
春のジュネーブは2年連続で見送られ、昨秋のフランクフルトの中止を経て、もうすっかりモーターショーと言えば中国発信という流れになっているような気がしていましたが、欧州発のモーターショーなんてホント久しぶりな響きにて、あちらの大陸ではいよいよ行動緩和による真のニューノーマル社会が訪れてきているんだなというのがよく伝わってきます。
そしてその久々の欧州発信はジュネーブでもフランクフルトでもパリでもなく、ミュンヘンでした。
で、ミュンヘンと言えば…お、BMWの地元ではないですか!
個人的にはいつかは立ち寄ってみたい聖地(=BMW本社工場の見学コース)であります。
空港でトランジットした時にほんの少しだけ外に出た事はあるんですけどね…時間がなくて街を散策するまでにはいかずの事を思い出します。
今回のショーには残念ながら日本メイクの出展はなしとのことで、欧州向けのネタに欠ける寂しい状態なんだろうと憂慮されます。
欧州でシェアを伸ばすトヨタの現地法人レベルでさえ出展しなかったのは、やはり全てを投げ捨てオリパラに予算を傾注してしまっているお財布事情もあるのでしょうかね。
今年は東京モーターショーも中止となってしまっただけに、何かこちらのミュンヘンで仕込みがあっても良さそうなものですが、トヨタも目玉はカローラクロスやレクサスNX止まりだと想像すると、展示会に出ても出なくても…という感じなのかも知れません。
さてそんな久々のモーターショーに目を向けると、リアルショーでお祭りなんて過去の遺産じゃない的な発想は覆される、魅力的な初登場が幾つもあることが確認できます。
さすが欧州メイクの庭だけに並べられた花も見事!
そんな中で、気になるクルマをピックアップしてみます(いつものように"明日買いたい!と思えるフツーのクルマたちです)。
まずはこちらタイトル画像のモデルはダチアジョガーです。
ルノー傘下のバジェットブランドであるルーマニアのダチアから登場したのは、コンパクトながらにゆったり7シーターのMPVです。
少しばかりクロカン的要素を加えているのは、ダチアが欧州でヒットを飛ばすダスター譲りにて、なかなかカッコいい雰囲気があります。
実用的かつSUVライクなモデルは、きっとヒット作になるのでは?と予想してしまいます。
お次は地元ドイツから、メルセデスEQEです。

メルセデスの電動化戦略ラインナップとして予告通り順当な登場となりますが、上海でフラッグシップのEQSが披露されたインパクトが大きかっただけにこちらは随分とコンパクトに見えます(実際はしっかりとミドルクラスなんでしょうけど)。
リアタイヤからエンドにかけてのオーバーハングが随分短いな、しかしながら室内の居住性は良さそうだね、なんて想像でしかない意見を並べてはみますが、このスタイリングは嫌いじゃないなと感じるのです。
アウディからはこちらのコンセプトカー、グランズフェアが気になるところ。

自動運転レベル4も実装するとのEVサルーンは、まさに近未来のアウディのスタディモデルなんだと思います。
これまでのシングルフレームグリルがウエストライン下にセットされ、低いボンネットから流れるようなスタイリングでありながらもしっかりとサルーンしているラグジュアリーな室内空間は妥協なき美しさがあります。
e-tron GTを超えたさらなるこちらのプレミアムモデルの市販化は如何に?気になるところです。
お次はフォルクスワーゲンから。
ID.ライフというコンパクトEVモデルです。

これそのものはコンセプトカーなので、このまま市販化と言うわけではならないながらも、2025年までには200万円台で発売されるということ。
実際は現実味あるデザインに落とし込まれつつも、IDシリーズの末っ子、ID.1として発売されると言われていますね。
欧州メディアはこぞってHonda eのライバルと書いていますが、現状、倍の価格となってしまうホンダ的には、思い切ったコスト変革ができないと置いてけぼりになっちゃいますね。
さてこちらは同じVWグループのクプラ(セアトのスポーツブランド)から、アーバンレーベルです。

出展されたのはめっちゃレーシーなモデルで、インテリアもフルロールゲージが張り巡らされた本気モードのクルマです。
こうゴテゴテ武装されていると車格感が掴めないのですが、実際は全長4.1m程度のBセグメントコンパクトEVなんだそう。
VWグループで言うとポロ、セアトイビサ、シュコダファビアの仲間との事で、こちらが実際の販売時にはID.2となるということ。
それにより前述のID.ライフ(=ID.1)から7シーターSUVのID.6までのシリーズラインナップが完成するんだとか。
このアーバンレーベルには、ぜひWRCにでも参戦いただいて、EVラリーマシンとして君臨して欲しい気がします。
お次はルノーから、メガーヌE-Techです。

これが次世代メガーヌそのものなのか、あるいはあくまでも派生なのかは不明ですが、日産アリヤと同じプラットフォームを用いたCセグメントハッチバックは、少しばかりクロスオーバーな雰囲気も持ち合わせていて、スタイリッシュで好感が持てます。
先行して市場投入されているシトロエンe-C4に似たようなスタイリングコンセプトはフランス車の流行りのカタチなのかも知れませんが、VW ID.3、日産リーフも加えて選択肢が続々と増えてゆく欧州CセグハッチEVの行方は楽しみな限りです。
さてあとふたつの気になるモデルは新しいモビリティ社会に提案されたクルマたち。
まずはこちら、モビライズという新規ブランドのリモというコンパクトサルーンです。

モビライズはルノーと中国のモビリティメーカーが設立したブランドにて、その最初のモデルがこちらの電気自動車、リモとのこと。
このモデル、一般の人には販売しないB to Bモデルなんだそう。
具体的には、カーシェアリング用及び個人タクシー用とのことなんです。
サービス導入開始はフランスからとなるようですが、現在フランス国内には約47,500台の個人タクシーが登録されていて(そのうち2/3がパリとその周辺なんだとか)、それらのタクシーを低コストを武器に代替を進めてゆくんだとか。
いつかフランス旅行をすることができた際には出会うこともあるかも知れませんね。
最後に地元ドイツからは、ACM(Adaptive City Mobility)というベンチャー企業が提案するシティワンというコンパクトEVが登場しました。

先にフランスではシトロエンのアミという新世代モビリティ(同型でオペル版もある)が登場し、カーシェアリングなどで用いられつつありますが、EVは自動車メーカーの世界を解放し、このACMのような新たなゲームチェンジャーが続々と登場してきています。
この見た目にスーツケース(まるでリモワ?)のような小さなクルマは、通常の充電アダプターのほかに脱着式のバッテリー交換が可能で、ずっと稼働できるのが特徴のようです。
カーシェアリングやレンタカー、商用バンとしての提案がなされています。
こんな可愛らしいクルマが欧州の街で活躍すれば楽しいですね。
他にも新世代ルノーサンクや、スマートからの新たなコンパクトなど、なかなか粒揃いの見応えあるモーターショーにて、やっぱりこのような展示会で近未来のラインナップを一気見できるのは良いもんだなぁ…と、久々のリアルモーターショーを好意的に受け止めたのでした。
次は来年春復活のジュネーブショー、なんとなく予想されるあのモデルやこのモデルの登場を楽しみにしています。