兼ねてから触れてみたいと思いつつも、なかなか事前予約のアクションが取れずに、街で見るモデルを見ては、あー、いいなぁと眺めるばかりだったブランド、テスラをようやく試す事ができました。
何と言っても全国に4,5箇所くらいしかショールームがなくて、購買行為の殆どをネットで済ませるという、既存の商習慣を覆したこれからの買い方が斬新すぎて、DLR頼りのカーライフに慣れてしまっている私のような消費者にどう納得の買い物をさせてくれるのか?あるいはアフターサービスなどの安心感はあるのかなど、そのクルマの持つ商品性やポテンシャルだけでなく、これからの時代の自動車販売ビジネス自体を体験してみたいという思いもあり、いよいよ足を踏み入れてみたのです。
(今回は初体験の視点で体験談を書いてみます。既に体験済みの方には認識済みのことあしからずです)
最近は著名な芸能人もYouTubeで購入顛末をアップしたりしているようですが、そんなクルマなんぞすぐに取っ替え引っ替え出来そうな人々でもクリックひとつでクルマを買うのは緊張すると言っています。
さすがに何でもネットでポチッと買うのが慣れていても、クルマのような耐久消費財をポチッと買う勇気がいるのだろうと、やっぱりフツーの市民なら思うんだと想像するんですけどね。
まあ百聞は一見にしかず、自身も疑似体験をしてみようと、先ずはネットで試乗申込をしてみます。
当たり前だけど容易く予約完了すると、メールではクルマの主な操作方法をショートムービー化したチュートリアルが送られてきます。
ふむふむ、割とフツーなようで…まあなんだかんだ言って、ハンドルとブレーキそしてシフトがあるわけで、何も特別なことはないよねと映像をかいつまんで斜め見しておき、いざ当日を迎えます。
さて完全予約制の青山の店舗に入る否や、明るい雰囲気のスタッフの方が迎えてくれます。
そして挨拶と共に開口一番発言されたのが、"私はセールスマンではありません。今日はクルマの良さを感じとっていただき、ぜひ家に帰ってからネットで申し込んでください"とのこと。
お、ここは実店舗であるけど販売の場ではないんだ!
やはり既存のDLRという発想とは違うんだなぁと思うけど、まあメーカーショールームと思えばメルセデスMeだってセールスはしない訳だし、想定の範囲内とも言えます。
そんな事で、その朗らかで感じの良いスタッフ(=Not Sales person)としばらく話していると、あっという間に店前の青山通りには試乗車が。
案内されると、"では30分くらい自由に乗ってきてください"といきなり自由時間が到来します。
試乗って同乗なしに自由に乗れるのは嬉しかったりしますが、今回の場合、セールスやインストラクターが同乗しないのは少し寂しい限り。
何故なら…乗り込んだクルマは操作系がシンプル過ぎて、わからないことが多すぎるから!
他にも、テスラの謎を解き明かすべくいろいろと話を聞いて気分でもあったというのもありますが、自由にどうぞと言われて少し拍子抜けです。
こんな事なら事前にメール配信されたチュートリアルをちゃんと観ておくんだった…。
インパネのセンターにある大型のモニターとハンドルとアクセルとブレーキペダル、それが操作系の全てという超シンプルな室内は、シフトレバーはどこ?(コンパクトメルセデスやマイピカソ同様のコラムシフト)、ハザードスイッチはどこ?(天井)などその在りかがよくわからない部分あれど、慣れてくると要するにメカニカルな操作系以外はこのモニター内で探せば見つかるのだなと徐々に理解できてきます。
このモニターは当然ナビとしての機能も持っているのですが、そのモニターを見ていると、このクルマがいかに通信で監視されているかがわかります。
というのも、クルマの位置情報を俯瞰で見るだけでなく、自車の周囲にどんなクルマがいるか?歩行者は?標識は?などの殆どがリアルタイムに表示されるのです。
しかも、隣にいるクルマは乗用車なのか、あるいはトラックかなどの形状も表現されるなんて、これは大したものだと感じてしまいます。
一方で、そのモニターに目を奪われていると見落としがち?ながら、ステアリングパッドやコンソールに使われているプラスティック樹脂がかなり安っぽい…。
アメリカンな余裕を感じるシートやワイドも高さもある広々室内(特にリア席は素晴らしい)など、他のD/Eセグメントセダンでは実現できていない空間の余裕さは、そのシンプルなデザインのせいもあり際立っています。
それだけに、まるでプラモデルではないかと思えるような一部プラスティック部品の質感はイマイチなんですよね…。
そんなことでアクセルを静かに踏むと、さすがにEVの醸し出す余裕のトルク、そして踏み込むとレスポンス良く反応する加速…これはたまらん、楽しいではないですか!
相対的なスペックは調べていませんが、感覚としてはアウディe-tronで感じた胸のすく感じを得ることができ、それは決して高速でなくとも、ボンネットフードの低さのせいでスピード感があるというか、まるでレーシングカートを運転しているような気分になります。
カートだなんて大袈裟な…と思いますが、意外にもステアリングもレスポンスが良く、クルリと意の通り曲がってくれる感じがまたカート感あって楽しかったりもします。
モーターが駆動輪自体に付いている分パワーロスが少ないのか、19インチホイールに太いタイヤでも重さは感じません。
私の試乗したモデルがデュアルモーターのAWDモデルだったからなのかな…、あるいは後輪駆動のスタンダードモデルはどんな感じなのか、ハンドリング、動力性能ともに気になります。
とにかく、すっかり気に入ってしまったのが、30分間たっぷり乗って感じた印象です。
まあ粗探し的には、前述のプラスティックの質感、ブレーキの踏み心地(遊びがなくむぎゅっと効く感じ…まあ回生ブレーキ&ワンペダル操作で感触の悪さもカバーするとして)、インテリアがシンプルすぎて目移り無く飽きるかも(という、ミニマルを贅沢と出来ない性格?笑)などが挙げられますが、総合的にはドライビングの意外性、それから選択した場合の自己顕示欲も含めて好感触を持っています。
あくまでも試乗での印象ですが、私わんどらが体験したBEVの中では一番欲しいモデルに浮上です。
さて、クルマの特徴、良さはわかりました、で、その他のいろいろ…既存の枠に囚われない販売&アフターサービスという面ですが、やはりこれもドラスティックな割り切り!
まず今日案内していただいた方は、冒頭に書いた通りセールスではないので、"もうお会いする事はないでしょう"とのこと(もちろん再来店時は除く)。
今後もしオンライン購入したら、次に人に会うのは納車時に別のデリバリースタッフが自宅までクルマを届けてくれる時なんだそうな。
それまでの車庫証明含めた書類手続きはオンライン完結にて済んでしまうという。
まあ、一般的なクルマ購入時の平均DLR訪問回数は2回程度というし(年々減少傾向にある)、あまり変わらないと言えばそうなのだが、納車まで、いや納車後もずっと付き合う事になる担当セールスがいないというのがどれだけ違和感あるのか、これまでの耐久消費財購買行動には無かった習慣に割り切れるか(不安にならないか)がポイントとなるのでしょうね。
担当セールスがいないから車検の案内もなく、オーナーは自分で気づかないといけないんだと言う。
おー、それじゃあ、故障したりメンテナンスはどうするの?と聞けば、"iPhoneを思い出してください"と言う。
クルマが通信で繋がっているだけに、"まずは遠隔診断"で済ませてしまうんだそう。
で、軽微なメカニカルトラブルならフライングドクター的なクルーが出張整備しにやってくるし、重症ならサービスセンターに入庫するんだとか。
いやホント合理的だなぁと感心するばかり。
後は前述の通り、その人的サポート含めた対価を"安心"として購入するか、あるいはテスラの超合理的な買い方、乗り方を享受するかのユーザー次第。
殆どの生活者には違和感しかないと思われるけど、実はこれは未来のスタンダードになり得る事が容易に考えられるのです。
日本には特に"専売制度"というクルマ販売の商習慣があり、基本はDLRを通して買うというのが当たり前となってるし、これが章男社長の"550万人の雇用を守る"って大事な事に繋がってるのも事実あるけど、デジタルディスラプションと言われて久しい存在が今や当たり前になっている事も多い中、クルマの買い方にも多様性が生まれることも時間の問題であれば(欧米では既に始まっている訳だし)、このテスラの販売手法は受容されるべきものなんだろうなぁ…と思うわけであります。
(スミマセン、話題がマーケティングのほうに…)
新参者の自動車メーカーのお手並み拝見と斜め読みしている面ないとは言えない中、今回勇気を持って(?)試してみたテスラは、クルマの魅力もさながら、兼ねてから関心のあった販売方法についても着実な未来を感じる、隅においておけない存在だというのがわかりました。
いやいや、恐るべし!