
東京の街をランナーと共に駆け抜ける。
BMWが5年目のスポンサードとなる東京マラソンへの車両提供。
先導車を始めとする今年の主役は2シリーズアクティブツアラーでしたね。

2年前の主役はAH3、去年がBMW iだったことを考えると、今年の主役は”Efficient Dynamics"のメッセージが弱い気がしてしまうのは僕だけでしょうか?
それはプレミアムブランドの放つ先進性やクリーンなイメージよりも、”駆け抜けるファミリーカー”としての実売を意識したマーケティング戦略の表れなのかもしれません。
2シリーズアクティブツアラー、なかなか好評な販売立ち上がりのようですね。
徐々にですが、街中で見つける機会も出てきました。
僕自身、アクティブツアラーのことは発売前から”期待の新人”として、熱い眼差しを向けていた1台ではあるのですが、実際に街中で見かけると最初の印象とは違う発見があったりもします。
フロントからの見た目は、キレの良い目とキドニーグリルにより、BMWとしてのアイデンティティを感じるのですが、サイドあるいは後方からの見た目は、意外とフツーと言うか、よくある2BOXモデルに見えてしまい、BMWとして認識できない時があるくらい。
そんなことを感じる度に、僕自身の購買意欲は落ち着きを取り戻しつつあったりもします。
(新型1シリーズLCIモデルの見た目が予想より良くて、そっちに惹かれているというせいもありますが)
しかし、この夏には待望のディーゼルモデルが投入される事が決まっているし、7シーターのグランツアラーも出番待ちとあって、これからますます”新世代BMW”ラインナップから目が離せないモデルではあります。
そんな個人的印象もありつつ、それにしてもアクティブツアラーのPR展開には今までにない勢いを感じてしまいます。
冒頭に書いた東京マラソン先導車もそうですが、何と言ってもTVCMが凄い。

CM投下量にしても、BMWがこんなにパワープレイしたことなんて過去にはないのではないでしょうか。
また、これまでにない映像、音楽を盛り込んだコンテンツにも驚きです。
何と言ってもミスチルを起用しちゃうなんて!
まさに”新世代”を唱えたBMWの新たなアプローチは新鮮!…と同時に、旧来からのBMWファンにとっては違和感あるものとして捉えてるかたも多いのではないでしょうか?(私もそのひとり)
うわ、こんな国産フルラインナップメーカー的なCMやっちゃうんだ…と、その新たな戦略に関心を抱いてしまいます。
そんなBMWの戦略を見て、思い出したのがハーゲンダッツ。
あの美味しいフレーバー満載のプレミアムアイスクリームです。
マーケティングやブランディングの書籍やセミナーなどでは、このハーゲンダッツの戦略がプレミアムブランド醸成のお手本として定番となっています。
何十年も前、日本に初めてハーゲンダッツが登場したのは、都心の路面店。
流行感度の高いひと、グルメなひとなどのオピニオンたちが連日行列を作り、”並ばないと食べられない特別感”を創出しました。
(もちろんTVCMは外国人モデル起用のシルキーなイメージ)
やがて、次に展開したのは高級デパート。
並ばなくても買えるけど、高貴でおしゃれな空間で手に入るという特別感を与えました。
さらに何年もの時が経つと、いよいよGMSやコンビニに登場します。
かつて、都心で並び、そしてデパートでしか手に入らなかったプレミアムが、ようやく広くみんなに選ばれる存在になりました。
(TVCMは国内タレントが”美味しい”と笑顔を見せるイメージ)
販売されるシチュエーションや対象は変わっても、いつの時代も特別感をそのまま創り続けた事で、今も”あのプレミアムブランドを私も買える”という印象を消費者に焼き付け続けている見事な展開です。
いかがですか?
これって今回のBMW2シリーズアクティブツアラーの展開に似てませんか?
満を持してコンビニに展開されたハーゲンダッツのように、”あのプレミアムブランドが私たちファミリーの選択肢になりました”と言っているような展開…あのミスチルBGMのCMを見るたびにそんなことを思い出します。
(もちろん、クルマと食品が同じマーケティング手法の訳はないと思うのですが…)
BMW自身、アクティブツアラーをファミリーカーだなんてひとことも言ってない(と思います)。
1シリーズだって3シリーズだってファミリーカーとして十分なモデルですし、BMWにそんなカテゴリーはないんだと思います。
しかし、このアクティブツアラーのブランド展開は”BMWにファミリーカーが登場した”という印象を新たに、そして確実に感じさせてくれています。
今の日本の自動車販売マーケットは一通りクルマが行き渡り、ある程度固定された市場(顧客数)の中でのシェア争いと代替ビジネスのサイクルが主流です。
そんな中、”ぐっと身近になったプレミアムブランド”の代名詞アクティブツアラーというエントリーモデルで競合からのシェアを獲得して、高いロイヤリティで次もBMWというライフサイクルカスタマーに育ててゆく…こんな保有ビジネス戦略にミスチルが流れるCMはピッタリなのかもしれません。
そしてそんな戦略に釣られそうな…あるいは抵抗しちゃいそうな自分。
クルマ選びは楽しく、そしてどこまでも拘りの尽きないライフイベントですね。