
手元にある991.1型ポルシェ911。
ポルシェ911シリーズは真っ当じゃないディメンションから奇跡的に真っ当なスポーツカーが生まれた、稀有なケース。
挙句、信頼性は高く、環境性能も悪くない。安全性も高いし、何せ価値も残る。一体この車をスポーツカーセクションで見た時に、評価しない方法はあるのだろうか。
偏愛と偏見に満ちた選択を許されるとすれば、これを選ぶことはないとしても、911はやはり偉大だなぁと思ってしまうんです。
個人的な好みは991.1でして、それは適度なおおきさ、適度なパワー、適度な現代化がボクには丁度良いからです。フル液晶になり、シフトレバーがない、ターボ化されて快適過ぎる、、、こうなるとちょっと寂しい。そこいくと、991.1は丁度良いんです。
だから、持つとするとこれしかないのですが、まぁ良いクルマです。
ただ、好みを反映した評価をすると、足回りは好みじゃないです。
981ボクスターが何故かロングツーリングさえ許せそうな、絶妙の緩さを併せ持ち、完全な対称的挙動を実現した、まるで理想のスポーツカーを実現しているわけですが、同じ時期に開発されている991.1は全然違う。
997と同じくらいカッタイ感じでちょっと重みを足したようなボディに、さらに剛性感が高いリア周りの足はまじで硬い。最小のストローク長で、最低限の快適性を保つため良く動きつつ、とにかくフラットに走りたいがためにダンピングは超強力。
哲学は感じるのですが、好きではない。何時間も何百キロも乗りたくなる感じじゃない。箱根を無心にほどほどのペースで30分走ればOK。
アルピナはむしろ、逆にずっといつまでもどこまでも乗りたくなる。
だとすると、もし911をアルピナ社のブルカルト・ボーフェンジーペンが「料理」をしたらどうなったのだろうか、という妄想です。911にずっと乗りたい味付けって、出来るのかな?と。(これはボクの主観であって、GT3RSオーナーだが、俺はガソリン尽き果てるまで乗っていたいと思うけど!あんたはナンパで体力ないしょぼゾウだな!!!というのは無しよ?)
BMWアルピナは、どのモデルにおいても通常のBMWよりデカいホイールで平べったいタイヤを装着しながらも、快適性も走行性も両立させて安全安心快適を実現している恐ろしいクルマです。
しかも、その味付けは本家BMWとも違うもので、ややストローク感あれども時に俊敏に動き、しかし直進は矢のごとく。昔のメルセデスのいい所と、昔のBMWのいい所を両取りしつつ、足さばきは他のどれにも似ていないフラットながら微振動の少ない、いわゆるアルピナマジックはこれか!と思わせるもの。
それでです、天国のブルカルト爺さん、911はアルピナ味になりますか?
で、ボクの推察、というか考察です。
意外とBMWと911は似ている部分があって、長らく両者ともフロントストラット、リアセミトレで足回りが出来ていて、ポルシェは993で、BMWはE36やE39でリアマルチリンクに変ってます。
大きな違いは911はリアエンジン、50:50の重量配分を持つBMWとは全く違う物理法則を持つボディ。且つ、フラット6は横幅があるエンジンなので、その都合上リアサスのアームを長く取るのが難しい。多分、ここデカい。
991.1のリアサスの動きがまさにアーム長が短いマルチリンクを上手に纏めたらこんな感じになる、そんな感じするんですよね。超剛性高い。姿勢変化させない。ブッシュのコンプライアンス詰まっている。。。
ここまで考えると、多分911をアルピナ味にしようとすると、多分とんでもない挙動のクルマになって破綻してしまうような雰囲気をボクは感じます。
ちなみに、調べた限りはブルカルトさんがポルシェにアプローチを掛けたり、自分のコレクションにしている形跡はありません。ロールスロイスを所有した事があると日本のある番組で言及されていますが、多分これは内装の事であって、SZ系のぐしゅぐしゅな乗り味は参考にしてないと思います(ってか、最近のロールスの素晴らしい乗り味こそ、アルピナ由来じゃないかな。。。)。確かに昔のラヴァリナレザーはあまりに表面加工が無い、昔のロールスの毛穴残っているレザーシートと同じくらい良いものでした。取り扱い要注意ですが。
そう考えると、アルピナの味付けって結局BMWベースでしか実現出来なかったんだろうなぁと思うのです。
アルピナへの悪口を思いつこうと考えた時、真っ先に思うのは「これはしょせんBMWベース、乗用車ベースなんだ。ポルシェは生まれながらのスポーツカー」という言葉が一つあるのですが、両方乗って思うのは、どっちも凄い、という事です。好みはあれども否定することが非常に難しい高レベルのもの、という事なんだと思います。スポーツカーじゃ無理な世界がアルピナにはあって、アルピナには無理な世界が911にはあるのです。
最初から比較したり何とかしようとするなよって話になっちゃうんですが、それを言うと、苦笑。
まぁでも991.1をブルカルトさん的インプレして欲しかったなぁ。ほんとはストローク感豊富で、もっと快適な991.1だとすっごい良いんだけど多分無理なんだろうなぁ。。。
蛇足
アルピナ社の文章に
”ステアリング・ホイールのシフト・ボタンを操作してオートマチック・トランスミッションを手動でシフトできるようにするという創業者ブルカルト・ボーフェンジーペンのアイデアは、まさに流行を生み出すことになりました。「SWITCH-TRONIC」(スウィッチ・トロニック)という名称が特許商標庁に登録されたのは、1992年1月のことでした。そして現在、世界初の量産メーカーであるアルピナによって提供されたものが、オートマチック・トランスミッションに関して事実上の基準となっています。1994年にティプトロニックSを発売したポルシェはあくまでもそれに続いた形です。”
というのがあります。
そこにはポルシェの文字が、、、そう、スウィッチトロニックはポルシェのティプロトに先立ってデビューしているのです!しかも5速!あっちは4速!ちなみにマニュアルベースのシフトロニックだってあるんだぞ!!!
とまでは思っているか知りませんが、これ見るとアルピナはポルシェに対してちょっとなんか思うとこあるのかな?と思ったり。あくまでも、それに、続いた形、笑。
やっぱむしろアルピナは乗用車ベースであることを逆手にとって喜んでいる節さえ感じますね、笑。面白いメーカーだなぁと思いませんか?まぁボクは好きですよ、アルピナが。
Posted at 2025/07/21 15:12:03 | |
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