
今日はクルマを巡るマーケティングのお話。
今日の銀座は平日にも関わらず、朝からとっても賑わっています。
銀座勤務の僕は、毎日地下鉄に乗り通勤をしているのですが、いつもは空いている電車内が、何だかやたら混んでいます。
しかも普段あまり電車に乗り馴れていなそうなおばちゃんたち(いや失礼、淑女の方々)がたくさん。
「一体何事?」と思いながら駅を降りると、警備員やらTVカメラやらがたくさんいます。
そう今日は、いよいよ再開業する歌舞伎座のオープニングを記念して、そうそうたる歌舞伎俳優たちが銀座通りをパレードする日だったんですね。
それにしても通りを埋め尽くした人垣にはびっくり。
昨夏のロンドンオリンピック凱旋パレードの時ほどではないのですが、それでも今日のパレードに集まった沢山のおばさん(淑女)パワーが醸し出す勢いは、凄いとしか表現のしようがない雰囲気でした。
そんな朝の風景を横目に出勤。そして仕事を経た夜の退社時間には、これまた少し変わった風景を目にすることになります。
それは、歌舞伎座周辺の道路に路上駐車された黒塗りのクルマの数々。おそらく新しい歌舞伎座でセレモニーが行われているのでしょう。
路上駐車されたクルマは、レクサスLSを筆頭に、メルセデスS、マイバッハ、アウディA8、クラウン、センチュリーなどなど、そうそうたる顔ぶれです。
そのクルマたちの多くはロングボディのリムジン。
新しい歌舞伎座のビルにはちゃんと地下駐車場があるのですが、その駐車場は既にリムジンでいっぱいなのか、あるいは出庫する時間がないくらいに多忙なVIP待ちなのか、こんな立派なリムジンたちが街に溢れる様子は、銀座であってもそうは見れません。
普段は比較的地味な銀座のはずれに、レクサスLS600hLがひしめいて停まっている風景は、何だか少し異様な感じがします。
さて、ここから今日の本題。
レクサスLSと言えば、言わずと知れたレクサスのフラッグシップモデルです。
オーナーカーというより、今回見たクルマたちのようなショーファードリブン(お抱え運転手付きのリムジン)としても活用されている場合も多いですよね。
LSロングに乗ってみると、後席ゲストは最高のおもてなしを受けた気になれる、至れり尽くせりな雰囲気を味わうことができます。なるほどVIPが好んで乗る訳です。
さて、こんな高級リムジンは、どうやって売れていくのでしょうか?
レクサスLSの場合、お客様の多くは法人となります。例えば、会社の社長さんや重役さんの社有車。運転手付きの場合もあれば、オーナーカーの場合もあります。
次がフリートと呼ばれる、ハイヤーなどの会社。こちらは営業用の登録ですね。
そして個人のお客様。この方達もやはり、個人事業主さんだったりします。
そして、これらの購入者の殆どは、"現車を見ない、そして試乗をしない"買い方をするそうです。要するにショールームには行かないんですね。
セールススタッフが会社や自宅を訪問して「そろそろお車も車検ですし、新しいのいかがですか?」と伺えば、後はカタログだけで商談完了。なんともシンプルな世界です。
カタログのみで商談成立!これこそカタログの有効な使い方なんだよね、と関心してしまいます。
こんな場合のカタログは、商談ツールとして一旦使われると、あとはエグゼクティブの執務机の書類に埋れて、役目を終えてしまいます。
聞けば、どうやらLSを選ぶケースには「何でもいいから、一番良いやつを持ってきて」という事が少なくないんだとか。
まさに、クルマの存在はひとそれぞれな感じですね。
この"カタログだけでクルマを買う"ケースには、別の場合もあります。
それは、アストンマーチンやフェラーリを購入するケース。
このようなスペシャリティカーは、カタログでしか買えないケースが多いんだそう。
もちろん大都市にはショールームもあるのですが、この手のクルマの商談の場合は、お客様の自宅などにクルマを持っていく事が多いんだとか。
アストンマーチンなどを選ぶ人は相当なクルマ好き。だから、単に"良いやつを持ってきて"ではなく、じっくりとクルマの世界観を楽しみながら選びたいという想いがあります。
但し、こういったスペシャリティカーは、そうそうクルマを在庫している事もないので、現車を見れない場合も多い。そんな時、カタログは唯一の情報源になっているのです。
この場合のカタログは、いつまでもエグゼクティブのそばに置かれ、時折想いを馳せるためのアイテムになります。
質の良いソファに座りながらカタログを眺め、自分だけの仕様を頭の中に思い浮かべる…そんな雰囲気。
さらに余談ながら、日本に存在しないモデルを、セールススタッフと一緒にイタリアに見に行く、なんて事もあるとか。
生産工房を訪れ、その場で自分オリジナルの仕様を選択する。なんて贅沢なクルマ選びでしょう!
僕のような量産車を購入するケースでは、カタログのみに頼った購入プロセスはなかなかないかと思います。
クルマ選びの際に、ショールームでクルマに触れ、試乗を楽しみ、そして部屋に持ち帰ったカタログを眺めながらそのクルマとの生活を想像する。
さらには、まだ乗ることのできない憧れのクルマを紙面から眺めることもあります。
こんな、極めてスタンダードなプロセスが一番楽しいし馴染んでるなあ、と思ってしまうのは、やはり僕自身が庶民だからなんでしょうか。
ついでに、女性はモノを感性で選ぶのに対して、男性はカタログを集めてから候補の商品たちを比較し、モノ選びをする傾向にあると言われています。
これは自動車に限らず、家電、カメラなどにも当てはまる、共通の消費行動特性のようです。しかも、この傾向は年齢が上がるほど強くなるとか。
皆さんは思い当たるフシがありますでしょうか。