ちょっと古いけど、ちょっと気になっていたクルマをあえてピックアップしてみるこのシリーズ。
今回は前回#12からの続きとして、90年代BTCCモデルをピックアップします。
今も見そうで見ないようなフツーのクルマがレーシングカーとして活躍していた姿を一気に書いてみたいと思います。
いや、改めて今見てもいいなぁと思えるクルマか目白押しなんですよ。
90年代、若かりし私が最もハマっていた自動車レースがBTCC、British Touring Car Championshipです。
フツーの箱車を少しだけ特別な存在に仕立てた、当時のFIA認定ツーリングカークラスII規定を振り返ると…。
・ベース車両が4輪、4座4ドア以上の量産車
・2L以下の自然吸気エンジン(同一メーカーなら別の車両のエンジンに載せ換えが可能)を車体前方に搭載した車両
・駆動方式により最低重量を決定
・レブリミッターの装着によりエンジンの最高回転数を8,500rpmに制限
など、接戦がなされるようにイコールコンディション化か図られたもの。
それだけに毎戦エキサイティングなレース展開が楽しめる魅力的なものでした。
(フォーミュラレースと比べ音に迫力は皆無ですが)
そして、毎年の参戦メイクが多彩なのも魅力で、普段の街を走るあのフツーのクルマか活躍する姿は見ていて親しみが湧きます。
そんな参戦車両から、前編ではVauxhall Cavalier GSi & Vectra 16v、Toyota Carina E、Nissan Primera eGT、Peugeot 405 Mi16 & 406を紹介してきました。
さて、後編はまだまだある懐かしのモデル満載で行ってみましょう。
5:Mazda Xedos 6 参戦期間:1993-94
広島発のマツダが、自分たちも三河の企業を目指そうと拡大路線に走っていた頃、国内ではユーノス500というプレミアムなセダンが誕生しました。
その欧州名が、このクセドス6です。
(ちなみにユーノス800という上位車種はクセドス9)
マツダは1992年までマツダ323F(日本名ランティス)というモデルで参戦していました。
確かランティスはJTCC初期に国内でも参戦していましたね。
その323Fも、このクセドス6も残念ながら目立った戦績は残せず、最後はカラーリングさえされなくなった超プライベーター感あるクルマで細々と戦う寂しいものでしたが、クルマ自体は今見ても魅力的な雰囲気を感じます。
改めて写真を見ると、現代マツダの魂動デザインに通じるものがあるように思えます。
6:Renault 19 参戦期間:1993
日本では馴染みの薄かったモデルながらも、欧州ではそこそこ売れている車種だったディズヌフ。
街中ではフツーすぎて見過ごしてしまいそうな地味なクルマでしたが(特にセダンは)、こうしてルノーカラーを身につけたレーシングカーとなると、カッコいいと思うものです。
→Renault Laguna 参戦期間:1994-99
*97年総合優勝
ディズヌフの後継として投入したラグナは、フェイスリフトを挟んで6年間も参戦した常連。
97年には総合優勝を遂げています。
最盛期の特徴はなんといっても、ウィリアムズルノーレーシングチームによる運営!
F1ノウハウをたっぷり投入して、レースを盛り上げていました。
個人的にはこのスタイリングは結構好きなんてすよね。
7:Ford Mondeo Si/Gaia 参戦期間:1993-95
かつて世界中のツーリングカーレースを席巻したシエラの後釜として欧州フォードが投入したモンデオ。
欧州カーオブザイヤーを獲得した実用的にも実力を持ったモデルは、タイトルこそ得られなかったけどいつも主役の存在でした。
→Ford Mondeo Ghia 5dr 参戦期間:1996-2000
*2000年総合優勝
93年から参戦し続けてきたモンデオですが、96年のフェイスリフトを機に5ドアハッチバックでの参戦となります。
英国はDセグメントの5ドアハッチが人気の国。
当時はベクトラ、プリメーラ、カリーナE、ラグナなどが5ドアハッチをラインナップしていました。
(プリメーラはUKの銘を打ち日本に輸入されていましたよね)
そんなマーケティング的な要素も込めた5ドアのモンデオは、遂にミレニアムイヤーに総合優勝を果たします。
(もっとも、この2000年にはクラス2レギュレーションによるBTCCも人気に陰りが見えて きていて、参戦メイクも少ないものでしたが…。)
8:BMW 318i 参戦期間:1993-96
*93年総合優勝
BMWとツーリングカーレースの歴史は長いのですが、このカテゴリーで318iは世界中のツーリングカーレースを征します。
BTCCではチームシュニッツァーというドイツの名門チームがデビュー早々に総合優勝を果たします。
そのチームシュニッツァーは94年から日本のJTCCにも参戦し、初年度はコロナに敗れるも、2年目は日本も制覇します。
個人的には、当時は高値の花だったこのE36型BMWに憧れ続け、後に所有するきっかけとなったレーシングカーでもあります。
今見てもカッコいいし、憧れちゃいます。
9:Volvo 850 Estate 参戦期間:1994
こちらは世界中で話題になったワゴンモデルを擁しての参戦。
ボルボと言えば…のマーケティング戦略が功を奏した事例です。
但し中身は真剣そのもの。
チーム運営はかつてF1も率いたトムウォーキンショーレーシング(TWR)にて、最速ワゴンを追求していました。
→Volvo 850 参戦期間:1995-96
ワゴンで参戦し話題をさらった翌年からは、何故かセダンモデルに箱替えしてしまったTWRボルボチーム。
何故?という感じはしますが、やはり話題性よりも本気度というところなのでしょうか。
→Volvo S40 参戦期間:1997-99
*98年総合優勝
850シリーズがフェイスリフトにてS/V70シリーズに置き換わってしまった後は、新たな後継DセグのS40にバトンタッチして参戦し、そしてボルボ悲願の年間チャンピオンに輝いています。
個人的にはエステートこそがボルボのブランドイメージそのものと感じていたので、できればワゴンボディで選手権を制してもらいたかったですね。
10:Alfa Romeo 155 TS 参戦期間:1994-95
*94年総合優勝
打倒BMWとして参戦したイタリアからの赤い刺客。
参戦初年度にいきなり総合優勝してしまう勢いがあり、前年優勝のBMW推しだった私的には見ていてハラハラさせられるライバルでした。
155と言えばドイツDTM参戦車両のごっつい出で立ちに強いイメージがありますが、こちらのクラス2のノーマル感たっぷりの改造範囲でも十分強そうな雰囲気があります。
11:Honda Accord 参戦期間:1995-2000
近年のWTCC、そしてTCRでのシビックタイプRの活躍がホンダのツーリングカーのイメージではありつつ、90年代BTCCでもしっかりと参戦していました。
当時の欧州アコードはホンダとローバーの業務提携により生まれたモデルで、ローバー600が兄弟車という英国生まれ。
その同じモデルが日本ではアスコットイノーバという名で販売されていましたね。
それを知ってか、当時はアスコットイノーバがやけにかっこよく感じたりしていた記憶があります。
12:Audi A4 参戦期間:1996-98
*96年総合優勝
最後はこちらBMW318iやアルファ155が栄枯盛衰する中、現れたシルバーボディの初代A4(B5型)です。
いくつかの国のツーリングカーレースを席巻すると共にBTCCにもやってきて、そしてチャンピオンを獲得するという実力派でしたが、なんだかあまり好きになれなかったのです。
それは、このA4はクワトロだったから。
そりゃ4輪駆動ですもの、不利なわけがありません。
あまりにも強すぎて翌年にはウェイトハンデがかなり課せられて大人しくなってしまいましたが、マーケティング的にはアウディお得意のクワトロシステムの実力を知らしめることに成功したんでしょうね。
今回のピックアップは以上となります。
全12メイク19車種を振り返ってみましたが、改めて見ても、フツーのオトーサンクルマがその普段のカタチを残しつつも速さとかっこよさを身につけている姿には魅了されます。
もちろん90年代以前のツーリングカーレースだって、あるいは21世紀のWTCCだって、興味深いクルマが多々ありますが、この90年代BTCCは個人的に格別な魅力があると感じています。
今回ピックアップしたクルマたちを街で見かける機会は随分と減ってしまいましたが、もし遭遇した際には、当時のレーシングカーの面影を改めて重ね合わせてみたいと思うのでした。