
今秋のプジョーは3車種も新型車がラインナップされて、DLRショールームも一気に華やかな雰囲気になりましたね。
VWとまではいかずとも、フルラインメーカーのように多彩なモデルを導入している状況は、この秋の輸入車販売増に大きく貢献しているようで、フランス車の地位向上に大きな存在になっています。
そんな選択肢のひとつである208を試してみることができました。
昨年秋の六本木で行われたプジョーのプライベートショーで発表され、私自身その場で現車確認させていただいたこともありつつ、その後の国内発売含め、この1年の間にメディアでの接触もありもう既に外観は見慣れてしまった感もあり、イマイチ新鮮味に欠ける再会になった新型208。
先代の丸くて小さい感じからガラリとスクエアな雰囲気になったのは、言われ尽くされた"205の再来"を確かに感じる塊感があります。
(永遠のベンチマーク、205の何をもって再来なのかは解釈いろいろでイマイチよくわからず…笑)
個人的にはこのデザインがベストとは思えてないのですが、それは好みの問題にて、まあ私的にはフェンダーアーチにカバーのない"アリュール"のほうがいいなぁという第一印象を持っています。
そんなことでまず試したのは1.2LガソリンエンジンのGT Lineモデル。

鋭い目線にフェンダーアーチのボリューム(感)による踏ん張りの効いた見た目は、小さいのにとても強そう!
確かに205GTIっぽい雰囲気と、最新プジョーのアイデンティティがミックスされていて、走りそうな雰囲気があります。
何だか若い、アスリート系の雰囲気は、乗って走り出すと興奮を与えてくれます。
いやいやこれは何で軽快でパワフル!
あれこのプジョーの1.2L PureTecエンジンって初めての体験じゃなかったはずだけど…こんなに素晴らしいレスポンスだったっけ?と、少ない過去経験を思い出しながらも、その出足のトルクの深さとスムーズな加速に驚き、そして楽しくなってしまいました。
少しアイドリング時のカラカラという音が気になるのと、ブレーキが効きすぎる(ストッピングパワーが高いのは喜ばしいし、カローラツーリングのようなメカ制御感の強い不自然さは皆無)のは慣れが必要だけど、それは僅かな印象でありつつ、いやこれは実に運転してて面白い、小さくてキビキビ、そしてイマドキのトルクフルな走りはマイピカソを前世代の遺跡に追いやる衝撃があります。
約12年のテクノロジーの進化をこのコンパクトカーに感じ(いや本来はもっと前の3008あたりから明らかに違うんでしょうけど…)、あれ、マイピカソは無駄なエネルギーを消費しすぎだぞ?なんて焦りを感じたのでした。
なんだろうこの全体的にしっかりとした作りは。
それは新規プラットフォームのせいなのか、サスペンションセッティングのせいなのか、はたまたプジョーお約束の小径ステアリングがもたらす感覚的なものなのか、いずれもが作用しているのでしょうけど、そんな機構的進化など気にしない消費者にとっても、きっとわかるしっかり感があるように感じます。
これからのクルマはBセグメントだろうがこれだけのクオリティを示すのが当たり前なんだとしたら、ヤリスはもっと頑張らないと…なんて。
内装も質感あって、プラスティックな部分をうまくチープに感じさせないようになっていて、走りと同じくしっかり感を感じます。

いただけないのは3D i-Cockpitで、私の着座姿勢(個人的好みではシートを高くポジショニングする)ではメーターがステアリングに隠れてしまい見えないということ。
文字が浮き出ることのメリットもよくわからないけど(演出としては良い)、ドラポジがイマイチ定まらなかったのは残念な感じではあります。
スポーツカーのように着座位置を低く構えればいいんでしょうけどね…。
さて乗り換えにて体験したのは電気自動車バージョンe-208。

どうやら訪れたDLRではまだまだ電気自動車は積極販売には至っていないようで、試乗予約もギッシリというわけではなさそうな様子。
まあラインナップは揃ってきても、やはり実売はまだまだコンベンショナルビークルが担っているのは何処も同じにて、あの日産でさえBEVの国内販売シェアは約9%なのですから、PSAJにおいてもまだ入口に立ったに過ぎないというのは感じるところなんでしょう。
それでもたった数ヶ月で3車種もラインナップ(DS含む)してしまうのだから、フランスそして欧州のEVシフトがそのまま輸入された鮮度の高さは感心しどころです。
そんなニューラインナップの電気自動車は、夏に試乗したDS3クロスバックE-TENSEと同じ動力源を用いたものだろうし、まあ乗らなくても良いか、と思いつつ触れてみると、やはり味付けは若干元気な方向づけがなされているような手答えがあり、そのままひねりなく恐縮ながら、DS3はしっとり上品に、e-208は前のめりに…と、例え同じようなシームレスな加速感であっても、そのブランドや内装、足回りなどから得る体への信号が両者でかなり違う印象へと導きます。
(正直、正確に両者を比較できるほどの記憶はもう薄れてしまったのですけどね)
そんな元気な味付けに感じた新型EV(最も、その元気たる要因は小気味良いハンドリングと硬めのサスによるものと感覚を持っていますが)に乗ってみて改めて感じたのは、私はガソリンエンジンの208の方が良いなぁと感じてしまったのでした。
それは、何だかドライバビリティはほぼ一緒、外観内装もほぼ一緒ながら、EV車の持ち味であるリニアな加速感は何となく似たフィーリングをエンジン車からも感じることができてしまった感があり、より活気ある走りができるのはこっち(208)のほうなのかな…と感じたのです。
もちろん、EVが選択できる環境においてそれを選択しない未来はないと思うんですけどね。
特にe-208は400万円以下という戦略的な価格面でも普及車種に相応しいものがあります。
(それだけに"私だったらコンベ車を選ぶ"という発言も、イマドキは憚れる気もするので小声ではありますが…)
まあ、このコンパクトに何を求めるかという要素により選択が変わるんだろうし、今はインフラ的な課題もなんだかんだ言ってあるんだろうから(既述のように、我が家はマンション暮らしにて充電インフラがない環境…)、小声になる必要はないのかもですが、これからの時代を早くから捉えた、それぞれのニーズにあった選択肢があるのは良いことですよね。
試乗は"自由に乗っていいですよ"ということで、セールススタッフの同乗なしで思う存分楽しんでしまいました。
そんな新型208&e-208から感じるものはまさにこのクルマのキャッチコピー"Unboring the Future"を体現したもの。
走りがワクワクするコンパクトカーに久々出会えたことがちょっと嬉しくなる、そんな気になるクルマです。