
最近の車ってレギュラー仕様にも関わらず、
圧縮比が物凄く高いですね。
プリウスは13.0。
デミオなんて14.0ですよ。
(12年9月現在)
ちなみにハイオク仕様のスポーツカーの圧縮比ってどうでしょう?
①生産終了してますが、エンジン屋ホンダのシビックTYPE-R(K20A)で11.7。
②最新の国産NAスポーツ86/BRZ(FA20)で12.5。
・・・と、なんとびっくりプリウスやデミオは
スポーツカーよりも高圧縮比だというのです。
NAのスポーツカーといえば高い圧縮比(パワーの追求)。そしてその高圧縮に耐える為のハイオク仕様(異常燃焼対策)
と相場が決まっていましたのにね。
レギュラー仕様で
「パワーなんてどうでも良いよ、燃費だよ。」という車がスポーツカー以上の高圧縮比だという謎(笑)
「その圧縮比でノッキングしないの?いやはや、そこまで技術が進んだのかぁ・・・。」な~んて関心しますか?
同じ年代の車である86/BRZはハイオク仕様スポーツカー(しかも直噴)なのに圧縮比は
12.5とプリウスよりも低い。
プリウスで
13.0が可能ならパワーのために86/BRZは
16.0くらいにしたらいいんじゃないの?ってなりますよね。
※ちなみに高圧縮比のほうがパワーが出るという基本原理は今も昔も変わってませんよ。
○さらっとスペック比較
※以降プリウスと86/BRZを比較に話を進めます。(エコ/スポーツでありレギュラー/ハイオク仕様で年代も同じ為)
・プリウス
排気量 1797cc
燃料 レギュラー
圧縮比 13.0
最高出力 99PS/5200rpm
最大トルク 14.5kgf・m/4000rpm
※エンジンの性能です(モーターは省略)
・86/BRZ
排気量 1998cc
燃料 ハイオク
圧縮比 12.5
最高出力 200PS/7000rpm
最大トルク 20.9kgf・m/6400~6600rpm
こうして比べてみると不思議ですよね。
レギュラー仕様のプリウスの方が圧縮比が高く、パワー低
ハイオク仕様の86/BRZの方が圧縮比は低く、パワー大
リッター当たりの馬力は
86/BRZが100PS、
プリウスが55PS。
リッター当たりのトルクは
86/BRZが10.45kgf・m、
プリウスが8.07kgf・m。という性能。
レギュラー仕様のプリウスで圧縮比が13.0に出来ても、ハイオク仕様の86/BRZでは出来ない理由があるのか?。
圧縮比を昔よりも上げる事は確かにできるようになりました。
しかし
レギュラーで13.0とかはオカシイのです。
そんな技術があったらそれこそ86/BRZは16.0とかになってますよ(笑)
さて前置きがとても長くなりました。まぁいつもの事です(爆)
ではなぜプリウスのカタログには
”レギュラーにも関わらず13.0という高圧縮比が記載されているのか?”という疑問を究明していきましょう。
ここで登場するのが
”ミラーサイクル”です。
大雑把に言うと今のエンジンには3つの種類のサイクルがあります。
①オットーサイクル
②ミラーサイクル(≒アトキンソンサイクル)
③バンケルサイクル
それぞれに簡単に注釈をいれますと・・・
オットーサイクル・・・圧縮比と膨張比が同じ、最も基本的なレシプロエンジンのサイクル。
ミラーサイクル(≒アトキンソンサイクル)・・・圧縮比よりも膨張比を大きくとり、熱効率を高めたもの。レシプロエンジン用。
バンケルサイクル・・・ロータリーエンジン用。おにぎりがぐるぐる廻る夢のエンジンのためのもの。
※今回バンケルサイクルは関係ないので忘れて頂いて結構です。(というか私もなかなか名前が思い出せなかったというのはナイショ)
ミラーサイクルとアトキンソンサイクルを”≒”と書いた理由は後ほど解説する事にして話を進めます。(以降ミラーサイクル表記で説明します)
さて、注釈に書きましたが、
”圧縮比”と
”膨張比”という言葉を出しました。
今回の話の肝はこれです。
まずはミラーサイクルについてもう少し詳しく説明しましょうか。
エンジンというのは
圧縮比を高くしていくと熱効率が向上します(=出力・大)しかし上げすぎるとノッキング等の問題が発生してきます。
スポーツカーではそれを回避するためにハイオク仕様とするわけです。
乗用車では
ハイオクにしてまで熱効率を上げる必要はないので、それなりのところで圧縮比を上げるのはやめます。
これがスポーツカーの方が圧縮比が高い理由ですね。
それでは
オットーサイクルと
ミラーサイクルそれぞれの圧縮と膨張を簡略図にして見ていきましょう。
基本的にオットーサイクルでは圧縮比と膨張比が同じです。

ピストンが上にいく(圧縮)ときと下にいく(膨張)ときの比率が同じ
圧縮比が10.0であれば、
膨張比も10.0となる。
これに対しミラーサイクルは、
圧縮比(10.0)に対し
膨張比(13.0)の方が大きい。
というものです。
これがなぜ熱効率の向上に繋がるのか。というのがパッと分かる人は結構すごい。
---エンジンの4サイクル---
①吸入
②圧縮
③燃焼・膨張
④排気
------------------------
エンジンは、空気と燃料を圧縮しますね。
次に爆発(膨張)します。
この時、圧縮に対して膨張したときの方が、圧力・温度共に高くなります。(爆発してるものね)
例えば100cm3圧縮しても、130cm3に膨張するんです
しかしオットーサイクルでは圧縮比=膨張比(上下ストローク量が同じ)の為、100cm3までしか膨張させられません。
じゃあ残りの30cm3は?
捨てます!
エネルギーをまだ持っているのにそれを捨ててしまうんです。
この
無駄をなんとかしようと言うのがミラーサイクルです。
100cm3圧縮して130cm3に膨張するのなら、
圧縮比よりも膨張比を大きくしてやればいい。
こうすれば膨張(爆発)のエネルギーを最大限利用することが出来るわけです。
コレだけ見たらスポーツカーにも使えばいいじゃん。って思いますよね。
ところがぎっちょん!?
圧縮比<膨張比とするためにどういう制御をしているのか。ってのが問題です。
ミラーサイクルは
吸気バルブを”遅閉じ”しています。
圧縮が始まっているのに吸気バルブを開けっ放しにしているんです。
「え?それじゃ圧縮されずに吸気バルブ側に吹き戻っていくじゃん」
と、思いますね?
その通りです(爆)
シリンダー内に吸入した空気を圧縮しないで吹き戻します。
これにより、膨張比よりも圧縮比が低くなるんです。
言い方のマジックなんですけどね、
”圧縮比よりも膨張比を大きくとる”のではなく
”圧縮比を膨張比よりも小さくする”という事をするんです。

これが何を意味するのか・・・?
シリンダー容量に対して空気量が減ります。
例えばシリンダー行程が130mmあっても30mm分吸気が開けっ放しであれば、それはシリンダー行程が100mmのエンジンと同じことです。
空気量が減れば当然パワーは出なくなります。
カタログ上の排気量は吸気バルブの遅閉じを考慮しないで全行程分で計算してますので、
結果として、
同排気量のオットーサイクルに比べて
ミラーサイクルはパワーで劣る。という事になります。
※膨張時のムダを回収する為にミラーサイクルとするよりも、多少捨ててでも排気量が多い方がパワーがあります。
ちなみにミラーサイクルによりカタログ値でどれくらいパワーが落ちるのか・・・?
※正確な比較とはいきませんが
プリウス 1797cc 99PS/14.5kgf・m
アリオン 1797cc 144PS/17.9kgf・m
ヴィッツ 1329cc 95PS/12.3kgf・m
同排気量のアリオンに対して
45PS/3.4kgf・m低く、排気量が468cc少ないヴィッツとは
4PS/2.2kgf・mの差です。
プリウスにはモーターもあるので実走行でヴィッツ並み・・・と言う事は無いですが、エンジン単体でみれば、1797ccもあるのに1329ccのヴィッツ並みのパワー(馬力)しかありません。
トルクはヴィッツとアリオンを足して2で割ったくらいですので、大体1500cc相当のトルクでしょうか。
ミラーサイクルの
圧縮比<膨張比というのが、パワーに大きく関係すると言うのが見て取れますね。(その分燃費には効きますが)
さ、すっかりミラーサイクルの説明になってましたが、本題は
”レギュラーで高圧縮比”の謎です。
まぁ、此処まで読んだらもうお分かりかもしれませんけど・・・。
ずばり、ミラーサイクルエンジンのカタログに載っている圧縮比は膨張比の事です。
プリウスの
圧縮比13.0というのは
膨張比が13.0と言う事です。
実効圧縮比は13.0以下です。
具体的にいくつ?とはいえませんが、10前後くらいなのではないでしょうか。
そうして見ればレギュラーでもノッキング等の問題は大丈夫なのでしょうねと察しがつきますね。
これまでは
圧縮比=膨張比が当たり前であり、圧縮比=シリンダーの容量・行程だけで算出できる。
という前提でカタログに記載していたのですが、今や
吸気バルブの遅閉じなんて事が当たり前のようになりつつある。
見た目の圧縮比と実際の圧縮比が大きく違うので、カタログ値がレギュラーなのに13.0などという、スポーツカーもビックリな数値が記載されてしまっている。
しかし、走行シーンによって吸気バルブの閉じるタイミングが違うのでしょうから、実効圧縮比をカタログに載せるというのも難しい。
なのでミラーサイクルエンジンの車のカタログ圧縮比はあまり見ないほうがいいかもですね。(何の目安にもならない)
と、凄くなが~くなりましたが、レギュラー仕様車がスポーツカーよりも高圧縮比という謎の究明でした。
殆どミラーサイクルの原理のお話でしたけどね(爆)
あ、そうだ、
ミラーサイクル≒アトキンソンサイクルの説明をしていない。
まぁ、そう難しい事ではありません。
ミラーサイクルが吸気バルブの遅閉じで圧縮比<膨張比を実現しているのに対し、
アトキンソンサイクルは、機械的に上死点と下死点の位置を変える事で圧縮比<膨張比を実現しているというものです。(ピストンのストローク量そのものを変えている)
つまり
やっていることは一緒で、その方法が違うというだけです。
アトキンソンサイクルは構造が複雑になるので、今現在使われているのはミラーサイクルの方です。
しかし、時折アトキンソンサイクルのエンジンだ。な~んて目にする事もあります。
ミラーサイクルはアトキンソンサイクルよりも後発のやり方で、分類的にはアトキンソンサイクルなのです。
(アトキンソンサイクルと同じ事を別の手段で可能にしたものがミラーサイクル)
だからアトキンソンサイクルといっても
中身はミラーサイクルである場合が殆どです。
よし、大分ごちゃごちゃしてますが、大体の所は書いた筈。
ま、大体こんな理屈なんだな~というのが分かればよし。
エンジン設計するわけじゃないですからね(笑)
ともあれ、カタログに載せる数値は意味のあるものを載せて頂きたいものだ。
最近は燃費とか特にね(爆)
10・15モードからJC08モードに計測方法が変わりましたが未だに嘘つきっぷりは健在。
wikiにもこう書かれる始末↓www
「10・15モード燃費が現実からかけ離れているとの批判を受け、より実際に近づけるために採用となったJC08モード燃費であるが、目的を達したとは言いがたい。例えばトヨタ・プリウスの場合、10・15モード燃費が38.0km/Lであり、JC08モード燃費は32.6km/Lであるのに対し、現実の燃費は22km/L程度である。一般消費者からしたら、未だに現実からかけ離れた数字であるのは変わらない。」
ねぇトヨタさん?(トヨタに限らないですが)
カタログ燃費なんてどうでもいいから現実を見て車を作ったらどうなの?
32.6km/Lと22.0km/Lって67%も差があるんですけど・・・(38と22じゃなんと58%)。
こんなのじゃ載せてる意味ないって(笑)
おっと話が脱線・・・というか変な方向へ行ってる(爆)
よし終わり!!