
マニアックなネタながらも地味に続けているブログ、”LCV(Light Commercial Vehicle=いわゆる小型商用車)が好き”シリーズ。
僕がこのみんカラでブログを書きだしてから4年半、不定期ながらも地味に続けてきた”気になる商用車ネタ”も10回目になります。
そこで今回は、欧州で売れてるLCVって何なの?という視点でモデルを見てみたいと思います。
題して、わんどら風”欧州LCVベストセラー考察”。
欧州の街の活気を想像しながらお付き合いくださいませ。
そもそも、欧州で最も売れてるLCVって何なんだろう?
その観点で調べて見ると、なるほど納得、そして意外の双方が考察されます。
早速2015年の販売ランキングを元にみて見ると…。
欧州で最も売れているLCVは、フォードトランジットなんです。
日本では馴染みのない商用車ですが、確かに欧州ではよく見かけます。
商用車に関してはPSAブランド一人勝ちの感があるフランスでさえよく見かけたというのが実感値。
実際のマーケットシェアを見ても12.5%(約21万台)とダントツです。
(ちなみに乗用車市場におけるトップシェアのVWゴルフですらシェアは3.7%という数値が示す通り、このトランジットの12.5%というのはめちゃダントツのシェアなのです)
何故こんなに受け入れられているのか?
軽く調べた程度ではよくわかりません。
ただ言えるのは、趣向を問わない商用車販売において、トランジットはボディバリエーションが多彩です。
スモールからラージサイズまでセグメントを超えて多種多彩。

これはかつてのカローラのようなバリエーション商法による販売台数稼ぎのような気もしますが、このラインナップはあらゆる商売にマッチすることを示していて、まさにLCVの理想形モデルなのかもしれませんね。
次に売れているのがこちら、

メルセデスのスプリンターです。
欧州でのマーケットシェアは5.4%(約9万台)。
(この数字が示す通り、トランジットの一人勝ちが引き立ちますね)
大型商用バンとしての定番モデルは、スリーポインテッドスターのついたプレミアム感溢れるイメージですが、実はガシガシ使えるザ・商用バンなんですよね。
メルセデスのLCVは意外と古くから世界中のあちこちに浸透していて、特に70年代終盤に登場したT1モデルは、今でも東欧や新興国系では活躍が見られる古参モデルです。

そんな意外と各国の商売に根付いた実用性(プレミアムとは違った側面)が、モデルがアップデートされても支持され続けている理由なのかもしれません。
第3位はフィアットデュカート。

マーケットシェアは4.6%です。
メルセデススプリンターの対抗馬となる大型LCVは、意外にもイタリアンブランドです。
但し、車体はPSAモデルの兄弟車。
プジョーもシトロエンも同じ形のモデルを出しているのに何故売れているのはフィアットなのか?
少し調べてみたのですが、イマイチよくわからないというのが僕のリサーチスキルの低さ。(中途半端でスミマセン…)
ひとつ気になったのがファイナンシャルプランの差。
いくつかのユーロ導入国での各社サイトを見てみると、車両価格に連動しているのか、どの国もフィアットの分割払いは安いのです。
企業の車両管理者あるいは商店主にとってはこのファイナンシャルプランの魅力も商品購買の重要なファクト。
もしかしたらこんな要因も上位シェア確保の効果を担っているのかもしれません。
さて、話はややこしいのですが、欧州のLCV車種ラインナップはメーカーアライアンスが複雑に絡んで構成されています。
例えばルノーは日産とオペル、そしてスモールLCVに限りメルセデスと提携し、PSAプジョーシトロエンはユーロバンプロジェクト絡みでフィアットと、そしてTPCA絡みでトヨタと提携しています。
このルノー対PSAの2大陣営に加え、基本は独立系のVWとフォードも大型LCVのみ共通化したりと、関係性はなかなか複雑。
こんな欧州での図式の中、このフィアットが既存の勢力図を塗り替えるトリガーになるかもしれません。
それは、最近のクライスラー資本化に伴い、フィアットはこれまでのPSAとの提携を解消し、ルノー陣営へと鞍替えしたのです。
これにより最新のフィアットのミドルクラスLCVである”タレント”(PSA提携時代の同車種名はスクード)は、車体もルノートラフィックと共通化されています。
これによりマーケットシェア争いにどう変化が出るか?少し興味がありますね。
こうして、単独メーカー間の競争というよりも、アライアンス単位でのシェア争いの様相を呈しているのが、欧州LCV市場の特徴なんです。
こんな観点で欧州の自動車産業を見てみるのもなかなか興味深いですよね。
さて、売れてるLCVランキングを続けて見てみると…4位はなんと、シトロエンベルランゴなんです。

続けて5位はルノーカングー。

どちらもフルゴネットタイプのスモールLCVとして人気の車種です。
意外?なのは、2015年度に関してはカングーよりベルランゴのほうが売れてるスモールLCVだったりもします。
とは言え、実はシェアはお互い4.6%前後と僅差(欧州28ヶ国合計の台数ベースで2500台程度の差)。
実はさらにはランキング6位のプジョーパルトネールも同様の僅差にて、スモールLCVは三つ巴の戦いになっています。
しかし欧州全土で見ると、印象的にはこのフランスメイクたちよりも、同クラスのライバルであるVWキャディのほうが人気があるのでは?と感じていましたが、実はキャディはランキング9位と、意外と控え目なのです。

VWといえば往年のタイプ2に始まり、トランスポルターに至るまでの元祖かつ定番商用バンというイメージがあるのですが、欧州全域でみると意外とLCVのシェアは少ないんです。
そのトランスポルターはランキング10位。
同クラスのミドルサイズLCVであるルノートラフィック(8位)のほうが売れているのです。
トランスポルターよりもトラフィックのほうがスタイリッシュ!という要素は個人的に感じますが、それがメインの購買動機の訳ではないですよね。
ただ、LCVの購買理由にスタイリングという要素がどの程度影響するのかは、またの機会にじっくりと調べてみたいと思います。
ということで、10回記念の欧州LCVランキング、いかがでしたか?
陸路での移動が重視される欧州においては、乗用車と同じくらい商用車も活躍し、マーケットにおいても確立した存在です。
ハイエースかNV350か、はたまたNV200かのほぼ三択(大雑把ですが…)の日本よりもはるかに充実した欧州市場のラインナップは、デザイン、機能、ユーティリティなどのニーズに応じた選択肢に溢れています。
欧州を旅する度に、働くLCVの姿に思わずカメラを向けてしまう私わんどら。
やっぱり実はLCV好きとして、これからもウォッチしていきたいと思います。