
私もびっくりしましたが、皆さんこの話題で持ちきりですね。ちょっと思うことを少し書いてみます。
まず、そもそも今回の発表では、会社合併するのではなく、上に持株会社を作って経営統合する(ことを検討する)と言っているわけです。したがって、ホンダも日産もその傘下にそのまま残ります。ある程度独立性を確保したいから、ホールディングス化を目指すわけで、両社において「主従」「吸収」「救済」のような概念はおそらくないと思います。
先日の日産の9000人リストラは大きなニュースに見えますが、明らかに身の丈を超えていた過剰生産能力を整理しただけとも見立てられます。整理後でも十二分な生産体制を維持できているので、世間が騒ぐことでやりたかった工場整理が正当化できて、経営者は本音ではラッキーと思っている(は言い過ぎでも、ふふふシナリオ通りくらいに思っている)かもしれません。
現状で稼げる車がなく、日産の今後の危機感はすごくあると思いますが、現時点で赤字に転落しているわけでもないし、会社更生法を適用するようなことにも当然なっていないわけで、他所の資本に口出しされる筋合いもないと思います。敵対的TOBを仕掛けられることはあり得るかもしれませんが、総合的には難しそうにも思います。
日産の車の製品力が足りないという根本問題は重篤かもしれませんが、表にはまだ出せない次の仕込みがあるかもしれませんし、過去にも危機を脱した自動車会社の例はたくさんありますから、ここままジリ貧という判断は性急だとも思います。まあ、策がなければ潰れる(というか解体ばら売りか)ことはあり得ると思いますけどね。
ここ数年での世界市場の変化と競合の変化はあまりにも著しく、日産だけではなくホンダにも今後の危機感は相当あるでしょうから、やりやすい今の雰囲気を使って、一気に両者合理化で競争力強化を目指そうという意図ではないでしょうかね? 先の電気周りのアライアンスの話の中で、経営層の中では飲みながらでもそういう話も前々からしていたんじゃないかと思います。敵対的TOBのリスクを低減したくて発表を急いだということは、もしかしたらあるのかも知れませんけど。
それから、以前、日本では持株会社は禁止されていましたから、経営統合というと合併や吸収を連想してしまうかもしれませんが、それらとはだいぶ違うと思います。
台数ベースで世界4位、売上ベースで3位のステランティスという巨大会社の車であっても、アルファロメオもマセラティもクライスラーもシトロエンもそれぞれの個性を発揮しています。
中身の合理化はしつつも、それぞれの車は個性的であり、各ブランドの中での共通テイストを感じることはあっても、ステランティスとしての共通性を感じることは普通はないと思います。それと同じような方向を目指すのでは? アルファロメオやシトロエンのようなそこまでの強い個性がないのがやや苦しいですけどね。
そして、みんカラの中では、日産車とホンダ車が中身が同じ姉妹車になってしまうのでは?という懸念も多々見受けられますが、相手ブランドの車そのままで自社ブランドにするようなやり方は、経営統合後には逆にやらないんじゃないでしょうか? 自社にないタイプの車を他社から調達するからこそ、経営資源を使わずにラインナップ拡充できるメリットがあるわけで、似たカテゴリーの車のバッジエンジニアリングでは自社内で食い合うだけです。プラットフォームや構成部品の共通化はできるだけ進めるでしょうが、両社は、見た目もテイストも違う棲み分けのできる車に、逆にむしろしたがることになるのではないかと思います。
例えばこういうことです:
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/interview/1378524.htmlより
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「アルファ ロメオの今後についてジャン・フィリップ・アンパラトCEOに聞いた」
(‥‥‥‥大きく略‥‥‥‥‥)
――これまでアルファ ロメオはFRベースのジョルジョ・プラットフォームを用いてきたが、今後はステランティスの「EMP2」や「CMP」プラットフォームを使っていくのか? それをどう使い分けていくのか?
アンパラト氏:この問題はとてもシンプルであり、われわれはステランティスのスモール/ミディアム/ラージプラットフォームを使っていきます。なぜならプラットフォームを活用することで、グループ全体の技術から必要となるモジュールを選択することができるからです。そして私たちは“本物のアルファ ロメオ”を設計するために、「アルファ ロメオ タッチ」という項目を仕様書の中に盛り込んでいきます。
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中規模の一社でやれることでは、競合に太刀打ちすることが難しい世界に変わってきたということでしょう。
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2024/12/19 11:05:49