2020年12月24日
追憶~アンソニー・ボーディン世界を喰らう~
あれは、、、いつだったか忘れましたが、都内の最高級ビジネスホテルに仕事をサボって隠遁していた時、ふとテレビを付けたら赤いBMWの初代X6が走っていて、なんかオッサンがぼやいている映像が映っていました。
なんじゃこれ・・・アメリカ版トップギアか?
そしたら音程まる狂いなちゃりらりらららー♪と音楽が流れて「のぉ~りざべぃしょ~ん・・・・」え?ナニ?予約しない?ちゃららちゃったー!みたいな能天気な音楽で始まるトップギアとは真逆のラリった始まりに私はビビりました。
X6を運転していたデカいおっさんは、何やらチリコンカンみたいな食い物を突っついて、えすぺしゃり~なになに~、と英語を話している。和訳が難しい感じの文脈なのは解りましたが、それにしても実に良い番組だ・・・と数十秒ではまってしまったのです。
でっかいオッサンの名前は「アンソニー・ボーディン」。NYで当初コカイン中毒になりながらも、人気レストランのシェフ長になり、キッチンコンフィデンシャルという本で一躍有名になったシェフ兼物書きだったのです。
そのおっさんが、半分ふざけながら世界の、一見箸にも棒にも引っかから無さそうな場所に食い物やら何やらを見に行ったり、逆に超メジャーなところにも突っ込んで行ったり、会話内容からして日本ではまず実現不可能な番組、それが
アンソニー・ボーディン のぉ~りざべ~しょ~ん
だったのです。
あまりのハマり具合に、それが見たいが為にホテルに泊まり、横にいる女なんか目もくれずに、むしろ邪魔だ帰れとばかりにディスカバリーチャンネルを見続けたわけです。当然、会議はすっぽかすし、まぁすっぽかしてもどうにかなるだろう、そうアンソニーが教えてくれたので、一時期ボクは各方面から信頼を失いました。
しばらくして、ディスカバリーを見ていてもちっともアンソニーが出てこなくなりました。
ああ、、、そういうことか・・・。
ボクの行く店、食べ物屋でもなんでもそうなんですが、結構潰れるんです。ああ、いいなぁ、ここはいいなぁ、というお店はどうやら大概無理をしていて善意ばかりでやっていた場合が多いのか、美味しいのに潰れる事が多いのです。いや、原因解らない・・・ボクがカウンターにいたのが原因なのか、自分のせいにしていたこともありますが、むしろ見た目はアンソニーレベルにダンディな上に会話はアンソニー並みに面白い自分が、まさか店をネガティブに振っていたわけない・・・
そんな思い直しを数年行ったり来たりしている間に、事実を知りました。
アンソニーがストラスブールで自殺してた。
原因は過密スケジュールなどが影響したのか、うつ状態になった為らしいんですが・・・
その時、思い出したのはアンソニーの番組はとても面白いし、笑えるのですが、実際の内容は結構シリアスだったり、たまに社会問題を凄く真面目に真っ当に切っている場合もあったし、そうか、アンソニーは繊細で優しい人だったんだな・・・と初めて気が付いたのです。
だから、良い番組だったんでしょう。
ボクが好きなのは全部潰れる、、、というわけでないのは解ったのですが、それにしても自殺しちゃうなんて、、、酷い世の中だなぁと思いました。
そして、実は結構アンソニーにあんたは似ている、そういう友人が多かったので、あ、俺もひょんなことで自殺しちゃうのかな、とか思ったり。
まぁ、確かに真面目に突き詰めて、優しさがありあまるほど持ち合わせていた場合、こんなクソみたいな世の中を見続けるのが苦痛でしかない、そう思っても不思議ではない気がします。
多少の遊びや、多少の不真面目さ、多少のウソや裏切りを許容できないとアンソニーみたいになってしまうのか・・・
ふと、キッチンコンフィデンシャルは読んだことが無いのを思い出し、昨日買ってみました。
じっくり読んで、天からアンソニーがボクを見守ってくれるようお願いしよう。
ブログ一覧 | 日記
Posted at
2020/12/24 20:27:44
今、あなたにおすすめ