「吸気温度が1℃下がると1馬力上がる」
と言う説があります・・・。
コレって本当なのでしょうか?
気になりつつも良く分からないので放置してました(笑
私は半ば迷信かな?と思っていました(爆
1℃で1馬力なんて、都合の良い数字になるとは思えなかったからです。
ちょっと考えただけでも複雑な計算になるのですから、切りの良い数字にはならないでしょう。普通。整数だけの計算じゃないですし。
すっかり冬モードへ移行して、車弄りが落ちついたので、
この説にケリをつけようと思います!!
EXCELを利用して表だのグラフだの作ってひたすら計算しました。
画像はその様子です(笑
数字だらけの長文になるので
読む際はお覚悟を(笑
できるだけ、計算式は載せずに過程と結果を書いていきます。
ではまず、なぜ
吸気温度が変わると馬力が変わるのかですね。
大雑把な理屈で言いますと、吸気温度が変わることで、空気密度が変化し、単位面積あたりに含まれるO2の量が変わる為です。
例)吸気温度がUP→空気が膨張→単位面積あたりのO2量が減る→パワーDOWN
要は、O2の量が変わると
燃やせるガソリンの量が変わるのでパワーに響くという事です。
これが、一般的に言われている
「1℃で1馬力」の理由です。
しかしこれでは、
全く数字は出てきてません。
これからこれを計算するわけです。
で、まずは温度毎の空気密度絡みを計算します。
①温度 ②空気密度 ③O2密度 ④変化量 ⑤馬力 ⑥馬力増減率
℃ kg/m3 kg/m3 % PS PS
0 1.293 0.299 100.00 299.11 6.83
5 1.270 0.293 98.20 294.08 5.03
10 1.247 0.288 96.47 289.22 3.29
15 1.226 0.283 94.79 284.53 1.62
20 1.205 0.278 93.17 280.00 0.00
25 1.185 0.274 91.61 275.62 -1.56
30 1.165 0.269 90.10 271.39 -3.08
35 1.146 0.265 88.64 267.29 -4.54
40 1.128 0.260 87.22 263.33 -5.95
※表の解説です↓
①温度
②0℃の空気を標準空気密度1.293とし、各温度毎の密度の変化を計算。
③それに対する、O2密度も計算。
④密度の変化量を計算。
⑤変化量に対し馬力を計算(常温を20℃とし、20℃をインプの280PSとした)
⑥馬力の増減量
と、こうなります。つまりはどれくらい密度が変わったかを算出し、その割合を馬力に当てて計算したのです。
例)空気が5.0%膨張した為、馬力が5.0%減少する(280→266PS)
もう少し表を載せます。
②空気密度
①温度 (膨張率) ③O2濃度 ④吸入空気量 ⑤吸入O2量 ⑥O2分子量
℃ % % % % 個
0 100.00 20.9 100 100.00 20.90
5 101.80 20.9 100 98.20 20.52
10 103.53 20.9 100 96.47 20.16
15 105.21 20.9 100 94.79 19.81
20 106.83 20.9 100 93.17 19.47
25 108.39 20.9 100 91.61 19.15
30 109.90 20.9 100 90.10 18.83
35 111.36 20.9 100 88.64 18.53
40 112.78 20.9 100 87.22 18.23
※解説↓
①温度
②空気の膨張量(0℃で標準とする)
③O2濃度(空気が膨張しても濃度は一定20.9%)
④エンジンの吸気量(100%で一定とする)
⑤エンジンの吸気量と空気膨張率から計算したO2の量
⑥O2の分子量(仮定として空気100に対しO2 20.9個とした)
イメージ出来てきたでしょうか?
空気が膨張しても、エンジンの吸気量は変わらないので、吸い込まれるO2の量が減少しています。
さらに・・・
O2が減った分、馬力が同じ%で減少するのはなぜか?
※O2 5%減=馬力5%減 となるのか?
今度は
空燃比が出てきます。
理論空燃比14.7で、280PSが出ると仮定します。
※空燃比14.7とは→1gのガソリンを全て燃焼させる量のO2を含んだ空気の重さが14.7g
②空気100gの ③空気14.7gの
①温度 O2重さ O2重さ ④ガソリン量
℃ g g g
0 23.09 3.39 1.0000
5 22.68 3.33 0.9820
10 22.28 3.27 0.9647
15 21.89 3.22 0.9479
20 21.52 3.16 0.9317
25 21.16 3.11 0.9161
30 20.81 3.06 0.9010
35 20.47 3.01 0.8864
40 20.14 2.96 0.8722
※解説↓
①温度
②空気100gに含まれるO2の重さ
③空気14.7gに含まれるO2の重さ
④空燃比14.7になるガソリン量
と、なります。
O2が減ったら、ガソリンも減らないと空燃比14.7に成りませんから、ECUがガソリンを減らしに制御します。
※目標空燃比は14.7とは限りませんが、目標が幾らでも結果は同じです
こうすると
、④ガソリン量が、最初の表の④変化量と同じ%になりますね。
これで、
O2 5%減=馬力5%減が
確証できます。
さて、あとは肝心の
「1℃で1馬力」の件ですが・・・。
最初の表に戻ります。
⑥馬力増減 を見てください。
コレが5℃毎の馬力の増減量です。
う~ん、
まちまちですね?
ちょっと見づらいので、書き方を変えます↓
①温度 ②5℃毎変化量 ③1℃毎変化量
℃ PS PS
0 5.04 1.007
5 4.86 0.972
10 4.69 0.938
15 4.53 0.906
20 4.38 0.875
25 4.23 0.847
30 4.10 0.819
35 3.96 0.793
※解説↓
①温度
②5℃毎の馬力変化量
③1℃毎の馬力変化量
どうでしょうか?
温度によって、馬力の変化量が違いますね。
これは空気の膨張率が温度に対して一定ではない為の生じるようです。
同じ1℃でも、30→29℃ と 1→0℃の変化は馬力に及ぼす影響が違います。
これで
、「1℃で1馬力」説は
崩れましたね。
結局の所、計算しないと何馬力変わるか分からないと言う事ですね。
※ちなみに、今回は280馬力をベースに計算しましたが、ベースにする馬力が違うと変化量も全然違くなります。
例)150馬力の場合↓
①温度 ②5℃毎変化量 ③1℃毎変化量
℃ PS PS
0 2.70 0.540
5 2.60 0.521
10 2.51 0.502
15 2.43 0.485
20 2.34 0.469
25 2.27 0.454
30 2.19 0.439
35 2.12 0.425
150馬力だとこうなります。全然ちがいますね。
なぜかと言うと、大事なのは
「ベースの馬力に対して何%上がるか」だからです。
一番最初の表の
⑥馬力増減率 が大事なのです。
この表を見ると例えば、
20℃に対して0℃は6.83%馬力が上がると読み取れます。
280PSの6.83%と
150PSの6.83%は当然違いますよね?
馬力の大きい車ほど温度の影響が大きいと言えます。
長くなりましたが
、「1℃で1馬力」説の謎を解く事が出来ました。
「1℃で1馬力」は嘘でした(笑
しっかし、この説を言い出したのは一体誰なのでしょうかね?
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小難しい話とか | クルマ
Posted at
2010/12/14 01:00:16