9月のある日、私の元に1通の黒いDMが届きました。
見ると、珍しくアウディからの手紙。
私はDLRを訪れ個人情報などを伝えると、なるべく"DMなど送ってくださいね"とお願いしています。
メールマガジンなども各社から配信してもらっているけど、手紙によるDMって、小さなカタログのように気になるクルマを確認することができて楽しいから。
(エコじゃないですね…)
なかなか縁のないアウディからなんて滅多にDMなんて来ないのに珍しい…と思いタイトルを見ると、”e-tron Test Drive Event”の文字が。
お、遂に導入となりましたか!と、そのインビに誘われるがままにDLRを訪問してみました。
何故か届いたDMの宛名は初めて訪れるDLRだったのですが(どうやらアウディジャパンより振り分けされたらしい)、広くて明るい店内にはありました、鮮やかなブルーのe-tronが。
で、でかい…私は勝手ながらもっとコンパクトなサイズ感を想像していたのですが、しっかりとしたDセグサイズのSUVの姿に戸惑ってしまいました。
まあ何も予備知識なしにクルマに対面したのですから、そんなサイズ感の差なんて考えうることですし、アウディというプレミアムブランドが初出しする電気自動車がチープなサイズな訳ないかと即納得です。
それに、アウディお得意のスポーツバック、クーペSUVのスタイルはとてもスタイリッシュでカッコいいですし、アウディはこのクーペスタイルを締まり良くまとめることが上手いなあと感心します。
そんな現車確認をした後は、セールススタッフに案内されるがままにまずはこのドーム型の風変わりなシアターでコンセプトVTRを視聴して、早速試乗へと向かいます。
試乗車はこれまた派手なカラーリングの車体にて、今から特別なアウディ初のEVに触れるという気分の高まりを感じます。
こちらはメーカーの広報車両とのことで、DLR用にはもう1台フツーのカラーリングの試乗車を稼働させているとのこと。
中身は同じだしどうってことないのですが、たまにはこんなレーシングカーあるいはサーキットマーシャルカーのようなカラーのモデルに乗るのもいい感じです(デビューイベントに来たという特別感あります)。
さて乗り味ですが、全てにリニアでスムースな感じ。
高速道路も試乗させていただいたのですが、胸をすくう加速感はあっという間にスピードメーターの数値を跳ね上げます。
このe-tronのコンセプトは、"静けさをもデザイン"したとされています。
電気自動車だからこそシンプルに、そして特徴を殺さずに機能をデザインするというコンセプトはクルマの外観、インテリア、そしてこの静粛性へ現れていて、機関系はもちろん、ロードノイズも聞こえないためか高速走行時のスピード感は全くなく、これはまずいぞとアクセルを緩めてしまうのでした。
さて最近やたら電気自動車を乗る機会に積極的な私わんどらが毎度機になるのが、回生ブレーキの性格。
結論から言うと、このe-tronは回生ブレーキの効き具合が抑え気味で、普通のクルマの感覚で乗ることができるというもの。
ワンペダルドライブ志向のEV体験とはまた違う、ドライブしていて自然なフィーリングは、これまで経験したEVではDS3 E-Tenseに近い感覚(もちろん絶対的なパワーは全く違いますが、回生ブレーキの効き具合に限ってカテゴライズすると…)。
あーそうか、欧州車ってこのフィーリングで括れるのかな?なんて直感で発してみると、セールス氏曰く"いえ、その括りは違います"とのこと。
例えば、このe-tronの直接の競合となるメルセデスEQCは、日産的なググッと回生ブレーキの効くワンペダルドライブタイプの方向だといいます。
よく思い起こしてみると、BMWのEV(i3)もまたググッと効くワンペダルの方向性だったし、設定如何で如何様にもなりそうなこのシステムに、あえてブランドの"らしさ"として味付けするなんて、それぞれのメーカーなりの意味合いがあるに違いません。
コンベンショナル車に近いフィーリングこそがドライバーに与えるべき快適性か、あるいはEVならではの特徴を活かしたワンペダルで新たなドライバビリティを付与するか…最終的にはユーザーの好みがブランド体験にマッチした時に、"これいいね"って事になるんでしょうけどね。
そしてリーフやi3で体験しているワンペダルの面白さ、新鮮さは感じつつも、こうしてe-tronに乗ってみると、やはり自然な味付けがいいかもねなんて感じてしまうのです。
さて走り以外に気になる部分としては…このデジタルミラーの位置。
ドアパネル側にモニターを付けたことはデザイン的に良いアイデアですが、窓枠の延長線上にミラーがない分視線を落とさねばならず、見にくいのです。
デジタルミラーはまだ私自身Honda-eとの2車種しか体験していないのですが、車格は違えど、これはホンダの方が使い勝手良いと感じました。
いやしかし、完成度の高い良いものを体験させてもらったなぁとショールームに戻り、あれこれ感想を話していると、セールス氏は"ぜひいかがですか?"と勧めてきます。
いやこの手の目新しいクルマは新しいもの好きのお金持ちに買っていただければ良いのでは?なんて、アーリーアダプターに委ねてお茶を濁してみました。
いや、欲しくない訳じゃないけど、ここまで立派でなくとも良いし、1200万予算あれば、ポルシェ718ケイマンとシトロエンベルランゴの2台持ちするかなぁ…なんて考えてしまうのでした。
だいたいアウディもこのe-tronはブランドイメージリーダーとしてのポジショニングにて、実売にはQ4 e-tronというVW I.D.4譲りのSUV電気自動車が登場を控えていることを計算してのことなんだと思います。
そうですね、僕には買えませんよ…なんて苦笑いしながらショールームを見渡すと、同じ綺麗なスタイルをしたSUVが鎮座しているのを見て、"私が選ぶならこっちですかね"なんて指差してみたのがこちら、新型Q3です。
なんかスポーツバックの見た目的にはe-tronをそのまま小さくした雰囲気で、"なんだこっちでいいじゃん"なんて、Q3の方がだいぶ実用的で必要十分な気がします。
先日の"カローラツーリングを試してみたら"のブログに書いた、我が家の思わぬクルマ選びの方向性となりそうな"ランドクルーザープラドがいいんじゃない?"という我が家のオーソリティのコメントを発端に、SUVの路線も捨てられなくなってきた事情において、プラドよりも私にシンクロするSUVを探っておかないと…という観点でQ3をあれこれ見ていると、セールス氏はすかさず言います。
"Q3を気に入っていただいたようですね!見積作りましょうか?"
さっきまでe-tronを推していたはずが、実売見込みの咄嗟の切り返しトーク、なかなか頼もしいセールスパーソンだったのでした。
それにしてもe-tron、パワフルなフルサイズSUVのEVは、経済性能や環境意識よりも乗りごたえを伝えてくれる素晴らしいクルマでした。
こうなると同じカテゴリーの日産アリヤも早く試してみたいし、直近では、そのブランドの思想差が如実だというメルセデスEQCを試してみたいなぁなんて思ってしまいます。
身の丈にあったクルマ選びをすると目線には入らないモデルでも、今が旬のEV初出しの時期ならあれこれ触れられそうな、そんな機会をこのe-tronからは得たのでした。