
タイトルは最近買った雑誌のタイトル、
モーターファン・イラストレーテッドVol.89
最善の妥協ーV型エンジンー
本体価格1,600円+税/2014年2月15日発売
です。
この雑誌のシリーズは、クルマに関する色々な側面をテクノロジー主体の構成で取りまとめてあり、非常に共感出来る編集内容です。
少し前の発行ですが、タイトルに引かれて最近、購入しました。
(長くなるので、興味のない方は読み飛ばしてください。)
ページを開くと冒頭でV型エンジンについての林義正氏のインタビューが始まります。
日産自動車のエンジンエンジニアだった方で現在は大学で教授をされています。
読んですぐに飛び込んでくる
「直列6気筒こそ正義である」という文言。
そして
「V型6気筒は全長の短縮・剛性の確保・重量の軽減以外のメリットはない」
歯切れよく、
バッサリです。
このV6に対する3つのメリットはある意味同じで、「コンパクト化」以外理由がないことになります。
文中でも「V型の中でもV6はいちいち問題が多いんですよ」と書かれています。
なぜか?
それはV6の一番大きな問題はバンク角(シリンダー同士のV字角度)。
4ストローク型レシプロエンジンは二回転で一回の点火なので点火に要する角度は720度。
それがV6は一回り6回点火するので
720/6=120度。
等間隔点火で設計するならバンク角120度ですが、レースエンジン以外実用化されていません。
なぜか?
理由は簡単。
この角度だとエンジンの搭載面積が広くなり「コンパクト」という
V型のメリットが無くなる為です。
市販車の多くは製造コスト削減のためにV型8気筒を切り落とした設計の場合も多い。
なのでバンク角90度となり、その場合は点火が不等間隔になるので振動対策が必須。
クランクシャフトのカムをオフセットしたり、カウンターバランサーという名のウエイトを付けるなどさまざまな振動対策してしています。
ではなぜ、そこまでしてV型エンジンが存在するのか。
「多気筒なくしてクルマの未来はない」
「最善の妥協、V型エンジンの存在こそ、意味がある」
「もちろん燃費は大事ですよ。でもJC08モードの燃費だって、あんなものは絵に描いた餅で、数字ばかり追いかけているのは本末転倒もいいところ。本当に燃費を気にする人は小さいエンジンを選べばいいし、クルマに乗る回数を減らせばいい」
「今はV8の2リッター・エンジンを作りたくてしょうがないんですよ」
「私はこれからもマルチシリンダーに夢を託しますよ」
いやぁ~、一気に読んでしまいました。
そうそう、いま乗っている
V8エンジンについてもいろいろ記述されています。
V8エンジンの場合、等間隔点火で設計するならバンク角は、
720/8=90度
です。市販されているエンジンはほとんどすべて、この角度で設計されています。
その為、振動対策は不要だと思われますが、片バンク(4気筒分)に着目するそうでもない。
市販化されているエンジンにはクランクシャフトの形式としてクロスプレーンとシングルプレーンがあります。
それぞれと特徴として
クロスプレーン(クランクピンが90度で交差)
片側のバンクで見ると等間隔とならないためシャフトにカウンターウエイトが必要になり、また排気が干渉され、V8独特のドロドロ音が発生する。
しかし、左右のバンクでクランクピンを共通化した上でエンジン全体では燃焼間隔が等間隔なので、振動に有利。
フラットプレーン(180度のクランクピン)
直列4気筒を単純に2倍した形式。なので排気干渉は無いが二次振動でバランスしない。
そのためにエンジン本体の振動対策が必須。
しかし、クランクにカウンターウェイトを必要としないため慣性重量が軽く、また排気干渉も無い為よりすみやかな加速と高回転が可能で澄んだエキゾーストサウンドがする。
現状はレースエンジンとフェラーリのみ。
残念ながら BMW M3(E90系)の4.0LのV8NA(S65)もクロスプレーンです。
上記の事柄は今までなんとなくわかった気がしていましたが…もやもやしていました。
この本のイラストを交えた図解のおかげでスッキリクリアになりました。
最後に、未だに国内でV8エンジンを生産・販売している唯一のメーカー、トヨタのV8エンジンが特集されています。
その記事の最後でトヨタのエンジン設計部に所属する楠元氏が過給のダウンサイジングに対して述べたコメントをご紹介します。
「性能はターボで出ますが、回転の滑らかさはNAにはかないません。
フィーリング、静粛性、車両への搭載性や商品性を考えると、やはり90度V8はひとつの最適解だと思います。ダウンサイジングの流れの中にあっても、V8エンジンがなくなることはないでしょう」
いやぁ~、M156のNAエンジン、ますます愛着が湧いてきました!
------------------------------------------------------
この本に興味を持った方に目次を書いておきますね。
(画像だとわかり難いので)
インタビュー林義正 V型発動機唯物史観
CHAPTER 1 V型エンジンのセオリー
V2 45°V/並列2気筒
V4 狭角V4/V型3気筒
V6 変則Vバンク/ピンオフセット/振動対策/クランクウェブ/狭角V
V8 振動対策/フラットプレーン/クロスプレーン/点火順序
V10 ランボルギーニV10/
V12 BMW S63のエキゾースト・マニフォールド/排気干渉
Column 1 異形のV——水平対向と180°V型
CHAPTER 2 History of V Engine
V型エンジンの多気筒化と進化の変遷
日産V6エンジンの足跡
Column 2 V6エンジンは「振動」がつらい
CHAPTER 3 いま、日本のV型はどうなっているか
CASE 01 トヨタ・UR型V8
CASE 02 日産・VR38DETT V6
CASE 03 ホンダ・J型V6
CASE 04 ヤマハ・P626E V4
Column 3 F1が選んだV6エンジンの系譜
エピローグ V型エンジンはどこへ行くのか
ブログ一覧 |
クルマ | 日記
Posted at
2014/10/07 17:32:45