
実は手元に来るまであまりマカンの事は知りませんでした。
8年くらい前でしょうか、知り合いが発表前に発注したから来るよ!という事でド初期のマカンSにのっけてもらったのですが、事前に聞いていた「アウディQ5の兄弟車で、既に出ているSQ5とほぼ同じ」という話はちょっと違うように感じました。
PDKはSトロニックより何だかポルシェっぽいし、足回りにしてもSQ5とは違うし、エンジン音もマカンの方がポルシェっぽい。いや、、、ポルシェだから当たり前か・・・と思いつつも、思ったよりポルシェっぽいなぁ・・・というのが最初の感想でした。
見た目はカイエンより好きだけど、価格を聞いて「こりゃ身近になれない」と大した興味もなく、その後モーターショーかどこか忘れましたが、ポルシェの人(多分エンジニア系)に「マカンてアウディと同じコンポーネンツ使ってるけどいいクルマだねぇ」と言ったら「そりゃ同じものもあるけど、6割から7割は違うものに変更しているし、ポルシェで作っているからね」と言われて、そうか僕が思っているほどマカンはアウディじゃないんだなぁと認識しました。
その認識が手元に来てから調べて、うーんなるほど、、、と再認識することになりました。多分長文になるので、お時間のある方でマカンちょっと興味ある人のみ閲覧してください。
まず、マカンの成り立ちですが、基本的にはVWグループが使うMLBプラットフォームから派生したモデルで、これはアウディのA4/6系などを束ねるVWグループ内では非常に重要な位置を支えるプラットフォームです。
マカンはそのMLBの中で2810mmというホイールベースを持っていて、これはアウディQ5と一緒です。B8系A4も同じ数値なので、確かにアウディの血が濃いと見れます。
じゃぁどこまでが一緒なのか?というと、先ほどのポルシェの人への質問では3~4割が共用しているかな?という答えでしたが、例えば足回りではリアアッパーコントロールアームなどはA4/6/7とマカンで共用部品が出てくるなど、足回りも結構な部分まで一緒っぽいです。ただ、それ以外は思ったほど共用部品が出てこないので、例えばQ5のスキンチェンジ版だろ?なんて感じではなさそうです。
というのも、実は自分、最初マカンSのエンジンはSQ5と同じでしょ、と思っていたらマカンSは3リッターとはいえツインターボV6エンジンでSQ5はスーパーチャージャーV6エンジンなので全然違う。ということは、多分ミッション接合部は異なる形状でしょうから、同じツインクラッチユニットを使おうにも別の部品を使う事になりそうです。ちなみに、マカンの場合PDKオイルは4年ごと交換推奨だそうで、アウディはどうだったか、、、
で、マカンのエンジンなのですが、出自は元をたどるとパナメーラやカイエンに積まれていたV8の4.8リッターNAが元みたいです。これを2気筒ぶった切ってV6にしたのが、パナメーラの廉価モデルに積まれていた3.6リッターのV6エンジンNAで、これをツインターボ化したのが当初のマカンターボとターボパフォーマンスみたいです。アウディ系のV6と同じ90度バンクを持つV6エンジンですが、出自が違うのは最近知りました。
で、マカンSなんですが当初アウディ系の3リッターブロックと思ったらそうじゃなくて、マカンターボの3.6リッターをショートストローク化した、96mm×69mmというあまり見た事ないくらいビックボアショートストロークのV6エンジンで、マカンターボ同様のツインターボエンジンです。ちなみに、タービン配置はバンク外です。
前期のマカンGTSは、マカンSの吸排気を変更したエンジンを搭載していて360馬力と500Nmを発揮するもの。100kmまで5.2秒で到達し、最高時速は256kmhと相応の性能を持っている車です。
さて、前期から中期でリアデザインが大幅変更され、PCMはワイド画面化されますが、実はエンジンも大幅リニューアルしていました。
GTSに関して言うと前期のようなSのスープアップエンジンではなくて、ターボのデチューン版に近そう。前期同様のV6エンジンですが、Sは3リッターターボながらGTSとターボはそれをショートストローク化した2.9リッターターボエンジンで、380馬力と440馬力を発揮。440馬力バージョンはこのエンジンの共同開発主であるアウディも使っていて、RS4やS6/7などが使っています。
というか、なんだこの使い分け、、、マカン2型のSの3リッターはどっから来た???ちなみに、マカン2型のGTSとターボはホットV配置で、面白いのは前期までエアクリーナーが二個だったのに対してマカン2型以降のV6エンジン車はエアクリーナーは右側に一つに変更されています。ちなみに、エアクリーナーは二枚構造になっていてボンネット内を通ってくるフレッシュエアを吸い込むようにできていて、まぁ何とも凝った造りだなぁ・・・と感じました。
さて、ここまで書いておいて、なんだこの変遷具合は・・・と僕自身思うのですが、つい最近?行われたマカン3型へのチェンジでマカンはターボがドロップ、マカン、マカンT、マカンS、マカンGTSとなりました。マカンSが380馬力、マカンGTSは2型ターボ同様の440馬力となりました。
ああ、ここまで書いておいてなんですが、マカンは随分長い事作っているので、結構な変わりようなんですよね。お尻は2型でガラッと変わり、顔は3型で相当なふくれっ面になりました。インパネも3型では大幅に物理スイッチが減る、最新のポルシェデザインになりましたし、随分あんたも変わったねぇ…と感じます。ナビだけでいえばアゼスト→小さいPCM→ワイドPCM→物理スイッチ少ないPCMみたいな感じですもん。
蛇足ですが、進化しつつも結果的に8発ないし600馬力級のモンスターは出ないかったマカンですが、それどうしてですかね?個人的見解は、400馬力級までがパフォーマンス以前にこのボディで気持ちいいと思える上限、と思ったのですが・・・カイエンターボGTとかを見ると、X3MやGLE63sやFペイスSVRの後塵を拝す絶対性能でよかったのかなぁと・・・
それでです、何でこんな事書いたのか、というと、、、、
割と素早く「はいこれだ」と決めた理由はマカン2型のGTSに乗った時に「GTSというにしては実に乗り心地もよく、ほどよくスポーティでほどよく静か」という、これエブリディ・ポルシェするのに一番いいモデルじゃないか???と思ったからなんです。
なので、相場より安い(理由は簡単でGTSなのにホイールが違うし、内装がフルレザーだから。OPてんこ盛りなのに評価低いなんて悲しい)し、下手な何か買うより価値も残りそう!と安易な気持ちで選んだのです。
ただ、不安というか、あれ?と思ったのは、試しにエンジン掛けたら初爆からして猛々しく、記憶の上にある2型マカンGTSより良い音している事でした。まぁでもあれ新車だったし、マフラー抜けるとみんなこうなのかな、くらいにしか感じませんでした。4年落ちで2万キロも走ってないし、きれいだし、まぁ認定だし、いいじゃない、という何時にない速い決断が、これを書いて説明したくなったというか、書いていて自分でも気が付いたというか・・・
マカン2型GTSとかなり違うぞ、前期GTS、、、
まず、エンジンがうるさいのは多分GPFの有り無しです。マカン2型GTSは多分全部GPF付きです。これで結構静かになる。前期はないんです。エンジンの差よりGPFの影響がデカい気がします。でも、これだけじゃない。
乗り心地が前期はスポーティ。904GTSのGTSから数えて、、、とかふざけたポルシェのギャグに付き合うつもりはありませんが、マカン1型のGTSは妙にすいすい野郎でして、例えば箱根を走っていて掛け値なしに楽しい気持ちいいと思えるのはマカン1型GTS。でも代わりに街中ではまぁまぁなハードパンチャーです。
幸い、いいアブソーバー(PASM付)がくっ付いていて、さらに良い味付けをしてあるので、胸糞悪くなるような乗り心地ではないのですが、それにしてもマカン2型のGTSで味わったような「あたかも高級セダン、PASMスイッチ一つでプレミアムスポーツ」という感じはあんまりないのです。
PDKの変速にしてもマカン1型は「ッズド!!!」っとばかりに出来る限りダイレクト且つ素早い変速をするのに対してマカン2型GTSはそこまでではない。どっちもバブリングをともなく変速はしますが、1型の方が激しいです。
なので、モードをスポーツプラスにして走りこんでいくと、思った以上に気持ちよくて楽しんでしまうんです、、、音がいい。エンジン音は何だかMやポルシェのフラット6風で、ざらついた粒が回していくと細かく整っていく感じが少し再現されているし、オーバーボアエンジンっぽく上まで無茶苦茶回るので、これが意外に面白い。マカンサイズのセダン作ってくれよ、ってかこれアウディS4に積んでくれ!と思うくらいです。
個人的には官能性評価における最高のV6エンジンの一つにしたくらいです。ちなみに、ロータスのV6SCやアルファロメオ164のSOHCのV6、ホンダのC型V6などが個人的に気持ちいいと感じるV6ですが、マカンGTSのDCN型もここに入れたいくらいです。
ステアリングの特性も実にいい塩梅で、細目のステアリングをそっと握って左右に振るたびに、正確性と絶妙なギア比の設定に感心できます。
正直ここまでの完成度は当初兄弟でしょ?と思っていた初代アウディSQ5には存在しません。
よくよく考えてみれば、ポルシェは元々コンサル屋でしたし、80年代に貧乏で死にかけた時に何とか凌いだ手筈もコンサル屋でしたし、さらに言えば共用にしても996と986ボクスターの共用で収益性を上げつつ差別化を図ることも完成させましたから、マカンGTSの完成度の高さは、まさにポルシェの歴史に裏打ちされたものなんだなぁと感じます。
もちろん、ポルシェファナティック的要素を自分に憑依させて考えれば、着座位置の無理矢理感(SQ5より、ちょっと寝かせて何となくスポーツカー態勢を取らせようとしている気がする)や、デザイン優先でいまいち感覚が掴みにくいこと、そもそもOP多すぎてクソ高いこと(手元にある車は981万円からOPにより乗り出し1300万となっていたようです)、とネガもたくさんあるのですが、正直感心する車です。
とはいえ、これ毎日のお供におすすめするか?と言われれば・・・
仮に70歳だろうが何歳だろうが、GT3ビシバシ乗って、エブリディスポーツ、エブリディ非日常な人であればおすすめしますし、むしろ足りないくらいかもしれません。GTSという記号性重視のファッション感覚で乗るのもありでしょう。
ただ、普通に乗るならターボか直4でコンフォートにするべきだと思います。なんせ、マカンをこうすることの意味がイマイチ解らない、、、
そもそも、マカンはファーストポルシェを目指しているわけで、ある意味通好みなGTSを設定することは必要だったのか、、、収益性やファッション性重視であればGTSと言いつつもっと柔い方向でよかったはず、、、現に2型GTSはそっちよりです。
結局のところ、このモデルを喜ぶのは誰なのか、分かりません。何となくこれを買ってよかったな、というひとが9割だと思いますが、その「何となく」に対してここまで作りこむ必要はないでしょうし、たった1割であろう変態野郎に手間暇を割くような会社にも思えません、笑。ただ、6000rpmから先のたった1000rpmにも面白味を詰め込む様は、凄いじゃん・・・と思ってしまうんです。
マカンファミリーの中では、結果的にトップモデルのターボを追い出してしまうほど、人気というか知名度を上げたGTSグレードですが、1型のGTSはちょっとそこまで器用な立ち回りが出来てない、やんちゃっぷりを評価してくれればとてもうれしいよ、という感じの、今の時代にしては意外と珍しいタイプのポルシェなのかもしれません。
ここまで書いておいてなんですが、未だにこの車が気に入るか分かりません。明日、ああ疲れたこんな車と毎日は無理です、というテンションになるかもしれませんし、ずーっと乗っているかもしれません。人の気持ちは移り気ですし、適当です。
ただ、一つ思うのは次のマカンはPHVを含めた電動化が決定しているようで、メインは純EVとも言われています。結構違う車になるでしょう、6気筒が残る可能性も低そうです。そういう意味で、そうなる前のものに乗れたのはラッキーだなぁと思うのです。
もしかしたら、もうこれ乗れなくなる、というのが連れてきた一番の理由かもしれません。そういう意味では、今のマカンはとっつき易く、しかしながら次はないという実にいい塩梅かもしれません。
というわけで、おすすめは911です、どうぞお買い求めください。私はそのカリスマを借りたGTSをしばし拝借することとします。