
アクセスサッポロで開かれたスズキの展示会を見に行ってきました。独断と偏見の品質チェック、早速まいります。
【インド国籍編】
①バレーノ
3ナンバー幅をデザインしろに充てたであろう大きく張り出したウエストラインとサイドウインドーの輪郭、それにAピラーブラックアウト、メッキドアハンドルとの組み合わせはマツダ・ベリーサによく似ていると多くの方が感じたことでしょう。
webの写真で見ると外装、内装ともまずまずの良さを感じていましたが、実車を見るとかなりガッカリ。
一番は塗装です。赤はペンキの上にニスを塗ったようなレベルであり、とても薦められるものではないと感じます。
前後のバンパーも塗装面の凹凸が目立っています。
マツダのソウルレッドのあの深みは並のソリッドカラーの価格ではやれないということがハッキリ分かりました。
ボンネットにはインシュレーターを完備。
隠れている箇所の色はカッパーオレンジでした。塗り分けているのか?
エンジンルームは前方がスッカスカになっていました。本国にラインナップされているディーゼルなら綺麗に埋まるのではないでしょうか。
エキマニはSUS304製?多分手溶接です。異常に分厚く肉が盛られていました。これがインド品質なのか?
と思ったら、日本製のイグニスも殆ど一緒でした。そもそもエキマニ自体、出荷される国で生産されているとは限りませんがね。
リヤハッチのウインドーの下端にはノッチバック風に見せるメッキモールが装備されていて、中央にはバックカメラを埋め込めるようにメクラ蓋が付いています。よく見るとメッキにシミがついていて、指でこすっても全く落ちませんでした。製造段階からこのような品質なのだと思われます。
ホイールキャップはホイールから浮いています。押してみても密着することはありませんでした。こんなので本当にいいのか?
さて、内装です。
運転席のドアを開けてみると、出だしはビックリするほど軽く引けるのに、途中で段がついて今度は重たくなって違和感高し。
後席のドアも開閉の重さは同様ですが、ドアアームレストにまで布が貼ってあり、プルハンドルはメッキだったりと部品点数は並のコンパクトカーより上。
センターコンソールには後席用の12Vソケットが装備されています。同乗者のスマホの充電に重宝するはず。
インパネ左右の吹き出し口はシャッター付き。操作ダイヤルはラバー巻きで中々ポイントは高いです。
一方、空調の操作ノブは重くてカチカチ感なし。
シフトレバーのパネル周りは樹脂のバリが目立ちました。
このように減点も幾つかありますが、内装だけを見れば税抜き131万円の車としてはかなり頑張っていると感じました。
しかし外装はデザインこそ頑張っていますが肝心の「仕上げ」のまずさが目立ち、所有する喜びを削ぐ結果となりそうです。
車に限らず、家電でも日用品でも、日本のメーカーは他社より優れたものを顧客に買ってもらうために隅々まで丁寧に仕上げることにも力を入れてきたことで、私達国民は質の高さを享受してきました。その結果、物を見る眼も鋭くなりました。
バレーノは本国のインドと日本との要求品質の差が表れている車です。
【ハンガリー国籍編】
②エスクード1.6
タイヤの張り出し感を抑えたアウトランダーに似たステーションワゴン風のデザイン。SUVに求められるのは下半身の力強さだと思いますが、エスクードは別の路線を行っているようです。
運転席のドアを開けてみると途中でノッチが付いていて3段階くらいに開度を決められるようになっています。しかしこのノッチ感が何ともメリハリに欠ける曖昧なものでした。
内装です。
肉眼で見ると、インパネやドアトリムの樹脂が異様にテカっているのが目につきます。
アナログ時計は遊び心から採用したのでしょうが、おもちゃみたいで目を背けたくなりました。吹き出し口を3連にした方が良かったかも。
運転席側のバニティミラーには照明も付いている他、予防安全装備は比較的充実しています。ステアリングもテレスコ付で不満はありません。
シートは座面部をスエード、その周囲を本革としていますが、見栄えは所有する歓びに欠けるものです。
エスクード1.6は実用性、安全性はほどほどに充実した車ではありますが、感性品質の面では及第点には未達と感じました。
③SX4 S-CROSS
カラーのパールホワイトは何となく灰色味がかかったようなくすんだ色に感じました。
ヘッドランプウォッシャーを装備。黙ってて付いてくると嬉しいですが泥を落とす時にしか用がないので日本では不要かと。
ドアの開閉感はエスクードと同様でメリハリ感なし。前も後も。
内装はエスクードより1クラス上となるよう作られていました。
インパネの助手席正面部分はかなり硬いながらもソフトパッド貼り。
ルーフコンソール付き。ルームミラーは自動防眩式。
オートエアコンは左右独立コントロール。標準装備は結構充実しています。
後席はセンターアームレスト付き。居住性はホイールベースが100mm短いエスクードと同等で不満のないもの。
背もたれは角度を2段階に調整出来るようになっていましたが、角度差は2~3°程度の僅かなもので、全くの無効だと感じました。背もたれはリヤフェンダーでロックされるので、ガチャン!とうるさいほどの音を立ててロックされます。
ラゲッジボードは二段に調整可能。ボード下のフロアマットは華奢でペラペラで残念でしたが、重量物はラゲッジボード上に置けばいいという考えだと解釈しました。
特別な飛び道具を持っている訳ではないので、価格が割安だとしても「何故この車を選ぶのか」という強い理由に欠ける車と感じました。
【日本国籍編】
④ソリオ
5ナンバーフルサイズのミニバンに堂々と肩を並べられる押し出しの強いフロントマスク。
ホワイトパールの仕上げはSX4より上等に感じました。
内装も丁寧に仕上げてあって不満は何処にもありません。ステアリングも新デザインとなってエスクードとSX4より質感に富んでいます。
ガラスエリアの広さは最高です。何しろルームミラーにリヤウインドーの縁が映らないのです。
後席はテーブルにセンターアームレストにロールサンシェードと至れり尽くせり。居住性は新幹線クラスと言えます(走行中の乗り心地は不明ですが)。最前方にスライドさせてもまだ十分な広さが残っていました。
電動スライドドアの静かで滑らかな開閉動作と適正な音量の電子音。アルファードに並んだ印象です。
パッセンジャーカーとして軽規格ではこれ以上望めない広さと十分な質感。値打ちは十分あるのではないでしょうか。
⑤イグニス
タイヤがボディーより張り出すようにデザインされているのでエスクード1.6よりもSUVらしいルックスになっています。
エンジンはバレーノと同型でもエンジンルームはギッチギチ。これが限界でしょう。
後席のドアは一切布がないシンプルなものですが、バリもなく仕上げは文句なし。
後席も十分広く、軽自動車で培った高密度パッケージが活かされています。
軽ワゴンと同じ考え方で、後席を5:5分割スライド式にすることで全長を3700mmに抑えながらラゲッジフロア長を最大で595mmに出来るというマジック。
スズキはどの車もラゲッジの床板を軽くしつつも硬く作ってあるのが素晴らしいです。バレーノもガッチリしていました。
⑥スイフト
現行型は2010年8月の発表で日本のBセグメントカーの中では最古参になりました。
樹脂パーツはコストの制約の中でもチープに見せないようテクスチャーが工夫されています。
後席は膝の余裕は大してないものの、前席下の空間にゆとりがあって爪先の余裕はたっぷりでした。
今年フルモデルチェンジとの予想がwebで出回っています。
セグメントの中で世界中で闘うためには後席の居住性向上とラゲッジの容量拡大は不可避であり、全幅は1695mmを死守するとしても全長は100mm程度伸びるはず。バレーノに遠慮して3950mmくらいでしょうか。
このように海外生まれのスズキ車が矢継ぎ早に日本に投入されている現状を見ると、実際に売れるかどうかよりも、小型車の品揃えを強化することばかり優先しているように感じられます。
新世代マツダ車のレベルが著しく向上した要素は燃費や出力といった数字や安全性だけではなく、
デザイン、細かな造り込み、運転している時のワクワク感などの感性品質の強化もかなり大きいと考えています。
スズキも海外の小型車ではこの部分も一層強化することが求められるでしょう。