
言うなればFRポルシェ(944あたり)に近いフィーリングを持っており、「走る、曲がる、止まる」がしっかりできる稀有な日本車と言えるでしょう。
そして、それら操作を学びたいと考える人にとっては最適な車であり、オプションパーツも豊富なのでそれらパーツを装着することでどう車が変わるのかを知ることができる「教材」としても優れているように思います。
要は「ドライバーと一緒に成長できる車」で、強くお勧めできる車であり、同時に自分自身に対してもかなり購買意欲をそそられる車でもあります。
なお操作に対するリアクションが正確であり、ちゃんとした操作をしないと思ったとおりに(速く)走れないのも86の特徴で、そこもポルシェ(とくに911)に似ていますね。
先日試乗したアバルト124スパイダーも非常に優秀なスポーツカーですが、そちらはターボエンジン採用とオープンレシオで比較的おおらかな味付けとなっており、それはブレーキやハンドリングも同様。
一方86はけっこうシビアであり、NAエンジンのパワーバンドをクロスレシオを駆使してキープし、同時にアクセルとステアリング操作もビシっと一致させなくてはならないという「スイートスポットの狭さ」があります(とくに1-2速はかなりローギアードに思えるのですが、そのあたりのギア比がこれまでと変更されているのかどうかは不明。低速トルクが増したのでそう感じるだけなのかもしれない)。
その意味で86は「かなり狭いところ」を狙ってきたなあという印象があるのですが、現代においてはどの車もマイルドになってしまい、クルマ本来の挙動や操作に対する反応が曖昧になってきているので、そこは86の独占市場なのかもしれません。
とにかく現代において、これだけ「ピュア」な車も珍しいと思われ、そこは新鮮な驚き以外のほかはない、と言えますね。
これまでの86に比べてもその「ピュア」さは際立っており、一番変わったのは「ドライバーの操作に対する反応と、意のままに操れる基本性能の高さ」と言えそうです。
ここはトヨタが86の既存オーナー像/市場での86の捉えられ方を研究し、いたずらに高級や快適路線にシフトせずにしっかりと86のポジションを認識し、よりユーザーが86求めている内容を反映させてきたと想像できるところ。
トヨタは86にターボエンジンを搭載しないことについて「ターボは安易な解決策」と論じており(実際はターボを押し込むだけのスペースが無いだけなのかもしれない)、それを身をもって体感することが出来た試乗で、「パワーよりももっと重要なものがある」ということを思い出させてくれた試乗でもあったと思います。
なお前後重量配分はドライバーと助手席に人が乗った状態で53:47なので空車状態だとフロントの荷重がけっこう重いということに。
しかしながらこれはほかにFRスポーツカーを持たないトヨタとしてはよく頑張ったと褒めるべきですが、逆にここまで車の出来が良いと「トランスアクスルにして空車状態にて50:50まで持ってきていれば」完璧だったのになあ、とも考えます(そのぶん価格も高くなり、そうなると簡単に手が出なくなるのでやはり難しい)。
将来的に速く走る技術や知識を身につけたいのであれば、そして走る楽しみを知りたいのであれば、マイナーチェンジを受けたトヨタ86は強力に推薦できる車と断言します。
Posted at 2016/11/15 13:28:43 |
日本車 | クルマレビュー