2022年10月25日
今回のお掃除オフ会で、DSC等の煤取り後、すぐに吸気シャッターバルブに煤が堆積する事が解かりました。
当然個体差はあると思いますが、3000キロも走れば堆積するようです。この時あまりオーナーは気が付いておりませんが、煤を拭き取りした後に低速域での加速感の大きな改善を体感しておりますので、確実に空燃比が崩れている事がわかります。
・あまりに溜まる量が多いとアイドリング時のハンチング現象が起きるようです。
・切ない話しではありますが、ディーゼルエンジンとはそういう物だと考えて拭き掃除などできる事をきちんとやるだけです。
●吸気シャッターバルブへの煤堆積メカニズムの考察
いつも長いが、今回は更に長いです。眠れない方は睡眠薬がわりに✨
なぜあそこに煤が溜まるのか?という事を考察しておくのも何かのヒントになるかと思います。
煤の供給元は100%EGRと考えて問題ないと思います。HOT時なのか?COLD時なのか?は重要なファクターだと思いますが、検証方法が思いつきませんのでここでは単にEGRとしておきます。
・リチャージさんの動画でアイドリングストップなどエンジンが停止した時にインマニ内の煤が空気中から落下して付着する説の話がありますが説です。重力による落下も当然ありますが、天井部分にもたんまり煤は付着しておりますので、鵜呑みにしないでください。
・埼玉55は一部分の話としてはあり得るが、吸気シャッターバルブへの煤の堆積メカニズムは異説を唱えさせて頂きます。
・理由はCITYオフローダさんのブログの写真を見ればよく解りますが、バタフライのふちに沿って4~5mm偏って堆積しており、堆積に均等性が無く重力落下によるものとは考えられません。これが堆積の起点となりどんどん平面的に成長していきます。
①EGRの温度について
まず、COLDについては基本的暖気は済んでおり、完全暖気後は95~120℃程度のEGRが流れると仮定します。HOTについては暖気中がメインですが、完全暖気後もチョクチョク流れているようですので、完全暖気後は200℃程度のEGRが流れると仮定しておきます。
・両者の完全暖気前の温度は外気温+αとなりますが、水温より常に高いと考えられますので、40~90℃位と想定しました。
②煤の質について
過去の分解掃除の経験より、HOT経路の煤は乾燥してサラサラ感があります。COLD経路の煤はEGRパイプの中の煤を観察しますと、黒々として粉りゅう状で一見乾いているように見えますが、指で揉むと湿り気を感じます。
・また、精製水に水溶試験をしたところ完全に水をはじく性質があり、油分が煤の表面にまとわりついている事が解かっております。
・煤は本来水溶性で、我々が煤と言っているのはPM物質であり単一化合物ではありませんので今後PMと言います。
・吸気シャッターバルブの裏側に付くPMは更に湿気を帯びており、表面は一見乾いていそうでも★かなりオイリーな堆積物となっております。
・このことよりオイリーさは、EGR中のPM自体の性質では無く、吸気シャッターバルブがオイリーになっているところへ飛来したPMが吸着していると考えられます。
③いつ堆積しているのか
吸気シャッターバルブはEGR導入パイプ(俗称潜望鏡)より上流過程にありますので、常識では通常走行中は吸気エアーの流れに逆らってPMが遡上する事は考えにくい。
・但し、車のリアハッチがカルマン渦で汚れる現象より、ずばりバタフライ開度が少ない時に、バタフライと内筒の隙間を通過したエアーがカルマン渦を発生させ、その渦に引き込まれたEGR中のPMがサイクロン現象でドンドン中心部に溜まり、PM濃度の高い渦となってオイリーなバタフライ裏面に触れる事により付着堆積するものと推察しました。
・アクセル開度の小さい状況でその現象が連続して起こると考えます。3000キロ未満で発生している事より、運転時間にして100時間(平均時速30キロとして)も走れば立派にPMは堆積し始めております。
④個体差の謎
EGRがPMの供給源であれば、皆さんも埼玉55も変わりないはずであるが、堆積の有無の違いはなにか?埼玉55のバタフライ裏は1万キロ走行後もPMの堆積がほぼ無かったかわりに、ガム質の付着が1~2mm程度見られた。
④個体差の謎
EGRがPMの供給源であれば、皆さんも埼玉55も変わりないはずであるが、堆積の有無の違いはなにか?埼玉55のバタフライ裏は1万キロ走行後もPMの堆積がほぼ無かったかわりに、ガム質の付着が1~2mm程度見られた。
・内筒はクリーンなままであったので空燃比に影響を及ぼすレベルではなく、掃除後のフィーリングの改善はややあったものの皆さんよりは少ない。
・相違点としてインマニのオイル断ちを意識して2つの取り組みをしている
(1)オイルミストの少ないオイルのセッティングを意識している
(2)オイルキャッチタンクをW化してオイルミストを捕集している
・このことにより、吸気シャッターバルブがオイルで湿った状態になりにくく、この部位へのPMの堆積が少ないのではないかと考えます。
⑤メカニズムのまとめ
PMはEGRより供給され、吸気シャッターバルブのバルブ開度により発生するカルマン渦により上流へ遡上し、ブローバイガス中のオイルミストや水分(黄水)により温度の低いバタフライはオイリーに濡れた状態となっており、衝突したPMが付着堆積を続ける。
・尚この理論ではEGRのHOT,COLDの温度の違いによる堆積結果の違いは考えられない。
●対策はあるのか
・オイルキャッチタンクを2個以上できれば3個設置し、インマニをできるだけ乾いた環境にする
・オイル粘度を上げオイルミスト総量を減量する。オイル量はレベルゲージのL合わせ(多いとオイルパン内でオイルの暴れが大きくオイルミストの一因と言われている)
・暖気をしっかり、油温60℃(アクセルの付き具合よりピストンリングの隙間が60℃くらいでふさがる感がある)以下はふわっとアクセルとすることで暖気時のオイルのはね上がりと吹き抜け量を減らす
・ボルテックスジェネレータでカルマン渦を乱す乱流を吸気シャッターバルブ上流に設置するのもアイデアレベルとして面白い。論文も見かけないので特許もんかな?もう少し研究してみます。
→ブローバイ中の油分はオイルミスト(物理的撹拌によりオイルの飛び散りにより発生する)と油煙(油の温度による蒸発)があり、粘度UPはオイルミストを軽減できるが、油煙を押さえる方法はほぼ無いとの報告がある。
→ビレンザの高粘度オイルを入れていても短距離で発生していることから、やはり油煙対策のメインはオイルキャッチタンクに頼る事となる。
●関連する話し
油煙を減らすことはオイルではむずかしいようですが、良質なFM剤を潤沢に使う事により摩擦熱による油温の上昇を抑える事ができ、結果油煙総量も減ると言われています。量はデーターがないので解りませんし添加剤屋さんのセールストークです。有機モリブデンが有力との事ですが、スカDオイルの油煙の多さは摩擦熱によるものなのか軽質分(蒸発しやすい成分)の多さなのか疑問がある。
・それとは別にシェルルブリカンツジャパンの研究によると排気ガス中のPMの内4割ほどがスス・カーボンの炭化物質で、潤滑油成分(この場合はオイル飛沫がススやカーボンの表面に着く形)も3割以上が占めています。
・やはりEGRのPMの表面にはたっぷり未燃性のオイル由来成分が付着しており、水をはじくのですね。
・カーボンはオイルが燃焼した時に粘度指数向上剤(ポリマー)が主な発生源であるとされ、ポリマーで大きく増粘したオイルは避け、蒸発しにくい(引火点やNOACKの高い)オイルを使用する事で、PMの発生量を減らせると提唱しております。
・オイルの選定は公開されている情報が少ない事より困難な作業ですが、いずれ埼玉55がミカドのACEA C3 SP 0W-30を選んだ話をしたいと思います。キューミックもいい特性がありますのでご心配無く。
Posted at 2022/10/25 23:45:39 | |
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