそうです。‥‥‥なるほど‥‥それならコイルワニスは実は30年ものだったりして、レアショートを起こしても不思議はありませんね。
さらに、355においてこのHVAC系統の単独ヒューズホルダーが融けるのは、定番のトラブルのようです。設計として大電流が集約されやすいだけではなく、独立したこのホルダー自体が、経年で接触不良を起こしやすいもののようです。
例えば、YouTubeでもここのホルダーを強化品へ交換する対策動画が出ていたりします(真因は別途調査するとしています)。
https://youtu.be/sYJEjXcCy5E
有名ショップのT-Westさんのブログでも全く同じようにドロドロに融けている事例が紹介されていたりします。
https://twest.co.jp/legacy-posts/takabari-factory-blog/post-550/
《今後の作戦》
フロントフード内のヒューズホルダーと配線に関しては、引き直して頑丈なものに交換すれば綺麗に直ると思いますが、問題はコンプレッサーのマグネットクラッチ側です。
クラッチ単体での部品供給があるのか、それともコンプレッサー丸ごとリビルド品を再手配する必要があるのか‥‥実は3年半前に見つけた電装屋さんは、もうだいぶ前に廃業されてしまっているので、主治医に探してもらっているところです。
復活には、もう少し時間がかかるかもしれません。また、上述のシナリオはあくまで現時点での推測なので、進展があればまたアップします。
Posted at 2026/07/14 20:44:12 | |
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