音調津の道々から国道に戻ったとき、北の広尾側へ戻るか、それとも南のえりも側へ進んでしまうか、一瞬だけ悩みました。しかし、南へ行ってしまうと、同じ国道をそのまま戻るのでなければ、天馬街道を越えないと十勝に戻れず、それは2時間以上かかってしまうため、素直に広尾へ戻る方向を選びました。
仕事の移動でもなければ、来た同じ道をそのまま帰るのはイヤな性分で、なるべくひと筆書き的に往路と違う道を走るのが好きなのです。
広尾市街地の手前にあるのが「フンベの滝」。国道沿いの崖から滝が落ちていて、厳冬期はその滝が凍りつく「氷瀑」になることから、景勝地としても有名で、国道脇に駐車スペースも設けられています。
ただ、時期的にはもう遅く、だいぶ気温も緩んで来た3月なので、氷瀑の迫力はだいぶ失われ、ほとんどが流れる滝になっていたのは、ちょっと残念。
ちなみに「フンベ」とはアイヌ語で「鯨」を意味し、昔、この近辺の浜に鯨が打ち上げられたことから、その場所での事象を地名にするアイヌの習慣で、この辺りが「フンベ」という地名になったらしい。
そう言えば、先ほど山へ向った道の入り口に、気になる地名標識を見かけたので、もういちど戻ってみます。
「山フンベ」?
直訳すると「山鯨」ですが、山に鯨がいるわけはありませんね。ゆるやかな山を、かたちが鯨に似ているからと「フンベ山」と名付けた例は十勝にもあるようですが、ここは裏山もなだらかではないので、海岸沿いの「フンベ」から山側に入った地域に、和人が「山」を付けたのでしょう。
果たして行ってみるとちいさな集落があり、ここが「山フンベ」のようです。そしてそこを抜けた先に、地元の漁協のものらしきサケ・マスの孵化施設がありました。さらに進んだところで、道はダートになり、明らかに造材用の林道入口になったので、ここで終了。引き返しました。
おそらくは、林業のために開かれた集落なのではないでしょうか。古くから住まわれているらしい数件の家の軒先には、いずれも薪が積み上げられており、かつては製材所などもあったのかも知れません。
倉庫のカーテン代わりにしている日除けが、大漁旗なのが、海辺の町らしいところです。
廃屋も点在していて、現在は寂しい感じですが、かつての北海道はどこも林業が盛んだったので、集落はもっと大きかったのでしょう。
明治開拓期の北海道は、鉄路の根室線こそ比較的早くに敷設されたものの、内陸へ向かう幹線道路がほぼないという、現在では考えられない状況でした。そのため内陸地はほとんど空白地帯で、鉄道の駅はあるのに、そこから集落まで、馬すら通れないけもの道しかないため物資が運べず「駅から集落まで、馬が通れる道路を造って欲しい」と陳情がなされた、という逸話があったほどです。
広尾町などの海辺は人が住みやすく、そこから街がつくられていった歴史からすると、この集落もかなり古くからあるものかも知れません。
こういうちいさな発見は、ネットの情報やガイドブックには載らないので、現地を訪れて初めて分かるもの。そんなことが面白くて、こういう脇道探索が好きなのです。
ここから北側にも集落があり、セメント工場のほかに、水産加工会社が何社かありました。これは、地域を流れる西広尾川と東広尾川に挟まれた合流地点で、きれいな水が豊富なのと、広尾港も近いことから、水産加工場がここに集約しているのでしょう。こういう生活感のある風景から、街が形作られた歴史が見えるようで、面白い。
加工場を抜けて、西広尾川に掛かる橋を渡ると、町営牧場があるらしいので行ってみましたが、当然この時期はまだ雪に覆われていて、雪原が広がっているだけでした。ただここ、日高山脈も近く、雪がない時期であれば、景色の良さそうなところなので、季節のいい時にもういちど来てもいいかも。
牧場の先は行き止まりなのでいったん戻って、道々987号、豊似広尾線を走ってみます。実は事前に、地図でちょっとした峠が確認できたので、面白そうだと来てみたのです。
が。
道々入り口から2㎞ほどはきれいに除雪されていたので、これは行けるな、と思っていたら、突然ゲートが現れて終了。なんと5月末まで、冬期通行止めなのでした。
今回ここをいちばんの楽しみにしていただけに、ちょっとガッカリでしたが、まあこれも気まぐれ旅のひとつ。あらかじめネットで道路情報を確認しておけば良いのですが、あえて確認せずに現地に来てみるのも面白い…のは、言い訳で、確認を怠っていただけです。はい。(笑
ここからも、来た国道をそのまま帰るのはつまらないので、広尾の郊外から国道の東を海沿いに伸びる、道々1037号を走ります。長い長い直線道路は、道東らしい風景。そこから北へ牧草地を走る農道を抜けて大樹町、そして忠類へ向かいました。
忠類では道の駅へ立ち寄ります。トイレ休憩と、ちょいとお買い物。
かわいかったのでシマエナガのクッキーをチョイス。忠類とはぜんぜん関係ないけど。(笑
自分用ではなく、取引先が女性の多い部署で、いつもお菓子をごちそうになるので、お返しなのです。
ここからも、国道は通らずあえて農道をひた走り。横を通っているのは、帯広広尾自動車道。高規格道路も、速いのはもちろん、高いので見晴らしも良く、悪くはないのですが、せっかくなので、のんびり畑の中を走りたい。
しかし、帰りも事件が起きてしまいました。
とある場所で、写真を撮るためにエスクを停めた時のこと。
農道の路肩なので、ハザードランプを点けていましたが、ふと左後ろが点灯していないのに気づきました。これ、実は昨年もなんどか起きていて、毎回この左後ろだけ不点灯になることから、どうも入れているLEDバルブのボディが、この1個だけ微妙に細く、ガタによる振動で端子の接触不良が起きるようなのです。
しかも、ノーマルバルブならば切れるとハイフラ化するのでわかりやすいのですが、LEDでは点滅速度が変わらないので、不点灯が分かりづらいのも困りもの。ふだんはガレージに収納する際に、壁の反射で点灯しているか常に確認する癖もついていて、先ほどクルマを降りた直後までは点灯していたのに。(泣
仕方ないので、道端で店開きして車載工具を取り出し、テールランプをバラすことになってしまいました。
ほんのわずかな接触不良のようで、しかも今日は意地悪なことに、ソケットに差し込んだ状態では点灯していても、テールランプに戻すとまた不点灯になったりで、2~3回組み直す羽目に。
しかも、どうも車両側のソケット端子も緩めな気配だったので、そちらの端子を起こしている最中、うっかりマイナスドライバーでショートさせて、ヒューズを飛ばしてしまう始末。いや、ハザードを点灯させたまま作業するほうが悪いんですが。(笑
ヒューズボックスは、運転席足元の狭いところにあるので、身体をねじ込んでヒューズの場所を見つけ、外したまでは良いけれど、ボックスには、予備のヒューズがありません。
確か助手席シートトレーに、予備のヒューズ類を入れてあったはず、と探して、ケースに入ったヒューズを見つけた…ら、入っていたのは標準ブレードヒューズです。エスクのそれは低背ヒューズなので合いません。ヒューズボックスからは、いろいろ電装品の電源を取っているので、その作業時に、使われているのが低背ヒューズなのはわかっていたはずなのに、なにやってるんでしょう。(←単なるお馬鹿
このままだとハザードだけではなく、ウインカーも点かないので、仕方なく使わないETCの電源線から同じ15Aの低背ヒューズを取って、ハザード/ウインカーを復旧させました。
応急修理を終えて走り出すと、もう日が傾きはじめています。ひとケタ前半と言え、マイナス気温での作業だったので、少し身体が冷え、ヒーターの温度を上げました。が…あれ?温風が出ない。そうです。ETCの電源は、実はヒーターファンのヒューズから取っているので、これを抜くと、ファンが作動しなくなるのです。ならばとシートヒーターのスイッチを入れたら、こちらも同系統なので作動せず。(泣
…いったいなんの嫌がらせなんでしょう。
……はっ!あのタヌキの呪いか!?(笑
まあ、止まっているのはファンだけで、ヒーターコントローラーは作動しているので、走れば走行風でわずかにヒーターが効いたのと、帯広市内が近く、30分ほどで最寄りのホームセンターに行けたことが幸い。遠隔地のなにもないところじゃなくて良かった。
これは来週末には、再度テールランプをバラして根本的対策をしないといけません。
そんなわけで、ドタバタ事件はあったけれども、美味いラーメンは食べられたし、そこそこ好奇心は満たされたし、なにより無事に帰投できたので、良しとしましょう。