2020年06月09日
【紹介記事】学歴詐称疑惑が再燃している都知事の件 ≪前編≫
かなり長いインタビュー記事でしたので、
前編と後編に分けて紹介します。
とりあえず、めちゃめちゃ面白いので
お時間の許す方は前編と後編を読んで
下さいませ。
では転載(前編)します。
「学歴詐称疑惑」再燃の小池百合子…その「虚飾の物語」を検証する
『女帝 小池百合子』著者が真相を語った
「近藤大介 北京のランダムウォーカー」と題したこの連載は、普段は毎週火曜に中国を中心とした東アジア情勢に関するレポートを載せ、最後に推薦新刊図書の書評を加えている。だが、今回は特別編として、元政治記者の近藤大介氏と、現在ベストセラーになっている
『女帝 小池百合子』(文藝春秋刊)の著者で、ノンフィクション作家の石井妙子氏との120分にわたる緊急対談をお届けする。
まさに「虚飾の政治家」
近藤: 新著『女帝 小池百合子』(以下、本書)のご出版、おめでとうございます。まだ発売から一週間なのに、早くも大変な話題を呼んでいますね。7万部を超える勢いで、アマゾンの本の総合ランキングでも、10位前後で推移しています。
前作『原節子の真実』(新潮社刊、2016年)を読んで、これは平成日本における映画人評伝の最高傑作だと思いましたが、今回の新著は、平成・令和日本の政治家評伝の最高傑作ですね。いやあ、腰を抜かすような本が世に出たものです。
石井: お誉めの言葉、ありがとうございます。
近藤: 私はかつて政治記者をしていたこともあって、これまでずいぶん多くの政治モノの本を読んできました。しかし444ページもある大著なのに、徹夜して一気呵成に読破した本など、何年ぶりでしょう。
石井: そう言えば、4年前に私が『原節子の真実』を書き上げた時、近藤さんに、「私は次に何を書いたらいいでしょうね?」と尋ねましたよね。そうしたら、「原節子のような『過去の人』ではなく、いまこの世に生きているもっと『生々しい人』。しかも誰でも名前は知っているけど、本当のことはよく知らないような人物」と仰いました。
近藤: そうです、そうです。でも、これほど生々しい67歳の女性政治家のことを描くとは予想外でした(笑)。そして何より、嬉しかった。
というのは、われわれほぼ同世代のノンフィクションの物書きではないですか。若い頃はバブル経済の絶頂期で、才能あふれる同世代の書き手が、綺羅星のごとくいたものです。ところが、主戦場だった雑誌媒体が減ったこともあって、書き手の方も一人減り、二人減り……。先日、タクシーに乗ったら、偶然にも運転手が、かつての書き手仲間でした。別れ際、「近藤はこれからも書き続けてくれよ」と言われ、心中複雑でした。
そんな中、私が「同世代の宝」と思っているのが石井さんで、その石井さんが今回、日本のノンフィクション史に残る傑作をものした。同世代の書き手として、純粋に嬉しいんです。
石井: ありがとうございます。たしかに媒体は減るし、同世代の書き手が減っていくのも寂しいことです。私も今度の本を出すまでに、4年近くかかってしまいました。
近藤: 4年もの歳月をかけて、小池百合子という「女帝」の半生に取り組んだきっかけは、何だったのですか?
石井: いまからちょうど4年前、舛添要一都知事が金銭スキャンダルで辞任しましたよね。その後行われた都知事選に、小池氏が衆議院議員を辞職して急遽、出馬し、東京都民は熱狂した。あの様子をテレビで観ていて、どこか違和感を覚え、胸がゾワゾワしてきたんです。
彼女はいつも作り笑いを浮かべているのに、目はちっとも笑っていない。目は心の窓と言うけれど、この政治家の心はどうなっているんだろう? 彼女には、人知れない「心の闇」があり、さらにその奥にも「真実の闇」が広がっているのではないか。そんなノンフィクション作家としてのモヤモヤ感からでした。でも、直接のきっかけは編集者からの執筆依頼です。それがなかったら、書いたかどうか。
近藤: なるほど。読者がまだ『女帝 小池百合子』を読んでいないという前提で言うと、この本には現在、東京都知事として新型コロナウイルス問題で日々、テレビに出ずっぱりの小池百合子という政治家の、少女時代から現在に至る赤裸々な姿が記されています。しかも感情的な誹謗中傷ではなく、一つひとつ事実を検証し、積み上げていくという帰納的手法によって、「小池百合子」という人間の本質を浮き彫りにしています。
小池百合子氏は、生まれてこの方、一体いくつのウソをつき続けてきたのだろうと、石井さんの本を読みながら数えていったものの、50くらいまで来てやめました。「嘘八百」という言葉があるけれど、本当にこの本には800くらいのエピソードが詰め込まれているかもしれません。まさに「虚飾の政治家」です。
石井: 本書を書くにあたって、ゆうに100人以上の関係者から話を聞きました。いずれも彼女の67年の人生の折々で、交わりのあった人たちです。例えば、「カイロ大学を首席で卒業した」と小池氏が公表している留学時代(1971年~1976年)のことを知ろうと、遠くエジプトにも出かけて行って、その時代の彼女を知る10人近い人々に会いました。加えて、過去の小池氏の著作や発言、雑誌や新聞記事など、大量の資料を読み込みました。
するとこの政治家は、ウソにウソを塗り重ねたことで現在があるということが、次第にはっきりとわかってきたんです。ある時は自己顕示欲を満たすため、ある時は自己防衛のためにウソをつく。その後、それを隠そうと土を掘って埋めるけれど、隠そうとするあまり、土をかぶせすぎてしまうので、かえって、土が盛り上がり、そこにあるウソが透けて見える。そんなイメージでした。
近藤: 中国には「ウソも100回つけば真実になる」という言葉がありますが、小池氏の場合、ウソの上塗りで自己破綻していくということですね。でもあることに関して、最初にウソが小池氏の口から飛び出した時は、マスコミも喜んで報道したりするわけで、われわれも自戒しないといけません。
その意味で本書は、人間・小池百合子のウソをウソと見抜き、正攻法で著した初の著作と言えます。
「カイロ大卒」は完全な公職選挙法違反
石井: 書きながら、度々、自分に問いました。ここまで書いていいのか、と。公人ではありますが、どこまで掘り下げるかは悩みました。ノンフィクション作家というのは常に「二つの罪」を背負っていると思っています。それは、書くことの罪と、書かぬことの罪です。私は今回、後者の罪をより重く考え、本書を執筆しました。
近藤: 書くことの罪と、書かぬことの罪――まさに言葉を紡いでいく者の宿命ですね。
本書では、小池氏の5年間のカイロ留学時代のうち2年間を一つ屋根の下で暮らしたという早川玲子さん(仮名)がもっとも重要な存在として登場します。この方の証言は衝撃的ですね。
「(小池氏は)カイロ大学は1976年の進級試験に合格できず、従って卒業はしていません」
はっきりとこう述べている。これが事実なら、小池氏は完全な公職選挙法違反です
石井: そうです。早川さんは、小池氏より10歳ほど年上で、小池氏がカイロ留学時代にアパートを一緒に借り、同居していた人物です。つまり、カイロ時代の小池氏を誰よりも熟知しています。
早川さんはその後もカイロに残りますが、小池氏が日本へ帰国後、カイロ時代のことをウソで塗り固めていくことに耐えられなくなってきた。それで真実はまったく違うのだということを、日本の大手新聞社に書き送ります。
ところが新聞社からは返事がない。それで、「小池氏が有名政治家になったから新聞社も書けないのだろう」と思い、落胆する。そんな時、たまたま私が『文藝春秋』に書いた関連記事が目に留まり、編集部に私宛の手紙を送ってきてくれたのです。2018年2月のことでした。
近藤: 早川さんにとっては、石井さんが最後の頼みの綱だと思ったんでしょうね。
石井: そのようです。これでダメなら、真実を受けとめてくれる人が世の中にいないということであって、自分が今まで持ち続けてきた小池氏に関する資料や日記などを、全部燃やしてしまおうと思っていたと聞きました。
実は私も彼女を探していたんです。というのも、カイロ時代に小池氏と交流があった人々を日本で訪ね歩くと、「当時のことは同居していた女性が一番知っているはず」と、何人にも言われたからです。
でも誰も、名前や経歴を覚えていない。まったく手掛かりがつかめなくて、それで、私も探し出すことを諦めていた。そこへ、当人からの手紙が届いたわけですから。私は思わず天を仰ぎました。
近藤: まさに運命が、石井さんと早川さんを結びつけたんですね。
石井: そう思います。早川さんも、「神の意思と思った」と仰っていました。会ってみると、大変知的で、強い意志を持った方でした。
近藤: 今回、『女帝 小池百合子』が出版されたことについては、どんな感想を述べていますか?
石井: 「これでもう思い残すことはありません。私はいつ死んでもいいです。書いて下さって本当に有難うございました」と仰って下さった。著者として、胸がいっぱいになりました。
学歴詐称疑惑を徹底検証
近藤: 石井さんがカイロに飛び、早川氏の案内で、かつて二人が同居していたアパートを訪ねていくシーンが印象的ですね。結局、早川さんが所持していた小池氏に関する一切合切を石井さんが譲り受け、その中には日記や写真などの他に、カイロのヒルトンホテルのナイフとフォークまであったとか。
石井: そうです。小池氏は父・勇二郎氏がカイロに来ると、宿泊先のヒルトンホテルへ行き、コーヒーカップ、皿、ナイフ、フォーク、シュガーポット、テーブルクロス、ハンガー……と、ホテルの備品をごっそり持ってかえって来てしまう。そのあたりは本書を読んでいただければ。
近藤: カイロ留学時代の小池氏の驚天動地のエピソードも満載です。周囲を振り回すだけ振り回して、一番オイシイところを自分が奪い取り、あとはポイ捨て。何だか政治家・小池百合子の雛形のような留学生活ではないですか。
アラビア語を助けてもらうために、言葉の流暢な男性と短期間の「語学結婚」をしたり、エジプト人の庶民が乗るバスを「ノミがうつる」と言って毛嫌いしたり……。小池氏の処女作『振り袖、ピラミッドを登る』(講談社刊、1982年)も読みましたが、日本人が中東情勢に疎いことをこれ幸いに、自己アピールの旺盛なこと。
石井: その小池氏の留学見聞記には、留学中に一番お世話になった早川さんのことは、1行も出てきません。そのことを早川さんに訊ねたら、明日は日本に帰国するというカイロ留学の最後の晩に、小池氏が早川さんに言い放った言葉を教えてくれました。
「私、日本に帰ったら本を書くつもり。でも、そこに早川さんのことは書かない。だって、バレちゃうからね」
近藤: 講談社から出ているこの小池氏のデビュー作の著者略歴には、「1972年10月、カイロ大学・文学部社会学科に入学。1976年10月、日本人として二人目、女性では初めて、しかも首席で卒業」と明記してあります。
さらに本の扉には、卒業証書と思しき写真が使われ、「正式の卒業証書が手に入ったのは、何と二年後であった。一枚一枚が手書きだからである」と「あとがき」で釈明しています。
石井: この「卒業証書」は、中東の民族衣装に身を包んだ小池氏の全身写真とコラージュされていて、教授たちのサインがあるはずの下部が読み取れないように加工されています。
近藤: これは講談社から出ている本で、お恥ずかしい限りです……。
石井: 小池氏はその後2回、「卒業証書」を公表しています。一回目は『週刊ポスト』(1993年4月9日号)ですが、名刺の半分にも満たない大きさで、字の判別がつかない。
もう一回はフジテレビ系のワイドショー『とくダネ!』(2016年6月30日)で、この時もぼんやりとしたコピーが短時間写されただけです。しかも、1982年の著書のものと、フジテレビで写されたものは、ロゴマークが異なっていて、明らかに「別物」なのです。
近藤: それは驚きですね。私は若い頃に中国に留学したことがあるんですが、当時の中国では、闇商売の「偽物商」が跋扈していました。日本人駐在員たちも、彼らを使って「カラ出張」をしばしばやっていたものです。
例えば北京にいる駐在員が、上海に出張に行ったことにして、飛行機チケットから上海のホテルの宿泊レシート、会食の領収書など、一切を「偽物商」が手配してくれる。料金は、額面金額の合計の1割というのが相場でした。
中国の大学の偽の卒業証書も、彼らに頼めばたちどころに作ってくれます。ある「偽物商」は私に、「大学の卒業証書と車の運転免許証の偽造が2大収入源だ」と嘯いていたほどです。
石井: エジプトも同じような状況だと思います。現地に実際に足を運び、また当時の状況を知る人たちにも聞きましたが、相当な「コネと賄賂の社会」です。
加えて、日本は2016年度までに、計1568億円もの無償資金協力を含むODA(政府開発援助)をエジプトに拠出しています。カイロ大学は軍事独裁政権の管理下にありますし、日本政界に身を置く小池氏からすれば、カイロ大学の「口封じ」も不可能ではないでしょう。
とにかく、学歴詐称疑惑については、本書で徹底検証しましたので、読者にご判断いただきたく思います。
(後編につづく)
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Posted at
2020/06/09 15:14:07
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