先日、PAO系キューミックの紹介をした。埼玉55が買った2種類だ。塩基価とロングドレイン性について少しふれたのだが見て頂けたようなので、もう少し突っ込んだ話をする。
ほとんどの方が興味が無いのであろうが、これが解らないとなぜDPFが詰まるのかも解らない大事な話です。
■Grade-1 XXα SN/C3(12)5W-40
・密度:0.858g/㎤
・引火点:254℃★
・ 40℃動粘度:86.49㎟/s
・100℃動粘度:14.55㎟/s
・粘度指数:176
・塩基価:7.30mgKOH/g★
■Multi Diesel DL-1 0W-30
・密度:0.8470g/㎤
・引火点:230℃
・ 40℃動粘度:53.70㎟/s
・100℃動粘度:11.20㎟/s
・粘度指数:209★
・塩基価:4.50mgKOH/g
・硫酸灰分:0.45Mass%★(DL-1は0.6%以下)
ジュンツウネット21で「潤滑油の試験方法の概要と意義」2007/10というのが公開されており、理系の方は是非読みこんでおいてほしいのだが、埼玉55が塩基価が高い方がいいとしているのは、ロングドレイン性能があると、少々ずぼらこいてオイル交換を伸ばしてもエンジンが汚れにくいのである。
●原文ママ
A:塩基価は燃料油中の硫黄分から生成する硫酸に代表される酸化性生物を中和し,エンジン各部の酸による摩耗を抑制する能力の指標であり,塩基価が管理基準以下まで低下することは異常摩耗を誘発することになる。また,塩基価成分はすすや無機系の中和生成物などを油中に分散させエンジン内部を清浄にする能力を有するが,★この成分の減少(塩基価の低下)はエンジン周りの汚れを促進し,ピストンリング膠着など種々のトラブルの発生要因になる。
●では塩基価を上げたいところだが、DL-1にはできない事情がある。DL-1の規格は硫酸灰分が0.6%以下となっている。
塩基価を上げるにはCaスルホネートなど金属系の清浄剤をたっぷり入れるのであるが、そうするとそれは灰分となり硫酸灰分の0.6%以下がクリアできない。
よって、DL-1はこの塩基価と硫酸灰分のバランスを見てオイルを選ぶことになるのだが、適切にデータ公開がされておらず、面倒くさいのでDL-1はやめてC3にしていた。
C3は硫酸灰分が0.6~0.8%以下のものが多いようで、このオイルでは倍ほど差があると思われるのでDPFに悪いのでは?と思われがちだが恐れる事は無い。
●オイルミストの出にくいオイル(密度が高く、引火点の高い物で高粘度のオイル)を選び、オイルキャッチタンクでガッツリ捕集すると、オイルミスト系のDPF問題は発生しない。それでロングドレインかつエンジンがきれいだという事なのでWIN・WINという事かな?
●つまるところ、塩基価の高いC3を選ぶこと=硫酸灰分が多い ということなので、CaSO4でDPF詰まりを誘発しやすくなる。外車はいいのですが、スカD2.2はDPF容量がちっちゃいとか言われており、オイルキャッチタンクの設置をお勧めします。
負荷試験をしないと解らないが、それにしてもこのDL-1はバランスがよさげで、次回スカDの新車を買ったら、新車の内はこれだね。
粘度の設定を見るとW30としては粘度が高く、燃費の追求よりエンジン保護に振っていることから、企業としてのスタンスが伺える。
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エンジンオイル | 日記
Posted at
2021/11/29 18:22:42