
各社開発競争中の生成AIには、ChatGPTをはじめとしていろいろとあります。
その中でも、新しい情報を調べながら考えると言う意味では、GoogleのGeminiが得意らしいですね。Google searchと連動して動作することができるためのようです。加えて、Geminiの中でもFlash Thinkingは高度な推論を得意としていて、数学や科学の分野に向いているそうです。かつ、その思考プロセスが可視化されるため、検討内容の透明性が高いことが特徴だとのこと。
ということで、昨日、GoogleがGeminiの最新版2.5 Flashを公開したところなので、ちょっとややこしいことを検討してもらいました。
何をしてもらったかと言うと、「日本におけるBEVとガソリンエンジン車がその生涯に出すCO
2の量」について考察してもらってみることにしました。
まず、Gemini 2.5 Flashに聞く前に、BEVへの完全移行を会社方針としているボルボ(最近少しだけトーンダウンだが堅持)が、3年半前に公開したこんな研究レポートがあります。
https://www.ecocostsvalue.com/EVR/img/info-of-the-day/Volvo-C40-Recharge-LCA-report.pdf
(以前はボルボ本社のサイトにもあったのですが、今はそちらには見当たらないようです。)
この研究レポートのメッセージとしては、ボルボが推進するBEVは、CO
2がこんなにも削減できるし、再生可能エネルギーに転換していく世の中になればなおのこと良くなるんだよ!ということだと思います。丁寧にデータを分析されているその様は、恣意的な操作や解釈がないように感じ、真摯に吟味したよく書かれたレポートだと思います。
このボルボのレポートを読むと、その前提は妥当なものだと思いますし、その前提においてはBEVによってCO
2削減が果たせることも正しいとも思うのですが、それと同時に、日本だとこうはいかず厳しいよねとも思います。日本のエネルギーミックスと日本の車利用環境での平均生涯走行距離を鑑みると、このような前提にはならないからです。
ということで、まずは、Gemini 2.5 Flashの能力を見たいということも含めて、このボルボのレポートベースで、日本の場合のCO
2排出量を考察してもらってみました。
まずは、そのお題です。
〔依頼1〕 2021年にボルボがBEVとガソリン車のCO2排出量の比較研究したレポートがあります。これを基に、日本で使われる場合の比較をしてください。具体的には、
・ボルボのレポートはここにあります。日本での利用に関わらないデータは、この情報を参照してください。
https://www.ecocostsvalue.com/EVR/img/info-of-the-day/Volvo-C40-Recharge-LCA-report.pdf
・日本における普通乗用車の生涯走行距離と、日本での発電のエネルギーミックスを考慮して、BEVとガソリン車の総CO2排出量を比較してください。
・本来は、LCAには自動車を廃車後にリサイクルまたは最終廃棄するときに排出するCO2も考慮すべきだと思いますが、まだリチウムイオン電池のリサイクル方法は確立されていないと思います。そのため、リサイクルまたは最終廃棄時のことは除外し、走行できる状態を終えるまで(廃車まで)としてください。
・普通乗用車の生涯走行距離に関しては、できれば直接的な統計データを見つけて欲しいです。しかしながら、もしも直接的なデータが見つからなければ、平均年間走行距離と平均使用年数から算出してください。BEVの生涯走行距離とガソリン車の生涯走行距離は異なると考えられますが、まだBEVに関する十分な情報がないと思われるため、ひとまずガソリン車と同じであると仮定することにします。
・BEVのバッテリー交換を行うと、計算が大きく変化することになると思いますので、バッテリー交換は行わないものとします。
それで答えてきた回答がこちらです。
現時点で、日本における普通乗用車の生涯走行距離と日本の発電エネルギーミックスに関する情報を収集しました。
* 日本の普通乗用車の生涯走行距離:
直接的な統計データは見つかりませんでしたが、年間平均走行距離は約7000km、平均使用年数は13.87年という情報が得られました。これから、生涯走行距離は約 7000 km/年 × 13.87 年 ≒ 97,090 km と推計できます。
* 日本の発電エネルギーミックス:
2030年の目標値として、再生可能エネルギーが36〜38%、原子力が20〜22%、LNGが20%、石炭が19%、石油等が3%という情報が得られています。
ボルボのCO2排出量に関するレポート(https://www.ecocostsvalue.com/EVR/img/info-of-the-day/Volvo-C40-Recharge-LCA-report.pdf)については、提供されたURLがツールの対応していない形式(PDFファイル、https://www.google.com/search?q=googleusercontent.comのURL)であるため、ツールを使用してレポートの内容を直接読み取ることができませんでした。
日本におけるBEVとガソリン車の総CO2排出量を比較するためには、ボルボのレポートから以下の情報が必要です。
* 車両の製造段階におけるBEVとガソリン車それぞれのCO2排出量
* 走行段階におけるCO2排出量を計算するための原単位(例: 1km走行あたりの電力消費量/燃料消費量と、それぞれのCO2排出係数など)
お手数をおかけいたしますが、ボルボのレポートからこれらのデータをご確認いただき、教えていただけますでしょうか。必要な情報をご提供いただければ、日本の生涯走行距離とエネルギーミックスを考慮したBEVとガソリン車の総CO2排出量の比較計算を実施し、結果をお伝えいたします。
このエネルギーミックスは政府の2030年の目標値らしいですが、どう考えても楽観的過ぎのまったくの無理筋だと思います。ちょっとそこを突っ込んでみます。
日本のエネルギーミックスは現時点で火力発電が70%程度のはずです。その2030年の目標はあまりにも楽観的です。というか根拠が希薄だと思います。
おっしゃる通り、日本の現在のエネルギーミックスにおいて、火力発電が大きな割合を占めているのが現状です。ご提示した2030年のエネルギーミックス目標は、政府が掲げている脱炭素化に向けた計画上の数値であり、現時点の発電構成とは乖離があります。
2023年度の速報値などを見ると、化石燃料に依存する割合は依然として高く、およそ7割程度となっているという認識は、実態に近いものと思われます。
ボルボのBEVとガソリン車のCO2排出量比較を日本向けに行うにあたり、どの時点のエネルギーミックスを前提とするかは、計算結果に大きく影響します。
* 2030年目標値を使用する場合: 脱炭素化が進んだ将来のエネルギー構成を前提とした試算となります。
* 直近の実行値を使用する場合: 現状のエネルギー構成を前提とした試算となり、より現在の状況を反映した結果となります。
どちらのエネルギーミックスを使用して計算を進めるのが適切か、ご希望をお聞かせいただけますでしょうか。もし直近の実行値での計算をご希望でしたら、再度最新の発電エネルギーミックスの実行値データを収集し、それに基づいて計算を行います。
より実態に即した比較としたいという意図であれば、直近のエネルギーミックスを使用する方が適切かもしれません。
現実に則したものが良いです。過去の実績から、今後の改善を外挿予測するのは構いません。
ご納得いただけたとのこと、承知いたしました。「現実に則した」データとして、最新の実行値である2023年度の日本の発電エネルギーミックスを使用して計算を進めたいと思います。
2023年度の日本の発電電力量の構成(速報値)は以下のようになっています。
* 火力発電(バイオマスを除く): 68.6%
* 再生可能エネルギー(水力を含む): 22.9%
* 原子力: 8.5%
このエネルギーミックスと、先ほど推計した日本の普通乗用車の生涯走行距離約97,090kmを基に、BEVとガソリン車の総CO2排出量を比較します。
ただし、計算にはボルボのレポート(https://www.ecocostsvalue.com/EVR/img/info-of-the-day/Volvo-C40-Recharge-LCA-report.pdf)に記載されている以下のデータが必要です。
* 車両の製造段階におけるBEV(Volvo C40 Recharge)とガソリン車(同等クラスのガソリン車)それぞれのCO2排出量
* 走行段階におけるCO2排出量を計算するための原単位(例: BEVの電費(kWh/km)とガソリン車の燃費(L/km)、およびそれぞれの燃料・電力あたりのCO2排出係数など)
大変恐縮ですが、レポートの内容を直接読み取ることができないため、これらの数値をレポートからご確認いただき、お教えいただけますでしょうか。
必要なデータをご提供いただければ、すぐに計算を実施し、結果をご報告いたします。
あっと、そう言ってましたね。ネット上のPDFを直接参照できないんですね‥、ちょっとそれはしょぼいなぁ‥。
どうやら、Gemini 2.5 ProやGemini Advancedだとできるみたいだから、わざと制限しているんでしょうね。無償版から有償版に移行させたいんでしょう。まあ、お金を払ってまで使う気はないので、しょうがないのでPDFをテキスト化して添付してあげることにしました。
PDFをテキストに変換しました。これでわかりますか?
提供いただいたテキストファイルから、比較に必要なデータを抽出しました。
レポートによると、走行距離200,000kmを前提とした場合の、各フェーズおよび合計でのCO2排出量(トンCO2換算)は以下の通りです。
Volvo C40 Recharge (BEV)
* 材料生産と精製: 18トン
* リチウムイオンバッテリーモジュール: 7トン
* ボルボカーズでの製造: 1.4トン
* 製造段階合計(上記3項目の合計): 18 + 7 + 1.4 = 26.4トン
走行段階の排出量は、使用する電力のエネルギーミックスによって異なります。
* Global electricity mix での走行段階排出量: 24トン
* EU-28 electricity mix での走行段階排出量: 16トン
* Wind electricity での走行段階排出量: 0.4トン
* End-of-life: 0.5トン
Volvo XC40 ICE (ガソリン車)
* 材料生産と精製: 14トン
* リチウムイオンバッテリーモジュール: - (該当なし)
* ボルボカーズでの製造: 1.7トン
* 製造段階合計(上記2項目の合計): 14 + 1.7 = 15.7トン
走行段階の排出量は、燃料(E5 petrol)を使用した場合です。
* 走行段階排出量: 43トン
* End-of-life: 0.5トン
* 合計: 59トン
また、走行段階の計算に使用された原単位として、以下の記述がありました。
* XC40 ICEのTank-to-wheel (TTW) 排出量: 173 g CO2 /km
* C40 Rechargeの電費: 211 Wh/km
* XC40 Rechargeの電費: 241 Wh/km
* ガソリン(E5 petrol)のWell-to-tank (WTT) 排出量に関する言及あり。(具体的な排出係数の数値は直接見当たりませんでした。)
* 電力のWell-to-tank (WTT) およびTank-to-wheel (TTW) を合わせた排出係数については、Use phase emissionsとして合計値が示されています。(個別の排出係数やWTT/TTWの内訳の直接的な数値は見当たりませんでした。)
これらのデータと、日本の生涯走行距離(約97,090km)、および2023年度の日本の発電エネルギーミックス(火力68.6%、再エネ22.9%、原子力8.5%)を用いて、日本におけるBEVとガソリン車の総CO2排出量を計算します。
まず、走行段階のCO2排出量を日本のエネルギーミックスに合わせて計算し直す必要があります。レポートにはGlobal mix, EU-28 mix, Wind powerでの走行段階排出量は記載されていますが、日本のエネルギーミックスでの直接の数値はありません。
日本のエネルギーミックスでの電力のCO2排出係数と、ガソリンのWell-to-tank排出係数が必要になります。レポートにはWell-to-tankに関する言及はありますが、具体的な数値が見当たらないため、追加でガソリン(E5 petrol相当)のWell-to-tank CO2排出係数を調査する必要があります。電力の排出係数については、日本の2023年度のエネルギーミックスに基づき計算するか、該当する排出係数を調査する必要があります。
計算のために、以下の追加情報を収集します。
* ガソリン(E5 petrol相当)のWell-to-tank CO2排出係数。
* 日本の2023年度エネルギーミックスに基づく電力のCO2排出係数(Well-to-tank + Tank-to-wheel)。
これらの情報収集のために、再度google_searchを行います。
収集したデータに基づき、日本でのボルボ C40 Recharge(BEV)とボルボ XC40 ICE(ガソリン車)の生涯にわたる総CO2排出量を比較して計算します。
使用するデータは以下の通りです。
* 日本の普通乗用車の生涯走行距離: 97,090 km (年間平均走行距離約7000km × 平均使用年数13.87年から算出)
* 日本の電力CO2排出係数(2023年度、Well-to-Wheel相当): 0.421 kg-CO2/kWh = 421 g-CO2/kWh
* ボルボ C40 Recharge の電費: 211 Wh/km
* ボルボ XC40 ICE の走行段階排出係数:
* Tank-to-wheel (TTW): 173 g CO2/km
* Well-to-tank (WTT): 42 g CO2/km (レポートの総走行段階排出量とTTWから逆算)
* 製造段階のCO2排出量:
* C40 Recharge: 26.4 トン
* XC40 ICE: 15.7 トン
* End-of-life排出量: 0.5 トン (両車両とも)
計算:
1. 日本におけるC40 Rechargeの走行段階CO2排出量
* 生涯走行距離 × 電費 × 日本の電力CO2排出係数
* 97,090 km × 211 Wh/km × (421 g CO2/kWh / 1000 Wh/kWh)
* 97,090 km × 0.211 kWh/km × 421 g CO2/kWh
* 約 8,629,000 g CO2
* 約 8.63 トン CO2
2. 日本におけるXC40 ICEの走行段階CO2排出量
* 生涯走行距離 × (TTW排出係数 + WTT排出係数)
* 97,090 km × (173 g CO2/km + 42 g CO2/km)
* 97,090 km × 215 g CO2/km
* 約 20,874,000 g CO2
* 約 20.87 トン CO2
3. 生涯総CO2排出量の比較
* C40 Recharge: 製造段階排出量 + 走行段階排出量 + End-of-life排出量
* 26.4 トン + 8.63 トン + 0.5 トン = 35.53 トン CO2
* XC40 ICE: 製造段階排出量 + 走行段階排出量 + End-of-life排出量
* 15.7 トン + 20.87 トン + 0.5 トン = 37.07 トン CO2
結論:
収集した日本のデータ(生涯走行距離、2023年度の電力エネルギーミックス)を用いてボルボのレポートの数値を基に比較計算した結果、日本におけるC40 Recharge(BEV)の生涯総CO2排出量は約 35.53 トン、XC40 ICE(ガソリン車)は約 37.07 トン と推計されます。
この結果からは、現在の日本のエネルギーミックスと平均的な使われ方を前提とした場合、ボルボ C40 Recharge(BEV)はXC40 ICE(ガソリン車)と比較して、生涯での総CO2排出量がやや少ないということが示唆されます。
ただし、本計算は提供されたボルボのレポートのデータ(特に製造段階や走行段階の原単位)と日本の特定の年のエネルギーミックスに基づいたものであり、実際の排出量は様々な要因(運転方法、エアコン使用状況、バッテリーの劣化、リサイクルの進展など)によって変動する可能性があります。
へ~、ほとんど同じってことなんですね。簡単な計算だと、ちょっとBEVの方が悪いとなるんですが、日本のCO
2排出係数が、電力の化石燃料依存が高い割にはややマシだからなのでしょうね。
で、ボルボのデータだけに頼るというのも、情報がやや古いということも含めてイマイチなので、もう少し日本での現在の実態に合わせてアップデート考察をしてもらうことにしました。ここから、Gemini Flashに本領発揮してもらいます。
〔依頼2〕 その検討結果を基にして、ボルボのレポートは情報が少し古いと思われるため、できるだけ最新の情報を使ってアップデートしてください。その調査と算出は、以下を前提としてください。
・車両本体はボルボのレポートと同一のものと仮定してください。先のボルボのデータを採用するので良いです。
・BEVのバッテリーとしては、最新の中国のBYD製のリン酸鉄リチウムイオン電池と、日本のPanasonic製の三元系(NMC系)リチウムイオン電池が使われることとします。電池容量は、ひとまず標準的な60kWhとします。
・ガソリンエンジンについて、ボルボのデータをそのまま採用することにします。(改善分を見込まなくていいです)
・Panasonic製のリチウムイオン電池の原材料(炭酸リチウムないしは水酸化リチウム、グラファイト、ニッケル、コバルト、マンガン等)は、安価な中国産のものを使うこととしてください。BYD製の電池ももちろん中国産の原材料が使われるものとします。
・中国産リチウムは、産量の多いオーストラリア産のスポジュメン鉱石を基にして精製される場合を想定してください。電池製造に必要な鉱石の量は、鉱石に含まれるリチウム含有量を基にして算出し、鉱石の採掘や輸送時のCO2排出量を推定してください。
・電池の原材料を作り出すときに発生するCO2排出に特に気を付けて推定してください。リチウムの精製は、硫酸か焼-水浸出法で行われるものとし、各工程での排出量をできるだけ精緻に調べてください。グラファイト使用料も大変に多いと思われるため、その製造時のコークス利用にも注意が必要です。ニッケル、コバルト、マンガン等の精製時のCO2排出も十分に検討してください。
・製造時の原材料の輸送、ガソリンの日本への輸送のために排出されるCO2等、日本での使用を前提とする場合に、ボルボのレポートとは前提が異なることになるものは極力考慮してください。
・BYD製とPanasonic製それぞれの電池における原材料の材料別の量は正確にはわからないでしょうが、世の中でやられている分解分析情報等も調べ、できるだけ確からしくリチウム、グラファイト等の材料の量を推定してください。その上で、電池の容量を基に原材料の量を推定してください。
・ガソリンエンジンの燃費、BEVの電費については、ボルボのレポートの値が妥当ではないと思われた場合には、日本の走行環境に則した実態に合う実行的な値に変えてください。
で、お願いが全体にややこしすぎる割には依頼事項の考慮範囲に抜け漏れがあったりしたせいか、一発ではうまく答えてもらえず、あれこれいろいろと追加の会話をしました。
長くなりすぎるので端折りますが、あれこれお願いした結果、検討をこのようにまとめてくれました。
依頼2に対する検討結果を、これまでの議論と計算を踏まえてまとめ直します。
依頼2の目的
ボルボが公表したCO2排出量比較レポートの内容を参照しつつ、日本の普通乗用車の利用状況と日本のエネルギー事情をより詳細な(推定)情報で考慮してアップデートし、BEV(一般的なLFP電池およびNMC電池搭載)とガソリン車の生涯にわたる総CO2排出量を比較する。
アップデートにあたり考慮した主な前提
* 対象車両: ボルボ C40 Recharge 相当のBEVと、ボルボ XC40 ICE 相当のガソリン車。
* 生涯走行距離: 日本における普通乗用車の生涯走行距離として、約97,090 km を使用。(日本の平均年間走行距離と平均使用年数から推定)
* 走行段階における電力のCO2排出: 日本の2023年度の発電エネルギーミックス実行値(火力約68.6%、再エネ約22.9%、原子力約8.5%)に基づく電力CO2排出係数(WtW相当 421 g-CO2/kWh)を使用。BEVの電費はボルボレポートの211 Wh/kmを使用。
* 走行段階におけるガソリンのCO2排出: ボルボレポートのXC40 ICEの走行段階排出係数(TTW 173 g CO2/km, WTT 42 g CO2/km)を使用。
* 車両製造段階(バッテリー除く): ボルボレポートのC40 Rechargeの製造段階合計からバッテリー部分を差し引いた推定値(19.4トン CO2-eq)をBEVのバッテリー以外の製造排出量とし、XC40 ICEの製造段階排出量はボルボレポート値(15.7トン CO2-eq)を使用。
* バッテリー: 容量60kWhのLFP電池(BYD製想定)とNMC電池(Panasonic製想定)を搭載すると仮定。
* バッテリー製造時のCO2排出量:
* 評価範囲を鉱石採掘から電池モジュール完成までとする。
* 原材料の精製・製造地を中国と想定し、鉱石由来のリチウム精製や中国の電力構成の影響を考慮した排出係数(一般的な文献値を参考に推定)を用いて算定。その結果、60kWhバッテリー製造時のCO2排出量はLFPで約10.8トン CO2-eq、NMCで約11.4トン CO2-eqと推定。
* End-of-life: ボルボレポート値(0.5トン CO2-eq)を使用。
生涯総CO2排出量の比較計算結果
上記の前提に基づく計算結果は以下の通りです。
* BEV (LFPバッテリー搭載):
* 製造段階(バッテリー含む):約 30.2 トン CO2-eq
* 走行段階(日本電力ミックス):約 8.63 トン CO2
* End-of-life:約 0.5 トン CO2
* 生涯総排出量:約 39.33 トン CO2-eq
* BEV (NMCバッテリー搭載):
* 製造段階(バッテリー含む):約 30.8 トン CO2-eq
* 走行段階(日本電力ミックス):約 8.63 トン CO2
* End-of-life:約 0.5 トン CO2
* 生涯総排出量:約 39.93 トン CO2-eq
* XC40 ICE (ガソリン車):
* 製造段階:約 15.7 トン CO2
* 走行段階(日本):約 20.87 トン CO2
* End-of-life:約 0.5 トン CO2
* 生涯総排出量:約 37.07 トン CO2-eq
考察
今回のアップデートした前提(日本の利用状況、日本の電力ミックス、バッテリーの種類と中国での製造を考慮したバッテリー製造排出量)に基づく比較検討から、以下の点が考察されます。
* BEVの製造段階排出量の大きさ: バッテリー製造段階を鉱石採掘からモジュール完成まで含めて評価し、中国での製造を想定した場合、BEVの製造段階におけるCO2排出量(約30トン程度)は、ガソリン車の製造段階排出量(15.7トン)と比較して大きくなる結果となりました。これは、バッテリー製造、特に原材料の調達・精製といった上流工程で相当量のCO2が排出されることを示しており、BEVのライフサイクル全体における環境負荷において製造段階が重要な要素であることを示唆しています。リチウムの精製方法(鉱石由来か塩湖かん水由来か)や製造地の電力構成(再生可能エネルギーの比率など)が、この製造段階排出量に大きく影響します。
* 日本の電力ミックス下での走行段階排出量: 日本の2023年度の電力ミックスに基づけば、BEVの走行段階排出量(約8.63トン)は、ガソリン車の走行段階排出量(約20.87トン)と比較して大幅に少ないです。これは、BEVが走行中に直接CO2を排出しないため、使用する電力の低炭素化が環境負荷低減に大きく貢献することを示しています。
* 生涯総排出量の比較: 本計算結果では、BEVの生涯総CO2排出量(約39.3トン〜39.9トン)が、ガソリン車(約37.1トン)と同等か、わずかに多いという可能性が示されました。これは、BEVの製造段階における排出量増加分が、現在の日本の電力ミックス下での走行段階排出量削減分を上回ったためと考えられます。
* バッテリーの種類による差: LFPバッテリー搭載BEVとNMCバッテリー搭載BEVの間でも生涯総排出量に若干の差が見られますが、これは主にバッテリーの種類による原材料量や製造時の排出係数の違いに起因します。ただし、この差はガソリン車との間の差に比べれば小さいものです。
* 今後の環境負荷低減に向けて: この結果は、BEVの環境負荷をさらに低減するためには、走行段階での電力の脱炭素化を一層進めることと並行して、バッテリー製造工程におけるCO2排出量削減が不可欠であることを示しています。原材料の低排出な調達・精製、バッテリー工場での再生可能エネルギー電力の活用、そしてリチウムイオン電池リサイクルの推進などが、将来的なBEVの環境性能向上に貢献します。
結論
今回の日本の状況と最新の(推定)情報を考慮したアップデート比較の結果、現在の日本のエネルギーミックスと一般的な使用条件下では、BEVの生涯総CO2排出量はガソリン車と同等か、わずかに多くなる可能性が示唆されました。
これは、BEVの製造段階、特にバッテリー製造におけるCO2排出量が少なくないこと、そしてその排出量が原材料の調達・精製方法や製造地のエネルギーミックスに大きく依存することを示しています。同時に、日本の電力の脱炭素化がBEVの走行段階排出量削減に貢献する重要な要素であることも再確認されました。
BEVがその環境ポテンシャルを最大限に発揮するためには、車両の使用段階における電力のクリーン化だけでなく、製造段階、特にバッテリー製造のサプライチェーン全体での脱炭素化を進めることが今後の重要な課題となります。
なお、本計算は、入手可能なデータや一般的な知見に基づいた推定が多く含まれているため、結果には一定の不確実性がある点をご理解いただけますようお願い申し上げます。
C40のバッテリーは69kWhまたは66.5kWhのはずですが、ボルボのレポートによるとその割には製造時のCO2排出量が少なく7トンなのですよね。それよりも少ない60kWhでの推定なのに、LFPで約10.8トン CO2-eq、NMCで約11.4トンとなったので、その差がそのまま表れた形でしょう。おそらく、ボルボの計算は、エネルギーミックスが異なるヨーロッパでの生産を前提に計算しているからじゃないでしょうかね。
なお一般的には、バッテリー製造時のCO2排出量は、100~200kg CO2/kWhと言われているようですので、その値自体に違和感はありません。
ということで、さらに次の考察をしてもらいます。
〔依頼3〕 以上の前提で一旦まとめ直した後に、最近増えてきた100kWhの大容量バッテリーを使う場合についても推定して考察してください。そのとき、容量増に伴う重量増についても考慮に入れてください。
〔依頼3〕として、最近増えてきた100kWhの大容量バッテリーを搭載した場合のBEVのCO2排出量について推定し、考察します。依頼2で設定した前提(日本の利用状況、日本の電力ミックス、バッテリー製造の評価範囲・製造地など)は引き継ぎます。
大容量バッテリー搭載に伴う変更点は、主に以下の通りです。
* バッテリー製造時のCO2排出量の増加: バッテリー容量が60kWhから100kWhに増加することに伴い、バッテリー製造時のCO2排出量も増加します。バッテリー製造時の排出量は容量に比例すると仮定し、依頼2で推定した60kWhバッテリー製造時の排出量(鉱石採掘からモジュール完成まで、中国製造を想定:LFP 約10.8トン、NMC 約11.4トン)を基に計算します。
* 100kWh LFPバッテリー製造推定排出量: (100 kWh / 60 kWh) * 10.8 トン = 18.0 トン CO2-eq
* 100kWh NMCバッテリー製造推定排出量: (100 kWh / 60 kWh) * 11.4 トン = 19.0 トン CO2-eq
* バッテリー重量の増加: バッテリー容量の増加に伴い、バッテリーの重量も増加します。これも容量に比例すると仮定し、依頼2で推定した60kWhバッテリーの重量(一般的な構成に基づく推定:LFP 約375kg、NMC 約273kg)を基に計算します。
* 100kWh LFPバッテリー推定重量: (100 kWh / 60 kWh) * 375 kg = 625 kg
* 100kWh NMCバッテリー推定重量: (100 kWh / 60 kWh) * 273 kg = 455 kg
* 車両重量増に伴う電費への影響: バッテリー重量が増加すると、車両全体の重量が増え、走行に必要なエネルギーが増えるため、電費が悪化します。ボルボ C40 Recharge 相当の車両重量を60kWhバッテリー搭載時で約2200kgと仮定し、バッテリー以外の車両重量を一定とみなして100kWhバッテリー搭載時の車両重量を推定します。次に、重量増が電費に与える影響を簡略的に、車両総重量の変化率に比例して電費が悪化すると仮定して算出します。
* 60kWh LFP搭載時車両重量推定: バッテリー以外の車両重量 + 60kWh LFP重量 = 約2200 kg - 375 kg = 1825 kg
* 60kWh NMC搭載時車両重量推定: バッテリー以外の車両重量 + 60kWh NMC重量 = 約2200 kg - 273 kg = 1927 kg
* 100kWh LFP搭載時推定車両重量: 1825 kg + 625 kg = 2450 kg
* 100kWh NMC搭載時推定車両重量: 1927 kg + 455 kg = 2382 kg
* LFP搭載時の電費悪化率推定: (2450 kg / 2200 kg) - 1 = 約 11.4%増
* NMC搭載時の電費悪化率推定: (2382 kg / 2200 kg) - 1 = 約 8.3%増
* 100kWh LFP搭載時の推定電費: 211 Wh/km * (1 + 0.114) = 約 235 Wh/km
* 100kWh NMC搭載時の推定電費: 211 Wh/km * (1 + 0.083) = 約 229 Wh/km
生涯総CO2排出量の比較計算結果(100kWhバッテリー搭載の場合)
上記の変更点を反映し、生涯総CO2排出量を計算します。バッテリー以外の車両製造排出量(19.4トン)、End-of-life排出量(0.5トン)、ガソリン車の排出量(製造段階15.7トン、走行段階20.87トン、End-of-life 0.5トン、合計37.07トン)は、依頼2の結果と同じです。
* BEV (100kWh LFPバッテリー搭載):
* 製造段階(車両+バッテリー):19.4 トン + 18.0 トン = 37.4 トン CO2-eq
* 走行段階(日本電力ミックス):97,090 km * (235 Wh/km / 1000 Wh/kWh) * 421 g CO2/kWh = 約 9,624,000 g = 約 9.62 トン CO2
* End-of-life:0.5 トン CO2
* 生涯総排出量:37.4 トン + 9.62 トン + 0.5 トン = 47.52 トン CO2-eq
* BEV (100kWh NMCバッテリー搭載):
* 製造段階(車両+バッテリー):19.4 トン + 19.0 トン = 38.4 トン CO2-eq
* 走行段階(日本電力ミックス):97,090 km * (229 Wh/km / 1000 Wh/kWh) * 421 g CO2/kWh = 約 9,379,000 g = 約 9.38 トン CO2
* End-of-life:0.5 トン CO2
* 生涯総排出量:38.4 トン + 9.38 トン + 0.5 トン = 48.28 トン CO2-eq
* XC40 ICE (ガソリン車):
* 生涯総排出量:37.07 トン CO2-eq
考察(100kWh大容量バッテリー搭載の場合)
バッテリー容量を100kWhに増加させた場合の推定結果に基づくと、以下のような点が考察されます。
* 製造段階排出量の大幅な増加: バッテリー容量が60kWhから100kWhに増加したことで、バッテリー製造時のCO2排出量が大幅に増加し、それに伴いBEVの製造段階総排出量も大きく増加しました(60kWh LFP/NMC搭載時 約30トン → 100kWh LFP/NMC搭載時 約37〜38トン)。これは、より多くのバッテリー材料が必要となるためであり、大容量バッテリーほど製造段階の環境負荷が大きくなることを明確に示しています。
* 走行段階排出量の増加(電費悪化の影響): バッテリー重量の増加による車両重量増は、電費の悪化を招き、結果として走行段階でのCO2排出量もわずかに増加させます(60kWh搭載時 約8.63トン → 100kWh搭載時 約9.38〜9.62トン)。ただし、この増加幅は製造段階の増加幅に比べれば小さいです。
* 生涯総排出量の比較: 本計算の前提においては、100kWhの大容量バッテリーを搭載したBEV(約47.5トン〜48.3トン)の生涯総CO2排出量が、XC40 ICE(約37.1トン)を大きく上回る結果となりました。これは、バッテリー容量増加による製造段階の排出量増加が、走行段階での排出量削減効果を上回ったためです。
* バッテリー容量選択の重要性: この結果は、BEVの環境負荷を評価する上で、バッテリー容量の選択が非常に重要であることを示唆しています。航続距離を延ばすために大容量バッテリーを選択することは、製造段階での環境負荷を増加させるというトレードオフを伴います。必要な航続距離に基づいた適切なバッテリー容量を選択することが、BEVのライフサイクル全体の環境負荷低減につながります。
* 電力の脱炭素化とバッテリー製造の低炭素化の重要性: もし日本の電力の脱炭素化がさらに進み、走行段階でのCO2排出がゼロに近づけば、BEVの生涯総排出量は製造段階とEnd-of-lifeの排出量のみとなり、ガソリン車に対する優位性が明確になるでしょう。同時に、バッテリー製造における排出量削減(原材料調達・精製、製造時の再生可能エネルギー利用など)が進めば、大容量バッテリー搭載時の環境負荷も低減されると考えられます。
結論(100kWh大容量バッテリー搭載の場合)
依頼2で設定した前提(日本の利用状況、エネルギー事情、バッテリー製造範囲・製造地)に基づき、バッテリー容量を100kWhとした場合、容量増加に伴う製造段階のCO2排出量増加と走行段階での電費悪化により、BEVの生涯総CO2排出量はガソリン車を大きく上回る可能性が示唆されました。
この結果は、BEVの環境性能を評価する際には、単に走行中の排出量だけでなく、バッテリー製造を含むライフサイクル全体の評価が不可欠であり、特に大容量バッテリーを選択する際には、製造段階の環境負荷が増加することを考慮する必要があることを示しています。BEVによるCO2排出量削減効果を最大化するためには、航続距離とバッテリー容量のバランスを考慮し、同時に電力の脱炭素化とバッテリー製造プロセスの低炭素化を進めることが重要です。
本計算は、特に重量増による電費悪化の推定など、多くの仮定に基づいているため、結果には一定の不確実性がある点にご留意ください。
まあ、そうなりますよね。ちょっと想定する車重が重すぎる感もありますが、相対値しか計算には効かないので、まあいいことにします。
この結果を見ても、ほとんど使うことがないにも関わらず、製造時CO2排出が大きいバッテリーを大量に使うことが罪深いということでしょう。いかにバッテリーを小さく済ますかが重要だということです。
ここまででひとまずですが、日本のエネルギーミックスも再生可能エネルギーを増やす方向に改善しようとしているわけで、それを少し盛り込んでもらいましょう。
とはいっても、現実的には、水力は昭和ですでに頭打ち、太陽光もすでに世界一レベル、風力も良い場所には設置済み、地熱等その他大勢はどうあがいてもマジョリティにはなれないという手枷足枷の状況なので、大きな進展は実は難しい状況だと思っています。ですが、少し甘く見積もって検討してもらいましょうか。
〔依頼4〕 最後に、日本での再生可能エネルギーへの移行が劇的に進展し、電力使用量全体の10%を化石燃料利用から再生可能エネルギーに変えることができた場合を想定して考察してください。
〔依頼4〕として、日本での再生可能エネルギーへの移行が進み、電力使用量全体の10%が化石燃料利用から再生可能エネルギーに置き換えられた場合を想定し、BEVのCO2排出量を推定して考察します。
このシナリオでは、日本の電力ミックスが変化し、火力発電による電力の割合が減少し、再生可能エネルギーによる電力の割合が増加します。これにより、電力あたりのCO2排出係数が低下し、BEVの走行段階におけるCO2排出量が減少すると考えられます。
新しい日本の電力CO2排出係数の推定
現在の日本の電力構成(2023年度実行値)は、火力約68.6%、再エネ約22.9%、原子力約8.5%であり、この場合の電力CO2排出係数は421 g-CO2/kWhです。電力使用量全体の10%を化石燃料利用から再生可能エネルギーに置き換えるということは、火力発電の比率を相対的に低下させ、その分再生可能エネルギーの比率を高めることになります。
簡略化のため、電力使用量全体に対する火力発電の寄与が10%削減されると、電力のCO2排出係数も約10%削減されると近似的に仮定します。(再生可能エネルギーからの発電によるCO2排出はほぼゼロとみなすため)
新しい電力CO2排出係数(推定):421 g-CO2/kWh × (1 - 0.10) = 421 × 0.90 = 約 378.9 g-CO2/kWh
BEVの走行段階CO2排出量(新しい電力ミックスの場合)
この新しい電力CO2排出係数を用いて、生涯走行距離(97,090 km)におけるBEVの走行段階CO2排出量を再計算します。BEVの電費は、60kWhバッテリー搭載時で211 Wh/km、100kWh LFP搭載時で約235 Wh/km、100kWh NMC搭載時で約229 Wh/kmとします(依頼2、依頼3の推定値)。
* BEV (60kWhバッテリー搭載):
97,090 km × (211 Wh/km / 1000 Wh/kWh) × 378.9 g CO2/kWh = 約 7,758,000 g = 約 7.76 トン CO2
* BEV (100kWh LFPバッテリー搭載):
97,090 km × (235 Wh/km / 1000 Wh/kWh) × 378.9 g CO2/kWh = 約 8,680,000 g = 約 8.68 トン CO2
* BEV (100kWh NMCバッテリー搭載):
97,090 km × (229 Wh/km / 1000 Wh/kWh) × 378.9 g CO2/kWh = 約 8,460,000 g = 約 8.46 トン CO2
生涯総CO2排出量の比較計算結果(再生可能エネルギー移行が進んだ場合)
BEVの製造段階総排出量およびEnd-of-life排出量は、依頼2、依頼3の結果と同じ値を使用します。ガソリン車の生涯総排出量も比較のため再度示します。
* BEV (60kWh LFPバッテリー搭載):
* 製造段階:約 30.2 トン CO2-eq
* 走行段階(新しい電力ミックス):約 7.76 トン CO2
* End-of-life:約 0.5 トン CO2
* 生涯総排出量:30.2 + 7.76 + 0.5 = 38.46 トン CO2-eq
* BEV (60kWh NMCバッテリー搭載):
* 製造段階:約 30.8 トン CO2-eq
* 走行段階(新しい電力ミックス):約 7.76 トン CO2
* End-of-life:約 0.5 トン CO2
* 生涯総排出量:30.8 + 7.76 + 0.5 = 39.06 トン CO2-eq
* BEV (100kWh LFPバッテリー搭載):
* 製造段階:約 37.4 トン CO2-eq
* 走行段階(新しい電力ミックス):約 8.68 トン CO2
* End-of-life:約 0.5 トン CO2
* 生涯総排出量:37.4 + 8.68 + 0.5 = 46.58 トン CO2-eq
* BEV (100kWh NMCバッテリー搭載):
* 製造段階:約 38.4 トン CO2-eq
* 走行段階(新しい電力ミックス):約 8.46 トン CO2
* End-of-life:約 0.5 トン CO2
* 生涯総排出量:38.4 + 8.46 + 0.5 = 47.36 トン CO2-eq
* XC40 ICE (ガソリン車):
* 生涯総排出量:37.07 トン CO2-eq
考察(再生可能エネルギー移行が進んだ場合)
日本の電力使用量全体の10%を化石燃料から再生可能エネルギーに置き換えたシナリオで推定を行った結果、以下の点が考察されます。
* BEVの走行段階排出量の減少: 再生可能エネルギーの導入拡大により電力のCO2排出係数が低下したことで、BEVの走行段階におけるCO2排出量が減少しました(依頼2結果の約8.63トンから約7.76トンへ、依頼3結果の約9.38〜9.62トンから約8.46〜8.68トンへ)。これは、BEVの環境負荷が使用する電力のクリーンさに直接的に影響されることを明確に示しています。
* 生涯総排出量への影響: 走行段階排出量の減少に伴い、BEVの生涯総CO2排出量も低下しました。
* 60kWhバッテリー搭載BEVの場合(約38.5トン〜39.1トン)、ガソリン車(約37.1トン)と同等か、わずかに多くなるという傾向は維持されますが、その差は縮小しました。
* 100kWh大容量バッテリー搭載BEVの場合(約46.6トン〜47.4トン)、ガソリン車(約37.1トン)に対する排出量の多さという傾向は維持されますが、走行段階の排出量削減効果により、排出量の差はわずかに縮小しました。
* 電力の脱炭素化の重要性: この結果は、日本の電力ミックスにおける再生可能エネルギーの比率を高めることが、BEVのライフサイクル全体のCO2排出量削減に非常に有効であることを示しています。電力の脱炭素化がさらに進めば、BEVの走行段階排出量はさらに低減し、ガソリン車に対する環境優位性がより顕著になるでしょう。
* 大容量バッテリーの影響: 再生可能エネルギーへの移行が進んだ場合でも、100kWhの大容量バッテリー搭載BEVは、60kWhバッテリー搭載BEVやガソリン車と比較して、製造段階排出量が大きいため、生涯総排出量が多くなる傾向が見られます。これは、バッテリー容量の選択が生涯の環境負荷に与える影響が依然として大きいことを示唆しています。
* 総合的な環境負荷低減に向けて: BEVによるCO2排出量削減効果を最大化するためには、電力の脱炭素化を着実に進めることに加え、バッテリー製造段階におけるCO2排出量削減(低排出な原材料調達・精製、製造時の再生可能エネルギー利用など)も並行して取り組むことが重要です。
結論(再生可能エネルギー移行が進んだ場合)
日本の電力使用量全体の10%を化石燃料から再生可能エネルギーに置き換えたシナリオで推定した結果、**BEVの走行段階CO2排出量は減少しましたが、生涯総CO2排出量においては、ガソリン車と同等またはそれ以上となる可能性が示唆されました。**特に大容量バッテリーを搭載する場合は、製造段階の排出量が大きいため、生涯総排出量も多くなる傾向が見られます。
このことは、再生可能エネルギーへの移行による電力の脱炭素化がBEVの環境性能向上に貢献する重要な要素である一方で、バッテリー製造段階におけるCO2排出量削減も同様に重要であり、両面からの取り組みが進むことが、BEVのライフサイクル全体での環境負荷低減に不可欠であることを示しています。バッテリー容量の選択も、生涯のCO2排出量に影響を与える重要な要因の一つです。
本計算は多くの推定と仮定に基づいているため、結果には不確実性がある点をご了承ください。
まあそりゃそうか、多少は良くなりますが、劇的には変わりませんね。
10%も再生可能エネルギーに移行できたならば、それは劇的なことですが、そのBEVへの影響という意味では限定的なようです。
さて、Gemini 2.5 Flashさんによる上記のこれまでの考察が実際の実態だと思うんですが、日本での常識や一般の風潮はちょっと違うと思うんですよね。
上記の調査・考察結果と、日本でちらほら聞く話との間にギャップがあるので、それについてぶつけてみましょう。
〔依頼5〕 トヨタやお役所が使うBEVとガソリン車のCO2排出量の比較では、あなたの検討結果とは大きく異なっているようです。
出典元がわからないのですが、前田副社長(当時)が、HEV:178g/km、BEV:60g/kmと言っていたそうです。私自身はその情報を見つけられません。その違いを分析・考察してください。
なお私は、お役所の算出の前提は、「原材料を調達するところから」となっているようなので、外国で原材料を精製する工程のCO2を計算に入れていないと考えています。日本でのCO2排出量削減を気にしているお役所としては、そういう前提に立つのかもしれませんが、CO2排出は地球全体に問題をもたらすものです。真のLCAを考えるためには、外国でのCO2排出も当然考慮すべきだと思っています。
承知いたしました。トヨタがその数値(HEV 178g/km, BEV 60g/km)を述べたらしいという情報がある、という位置付けで、これまでの検討結果をまとめ直します。
これまでの検討結果を踏まえ、依頼2としてアップデートを試みたBEVとガソリン車のCO2排出量比較について、改めてまとめを提示します。
検討の目的
ボルボのレポートを参照しつつ、日本の普通乗用車の利用状況、日本のエネルギー事情、およびバッテリーに関するより詳細な(推定)情報を考慮してアップデートした、BEV(一般的なLFP電池およびNMC電池搭載)とガソリン車の生涯にわたる総CO2排出量を比較する。
検討における主な前提
本検討では、以下の日本の状況やバッテリーに関する前提を設定しました。
* 対象車両: ボルボ C40 Recharge 相当のBEVと、ボルボ XC40 ICE 相当のガソリン車。
* 生涯走行距離: 日本における普通乗用車の平均的な生涯走行距離として、約97,090 km を使用。
* 走行段階における電力のCO2排出: 日本の2023年度の発電エネルギーミックス実行値に基づく電力CO2排出係数(WtW相当 421 g-CO2/kWh)を使用。BEVの電費はボルボレポートの211 Wh/km(および100kWhバッテリー搭載時の推定電費)を使用。
* 走行段階におけるガソリンのCO2排出: ガソリン車については、ボルボレポートのXC40 ICEの走行段階排出係数(TTW 173 g CO2/km, WTT 42 g CO2/km)を使用。
* 車両製造段階(バッテリー除く): ボルボレポートから推定した値をBEVのバッテリー以外の製造排出量、ガソリン車の製造排出量として使用。
* バッテリー: 容量60kWhおよび100kWhのLFP電池とNMC電池が搭載されると仮定。
* バッテリー製造時のCO2排出量:
* 評価範囲を鉱石採掘から電池モジュール完成までとする。
* 主要原材料の精製・製造地を中国と想定し、鉱石由来のリチウム精製や中国の電力構成の影響を考慮した排出係数(一般的な文献値を参考に推定)を用いて算定。これにより、バッテリーの種類・容量ごとの製造排出量を推定。
* 車両の廃棄段階(End-of-life): ボルボレポート値を参照。
生涯総CO2排出量の計算結果
上記の前提に基づき計算した、各車両タイプの生涯総CO2排出量(推定)は以下の通りです。
* BEV (60kWh LFPバッテリー搭載): 約 39.33 トン CO2-eq
* BEV (60kWh NMCバッテリー搭載): 約 39.93 トン CO2-eq
* BEV (100kWh LFPバッテリー搭載): 約 47.52 トン CO2-eq
* BEV (100kWh NMCバッテリー搭載): 約 48.28 トン CO2-eq
* XC40 ICE (ガソリン車): 約 37.07 トン CO2-eq
検討結果と他の情報との比較・考察
今回、日本の具体的な状況とバッテリー製造の詳細な側面を考慮して計算した結果、BEVの生涯総CO2排出量は、ガソリン車(約37.1トン)と比較して、バッテリー容量60kWhの場合は同等かやや多く(約39.3〜39.9トン)、大容量の100kWhの場合は大幅に多く(約47.5〜48.3トン)なる可能性が示唆されました。
一方で、**「トヨタが示したとされる、HEVの排出量178g/km、BEVの排出量60g/kmといった数値を示す情報もある」**ようです。これらの数値を生涯走行距離(約9.7万km)で単純に換算すると、BEVの生涯排出量は約5.8トン CO2-eq(60 g/km × 97090 km)となり、これは私の計算結果(約39トン〜48トン)やボルボのレポートの数値(C40 Recharge合計50トン/20万km -> 250g/km = 24.3トン/9.7万km相当)と比べて著しく小さい数値です。
このような大きな違いが生じる考えられる要因は、主にLCAの評価範囲と前提条件の差にあります。
* 評価範囲の違い: 「トヨタが示したとされる数値」の算出において、LCAの評価範囲(どこからどこまでを計算に含めているか)が、私の検討(鉱石採掘からモジュール完成まで含むバッテリー製造、車両製造、走行、廃棄)とは異なっている可能性があります。例えば、製造段階の特定の工程(特にバッテリー製造の上流工程や、海外での排出)が含まれていなかったり、非常に簡略化されていたりする可能性があります。
* 前提条件の違い: 使用段階の電力ミックスの前提が、私の計算で使用した日本の2023年度実行値とは大きく異なっている可能性があります。非常にクリーンな電力(再生可能エネルギー比率が極めて高いなど)を前提とすると、BEVの走行段階排出量は大幅に低減されます。また、比較対象としている車両の仕様(燃費・電費)、走行パターン、生涯走行距離といった前提も異なっている可能性が考えられます。
* 海外排出量の扱い: あなたが懸念されているように、一部の比較においては、海外での原材料採掘・精製といったグローバルなサプライチェーンにおける排出量が十分に考慮されていない可能性も否定できません。真のLCAとしては、CO2排出は地球全体に影響を及ぼすため、国境に関わらず全ての排出源を含めることが重要です。私の検討では、この点を考慮し、中国でのバッテリー原材料製造・精製を想定した排出係数を推定して計算に含めました。
結論
今回の私の検討では、日本の具体的な利用状況、電力ミックス、およびバッテリー製造段階を詳細に考慮(鉱石採掘からモジュール完成まで、中国での製造を想定して推定)した結果、BEVの生涯総CO2排出量は、ガソリン車と同等か、バッテリー容量が大きいほど多くなる可能性が示唆されました。
これは、製造段階、特にバッテリー製造におけるCO2排出量が無視できない大きさであり、その排出量が原材料の調達・精製方法や製造地のエネルギーミックスに大きく依存することを示しています。
**「トヨタが示したとされるHEV 178g/km, BEV 60g/kmといった数値」**は、私の計算結果と大きく異なっており、これは主にLCAの評価範囲や前提条件(特にバッテリー製造の詳細度や電力ミックス)の違いによるものと考えられます。真のLCAとして車両の環境負荷を正しく評価するためには、製造から廃棄までのライフサイクル全体を、グローバルなサプライチェーンにおける排出量を含めて詳細に考慮することの重要性が改めて示されました。
BEVのCO2排出量削減ポテンシャルを最大限に引き出すためには、走行段階での電力の脱炭素化を着実に進めることと同時に、バッテリー製造を含むサプライチェーン全体での環境負荷低減への取り組みが不可欠です。
本検討は多くの推定と仮定に基づいているため不確実性を含みますが、異なる比較結果が存在する理由や、LCAにおける前提条件の重要性について、ご理解の一助となれば幸いです。
お役人は、大変に頭が良いだけではなくズル賢くもあるので、嘘を付かない範囲で言葉の定義を工夫したり計算の前提を変えたりして、都合の良い結果を導き出したり世論の誤解を醸成したりしますからね。まあそういうことなんでしょう。
Gemini 2.5 Flashに検討してもらった内容は以上です。なお、私自身で細かなファクトチェックはやっていません。
さて、私自身は、BEVを否定するものではありません。厳しい現在の日本の状況においても、「バッテリ容量を小さく済ませる」と非常に優れた環境性能の乗り物になると思いますしね。短い走行距離でも良いとすれば、急に世界がまるで変わります。
一方で、最近の風潮でもある「巨大バッテリーを無理やり積んで、BEV向きではない領域までBEVにする」というのには、合理性を感じないなぁと思うのです。
いやでもまあ、車と言うのはそもそも合理性だけで存在しているわけではないので、極めて滑らかな乗り味が良いとか、加速とかが好きで乗りたいとか、デザイン自由度が上がってカッコいいとか、そういう理由であれば、それはそれで全然いいとも思います。燃費が悪い車を比較に持ってくるだけで、上の計算は簡単に逆転するわけですしね。ただ、BEVは環境に優しいから素晴らしいのだとか、必ずしも正しくないことを前面に押し出されると、それは本当か?もっとニュートラルにちゃんと評価しようぜ!って思っちゃうというだけです。
また別の話、私は、日本は電力に極力依存しないで済むような社会を目指すべきだと思っているので、BEVはそれが向く範囲の用途にほどほどにしておいて、別の方法でカーボンニュートラルを目指すべきだと思っています。それについては話題が変わるので、また別の機会に。