
エンジンについては12Cではやや気になったターボラグも解消され、かなり鋭いレスポンスを示します。
アクセルを踏むと吸気音が大きくなってやる気を刺激しますし、タービンの回るものと思われますが金属音のようなものが「いかにも精密機械」という印象を与えてくれますね。
ミドシップでターボエンジンということから篭った音を想像しがちですが実際はかなり透明感のあるサウンドで、レスポンスよくアクセルに応じて音が変化する様は大排気量NAのようなイメージ。
室内に入る音も心地よく、変な反響音なども感じられないところが良いですね。
これはもう抜群と言ってよく、ガツンとブレーキを踏んだ際のノーズダイブ、急加速を試みた際のノーズリフトもなく、ロールも最小限(というか感覚上はほぼ無い)に。
これだけ姿勢を安定させるにはさぞ足回りが硬いのだろうと思いがちですが、実際はサルーン並みの快適性を誇ると言っても過言ではなく、しかし柔らかいと言っても上述のようにロールやピッチングがほぼ皆無。
どうセッティングすればこういった足回りになるのか全く不思議としか言いようがありませんが、マクラーレン540Cの試乗において最も印象深いのはこの「安定性」でした。
「走る、曲がる、止まる」において非常に高いレベルでバランスしており、正直それは驚愕と言って良いレベル。
ぼくは今までこう言った「人の感覚に近い」加速やハンドリング、ブレーキフィールを持つ車はポルシェしかないんじゃないかと考えていましたが(多くの車はアクセルの開度よりも加速しなかったり加速しすぎたり、ブレーキを踏んだ分より効きすぎたり効かなかったり、ハンドルを切った分よりも曲がりすぎたり曲がらなかったりする)、マクラーレン540Cはポルシェのレベルを超えており、かつ操作を行うステアリングホイール、ペダルの取り付け精度や剛性もポルシェより高いと言えるでしょう。
※ここでいう「ポルシェ」とは価格帯が競合するポルシェ911ですが、ボトムが1000万円のポルシェ911とボトムが2000万円のマクラーレン・スポーツシリーズを比較することは、911にとってアンフェアであるのは間違いない
逆にフェラーリやランボルギーニのようなイタリアンスーパーカーとは完全に異なる性格を持っており、それらとの比較はあまり意味がないのかも、とも思いますし、実際に購入を検討する人はあまりこれらと迷わないかもしれませんね。
というのもポルシェはスポーツカー=日常性と定義しており、フェラーリやランボルギーニはスポーツカー=非日常性と考えていると思いますが、マクラーレンの考えるスポーツカーもまた「日常性」なのではないか、と思うのです(特にスポーツシリーズにおいて)。
ただし決してポルシェが劣るというわけではなく、マクラーレンの方が設計段階から「切り捨てて良いもの」が明確になっているためにこう言った差異が生じると思われ、マクラーレンがその多くを切り捨てた「実用性」というファクターを加味するとポシェに軍配があがるかもしれません。
しかしながら方向性が似ていることは間違いなく、これはポルシェオーナーこそ一度試乗してみる価値がありそうですね。
「スポーツカーにこれ以上求めるものは何もないいんじゃないか」と思えるほどのマクラーレン540Cですが、この価格でこれを実現できるのは驚きとしか言いようがなく、そのスタイリング、カーボンモノセル、レーシングカーのようなぶっといサイドシルや頑強なペダル類、何と言ってもガルウイングドア(ディヘドラルドア)という排他的要素を備えており、それらは「乗るたびに」視覚や触覚を持って体感できるため、所有する満足感はかなり高いと言えそうです。
Posted at 2016/10/03 09:12:16 |
イギリス車 | クルマレビュー