
これでBMWの直6は三度目です。
一度目は2.2リッターの320iでした。二度目はZ4Mcpの3.4リッター。今度は3リッターターボです。
BMWの代名詞=直列6気筒というのは長年の車好きにある固定概念の一つかと思います。シルキーシックスとかあだ名が付くくらいですし、80年代から90年代にはビックシックス系とスモールシックス系、というような同じ6気筒でも区分けするためにあだ名が付いたり、とにかく直6である事が有名なメーカーでした。
その歴史を紐解いていくと、初めての直6は戦前の328あたりが有名かと思います。ちょっと変わったオールアルミ(!)オーバーヘッドバルブエンジンで、確かプッシュロッドも使ったDOHC機構にも通じるようなエンジンで、2リッターから80馬力を発揮させて328を150キロまで引っ張ったと言われています。当時の高級車である335は全く違う直6だったのですが、どちらかというと有名なのは328の方ではないでしょうか?(確かイギリスのブリストルがデッドコピーしたんだっけ?)。
なので、間違いなく直6の老舗です。が、実は502スーパーや507の積んでいたV8エンジンでBMWは相当なV8関連での特許を取っていて、メルセデスが8発を作る際に結構この特許が邪魔だった、というのを聞いたことがあります。よって、BMWが直6オンリーかと言えばそうでもなく、すべてのエンジンにおいて優秀なエンジンを作る傾向がある、と言えたのではないでしょうか?(直4にしても良いの多いし、V12はメルセデスより先だし)。
とはいえ、駄作もちゃんとあるのが愛嬌のあるところです。
例えば、、、、昔あった「イータエンジン」ですね。ボクは知り合いが乗っていたE30の325iで体感しましたが、あれ確か2.7リッターで今でいうリーンバーンを目指したエンジンだったと思います。まぁ回らない。そして故障も多い。E30に詳しくないのですが、確かその後普通の2.5リッター170馬力ってのに変わった気がします(528eって、イータエンジンそのものグレードもありましたよね)。
あとは、個人的な経験からですが、E90の323iと3リッターの325i。E90が出た時、330iの3リッターはちょいと雑さを感じなくもないのですが、これはM3か!と思わせるパワフルさに驚きました。しかし、これと同じか、と思いきや後期で出た3リッターの325iはまさにイータエンジンの再来とばかりになんかすごい眠たい感じで、それまでの2.5リッター218馬力と比べて実に残念なフィーリングだった記憶があります。それよか323はマシでしたが、BMWは何故か排気量より表示がダウンしているエンジンに駄作が多い気がします。
燃費とか建前気にすると、どうもここのメーカーダメなんだ・・・。
そういう事を気にせず、ちゃんと吹っ切れたものを作ると、これが良い。
まぁさっきの話と逆になりますが、2.2なのに320iというE46後期のソレですが、これはホント良いエンジンでした。まぁ回るし結構速いし、挙句燃費もいい(ゆっくり走ればリッター15kmとか出せました)。
あとZ4のS54エンジン。これはもうあれですよ、伝説です。その後乗ったポルシェのフラット6よりも狂気を感じました。ちんたら走れば燃費もよかったです。
さて、今回のG31型に搭載されているB58ですが、気持ち的にはN55とかその辺りの「ツインターボ化により8気筒を駆逐する」系の後継かつ最新エンジンになります。
N55はE92の335クーペで初めて乗ったのですが、まぁ驚きました。速い。そして燃費が良い。これがダウンサイズの始まりだったとボクは思っています。この時は確かツインターボ、この後シングルターボになり、なんだか色々と改良がなされているので、言及は避けますが同じN55と言っても全然違うものに年代別になっている気がします。
このエンジン、凄く良いのですが、それまでのむせび泣くようなトップエンドでの咆哮より、どっちかというとパルスジェットみたいなババババ!!!!みたいなサウンドとフィーリングだった感覚が強く、それが原因でF10は535iを選ぶなら528iに行くか550iだと思ったものです。
なので、B58もそれか?と思うと、これが違う。
初めて乗ったのはF30の340iでした。あ!これ前のより良い!と思ったのです。
個人的な観測ですが、このエンジンは下にいる4発と3発とのモジュラー化がN時代より進んだため、根本的にこいつの出来が悪いと全部こけるという責任があったからか、気合をいれたのでは?と思っています。
まぁ、、、内燃機関の終焉を飾る、というのもあるかも知れません。メルセデスの直6回帰で作ったエンジンは、そんな事言っていましたし。
で、話元戻すと、B58はアルピナとか、他のメーカーの手組みたいな特殊エンジンを別とすれば官能性と経済性と性能が完璧にバランスしているエンジンです。7000rpmのレブリミットまで、デッドスムースに吹け上がり、サウンドも非常によく、且つ燃費もいい。メルセデスの直6ガソリンも素晴らしいですが、若干BMWの方が官能性が上手かな、と感じます。
面白いのは、マカンGTSのウルトラショートストロークV6と比べると、少し重ったるく感じるのです。
というのも、直6はクランクシャフトが長いからか、これまでの経験では、どれに乗ってもかすかに感じる重たくて長いクランクシャフトが回り始める”タメ”を感じるんです。
これ、遅れとかそういうのじゃなくて、重たい鉈、、、いや、、、剣士が構えた胴田貫が一瞬の間の後振り落とされる感じといいますか、非常に精度の良い重量物の動き出す一瞬の間、みたいな感じなんです。
一言でいうと重たそう、なんですが、それは決してネガじゃなくて、むしろ直6を踏む快感と言えます。
マカンGTSのV6は変則90度バンクを採用しているためにフリクションロスなどあるはずなのに、フィーリングは全てのムービングパーツが最高の精度で、且つ短いクランクシャフトを一気にオーバーボアのピストンで回し始める、全く違う快感があります。
ちなみに、B58はストロークが90mm以上あるロングストローク型。
これで高回転回るの?と思う人もいると思いますが、もうハイレベルな設計と工作精度さえあれば、そんなんどうでもいいねん、と思えてしまうものです。ちなみに、540iのパワーキット装着車とマカンGTSの異種格闘技戦だと官能性と性能は同点、経済性は540iの圧勝となります。マカンは高速でどう頑張ってもリッター15とか無理ですもん、、、PDKの鋭さ余って、ゆーっくり走るのもアレですしね、苦笑。
正直、燃費だけが540iのネックだろうと思っていたので、望外に良い燃費にまずは一安心。
この個体については、もっと掘り下げる部分があるので、もう少しネタ披露が出来そうです。
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2023/03/19 23:18:33