あの東日本大震災から早2年が過ぎようとしている。
分譲マンションの我が家はお役所の判定で「大規模半壊」、昨年の初夏から改修工事が入り、年明けにようやく終了した。
さて、サラリーマン世帯の我が家では税制上の後始末が未だ終わってなかった。
所得税の還付申告即ち「確定申告」だ。
詳細は国税庁HP等を参照されたいが、大雑把な話、
災害で住宅など自身が保有する資産に損害を被った場合、その損害額を年間の所得から差し引くことができる(雑損控除)。
その年の収入から、この雑損控除や更に例年の基礎控除や保険料控除などを適用してもなおプラス即ち「所得」があるなら、その額に見合っただけの所得税を納めれば良いことになるし、
もし差し引きがマイナスならその年の所得はゼロだったことになって、納めるべき所得税もゼロになる。
故に既に納めた所得税のうちの払いすぎに当たる分、ないしは全額が戻ってくる。
更に、もしマイナス分があれば翌年分の申告で翌年の所得との差し引きに充てられる(雑損の繰り越し)。同じようにもし翌年もマイナスなら更にその翌年も同様。
この雑損の繰り越しは通常なら最大3年までだが、東日本大震災における損失に関しては特例で最大5年まで適用され、且つ、震災直前の平成22年分まで遡って手続きすることができる。
で、我が家の場合。
所得税の「還付」の申告には期限がない、というのを生半可な知識で知っていたのと、国税庁の電子申告システムe-taxが基本的に平日限定の日中ないし夜の早い時間までしか使えない、という不便さから(半ば言い訳・・)、
いままで手続きをせずに2年近く放置してきた。
一応住基カードの入手とそれ用のUSBカードリーダーは入手済みだったのだが。
ここに来て「いい加減取り返せるカネは取り返してよ」という我が家の財務省の煽りに負け(笑)、また12月から3月の確定申告の時期に合わせe-taxが平日休日問わず24時間稼働していると知り、遅まきながらこの年末からe-taxで手続きを始めた。
まずは、国税庁のHPに用意されているフォームを使って、
自宅の建物・家財の損害額、それと既に貰っている地震保険などで補填された額を引いた実質の損害額を出してみた。
すると、実は自分のここ数年の年収(所得)の3倍近い損失を被っていることが判明。
これをルール通りに上記「雑損」として計上したら、単純計算で丸3年は所得税がゼロ、即ち納付済みの(ないしはこれから納める)3年分の所得税が丸々、申告さえすれば戻ってくることを意味する。
と言うわけで、e-taxで平成22年~24年分の確定申告書を作成して電子申告を行った。
後は3年分の還付金が振り込まれるのを待つだけ、と思っていたのだが・・・それでは終わらず。
数日後に税務署から電話があり、結局、税務署に行く羽目になった。
目的は、22年分の申告の取り下げと、23年分の更正申告、24年分の修正申告のため。
窓口に行かなくて済むようにとせっかく電子申告したのに何故?って感じなのだが、
実は22年以前と23年以降で、「雑損の繰り越し計上」に関するルールが変わっていて、
繰り越しを伴う雑損の計上を過去に遡ってするのなら、申告のスタート即ち雑損の計上を22年分ではなく23年分でしないとダメなんです、とのこと。
つまり、
22年分で震災での損失を雑損として計上→以後23年分、24年分・・に順次繰り越す、
という計算で作った申告書は今から提出してもダメだが、これを一年ずらし、
23年分で震災での損失を雑損として計上→以後24年分、25年分・・に順次繰り越す、
という計算で作れば、今から提出してもOKということ。
先日e-taxで入力していた間には何もシステムから指摘・警告されるでもなかったし、国税庁HPで震災関連の情報を読み漁ってみても、そんなことはどこにも書いてなかったのだが(多分)。
そんな訳で、
今から確定申告で震災絡みの所得税還付手続きをしようとしている人へ、ピンポイントでアドバイス。
自分のように給与所得のみで22年分の確定申告をしてなかった(する必要が無いと思っていた)ひとが、
東日本大震災での被害額を「雑損」として〈今から〉申告する場合、
「雑損の額が平成22年分の所得を上回るのが明らかなら、平成22年分は申告しないで、23年分から申告すべし」。
補足すると、
22年以前には、雑損を翌年以降に繰越せる要件として「その雑損が生じた年の確定申告が『期限内』にされていること」というのがあったが、23年度の税制改正以降、この要件が無くなっている。ちなみに22年分の『期限』は被災地である当地では特例で23年9月30日まで延長されていたが、それもとっくに過去日になっていた。
冒頭のごとく還付申告は無期限なのは事実で、22年分に遡って手続きを行うのは今からでも可能ではあるのだが、しかし22年分の申告からの雑損の繰り越しには22年当時のルールが適用されてしまう、という足かせがある。つまり、今から22年分で申告する雑損は『期限内』に申告されたものでないゆえ、その繰り越しを翌23年分以降の計算に組み入れることはできないのだ。
その点、23年分に計上する雑損なら現行ルール通り、『期限内』に申告したかどうかは不問なのに加え、繰り越しがあれば翌年分以降へ組み入れることができる。
無論、翌年以降に繰り越しのない範囲の雑損だったら、今から22年分で申告しても差し支えない。
ちなみに
国税庁HP↓には、上記『期限内』でなくても良くなったことは書いてあるが、しかしそれが22年分には当てはまらない、とは書いてない。
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/tokurei/shotoku/tsuika1212.htm
→3.雑損失の繰越控除等の要件の改正
まぁ震災があったのが23年3月だから、雑損控除の申告をするなら23年分でというのがそもそもの原則であり、22年分まで遡ってもいいと言うのは例外中の例外なんだから、って考えれば妥当な改正なのだろう。
問題があるとすれば、それを網羅していないe-taxのシステムと、この点についての国税庁の周知不足、ってことになろう。
なお、もし22年分まで遡って雑損の繰り越しを伴う申告をe-taxでしてしまったとしても、自分の例の通り税務署から連絡が来るから、窓口で説明・指示されるとおり手続きしてあるべき形に直せばよい。
窓口へ行く時間はとられるが、金銭的に取り戻せるものが取り戻せなくなってしまうなんてことはないから、その点での心配は無用。
あるべき形に直すために税務署で行った手続きは(自分の場合)、
- 22年分の提出済み申告書を取り下げるための「撤回書」1枚に署名捺印して提出。
- 更に翌23年分(以降)の提出済み申告書を正すための、
23年分「更正申告書」、24年分「修正申告書」に捺印して提出。
で完了。
なお上記手続き書類はそれぞれ、自分が先に電子提出した当初の申告書を元に、その場で税務署の担当者が再計算し作ってくれた。自力で計算して書く必要はなし。
従って自分が税務署ですることはそれほど無くて、
担当者から説明を受ける→担当者が書類を作るあいだ少々待たされる→書類内容に間違いがないことを確認し署名捺印する→各々の控えを貰って帰る、
・・・くらい。
この手続きにより当然のことながら、今回還付されるのは当初目論見の22~24年の3年分から、23~24年の2年分に変わる。更に来年の今頃、25年分の確定申告をすることで、今後の1年分を還付してもらうことになる。
過去の分はともかく、これからの分も一回納めてから後で取り戻す、という手続きが要ることに多少矛盾を感じないでもないが。
ついでに言うと、この還付申告が受理されるとまもなく、申告した年度に納付済みの住民税も再計算され、自動的に過払い分が還付される。また、前年度の年収で決まる現年度の住民税決定額も減額修正され、その後に月々天引きされる住民税も下がることになる。
ともあれ、
せっかくe-taxを使ったにも関わらず、平日昼間にわざわざ税務署に行く小一時間を作る羽目になるのは勿体ないから、注意するに越したことはないだろう。