試乗車はセダンの1.8ディーゼル。最上級グレードのXD L パッケージ。
フル電動のレザーシートで、「このグレードだけランバーサポートが付いてます。電動です。」だそうだ。
タイヤは215/45-18のBSトランザ。カラーはネイビー。天候は雨。
室内にはハッチバックのレッドがあったので、そちらとの比較もあり。書きなぐりインプレ。
先に結論。
・値段なり。このクラスの価格帯に抑えるために、志は高いが原価は低そう。
・シートと室内遮音性はとてもいい。
・走る、曲がる、止まる、乗り心地は、正直普通。
・質感は思ったより高くない。
・総合的にいうと、特にトキメキを与えてくれず、極めて普通のクルマだった。
■エクステリア
●プレスはいいが塗装が残念。
プレスラインをなくして面の印影で魅せるのは、狙い通りいい感じ。展示車のファーストバックのレッドも、Cピラーまわりの形状がいい。
いいのだけどもね、塗装が良くない!塗料の粒状感というか、ゆず肌というか。鏡面仕上げではないので、映りこんだ蛍光灯がボケていて、シャープで深い印影が出ない。光沢感が希薄なので、シャドウが入るボディ下のほうは、艶消し塗装かと思ったくらいにマットに見える。昔のZ32のような、下半分梨地塗装みたいな仕上げなのかと、思わず触って確認したぐらい。非常に残念。塗り直したくなるくらい。
”下半分のシャドウの入り具合が、ちょっとマットなの。艶消しか、ワックス塗って拭いてないで乾いちゃったのかと思ったくらい。”
”蛍光灯の映り込みが、ボケボケ。さっきスバルでレヴォーグを見てきたんだけど、そっちはもっとシャープに映りこんでいた。マツダ3は全塗装して、塗装面を平滑にしなおしたくなる。”
"蛍光灯の映り込みが、ボンネットフードとバンパーで繋がっていない。もちろんこのクラスだと普通のことで、レクサスなどはしっかり管理されている。高品質感を出すために頑張ってるような気がしていたが、クラスなりのそれ、としか言いようがない。興ざめ。”
プレスも、ドアとフロントフェンダーのパーティングのところなんか、妙にふくらんでて、ハイライトが出来てしまってる。トヨタだったらNGかもしれない。
この画像はボンネットフードとフロントフェンダー。パーティングのところで、プレスのエッジの返りがあり、そこにハイライトが出てしまう。フードからフェンダーへの映り込みのラインを、パーティングのところが光って分断してしまう。
競合の同クラスのクルマよりも、塗装とプレスの仕上げが甘いと思う。原価が高くて苦しいマツダの、コストダウン努力がこういうところに出てしまってる感じ。
●空力
フロントタイヤが純正と思えないくらいのツライチ。ホイールアーチ開口も狭く、フロントタイヤまわりの空力と見え方に、設計のこだわりが漲ってる感じ。
こんな攻めてる国産車、ないと思う。
しかもセダンだけ、バンパー開口部からのエアをホイールハウスのダクトから出して、空気がホイール表面を流れるように誘導している。
ハッチバックと比べてややバンパーサイドの面が短いので、空力的に不利だったんだろう。その改善だと思う。
■インテリア
●インターフェース
相変わらず、マツダのコックピット。すべての機能に関わるインターフェースが、ほどよく適切な位置にあり、その操作力、操作方法も違和感がない。つまり、慣れというものを必要としない。
面白かったのはヘッドアップディスプレイの調整機能。輝度、表示位置(高さ)を変えられるのは良いとして、左右の回転角度も変えられる。営業マンは「これはあんまり必要がないと思うんですけどー。」と言っていたが、そんなことはない。クルマは人の人数次第で、左右に傾く。傾いた車体で、路面に平行じゃない文字投影をすると、平衡感覚的におかしく見える。常にディスプレイの表示が路面と平行に見えるように調整できたほうがいいと思う。だからこの機能には設計側も必要性を感じて採用していると思う。
●オーディオ
オーディオの音質が自慢とのことだったが、試聴してみると・・・。まあ良いと思う。十分合格点。このクラスのこのクルマのコストで、よくやったと思う。雰囲気は悪くないです。ステージング、定位感、まあまあ。どうしてもS/N、解像度としてはアレだけど、不満ないと思います。
●シート
このクルマで大注目はシート。虫谷さんによる骨盤を立てるコンセプトのもの。
私はマンマシンインターフェースとして、調整機構がたくさんあるものは望ましくないと思ってます。たくさんのパラメータを渡すことで、ユーザーにはベストが何かわからなくしてると思うから。だから、優れた製品ほど調整機構は少ないと思ってます。
このモデルのシートはフル電動。ランバーサポートまで電動。やりすぎ。ステアリングも含めて、走行中も何度も位置を調整しました。しかし、ぴったりくるととてもいいw レザーなので布よりも滑りやすいはず。だから私はレザーが嫌いなのですが、このクルマはレザーも気にならない。確かに骨盤、腰が安定してます。安定しているというか、ふらつく感じがしない。自由度はあるのに、バケットのようにホールドされてるわけじゃないのに、ふらつかない。これはいいかも。
●気になった点2つ。
1つはルームミラーの位置が不自然に低い。
これはブレーキアシストのカメラを避けるため。結果、ダッシュボード上面とミラーの下までの距離が狭く、前方視界が狭いように感じる。もっとも、SVXがメチャクチャ視界が良すぎるので、そう思っただけかもしれないけど。
もう1つは、アテンザ、CX-5と同様にサラサラのステアリングホイールの表皮。
手に擦れるとシャラシャラうるさい。止めて欲しい。
■走行
●走りは普通。
アイドリングでディーゼル音が結構聞こえる。今どきのディーゼル、アテンザやCX-5は全然気にならないレベルで消音されている印象だったが、このクルマはそれなりに聞こえてくる。加速中もそれなりに。
エンジンのトルク、加速、ブレーキのタッチ、ステアの入り具合、なにもかも過不足ない。もっと欲しいかっていうと、そうでもない。まあ、これでいっか、って感じ。そこにはドラマもエンターテインメントもない。道具としての「普通」しかない。つまり、面白みはない。
リアサスにトーションビームアクスルを採用したのも話題になったが、走ってみると何か気になることも気づくこともなく。普通だった。
タイヤの銘柄のせいだろうか、ギャップを乗り越えたときのコツコツ感、ドタバタした感じは気になった。もう少し柔らかくていいと思う。
●静か。
防音性、静寂性能を上げたとのことだったが、雨なのでいろいろよくわかった。
まず、左右ドアからの音の侵入が、極端に少ない。横を走るクルマの走行音は、ほとんど入ってこない。これはクラスを超えてる。新感覚体験。
雨によるフロントウインドウを叩く音も、よく抑えられている。私のクルマでは気になる音が、もっと鈍い音で聞こえる。
だけど惜しいのがルーフ。バタバタと雨が叩く音がするのが残念。ルーフをデッドニングしたら、相当いいと思う。
ドアのウエザーストリップも形状が凝っていて、音の侵入を防ぐ工夫が感じられた。
ボディ自体もよくダンピングされており、振動の回り込みもほとんど感じられない。NVHはほんとによく頑張ってる。
営業マンいわく、室内の換気ダクトの密閉性、気密性をアクティブに制御しているとのこと。何言ってんの?と聞き流したけど、なにか電気じかけが入ってるのかな。
ディーゼル音と、ルーフを経由して来る音。それだけが逆に目立つ感じだった。
■その他
ワイパーアームにウォッシャーノズルがあった。いいな、これ。試さなかったけど、雨だったんだから使ってみればよかった。残念。
■■結論■■
ということで、冒頭の結論にいたる。
走ってみると普通すぎて、「あ、はい。」って感じしかない。嫌なところはないが、クセもなく、いいところもなく、普通としかいいようがない。
初めて乗って、今までずっと乗っていたように馴染むのが特徴であるが、それが良く出来すぎていて、普通という印象になってしまう。
エンジンもハンドリングも、ほんとに普通。これが基準、原点と思って、他のクルマと比較したらいいと思う。それぐらい何も残さない、普通のクルマだった。
歩くように、何も意識せずに運転できることを目指したのだから、クセがなく普通というのは開発側の狙い通りだと思う。そういう意味でも非常に良くできた秀作。だけど、何か運転していての楽しさ、わくわくが足りないと思う。そこにマツダのクルマ作りの弱点というか、危機感を感じる。
特徴を持たせるために、強馬力のエンジンとか、めっちゃくちゃクイックなハンドリングのモデルだとか、イメージリーダー的なトップモデルが必要だと思う。
あざとさは必要だ。
<参考記事>
Mazda3国内仕様試乗で判明した「ちょっと待った!」 (1/5)
20190707追記:
速度標識認識して、メーターに表示する仕組みが入っていた。どっかのサプライヤーのカメラ式ブレーキサポートについてくる、あれ。
それが一般道を走行中に、誤認識して120kmって表示されていた。幹線道路じゃない、細い道で。
あれ、必要なのかな。標識見てないけどメーターに表示されたら見る、って必要?誤認識もするし、認識しないときもあるのに。やるならば、ナビ側に速度データを持たせるべきだと思うんだけど。
ディーラーにSVXで乗り付けたら「いらっしゃいませー。増車ですか?」って。別の営業がやってきて「2台目ですか?」って。買い替えとは思わないのなw