鈴鹿サーキット本コースへの挑戦日、朝から天気は曇り空。
鈴鹿の街に入る頃には雨が落ちてきました。
午後の枠に向かって心は急上昇と急降下を繰り返します。
「例えスライドしても、これまで対処は学んできたじゃないか。最悪トラクションコントロールをカットしなければ安全だし」
「ヘアピンのアールは、いつもの22mオーバルと一緒だと先生も仰っていた。平常心で行こう!大丈夫」
自分に言い聞かせながら鈴鹿サーキットに到着しました。
雨に煙る国際コース。
3月に続いて雨の鈴鹿です。その頃は怖いだけで3速ホールド、手も足も出ませんでした。今回はネットで申し込んだ同乗レッスン付きのレッスン、10ヶ月頑張ってきたので、少しは何とかなるでしょう。
パドックはポルシェだらけ。しかし「見慣れた光景なんだから、舞い上がらない。大丈夫。」なんて落ち着いていました。後に大間違いと知るのですが・・・。
久々に着るレーシングスーツが恥ずかしいやら嬉しいやら。こっそりトイレで自撮りしたりして。初老のオッサンなのに女子高生みたい。
ゼッケンをつけて準備します。ここまではワクワクでした。ここまでは。
先ず先生のドライブで助手席に座り、ラインどりを教えていただきます。
雨の鈴鹿サーキット、降りが強くなってきました。
もー別次元です。「6割で行きますからね~」とスタートした私のクルマですが、ストレートから210キロで1コーナー、2コーナーで減速したらひらひらとS字~逆バンク「ここはアクセル開度で抜けましょう」と躱していきます。デグナー迄の上りブラインドコーナーで170キロ、スライドコントロールしながらヘアピン迄踏み込み、まっちゃんコーナーをインベタで180キロ、スプーンからバックストレート210キロで130R。
その間終始スライド調整をこなし「今日は雨なのでこんな感じで6割くらいでしょうか」と余裕でお話しされる先生・・・。
全く無理です。雨の中150キロオーバーのスライド修正なんて出来る気がしません。「もっとゆっくりお願いします」とお話しすると、次はコーナーのクリッピングポイントを説明くださりながらスピードを落とされますが、それでも高速コーナーのスピードに完全にビビリ倒している私。
ショートコース、例えば富士のショートで下りのストレートで140キロ出ても軽くブレーキングして1コーナー100~120キロそこそこで侵入するのと、もう全くスピードの次元が違いすぎる!!!しかもかなりの雨・・・。
それでも一人でコースインしてみます。怖くてかなり手前のブレーキング、その横をGT3RSやGT4、エクシージがガンガン抜いていきます。オーバルの時は速いクルマなんだな、くらいの車体が完全に牙をむいた猛獣です。
「速いクルマが抜いてくれますから、レコードラインを走ってください」と言われましても、恐る恐るクリッピングに付く私のインを猛獣が駆け抜けていきます。
それでも先ずはS字のクリッピングポイントを確実に拾う事、まっちゃんコーナーのインに何か所かあるポイント地点を必ず舐める事、メインとバックのストレートで一瞬でも5速まで入れる事、これだけを自分で決めて2時間の走行タイムが終了しました。
走行終了しクルマは楽勝、私は疲労困憊の図。
ルーフに残る雨粒を見ながら、自分がいかにチキンか、そしてサーキット走行に向いてない、才能の欠片もない「虫けら」の様な存在なのかを思い知りました。
ここが、今日が「初老の挑戦の分岐点」、諦め時なのかもしれないとヘルメットを脱ぎました。先生のロガー解析で「S字を丁寧にクリッピングを拾っているのは良く分かります。ただ手前でスピードを落としすぎです。アクセルコントロールで抜けられるとボトムスピードが上がります。それとスプーンで1コーナーと2コーナーの間をインにつきすぎです。コース幅いっぱいに使えばもっとタイムが上がりますよ。」と仰ってくださいましたが、何の慰めにもならずうな垂れるばかり。お礼を言って早々に引き上げました。
10ヶ月夢を見ていた様だったなあと、雨の鈴鹿を後にします。
翌日は晴天!昨日これならとも思いましたが、「いやいや、諦めた夢にすがるのは良そう」と犬の散歩をしていると、後輩がフェラーリ458イタリアでお迎えに来てくれました。彼の所属するフェラーリのオーナーズクラブのクリスマス会に誘ってくれていたのです。
会場に着くとオーナーの方々のきらびやかなクルマ達が。
参加者の方の稀少なレストアがなったばかりというミウラ迄見ることが出来、少しは気が晴れます。
有名コレクターの方の所蔵車両も案内頂き至福の時間。
会場にはプレゼント用の景品が。
和やかな会食会の中で、話題は自ずと車の話、レーシングデイズの話からサーキット走行の話に移ります。そこで私の昨日の情けない話をしたところ、ポルシェクラブの会長を長年務められていたという方が、親身に話を聞いてくださいました。「そこまで思いを持って挑戦されているのなら、私の師匠を紹介しましょう。あまり弟子を取らなくなったようですが、私が頼めば大丈夫。こう見えても私はタイトルを幾つか取っているんですが、その先生のお陰なんですよ。彼は鈴鹿に住んでいるので丁度いい。」とその場で電話してくださいました。
あれ?「初老の挑戦の分岐点」が思わぬ方向に進み始めました。
「夕方過ぎに電話がかかってくると思いますので、その時に思いをぶつけてみてください。」とても親切に、初めて会った方なのに自分の事の様にお話しくださり、少しウルっと来てしまいました。
その後、後輩の友人の個人邸へお邪魔するとスペチアーレに名車がそろい踏み。
スポーツ走行を極めるため、サーキットを走るために生まれてきたクルマ達を眺めながら、私のトラックへの挑戦はどうなるのだろうと考えました。
24時間前は完全に諦めたサーキット走行、目の前のクルマ達の様にスピードに挑戦できるようになるのでしょうか。
「初老の挑戦の分岐点」を実感した日。
Posted at 2022/12/19 10:45:47 | |
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