
先日、親父と新型シビックタイプRを試乗してきました。シビックタイプRには、僕は2つの面から興味がありました。1つ目は、ホットハッチ、GTIクラスというものを作った初代ゴルフGTIに乗っているものとして、その次々現れた和製ホットハッチの中の究極系である初代シビックタイプR(EK9)の末裔は、どんな進化を遂げているのか見てみたいという気持ち。2点目は最盛期のBTCC、JTCCなど、8500rpmリミッターを持つ2リットルNAのハコの4ドアセダンによる拮抗した見ごたえのあるレースの記憶がとても印象深く、いつか、あんな車が市販されたら良いのになと思っていた夢が、今回ついに実現されたという部分です。僕自身が乗った経験のあるシビックタイプRは初代(EK9)です。峠で友人が乗っていて、よく一緒に走りました。運転したときには、とにかくVETCが高回転側にシフトしてからの爆発的なパワーがすさまじく、それこそ、突き抜けるような加速感がとても印象に残っています。また、フロントダブルウイッシュボーンが効いているのだと思いますが、とても旋回性能が高く、すごくコーナリングスピードが高くて、そりゃあ、これと一緒に、ジムカーナやサーキットを走ると、負けるよなと思いました。
さて、前置きはこれぐらいにして、実際に試乗した感想です。エンジンスタートは、例によってボタン式。クラッチを切って、ボタンを押さないとエンジンかからないみたいです。アイドリングはとても静か。室内の静粛性も非常に高いです。クラッチは特に重くはなく、変わった形状のサイドブレーキを下ろし(ただし、シフトノブに近く、サイドターンはやりやすそう。でも、思いっきり引いたら、折れないかな?) それなりにショートストロークのシフトを1速に入れて普通にスタート。意外とアクセルが重い…。しかし、ボトムエンドトルクはよく確保されていて、エンストの心配はなさそうです。この辺は2Lになった恩恵でしょう。お店を出るとき、歩道を越えて出たのですが、そこで最初の驚きが。足がめっちゃ堅いんです。車がおろしたてで、新車の堅さが取れていないんだろうけど、わだちのシワを乗り越えても、しっかりそれを食らう堅さ。ボディ剛性が高いので、ミシリとも言わないのが救いですが、ちょっと同乗者には受け入れられそうにないです。その後、渋滞の中をのろのろ運転し、そこで気が付いたのが、2000rpm行かないくらいの低回転域のレスポンスのよさ。8400rpm回るエンジンが、1000rpm台でこんなにレスポンスが良いとは、驚きです。普通の実用セダンのエンジンと、なんら変わりありません。信号で止まり、前が開いたので、セールスの方の許可を得て、1速でスタートダッシュをしてみました。加速感は、とにかくリニア。EK9のB16Bのように、ある回転域から爆発的な何かがあるわけではなく、全域しゅんと回る感じです。VTECの切り替わりも、意地悪く観察しないとわからない感じ。ここでも、とても静かで、ボディの剛性も高く、僕の全開加速中も、親父とセールスの方がしゃべってました(笑)。その後、ブレーキングでは、とても剛性感の高い効きを示しましたが、最近の和製ブレンボ装着スポーティーモデルはみんなこんな感じかなというくらいで、特別すごいとは思いませんでした。ディーラーさんへ戻る途中、普通に街中を走ると、ギア比がかなり低く、そりゃあこのクロスレシオだったら、6速ないと厳しいよなという感じでした。だから、街中で普通に3速とかで3000rpmとか回っちゃうんですけど、静粛性がとても高く、気にはなりません。しかし、相変わらず、おそらくレートが10kg/mmくらいと思われる足回りが堅く、突き上げこそしませんが、路面の凹凸を正直に伝えてきます。リアシートに座った感想は、乗り心地以外はとても良かったです。最近の車にしては、ウェストラインが低く、後部座席の横の窓も広いので眺めもよく、短時間の試乗ではシートの出来も十分に良いと感じました。今回の試乗で一番印象に残ったのは、リアシートの心地よさです。
まとめると、今回のシビックタイプRは、僕から見ると、「この◎◎を味わえるのなら、ほかの部分の不出来なところは、目をつぶっても良い」という、理屈を超えて感性にダイレクトに訴えかける部分が見つかりませんでした。やっぱりエンジンに期待しますが、しゅんと回るけど、7000回転ぐらいまででは、EK9などで味わえた突き抜けるようなVTECパワーもないですし、それは低速側の調教が行き届いているためなのだとは思いますが、以前のVTECのような感覚は、見つけられなかったです。遮音性やボディ剛性感、いろいろなフィーリングなど、どれをとっても及第点の優等生ですが、どこかがずば抜けてすごいという部分が、わかりにくいです。今回、4ドアということで、ランサーやインプレッサと比較される部分もあると思うのですが、あっちのターボパワーは、やっぱり解りやすいです。FF最速のマシンを目指したということですが、18インチの、SタイヤみたいなRE040に頼っている部分も大きそうですし(タイヤ交換、1回20万はするんでしょうし)、あの堅い足回りも一役買っているでしょう。でも、ジムカーナのN車両にしても、純正形状のスプリングなら交換が許されているので、おそらくもっとレートを上げる必要があるでしょうし、普通に待ち乗りするだけには、堅すぎまず。結局、まったく無改造で出しか出られないノーマルジムカーナか、ジャーナリストの箱根での試乗くらいしか、この車のおいしい部分が引き出せる状況って、ないんじゃないでしょうか。やはり、SIRにとどめて、もっと普通の足回り、ブレーキでコストダウンし、換えたい人は競技用に堅い足回りに勝手に変えてくださいという形にするか、もしくは競技ベースグレードとして、内装のこった演出などはやめて、もっと安くするか、どちらかにしたほうが、良かったのではと思います。
ブログ一覧 | クルマ
Posted at
2007/05/06 13:29:14