ブリュッセルでコンテナに詰められたスピットファイアは、
・フィーダー船で
ロッテルダムに運ばれ、
・超大型コンテナ船
HMM RAONに積み替えられ、
・ロッテルダムから
アルヘシラス、
タンジェMED、
シンガポールへの寄港を経て、
釜山までやってきていました。
そして、
6/29 22:04に釜山新港に一旦陸揚げされて、しばらく釜山で待機状態でした。
その
10日後となる7/9 23:16に、ようやく次のコンテナ船
SEASPAN BEACONに積み込まれまして、
7/10 3:30に横浜に向けて出港しました。いよいよ日本にやってきます。
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その話の前に、なんで積み替え(トランシップと呼ぶそうです)が必要だったのだろうと思い、少し調べてみました。
HMM RAONは
パナマ運河を通ることができないサイズの大きな船で、SEASPAN BEACONは
パナマ運河をぎりぎり通れるサイズの船です。
TEUと言う数値がコンテナ船として最も重要な値で、
20フィートサイズのコンテナに換算したときの積載個数のことです。シンプルに何個運べるのかということですね。
HMM RAONが14,000TEUで、
SEASPAN BEACONが10,000TEUと言うことです。HMM RAONの方が
4割も多くのコンテナを運べるというわけですね。
このTEUが大きい方が
運搬効率が良くなるわけですが、当前、船が大きくなります。長さや幅も重要ですが、船舶が
水に浮いている状態での船底から水面までの鉛直距離が重要で、それは
喫水と呼ばれます。その喫水は、
HMM RAONが16mで、
SEASPAN BEACONは15.5mあります。
ここで、日本の大型港(東京、横浜、大阪、神戸)の岸壁の水深は、深くても
16m程度のところが多いようで、
18mの水深があるところは南本牧ふ頭にわずか2ヶ所(MC-3, MC-4)しかないそうです。
16mの水深の岸壁では、喫水16mの船は付けられません。そのため、喫水16mあるHMM RAON以上のサイズの大きなコンテナ船は、日本には定期運航していないと思われるのです。
少なくとも、邦船社(日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社)が日本に寄港させている最大のコンテナ船は、下図の上から2番目の
NYK ALTAIRという船だそうで、HMM RAONどころか
SEASPAN BEACONよりも小さいサイズだったりします。
SEASPAN BEACONも十分に大きい船ですが、喫水が15.5mなので16m水深の岸壁が利用できるのでしょう。HMM RAONは、この図でいうと下から3番目の
MILLAU BRIDGEと同じくらいの大きな船ということです。
また、コンテナの取扱量を比較すると、
・横浜:
308万TEU @2024年
・上海:
5,000万TEU超 @2024年
・釜山:
2,208万TEU @2022年
だそうで、まあ簡単に言えば、
日本は中韓に大きく負けているということです。日本は、京浜地区を合わせても800万TEU程度で、阪神も合わせて530万TEU程度に過ぎません。
そして、
釜山港での取り扱いコンテナの約半分がトランシップだそうで、
超大型船が停泊できるハブ港として機能しているのでしょう。スピットファイアも、世界規模での流通の最適化の中で、横浜には入れない大きな船で釜山まで運ばれ、日本に航路をもつ船に積み替えられることになったのだと思われるのです。
なお上の図にある通り、現時点での世界最大級のコンテナ船は、そんなHMM RAONよりも
さらに巨大な24,000TEUなのですが、そんな巨大な船が
日本の造船所でも造られていたりします(https://trafficnews.jp/post/129910/3)。一方で、接岸可能な港の関係で
日本で造られた後に日本に戻ってくることはないのだそうです。
う~ん、こんなところでも日本は世界からやや取り残されているのでしょうかね。釜山でトランシップする方が総合的に合理的なのかもしれませんが、日本人としては何となく寂しい。
それに、この24,000TEUの巨大コンテナ船が竣工し運用されるようになってから
まだ5年程度しか経っていないのです。造船と言われると、何となく古い技術のような気がしてしまいますが、実は
今なお超ホットな開発競争が繰り広げられているようです。そして、以前は造船大国だった日本は、貨物取扱量だけではなく、大型船造船技術においても中韓にやや遅れ気味のようです。
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さて、コンテナ船の話から釜山からの出航の話に話を戻しましょう。
釜山から横浜にスピットファイアを運んでくれるSEASPAN BEACONは、その前の寄港地の青島から、釜山新港に7/8にやってきました。
https://youtube.com/shorts/VQYXez4fbQ0
上述のとおり、スピットファイアを入れたコンテナは、7/9 23:16にSEASPAN BEACONに積み込まれ、7/10 3:30に横浜に向け出港しています。
https://youtube.com/shorts/qUKxX6uXBck
その後の横浜への航路は、
関門海峡を通るこんな感じになるのかなぁと漠然と考えていました。(その後に瀬戸内海を通った方が僅かに短くなりますが、大きくは変わらないので豊後水道を抜けていくのかなぁと)
でも実際には、対馬の西側、五島列島の西側を通って、鹿児島と種子島の間を抜けて、
九州の南側を通るルートを通ったのです。
全行程はこんな感じだと思います。
Googleマップで距離を測るに、関門海峡を通れば1,240kmくらいで済むのに、こちらの九州の南側経由だと1,600kmくらいにもなるのです。
350km以上も長くなるのに、関門海峡を通らないんですよ。
なんでだろうと調べてみると、
関門航路の水深は約12mで、最大喫水11.4mまでに制限されているようなのです。なるほど、それでは喫水15.5mのSEASPAN BEACONではまったく通れませんね。
小さい頃、関門海峡は世界中の大型船が通る要衝だと聞いて育ちましたが、船の大型化が進んだために今となっては大きな船は通っていないのですね。
さてさて、船はここまで来ました。
いよいよ、明日、横浜港に入港です。
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Posted at
2025/07/11 20:29:30