
よく
カーボンを取り除く為に、
回転数を上げてやると良いと言いますね。
あれって
真偽はどうなんでしょうね~?
アナタはどう思います??
ま、イメージとしては
「”高回転=高温”なので、カーボンを燃やせる」といったところでしょうか。
じゃあ逆に、回転数を上げないとカーボンが溜まる?
上記のと同じようにとれば
「”低回転=低温”で燃えにくくカーボンが生成される」でしょうか。
ま、これもよく言われますよね。
低回転走行はカーボン溜まると。
これで納得できますか??
さて、じゃあ化学の話といきましょうか。
※出来るだけ細かい数字・計算は使いません。ざっくり説明でいきます。
最初に、燃焼とはなにか?
HC(ガソリン) + O2(酸素) = CO2(二酸化炭素) + H2O(水)
という化学反応です。(完全燃焼の場合)
では、
カーボン堆積の原因から考えていきましょう。
①短期走行(暖気不十分による燃焼温度不足)
温度が低く、ガソリンの燃焼が上手く行きません。
酸素と炭素が上手く結び付かず、CO2になれません。そのため単体のCとなってしまう。これがカーボンです。
これは十分に暖気をすることでカーボンの堆積を防止できますね。
※ちなみに、短期走行の繰り返しはメンテナンスノートにシビアコンディションとして記載されています。
②低速走行・低回転走行
これはエンジンの制御の話が出てきます。
空燃比ってやつです。
エンジンって回転数が低いときほどパワーがでないですね。
そして、停止→発進の時ほどエネルギーが必要ですね。
回転数が低いのに走ろうとすると、パワーを出さないといけない。
そうするとECUが燃料を多く噴くように制御をします。
そうすると、O2の量に対してCHの量が多くなるので、燃焼しきれなくなりカーボンとなる。
停止→発進の時も同様の事がおきます。
(停止しているということは回転数が低いという事、そして止まっているものを動かすには大きな力が必要ですからね)
熱量が少なく、温度が低めなのも一要因。
STOP&GOが多く、低回転ばかり使って走っている方は注意。
③O2センサーの異常
O2センサーが汚れや不調などで正常な値を計測できなくなると空燃比が狂います。
ECUはO2センサーを見て燃料噴射量を変えるのでO2センサーがウソを言うと空燃比が濃くなったり、薄くなったりします。
結果として燃焼が上手く行かず、カーボンの析出となります。
まぁ、大きい所はこんなもんですかね。
補足すると、空燃比は
理論空燃比14.7(ガソリン1に対して空気が14.7)の時が一番カーボンが出ません。
低回転で走るとパワーを出すため空燃比を濃くする(14.7→13とかね)からカーボンとなる。
※目標空燃比等は車両ごとに違います(あくまで例です)
※理論空燃比とは、ガソリンを完全燃焼させるのに必要なO2との比率です。
と言う事で、低回転で走っているとカーボンが溜まるというのは概ね正解ですね。
さ、じゃあ
高回転にすればカーボンは果たして除去できるのか?
とりあえず回転数は置いておいて、
アクセル開度ごとの燃料量を考えてみましょうか
0%・・・燃料噴射ゼロ(或いはアイドリング分)
10%・・・燃料ちょっとだけ
50%・・・燃料それなりに多め
100%・・・燃料多め
ざっくり言うとこうなりますね。
・それぞれの空燃比はどうでしょう?
0%だと、燃やしていないので空燃比はゼロ。(或いはアイドリングの空燃比)
10%だと、ちょっと燃えてます。空燃比は14.7を目指す車が多いでしょうか。
50%だと、結構加速しますね。空燃比は加速の為に濃くなるので13~12くらいかな。
100%だと、フル加速です。とにかくパワーが欲しい。空燃比は11~10くらいかな。
・それぞれの温度はどうでしょう?
0%だと、温度は上がりませんね。(或いはアイドリング分の温度上昇)
10%だと、多少温度は上がっていきますね。
50%だと、温度はグイグイ上がりますね。
100%だと、温度は急上昇ですね。
さ、どれが一番カーボンが取れると思いますか?
って聞くと100%って答えが来そうですね。だって一番温度高いですもんね。
ここで終わるとつまらないですよね?
当然続きがあります。
それは
回転数ごとの目標空燃比です。
アクセル開度ではなく回転数による空燃比です。
※ECUは基本的には回転数で空燃比を制御します
1000rpm・・・空燃比14.7
2000rpm・・・空燃比14.7
4000rpm・・・空燃比13.0
6000rpm・・・空燃比12.0
8000rpm・・・空燃比11.0
ま、ざっくりテキト~にですがこんなイメージです。
※エンジンの負荷量などでも変わりますので一概には言えないですがね
例)巡航中=負荷小=空燃比は薄め。加速したい=負荷大=空燃比は濃いめ
先ほどアクセル開度で空燃比を書いたのはこの負荷量のことを指しています
(アクセル開度が大きい=加速したい為負荷が大きい)
回転数が高いというだけで同じアクセル開度でも目標空燃比は濃くなります。
なんでかって?
空燃比が薄いまま高回転回すとエンジンが焼けます。
(温度が上がりすぎて異常燃焼をおこします)
で、なんで空燃比が濃くなるのかですが、燃料を多めにすることで燃料で冷やすんです。
※燃焼室へ燃料が入ると、燃料が熱されますね。燃料が熱を貰うということは、熱を奪うという事です。
※また、膨張過程で燃料が液体→気体へと状態変化します。この際に周囲から熱を奪います。
また、空燃比が濃いのでノッキングを防げます。
極端に傾向を言うと↓
・リーンバーン(燃料薄め)=ノッキングしやすい
・リッチバーン(燃料濃いめ)=プラグがかぶりやすい
という傾向になります。
高回転・高温下であればリッチバーンのプラグかぶりは起こりませんね。
でもリーンバーンだとエンジンが壊れます。
どっちを選ぶかは一目瞭然ですね。
だから空燃比は濃いめに制御します。
さて、高回転というだけで
燃料は濃くなります。温度は上がりますけどね。
これってカーボンにとってどうでしょうねぇ?
一番最初に言いましたが、理論空燃比が一番カーボンが出ません。さらに言うとリーンバーンもカーボンがでません。
・完全燃焼 : HC(ガソリン) + O2(酸素) = CO2(二酸化炭素) + H2O(水)
・空気多め : HC(ガソリン) + O2(酸素) = CO2(二酸化炭素) + H2O(水) + O2
となります。空気が多めでも排ガス中のO2が増えるだけで、カーボンの析出には繋がりにくいです。
※しかし、空気が多いと燃焼室の温度が上がりにくい(空気で冷やされてしまう)のでカーボン析出に繋がるという反面も。
では逆に・・・
・空気少なめ : HC(ガソリン) + O2(酸素) = CO2(二酸化炭素) + H2O(水) + C
Cに対してO2が足りず、カーボンとして析出します。
温度が高いとはいえカーボンが出来やすい環境(空燃比)となりますね。
回転数を上げても、カーボンを焼くどころか、
カーボンを出してしまいます。
これでは本末転倒どころか逆効果。意味無いですね(笑)
インプレッサのようなターボ車に乗っている方は実感あると思いますが、回したってマフラーはススまみれですよね(笑)
ターボ車は高回転高負荷下では空燃比が9~8まで濃くなります。
ターボの所為で温度がガンガン上がるので、燃料を多くして冷却する&単純にパワーの為に燃料を多くするという悪循環になっています(爆)
つまり高回転まで回して温度を上げてもそれ以上にカーボンが出てしまうので結局は意味無いんですよね・・・。
と、一言で
高回転は意味なし。というのも芸が無い?ので、補足です。
ガソリン(特にハイオク)には洗浄剤と言うものが含まれています。
これは、カーボン等を落とす効果があるのです。
燃料を多く噴くということは洗浄剤を多く吹き付けるということです。
直噴エンジンで無い限りは、これによって吸気側のバルブのカーボンをある程度落とせます。
要はドバドバ洗剤かけるイメージですね。
リーンバーンだと燃料が少ないのであまりカーボンは落とせません。
これが高回転でカーボンを落とせる要因と言えますね。
※ちなみに直噴エンジンは吸気バルブに燃料が当たらないのでカーボンを落とせません。直噴エンジンの気筒内図を見ると分かります。
さ、もろくも
”高回転=カーボンを落とせる”というのは崩れてしまいましたね。
※落とすのが吸気バルブだけの話ならあってますけどね(笑)
じゃぁ、どうしたらカーボンを落とせるんでしょうね?
低回転走行もダメ、
高回転走行もダメ・・・。
じゃぁ、
その中間は?
そう。中間を使えばいいんですよ。
低すぎず、高すぎず。
温度が十分にあり、かつ高すぎない温度。
あとは負荷を出来るだけ掛けないことです。負荷を掛けるとリッチバーンへ向かいますので。
とにかく
完全燃焼を心がけるんです。
温度を十分に掛けてやり、それ以上のカーボンが出来ない環境にするのが一番いいです。
それである程度カーボンは燃えます。これで取れないカーボンは、
燃焼の調整では取れないとあきらめるべき。
GDBFインプレッサSTI(純正ECU)であれば、3000rpm前後で負荷を掛けないように走るのが一番いいバランスだと思います。
6速3000rpmだと110km/hなので、高速道路を巡航するのがベストバランス。
5速3000rpmでもいけます(88km/h)
他の車の制御がどうなっているのか知りませんが、概ねこのあたりの回転数ではないでしょうかね。
※排気量などいろいろと違いがあるので一概には言えないのです
これで200~300km(2~3時間)くらい走れば十分カーボンは落ちるかと思います。
あと、カーボンを落とす手として考えられるものは
薬品がありますね。
いくつかその手の商品があったと思います。(CRCエンジンコンディショナーとかそのへん)
でも、私はあまり推奨はしないでおきます・・・。
私がイヤと思う理由は、
燃焼室へカーボン等の汚れを押し込んでしまうことです。
その手の商品ってスロットルとかから入れるじゃないですか・・・。まぁ、そのラインの洗浄も兼ねているのでそこから入れるんですけどね。
で、その汚れは何処へ行くの?
燃焼室へ押し込まれますよね。
一般的な直列エンジンで考えてみると吸排気バルブの位置って気筒の上部ですよね。
さ、押し込んだ汚れが上手く
”全て”燃えてくれればいいですね。
ガスであれば上入れ、上抜きでも流れますが、燃えカスは果たして上手く流れるのか?
燃焼室内へ入った薬液は排気バルブを通る時は気体になっているんですよ。
(膨張で気化し燃焼で気化する)
汚れを含んだ薬液が燃焼室で燃えると、燃え残りは何処に溜まるんです?
って言ったら燃焼室に溜まるじゃないですか。
※不純物を含んだ液を燃焼させると固体として析出してしまう
※もちろん幾らかは排ガスに乗って出て行きますがね
そう考えると、
燃焼室手前までは洗浄できるが、
燃焼室自体にとってはデメリットなのでは?
しかも燃焼室を出た不純物を含んだガスはマフラーから出ていくまでに、排ガスラインや触媒などに汚れを付けていく可能性が。
※燃焼した薬液に汚れを落とす能力は無く、マフラーへ向かうにつれガス温度も下がるので析出環境になる。
スロットル~燃焼室手前までを洗浄し、その分排ガスラインや触媒を汚すってのはどうなのよ?
私はメリットを感じませんけどね。むしろイヤだ。
結局、燃焼室のカーボンを落とすには
温度と空燃比のバランスが良い所でエンジンを回してやって燃やすしかないです。
そして燃焼室出口~マフラーまでの間は基本落とす手段は無いと考える。
※もしやるなら配管丸ごと外して洗浄するしかありません。
※ガスでカーボンは落とせませんからね(燃焼室下流はガスしか来ませんので)
ま、
よしんぼ燃焼室のカーボンを落とすことが出来たとして、果たしてそれはどうなの?というのもある。
経年劣化・磨耗でできた隙間をカーボンが埋めてくれている場合があるんです。
そのカーボンを薬品で落としてしまうと詰め物がなくなり、圧縮抜けやガタの原因となる可能性があります。
せっかくカーボンを落としたのにパワーダウンしたら意味無いじゃないですか。
ガタが出るのはもっと最悪。磨耗を加速させてしまいます。
なので、燃焼室内も見ないで使うようなもんじゃないと思います。
・・・と私は薬品でのカーボン洗浄には否定的な考えです。
まぁ、私の意見が間違っていて、商品の謳い文句通りに綺麗にはなるのかも知れませんよ?
ただ、それでエンジンの調子良くなるか悪くなるかは分かりません。
エンジン内部の状況も把握せずに使うと痛い目みるかもしれないのでオススメはしませんという事で。
ちなみに、そもそもスロットルに
ススが付いてる車は注意です。
燃焼が上手く行ってなかったり、ピストンリングの磨耗などが考えられます。
ブローバイガスのラインが吸気に戻っていますよね。スロットルにススが来るってことはこのラインから来ている可能性が高いです。
ブローバイガスは燃焼室からクランク室側へ漏れこんだガスですので、これが多いということはピストンリングの磨耗が考えられる。
また、ブローバイの量は大した事無いのにススが多い場合は燃調が狂っているかもしれません。(空燃比の濃いガスが来ている)
あとはスロットルにブローバイオイルが多く付いてる車は走行距離とご相談。
走行距離が多い車は溜まり溜まった汚れかもしれませんが、走行距離の少ない車の場合は問題アリかもしれません。
※短期走行の多い車はブローバイも多く出ます。
(エンジンが温まっていないと、クリアランスが大きく吹き抜けの要因となる)
さて、余計な話もしましたが、回転数とカーボンの関係ですがざっくりまとめると。
低回転→カーボン生成
中回転→良い燃焼
高回転→カーボン生成
という事です。
車種やECU、走り方次第で状況は変わるので一概には言えませんけどね。
だれが広めたのか分かりませんが、単純な温度の話ではないのですよ~。