
先週行われた、英国の国民投票によるEU離脱の結果ほど、世界中が意外性に驚いたニュースはなかったのではと思うくらい、週末はBrexitの話題で持ちきりでしたね。
英国の人々の選択意図は様々な志向があってこそであり、それについての是非や賛否はここで書くつもりはありませんが、この出来事による株や為替への反応という政治経済への影響が、直接日本に住む僕らにダイレクトに響いてくる瞬発力があっただけに、他山の石とは言い切れない面が多々あるのかと思います。
それに、遠い日本にいながらもメディアの取り扱いが凄かった。
NHKは選挙速報ばりに画面にインポーズしっぱなしだし、ニュースもワイドショーもみんなBrexit。
そしてそういう僕も、もちろん一日中テレビに釘付けになっちゃったタイプ。
(たまたま有給休暇だったということもあり…)
テレビを観ていない投票時間でも、BBCのネットニュースでリアルタイム開票速報を見ていました。
(社会的関心事として、そして少しばかりお祭り気分として)
離脱票優勢になり為替が動き始めると、おいおいマジか…とザワザワし始め、特に自動車メーカーで海外業務を担当する友達とのLINEが盛んになり、BBCとLINEを交互に見るという時間を過ごしたのでした。
今回のBrexit、EUから離れることによる様々な社会的、経済的影響も気になるけど、やはり一番気になるのは、自動車のこと。
長い間クラシックミニを趣向していた僕としては、放っておけない想いなんです。
現在英国には、アストンマーチン、ベントレー、ケータハム、ジャガー/ランドローバー、ロータス、マクラーレン、ロールスロイスなどのプレミアム&スポーツカーメーカーと、ヴォクスホール、トヨタ、ホンダ、日産、ミニ、MGといった量産車メーカー、そして商用車メーカーやF1コンストラクターズなど、自動車メーカーが多くあります。
往年の英国ブランドが並んでいますが、残念ながら上記の殆どがもはや外資系。
今となっては、純粋な英国資本ブランドはアストンとマクラーレンくらいじゃないでしょうか。
しかし、これらのクルマたちは"Made in the UK"のバッジをつけて、EUだけでなく世界中に輸出されています。
英国全体での生産数における輸出比率は約80%とのことで、ほぼ輸出向けと言ってもいいかと思います。
ちなみに自動車輸出大国に思える我が日本は約50%程度なので、英国の輸出比率がいかに高いかがわかりますよね。
自動車メーカーは世界中で現地化とグローバル調達が常識化している中、英国にその生産拠点が多いのは、EU域内という貿易上の利点と、そもそも強かった自国産業として、設備資産と経験豊富な労働者が多いからと言われています。
そしてこの英国を欧州拠点としているブランドの中に、日本メーカーが多いのも、そういった戦略の流れがあるようです。
例えばトヨタはオーリスやアベンシスを、日産はジュークやノート、リーフなどを、そしてホンダはジャズ(フィット)やシビックを製造しています。
現在でも日本で販売されるアベンシスや、限定販売のシビックタイプRなどは英国製が輸入されているように、英国から欧州、世界へとデリバリーされている日本車は多いようです。
(例えば、なんとホンダは欧州向けの40%以上を英国で生産してるとか)
それがEU離脱により本来メリットが得られないのでは、存在する意味がありません。
そんなことだから、日本の政府も経団連も、英国の日本企業の利権を守ることに注力宣言しているのは、当然のことなんだろうと思います。
さて、若干ニュースの単なるトレース的な話題になってきたので、ここは視点を変えて、Brexitでクルマ選びが変わるのか?ということを考えてみたいと思います。
僕の仮説は、ズバリ”クルマ選びの楽しさが更に増えるのでは?”です。
根拠はゼロですが、ここはあえてポジティブに考えてみたいと思います。
今回のBrexitによる経済は、英国とEUという関係においては、そこでビジネスする日本企業も含め深刻な課題があることはニュースで散々やってる(あるいは前述の)通り認識していますが、日本に住む消費者にとっては必ずしも悪い未来にはならない可能性もあるのでは?と思うのです。
まさに、Made in the UKのクルマがより手軽になる、という仮説です。
現在、EUからの輸入品には、当然ながら欧州共同体統合関税率(TARIC)という制度により、基本的にEU加盟国のどこで作られたとしても共通の関税がかかっています。
英国がEU離脱となると、当然ながらこの統合関税は対象とならず、国同士の個別の協定が結ばれると、ニュースでも言ってますよね。
そこでもし、日本と英国との間に”関税不要”のTPPのような協定が結ばれたりしたら!
BMWミニはローバー時代の”フェアプレイ政策”のような価格戦略があるかも知れませんし、オーリスやアベンシス、シビックなどの輸入比率が高まったり、ヴォクスホールの工場で作られるルノートラフィックや日産プリマスターのような商用バンが導入されたりするかもしれません。
それに、並行輸入車だって英国経由で仕入れたらほぼ現地価格(+コミッション)となるために多彩なチョイスができる可能性もあります。
アストンマーチンやマクラーレンのようなプレミアムブランドもう少し身近になるかも?なんてことも。
更に想像を膨らますと、自動車以外の日英間のいろいろな事がもっと自由になるかもしれませんよね。
一度は上陸に失敗したテスコ(世界小売3位のスーパーマーケット)が再び日本で全国チェーンになったり、ウォーカーズのショートブレッドが更に身軽なおやつになったり、夢は広がります。
なんて、あくまでもある一片からの視点でのBrexitを考えてみたりしましたが、実際の情勢はまだまだこれからがスタートである以上、どうなるのかしばらくは興味は尽きません。
ひとつ言えるのは、通貨もパスポートも通行車線も最後までEU化しなかった英国だけど、これを機にもっと近い存在になればいいな、という期待をしてるんですけどね。
*文中の数値資料は英国Dairy Telegragh紙、英国自動車工業会、日本自動車工業会、JETROなどの記事・公表文献から参考としました。