
みんカラには建築関係の方も多いと思いますので、釈迦に説法な方もいらっしゃることと思います。少し前のブログで書いた通り、今
カーポートを建てようと構想しているのですが、いろいろと調べているとなんだか
変な風潮だよなぁと思うことがあるのですよね。それをブログに書いてみようかと思います。
もしも、私の認識が誤っているようでしたら、どんどんご指摘ください。
まず、カーポートの前に、そもそも日本において建築物を建設するにあたっては、事前に
「建築確認申請」が必要です。合わせて、申請通りの建築が行われているのかの確認も必須です。
もしも、野放図な建築を許してしまえば、
・いかにも
地震で壊れそうな物を建てて危険に晒すかもしれませんし、
・建蔽率・容積率を無視して
街並みが維持できなくなるかもしれませんし、
・燃えやすい建材の利用によって
延焼の危険が増すかもしれませんし、
・排水をその辺に垂れ流すことを許してしまうかもしれません。
皆で住む街を維持するにあたっての当然の規制だと思います。
それが、こと
カーポートのことになると、
「カーポートを建てるにあたって、
建築確認申請をする必要はない」
「カーポートくらいだったら、
勝手に建てても構わない」
と認識している人が少なくないように思うのです。むしろそれが普通の人の感覚になっている気すらします。ですが、少なくとも
原則論としてはそんなことはないでしょう。カーポートは
どう見ても「建築物」です。地面に固定された柱が立っていて、屋根が架かっているんですからね。
ただし、一定の基準を満たしたカーポートについては、
「高い開放性を有すると認めて指定する構造」の建築物と見做されて、
「周囲1mを建築面積から免除する」
というルールが適用されることになります。この
周囲1m免除ルールに加えて、
「10m
2未満の建築物は建築確認申請をしなくてよい」
という別のルールがあるため、それらの合わせ技で建築確認申請をする必要がなくなる
場合が「多い」というだけでしょう。
例えば、典型的な1台用の2.7m x 5.5mサイズのカーポートであれば、中心部の0.7m x 3.5m = 2.45m
2だけが建築面積と見做されることになるため、建築確認申請をしなくてもよくなるというわけです。
(ただし、そのルールさえ守れば合法というわけでもないようです。地域によっては、道路境界から建物構造物を1m以上後退させなければならないところもあり、カーポートの柱が条例違反している可能性があります。)
それに対して、例えば2台用の5.5m x 5.5mサイズのカーポートの場合、周囲1mが免除されたとしても3.5m x 3.5m=12.25m
2となりますから、10m
2を超えることとなり建築確認申請が必要です。
もしも建蔽率ギリギリで家本体が建てられていたならば、建築面積を増やすことは無理で許可はおりません。でも、建蔽率に余裕がなさそうな敷地なのに、2台用カーポートがあることは珍しくない気がしますよね。
それは、「カーポートには建築確認がいらない」という誤った風潮があることを利用して、
違法性を知りながら建築確認申請をすることなくカーポート建築を請け負う業者が少なくないためだろうと思っています。2台用の方がより儲かりますからね。さらには、依頼者側も違法性を知りながら便乗している場合もあるかもしれません。建築面積が増えると固定資産税が増えたりもしますからね。
また、カーポートに
後からDIYで壁を付ける人もそこそこいると思います。車を風雨からガードしたい気持ちはたいへんよくわかりますが、壁を一面でも付けてしまえば、特例的に認められていた「高い開放性を有する」建物ではなくなります。建築面積が変わるし建築方法も変わりますから、
改めて建築確認申請をする必要があるでしょう。でも実際には、多くの場合は
ダマでの違法行為となっているでしょうね。周囲1m免除ルールの適用がなくなると、建蔽率違反になることも十分に考えられます。
さらには、
・DIYで使いそうな防火性能の低い建材を使っていたりすれば、
延焼の危険性を増しているかも知れませんし、
・
強度計算に入っていない壁が増えることで、強風時にカーポートの
柱が折れてしまうかも知れませんし(メーカオプションのサイドパネルを付ける場合、補助柱を増やす必要があるカーポートが実際あります)、
・DIYで付けた壁が飛んでいって
歩行者を傷つけることになるかもしれません。
家の中の棚を作るのとはわけが違います。
もっと言えば、単管パイプとホームセンターで入手できる波板なんかを使って、
ゼロからカーポートを建てているような人も結構いますよね。
防火性も強度も相当怪しいですが、仮に満たせていたとしても、「高い開放性を有する」建物にはなりませんから(単管パイプで、壁や筋交なしで柱間隔2m以上の構造物は作れないでしょう)、
カーポートの大きさの場合には確実に10m2を超えることになるはずで、
建築確認申請は必須でしょう。でもおそらくはダマで建てているに違いない気がします。本当に
安全性が担保されていますか?という疑問も浮かびます。
それから、カーポートの高い開放性ルールと同様に、
1m以上ある立派な軒は、1m分を除き建築面積に含める必要があるというルールもあります。1m未満の軒は建築面積から除外するルールの裏返しですね。
もしも、既存の建物に接続してカーポートを建てようとしたならば、それは
家に軒を増築する行為に他なりません。したがって、独立して建てれば建築確認申請が不要であった1台用カーポートを用いたとしても、建築確認申請が必要となると思います。
(後日追記:どういう場合が増築となるのかについて後日別ブログに書きました)
先の単管パイプでの自作においては、既存の家の壁に桁を取り付けて、それに屋根を架けるようなことをしている人もいますね。完全に単なる違法増築だと思います。
関連して、安全性には十分配慮して建築するとしても、固定資産税を増やしたくないがために、建築確認申請なしで増築したがる風潮もあリますよね。増築しても
「見つからなければいい」と思っている人が多いように思うということです。私は資産価値を上げる行為をするのであれば、固定資産税が増えるのは当たり前のことだと思います。バレなきゃいいという発想は、確定申告分とは別に
所得隠しをする脱税行為と似たようなものだと感じます。税金には思うことがいろいろありますが、脱税は脱税、違法は違法です。
近所の人の通報等によって未申請の建築物が役所の知れるところとなり、後から追加の資産判定をやり直すようなことになる場合が少なくないようですが、そのときに
見つかったことを悔しがるような発想となるのもちょっと変ですよね。でもなぜか、それが普通の感覚になっている気もします。ちゃんと申請している人との公平性の観点からも、私は許されないと思いますけどね。
また、依頼した業者に任せていただけで、法律違反になるとは知らなかったという場合もあると思いますが、
知らないことは免罪符にはならないでしょう。
あっと、ここまで書いてきて、もしかするとご自身のカーポートが該当するかも知れないと思った方がいらっしゃるかも知れません。そういう場合は、私が何を思おうがブログに何を書こうが何の影響力もありませんので、そっと胸にしまわれるのが吉かと思います。
あ、そうそう。3年ほど前に有名になったので、知っている人も多いと思いますが、こんな階段が付けられたシャネルの店舗があるそうですね。
よく見ると、階段の下に車輪が付いています。そうこの階段は、
建築物ではなく、移動できる車であるという方便なのです。たまたま建物のそばにこの階段台車が停めてあるだけというロジックなのです。
元々は、外階段がない建物だったようなのですが、2階を独立した店にしたかったんでしょうね。おそらくは、建蔽率か容積率の問題で階段を増築することができず、苦肉の策として階段台車を作ったと言われています。
まあでもこれで違法ではなくなるかもしれませんが、法律の網を搔い潜った脱法行為だとは思いますね。せめて建築物として作る場合と同等の基準でものができていて欲しいと思います。
で、これでふと思いました。ガレージやカーポートを建てたいんだけど、建蔽率が厳しいような場合には、こんな感じで移動できるようにしてはいかがでしょ?
いや冗談ですよ。むしろ危険そうなので、やめた方がいいでしょう。
さて、私が実際に建てようとしているカーポートについては、また別途書きます。