
今年の初めに「試したいのが試しドキ 2020」として、試してみたいクルマたちを当時のラインナップで宣言した(いやむしろ自身に言い聞かせる感じ?)私わんどら。
2019年に体験できなかったモデルから、今年登場の期待のもの、単に試したいもの、購入検討として試したいものといろいろですが、去年は重い腰を上げられなかったことから転じて、今年は積極的に行こう!と思っていたのでした。
年初よりBMW1シリーズ、3シリーズツーリング、アウディA1と試乗させていただき、今年は宣言通り多くの体験ができると思っていたものの、例の緊急事態宣言下での行動変化と、気分の問題からすっかり意気消沈となってしまいました。
しかし7月になり気分も状況も上向き(私の住む地域は雲行きが怪しくなってきましたが…)、よし溜まった宿題をやってみようと、DLR訪問そして試乗体験を再開することに。
そんな復帰体験第一弾が、この新型フィットです。
最近少しずつ街でも見かけるようになってきた新型フィットですが、これまでの前傾姿勢のシャープな雰囲気をガラッと変えて、ほんわかした雰囲気と変わったスタイリングは、街で見てもまったく主張する気配がありません。
強い新しさを感じない、どこにいても違和感なく、まるで昔からそこにいたような雰囲気さえあります。
(わんどら的には未だにフィット3のワゴンモデル(シャトル?)のほうに目が行ってしまいます)
そんなほんわかのフィットを試してみたかったのは、その感性性能を磨いたという真意と、シトロエンを参考にしたという開発者のコメントを体感したかったから。
DLRを訪れ体験したのは、HOMEというe:HEVの標準モデル。
いま試乗車を用意しますね、とエントランスに現れたクルマを見た第一印象は…ほんとシンプルだ!というもの。
「これって法人向けの廉価版ですか?」と思わずセールス氏に聞いてしまったほどノーブルな感じですが(特にボディカラーが白だったから?)、それが街で見たときに感じた「ほんわか感」の源なのでしょう。
見た目から感性性能は始まっているのですね。
乗り込むと、インパネ上にあしらわれた白い皮革風のトリムがまた優しさを感じさせてくれます。
また、平らなダッシュボード、メーター表示、2本スポークのステアリングなど、そのデザインひとつひとつが徹底的にシンプルで、その意図的な柔らかさは、このクルマに乗る人はきっと煽り運転などしないだろう(そんな気分にならず、皆優しい気持ちで運転したくなる)なんて勝手な想像をしてしまいます。
走り出すとこれまたシンプル。
加速がいいね、とか、トルクとか、ブレーキがとか、ハンドリングとか、正直、感想はないのです。
ただ感じたのは、実用域で試乗する中、あっという間にその運転感覚に慣れ、あっという間にステアリングの切れ角が体に染み入り、自然にアクセル&ブレーキを踏み、クルマは動作するということ。
これはある意味すごいことなのでは?と思ってしまいます。
何か興味深い走りを期待してハンドルを握った自身には拍子抜け感がありますが、これがこのクルマのメッセージにあった「ここちよさ」というものなのかもしれません。
きっとクルマ好きには受けないけど、クルマを必要とする多くの人の気持ちにはスッと入っていける、ちょっと可愛らしいペットみたいなものかもしれません。
フィットをグローバルBセグモデルとして位置づけた際に、ぜひトヨタヤリス(まだ未体験)や新型プジョー208と比べないと!と思ってましたが、それはやめます。
何だかベクトルが違いすぎる気がして仕方ないのです。
ただ感じたのは、シンプルと安っぽさは紙一重なのか?ということ。
あれ?東京モーターショーで見た時に感じた質の良さとは随分と印象が違うぞ、と感じてしまったのは、ショーならではの高揚感のせいでしょうか。
何といってもインパネ樹脂の質感が安っぽい。
それ故に折角の白い柔らかアクセントのトリムも、素材同士のミスマッチ感があります。
(ちなみに白い皮革風トリム素材自体はまだ良しとしても、クロスターに装着されるグレーファブリックの質感は更に…)
外観も「法人向け」を感じてしまったように、色や加飾でもうちょっと着飾ったほうがよいと感じました。
(2トーンカラーがあるようで、それは興味深いけど)
こういったあたりが「感性性能」を言うならもうちょっと詰めてほしかった…車両単価は上がってるんだし。
さてもうひとつの気になるポイント、シトロエンからの影響という面についても確かめてみました。
あるメディアによる開発者インタビューで語っていたポイントは、
・乗り心地はシトロエンC3を参考に
・心地よい視界はシトロエンC4ピカソを参考に とのこと。
さて私の印象は…どちらも「目指した気持ちはわかる」というもの。
チーフエンジニア曰く、フィット3のベンチマークはVWポロだった(どうしてもドイツ車)という中で、今回は「心地よさ」のコンセプトの元で競合にフランス車を入れたといいます。
試して感じたのは、日本メイクの開発はまとめ方がうまい(→無難→感想がない(普通にこんなもん))んだろうなと思った次第。
やりたいことわかるけど、シトロエンほど特徴に尖っていない。
例えば解放感を与えるならフロントウィンドウを頭上まで伸ばしたC4ピカソや先代C3のように徹底的にやる、という大胆さがない。
その分、ユーザーが想像できる範囲での乗り心地とか、解放感とかしか残らないという気がします。
どちらが正かはわからないのですけどね。

ということで、C4ピカソを参考にしたというフロントA-Bピラーの窓など、ここピカソに似てる!と思いつつも、何も言われなければ初代フィットから続く三角窓の発展形じゃんという、フィットのアイデンティティでもあることを感じます。
(ちなみに初代フィットはその昔、実家の所有車でして、よく運転していました)
そんな、確かにフツーに「心地よく」なったフィット。
なんだかんだ言っても日本を代表するコンパクトカーのひとつだし、街でたくさん見ることは遠くないんだと思います。
きっとその新型に乗る多くのユーザーが、フツーに心地よさを感じてくれたら、メカに頼っただけでない「気持ちの余裕」というプラスアルファの安全機能が宿るような気がします。
そうしたらこのクルマのコンセプトは成功なんでしょうね。