
日が長くなったこの時期は、朝夕の通勤時間に外が明るく、日常の中にも車の中からの景色を楽しむことができます。
今の時期、宇都宮中心部から離れた市内各所では、鮮やかな黄金色に染まる田んぼと、水が張られ苗が植えられたばかりの田んぼのコントラストが映えます。
子供の頃、私の田舎の山口県の瀬戸内側では、麦の栽培をしている田んぼなんて見たことがなかったので、この麦秋の風景には何か不思議な感覚を覚えます。まだ梅雨前の春なのに、田んぼが鮮やかな黄金色なのが不思議なんです。収穫時でもやや緑掛かった米よりも、ずっと黄金色が強いですしね。
さて、栃木県の米の作付面積(@R2年)は59,202haで、それに対して麦の作付面積は12,630haだそうです。比べてしまえば麦の作付面積は小さいとも言えますが、それでも米に対して十分なポーションを占めるくらいには作られていると言っていいでしょう。県内でも場所によるのでしょうが、私の生活圏だと3割から半分くらいの田んぼで麦が作られている印象です。栃木県は全国有数の麦の産地のようですね。
ところで、栃木県で栽培されている麦は、小麦、二条大麦、六条大麦のほぼ3種類のようで、はだか麦(突然変異で実と皮の癒着がなくなった大麦)はほとんど作られていないようです。
作付面積(@R2年)としては、
・小麦 2,300ha (18%)
・二条大麦 8,660ha (69%)
・六条大麦 1,670ha (13%)
となっていて、二条大麦が多いようです。ビール用の麦ですね。栃木県は、二条大麦の生産が全国2位の一大産地なのだそうです。
‥‥へぇ~そうなんだ‥‥てっきり小麦を作っていると思っていたんですが、小麦は2割にも満たず、8割以上が大麦だったんですね‥‥
ちょっと驚きましたが、県の農政部の栃木県農業総合研究センターが発行している「作物の生育概況」の「麦類」のページなんかを見てみると、「麦類」と言いつつ「ビール大麦」のことしか書かれていなかったりします。
https://www.pref.tochigi.lg.jp/g59/mugiseiiku.html
県からして、思いっきり大麦推しなのです。
そこにあった最新の成熟状況によると、今年は例年より若干早い成熟が予測されていて、今がまさにちょうど成熟し終えた頃のようですね。
道理で田んぼが黄金色に輝いているわけです。
大麦と言えば、パンにも適さないために米や小麦に押されて、チベット高原などの極一部を除いて主食にする地域はほとんどないようです。それでも、主要穀物の中で最も成長が早く、収穫までにかかる日数も短い上に、乾燥や寒冷に強いため、世界中のかなり広い地域で栽培され続けてきたようです。
日本においても、二条大麦は明治以降にビール製造のためにヨーロッパから導入されたものだそうですが、六条大麦は古くから米を補う優秀な穀物として栽培されてきたそうです。小麦と違って粒のまま炊けるため、米と混合して食べる主食でした。庶民の日常食は、そんな麦飯やアワやヒエを混ぜて炊いたご飯が一般的だったようですね。
そんな日本の大麦の在来種は、湿害に強い品種、茎が短く倒伏しにくい品種として評価され、20世紀以降になって世界中で品種改良に活用されたそうです。世界に拡散し各地に適応し選抜されて生き残った種が、再び交わってより優れたものになっていったわけですね。へー、おもしろい。
ところで、栃木南部と(群馬南東部とも)連続した文化圏の下図橙地域の埼玉北部でも、麦栽培が盛んなようです。
でも、さすがは第二のうどん県と自称するだけのことはありますね。埼玉で作られている麦は、ほとんど小麦のようなのです。
麦類全体の作付面積は、栃木が埼玉の倍ありますが、小麦の作付面積は、埼玉が栃木の倍になって逆転します。なんで隣接しているのにこういう差が生まれたんでしょうね、この謎を紐解くと面白そうです。
なお、お米の作付面積は、栃木が埼玉の倍ありますので、米と麦類の作付面積比は、両県でほとんど同じくらいのようです。
‥‥とまあいろいろと話が飛びましたが、今週あたりが麦秋の景色も見納めかも知れませんね。そろそろ刈り取りが始まりそうです。
《おまけ動画》
場所によって違いますが、車の中からの景色はこんな感じなのです。私の原体験的には、秋っぽいのが不思議に感じるのでした。
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2025/05/28 21:26:45