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ノイマイヤーのブログ一覧

2022年12月31日 イイね!

感想文アーカイブ2022

早いもので2022年も終わりますね。

今年は私は健康だったものの、家族が入院し手術を受けたり今月中旬には流行病で我が家がロックダウンするなど、困難な状況がありました。それだけでなく、自身の仕事の状況の厳しさ(内容も環境も)が段々と激しさを増し、ちょっと参りそうになることも正直ありました。

そんな中でも趣味であるクルマが私のことを救ってくれている、そう感じることが多い一年でした。年末年始は帰省もしませんし何処にも行きません。仕事納めが遅くて年賀状に着手したのが昨日・・・。デザインは完成したものの住所録がぶっ飛んでしまい、明日キチンとした宛名書きソフトを購入して作り直すことに決めました。

そんな諦めの境地の中で現実逃避がてらアーカイブの更新を行いました。
お正月休みの間に色々書きたいテーマに取り組めればいいのですが・・・。

来年は本厄ですが、何とか頑張りたいと思いますし面白い車との出会いや魅力の再発見ができればいいなと思っています。そして愛車達も一層大切にしたい思います。・・・という訳で皆様もよいお年をお迎えください。

●2022年試乗車抜粋(試乗順)
2020年式Honda e ミニ感想文

2021年式シビックEX(CVT/MT)感想文

2022年式ノア感想文

2021年式ノート・オーラ ミニ感想文

2022年式bZ4X感想文

2022年式ステップワゴンe:HEVスパーダプレミアムライン感想文

2004年式ワゴンR FX感想文

2021年式 N-WGNカスタムLターボ感想文

2022年式サクラ X ミニ感想文

2022年式 エクストレイルG感想文

2020年式 ロータスエリーゼスポーツ220II感想文

1999年式プレオRM感想文

2001年式コロナプレミオEリミテッド感想文

2002年式デュエット Vリトルパッケージ(4WD)

2013年式マーチ ボレロ

2022年式シエンタHEV_Z(7人乗り)感想文

16台試乗しておりました。原動機別で分類すると、EVが3台、HEVが5台、ICEが8台と電動化の波を感じますね。こんなにEVに乗ったの初めてじゃないでしょうか。車型別だとハッチバック3台、軽自動車3台、ミニバン3台、SUV2台、スポーツ1台と悲しいことにセダンの衰退を感じさせます。これがメーカー別だと、ホンダ4台、トヨタ3台、日産3台、スズキ1台、ロータス1台。新旧洋邦問わず、どの車も違った個性があり、車という道具の奥深さを考えさせられました。

この感想文が役立つときもありました。会社の人がミニバンを購入したのですが、ちょうど試乗済だったので、自分でブログを読み返してアレコレと情報をお伝えしたところ「えっ、ノイマイヤーさんって最新のミニバンも詳しいんですか?キモい位詳しいですね・・・」と若干Disられたものの、週末を挟んだ後で「ノイマイヤーさんの言ってることがよくわかりましたので●●を買っちゃいました」と即決。人様のカーライフのお手伝いができたのだとしたら嬉しいことですね。

個人的に感想文が書けるだけの情報が得られないレベルのちょい乗りはもう少しあるのですが、自分のメモとして残す為に一定の距離・時間走らせたもののみブログに残しています。

★2022年版 感想文アーカイブ
#順番はヒエラルキー順 同一モデルは古い順#
下記リンクから各メーカーに飛べます。





●トヨタ

2002年式デュエット Vリトルパッケージ(4WD)

2004年式パッソ感想文
2014年式パッソ感想文
2016年式パッソX-L_PKG・S感想文

2019年式ライズG(4WD)感想文

2000年式ヴィッツUユーロスポーツエディション感想文
2010年式ヴィッツ感想文
2014年式ヴィッツ感想文
2017年式ヴィッツハイブリッド感想文
2017年式ヴィッツGR(MT)感想文
2018年式ヴィッツGRMN感想文
2020年式ヤリス感想文
2020年式GRヤリス感想文

1999年式ファンカーゴX感想文

1986年式コルサ・ソフィア感想文

2011年式 アクア感想文 前編
2011年式 アクア感想文 後編
2021年式 アクアZ感想文

2012年式 ポルテ/スペイド感想文

2022年式シエンタHEV_Z(7人乗り)感想文

1978年式カローラGSL感想文
1981年式カローラクーぺ・レビン感想文
1998年式カローラGT感想文
1993年型カローラSE-Limited感想文
1998年式カローラ1.5XE-Saloon感想文
2002年式カローラ1.3X感想文
2008年式カローラ・アクシオX感想文
2012年式カローラフィールダーG(MT)感想文
2012年式オーリスRS感想文
2013年式カローラフィールダーHV感想文
2018年式カローラ・スポーツG"Z"感想文
2018年式カローラ・スポーツ ハイブリッドG感想文
2018年式カローラ・スポーツG"Z" iMT感想文
2019年式カローラ/ツーリング感想文
2019年式カローラクロス ハイブリッドZ感想文

2005年式MR-S Sエディション感想文

1981年式カリーナ1.8ST-EFI感想文
1984年式カリーナ1.8SG豪華マイロード感想文
1984年式カリーナGT-R感想文
1991年式カリーナサーフSXリミテッド感想文
1999年式カリーナ2.0Ti感想文

2001年式コロナプレミオEリミテッド感想文

2011年式プリウスPHV感想文
2017年式プリウスPHV_SナビPKG感想文

1996年式イプサムL-Selection"EX"仕様 感想文

2012年式86感想文(試乗無し)
2015年式86レーシング感想文

2000年式ライトエースノアGメモリアルエディション感想文
2022年式ノア感想文


1993年式カムリプロミネントG感想文
1993年式カムリプロミネントG感想文追補版

1996年式RAV4 L感想文
2015年式RAV4リミテッドHV感想文
2019年式RAV4 アドベンチャー感想文

2013年式ハリアー感想文 前編
2013年式ハリアー感想文 後編
2020年式ハリアー感想文

2022年式bZ4X感想文

1974年式コロナ・マークII GSL感想文

1989年式マークII3.0グランデG感想文

2000年式プログレNC250感想文

2001年式 ハイエース スーパーカスタムLTD感想文

2011年式ヴェルファイアX 4WD感想文

2003年式クラウンマジェスタ4.0Cタイプ感想文
2012年式クラウンアスリートS_HV感想文

2014年式ランドクルーザー70感想文



●レクサス

2012年式CT200h感想文

2018年式UX200/UX250h感想文

2014年式NX200t/300h感想文 前編
2014年式NX200t/300h感想文 後編
2014年式NX200t感想文 追補版

2017年式RX200t Fスポーツ感想文

2019年式LS500h_I_PKG_AWD感想文



●日産

2022年式サクラ X ミニ感想文

2013年式マーチ ボレロ

2016年式ノートe-POWER感想文
2020年式ノートe-POWER X感想文
2021年式ノート・オーラ ミニ感想文

2020年式キックス感想文

1985年式サニー305Reニスモ感想文
1990年式サニートラック・ロングボデー感想文

1990年式パルサーGTI-R感想文

1992年式シルビアQ'sSC感想文

2013年式エクストレイル感想文
2022年式 エクストレイルG感想文

2012年式セレナSハイブリッド感想文
2018年式セレナe-POWER感想文

1991年式ローレルメダリスト感想文

1979年式セドリックSGL-E感想文

2012年式シルフィ感想文(未試乗)



●ホンダ
2012年式N-ONE感想文

2021年式 N-WGNカスタムLターボ感想文

2011年式N BOX感想文
2012年式N BOX+カスタムGLターボ感想文
2017年式N BOXカスタム_ミニ感想文

1986年式アクティストリートL感想文

2020年式Honda e ミニ感想文

1983年式シティターボII感想文

2020年式ホンダフィット感想文

2014年式ホンダヴェゼル感想文
2021年式ホンダヴェゼル e:HEV Z感想文

1990年式シビック35X感想文
2017年式シビック HB(CVT)感想文
2021年式シビックEX(CVT/MT)感想文

1987年式クイントインテグラVX感想文
1989年式インテグラZXi感想文

2018年式インサイトEX感想文

1997年式ステップWGN_G感想文
2017年式ステップWGNスパーダ・ハイブリッドG・EXホンダセンシング感想文
2022年式ステップワゴンe:HEVスパーダプレミアムライン感想文

2007年式アコード20EL感想文

1991年式アスコット2.2Si感想文




●三菱

1990年式ミニキャブブラボー感想文
2011年式ミニキャブMiEV感想文

2012年式ミラージュ感想文

2001年式ランサーセディアワゴン感想文

2018年式エクリプスクロスGプラスPKG感想文

2012年式アウトランダー感想文

1990年式デリカ・スターワゴンLINKS感想文


●マツダ

2014年式デミオ13S感想文
2014年式デミオXDツーリング感想文
2018年式デミオ13S感想文
2018年式デミオXDツーリングL_PKG(納車12ヶ月経過)

2008年式マツダベリーサ 感想文

2020年式マツダCX-30 X L_PKG感想文

1992年式センティア感想文


●スバル

1965年式スバル360スタンダード感想文

1995年式ヴィヴィオef-s感想文

1999年式プレオRM感想文
2001年式プレオLS感想文

1987年式ジャスティLJ感想文

2011年式インプレッサG4感想文

2012年式フォレスター感想文

2011年式インプレッサG4 2.0i-Lアイサイト感想文

2014年式レヴォーグ感想文

2018年式フォレスターツーリング感想文


●スズキ

2004年式ワゴンR FX感想文

2012年式スイフトRS×スイフトスポーツ比較感想文
2017年式スイフトスポーツ感想文

2018年式ソリオバンディットHV感想文

2018年式ジムニーシエラ感想文



●ダイハツ

1993年式ミラ Jターボ感想文

2012年式ミラココア プラスG感想文


2000年式ムーヴ カスタムターボRS感想文
2001年式ムーヴCR感想文

2007年式アトレーワゴンカスタムターボRS感想文

1986年式シャレード ブランシェII感想文
1988年式シャレードGT-XX感想文

2019年式ロッキーPremium感想文

1993年式アプローズ16Si感想文



●いすゞ

2004年式いすゞエルフカスタム感想文




●メルセデス・ベンツ

2012年式メルセデスベンツA180感想文
2012年式メルセデスベンツB180感想文




●BMW

2020年式BMW320d xDrive M Sport感想文



●VW

2012年式VW UP!感想文

2020年式VW T-Cross感想文

2009年式ゴルフVIコンフォートライン感想文




●アルファロメオ

2011年式アルファロメオジュリエッタ感想文



●フィアット

2007年式フィアット500 1.2POP感想文



●プジョー

2012年式プジョー208感想文



●ルノー

2010年式トゥインゴ ルノースポール感想文
2018年式ルノートゥインゴGT(MT)感想文
2010年式ルノー・ルーテシア R.S.感想文



●アルピーヌ


2018年式アルピーヌA110ピュア感想文



●シトロエン
2011年式シトロエンC3感想文

2011年式シトロエンDS3スポーツシック感想文


2011年式シトロエンC5セダクション感想文



●ボルボ

2013年式ボルボV40感想文
2013年式ボルボV40SE感想文

2005年式ボルボXC70感想文



●ロータス

2020年式 ロータスエリーゼスポーツ220II感想文

以上
Posted at 2022/12/31 01:07:21 | コメント(0) | トラックバック(0) | 感想文_車レビュー | 日記
2022年12月14日 イイね!

アイシンコムセンター企画展「クラウンとアイシン」見学

アイシンコムセンター企画展「クラウンとアイシン」見学祝日は私の勤務先も妻の勤務先も仕事なのに保育園は閉まっています。そこで同じく公営の祝日保育を実施している保育園に連れて行くことになるのですが、給食が出ない為、5時起床でお弁当を用意する必要があり、最近は割切って有給休暇を取るようにしております。

夫婦交代で休むのですが、休みと言えども家でゴロゴロしているわけにも行きませんので10月はひと区間だけ子供達を新幹線に乗せてきました。正直、ひと区間で十分子供は楽しんでいたようで、下車後は安全な柵の手前側で通過する新幹線の迫力に圧倒されておりました。

次の11月の祝日は刈谷市にあるアイシンコムセンターへ行ってきました。ここは平日しか開館していないアイシンの企業展示施設です。

たまたま企画展をやっていることもあり、プログレでアイシン本社へ。お客様駐車場には三河33を掲げた初代セルシオが止まっていて何となくテンションが上がります。



エントランスには3代目トヨペットコロナが止まっています。社内のレストアプロジェクトで復活したようですが、流石というクオリティ。



トヨグライドなのは黎明期からトヨタのATを(元アイシンワーナーことアイシンAW)生産しているアイシングループらしい選択と言えます。



まずは常設展へ。

「アイシン」の社名は「愛知工業」と「新川工業」が合併して両社の頭文字をとったもの。1943年にトヨタ自動車と川崎航空機工業の共同出資で生まれた航空機エンジンの量産メーカーでした。1965年、トヨタ自動車工業のサプライヤーとして新川工業と合併しアイシン精機となりました。




時代の流れに沿って1/43スケールの代表的なミニカー(市販品)が展示され、マニア層で無くても自動車の進化を感じ取ることが出来ます。



トランスミッションは1959年にトヨタが開発した半自動2速ATであるトヨグライドを受託生産し、アイシンによって改良・洗練されていきました。当初は職人が一人で組み上げており、日産数台だったトヨグライドですが、1963年には完全自動のトヨグライドを開発、年間5万機の生産ペースに拡大しました。モータリゼーションの波でイージードライブへの要求や輸出先のニーズにATはよく合っていたのでしょう。



一方で米国ボルグワーナーも日本市場に目をつけ日本に進出したところ、トヨグライドがボルグワーナーの特許に抵触していることが発覚しました。トルクコンバーターとプラネタリーギアを用いた自動変速機という枠組である以上、特許を回避することは不可能であり1969年にアイシン・ワーナーという合弁企業を発足させてATの開発・生産を行うこととしました。

特許を調べずにトヨグライドを作ってしまったトヨタ自動車も鈍臭いところがありますね。以後、品質と技術に十分注意したアイシンワーナーは世界中のメーカーへ採用されていくことになります。

MTも1967年のトヨタ2000GTの5速MTが展示されています。これはアイシンによる開発第一号のトランスミッションとのこと。残念ながらシフトパターンを示すプレートは欠品しておりました。(いわばトランスミッションの顔なので復元して欲しいですね)



ATの進化は続き、ボルグワーナーが開発中だった新機種の基本設計を元にアイシンワーナーが完成させた3速フルオートマチックは1972年のコロナを皮切りにたくさんのFR乗用車に搭載されました。たった12人の技術者で完成させたと言われるこのATは全数検査(ベンチ試験では無く、車両に搭載して検査される)され2000台が実際に全数検査されて不具合はほとんど無かったと言われているそうです。確か我が家のライトエースノアのこのタイプの末裔が載っていたかと記憶していますが、かなり長い間作られていたんですね。苦労した分、ダシが出尽くした感じですか。

また、1983年のカローラに搭載された横置きFFの狭いスペースに4速を実現したECT-Sは、3速ATを基本として、カウンター軸(反転側)にO/Dを配置すると言う2軸構成が新しく、3速ATと同じスペースで4速ATを実現できる大衆車クラスとしては世界初のFF用電子制御4速ATとのことです。元々4速ATはFFカローラの企画にあったが、3速はアイシンワーナー製で、4速はトヨタ内製で検討されていました。当時はスペースが厳しい横置きATは車両とのマッチングを考えて自動車メーカー内製とする風潮が見られていました。



これは変速機メーカーであるアイシンワーナーの経営を揺るがしかねない事態であり、内製を超える商品性の実現という必要に迫られての開発だったようです。私のAE92カローラGTもAT車にはこのモデルの改良型が採用されていましたが、
軽自動車なら2速ATも存在していた時代に横置き用の電子制御4速ATの存在は相当なハイテクだったことでしょう。

子供時代、親の車は油圧式ATばかりで私は電子制御ATが持つPOWERとかSNOWと書かれたボタンが無性に羨ましかったです・・・が大人になったらMTばっかり選んでいます。更に新車に試乗するときに熱心に営業マンのかたがSPORTSとかECONOMYとか押してくれるのに、個人的な評価の為にあくまでNORMALで走ってしまうのですが・・・。

それはさておき、他にもアイシン精機の歴史的な製品が所狭しと展示されています。

トランスミッションなどのドライブトレーン系部品が有名ですが、ドアヒンジやロック、ムーンルーフなどのボデー(トヨタ流表記)部品も数多く生産していました。

トヨタ向け以外にもスズキアルトのATやポルシェ911のMTも生産していたんですね。(アトレーにスーパーチャージャーがあったなんて知らなかった・・・。)



このほか、生活関連の品々の展示もあります。有名どころではトヨタミシンがありますが、ベッドやシャワートイレも作っていたようですね。



こんなところにクラウンが!



クラウン展に行きたいところですが、せっかくなので続きを。



2階に上がると現代のアイシンの製品群が展示されています。プロジェクションマッピングシアターはうちの子供は「怖い」と泣いてました(笑)が中々楽しめる迫力のある映像でした。

トランスミッションの機構を説明するモックアップがあり、AT/MT/CVTの原理を同時に学べるのは貴重ですね。またスライドドアやスポイラーなど部品を見ただけで「●●に採用されてるんだな」と分かるような特徴的な部品を開発・生産しているんですね。



ここには初代カローラが展示されていました。こちらもアイシンでレストアしたクルマのようです。なるべく当時のメカニズム・工法を理解したひとが復元することは非常に意味がありますね。この手のプロジェクトで過去のガソリン車を普通に復元するのは難しいし安易にEVにしちゃえ!みたいな輩がいますが本当にセンスがないです。(お前らのことやぞ)



・・・と言うことでいよいよクラウン展に突入します。



アイシンとクラウンの関わりは初代から続いています。私は初代から15代までの歴代クラウン達の展示パネルと実車、部品を見せていただいてきました。説明パネルは非常に力の入った物でアイシンの視点が入った説明文として読み応えがありました。その文章全てを転記することはしませんが部分的なエッセンスは抜き出しておきます。技術名は原文そのままです。

●初代(1955)



アイシンの主な採用製品・技術
半自動FR2速オートマチックトランスミッション「トヨグライド」
日本のATの歴史は1959年にトヨタが開発し、マスターラインに搭載された半自動ATで始まる。1961年に内製から外部移管される際に愛知工業が名乗りを上げて1961年から生産を開始。当時は一日に数台の規模だったので組立ラインが無く、技能者が一台ずつ組立てる作業の為、品質が安定しないなど問題があった。迷路のような油圧回路は説明書も無く当時のエンジニアは(開発の際に参考にした)回路に白紙を当てて鉛筆で浮き出させて転写、PNRDLの各課色事に色づけし、圧力やシフトポイントを記入して自力で覚えたという。分かりにくい油路は煙草の煙を油孔に吹き付けて調べるなど血のにじむような努力で商品化にこぎ着けたのだという。

摩擦式バンパージャッキ
ヨーロッパの一流メーカーのジャッキに拮抗しうる製品として自主開発。最初はネジ式ジャッキで開発を開始したもののネジ山が破損し、ジャッキが落ちて失敗。次にサル式ジャッキを手がけて一応成功し(注:一応ってなんやねん)クラウンの車載工具として採用。開発当初は試験機も存在せず、人力で砂袋を昇降テストして開発していた。

ピニオン式ドアロック
鋳物製ヒンジ
鋳物製メーターパネル
コンベンショナルファン
外接ギアタイプオイルポンプ



●2代目(1962)
アイシンの主な採用製品・技術
完全自動FR2速オートマチックトランスミッション「トヨグライド」
先代は自動変速でありながら1速⇔2速を手動で切り替えなければならなかったが、新型ではアクセルペダルに連動するスロットルバルブと車速を検出するガバナバルブで制御され、負荷に応じてハイギアの2速が自動的に切り替わる。

トルクファンカップリング
ファンカップリングは冷却ファンとそれを駆動するプーリの間に設定された部品。プーリーはE/G動力によってファンベルトを介して駆動される。例えば始動直後は暖機が必要なのでファンは回って欲しくないが、暖機が済むとファンはたくさん回って欲しい。ファンカップリングはバイメタルの働きを使って切り替え機構を持つものである。

タンデムマスターシリンダー
PKBレバー付きリアホイールシリンダー
パワードアロック
ワイヤー式パワーウィンドゥレギュレーター
油圧反動式分離型ブースター
アルミ製シリンダブロック・シリンダヘッド
6WAYパワーシート(ベンチ式)



●3代目(1967)
アイシンの主な採用製品・技術
FR3速オートマチックトランスミッション「トヨグライド」
変速時のショックを改善する為、トルクと油圧特性の理論解析で改善を進めた。ショックには油圧特性と摩擦材の特性が大きく影響することが分かった。油圧特性の計算手法を獲得して設計スキルが向上した。

日本初ナマズ型プロポーショニングバルブ(後輪駆動用)
アメリカの安全基準FMVSSに適合する為に開発。ブレーキ液圧をスプリングによって調整するもので前輪ディスクブレーキと後輪ドラムブレーキの仕様差によって起こる後輪の早期ロックを防いで安定性を確保する。

カップリングケース/ファン一体品
スイングチェックアーム付き鋳物ヒンジ
コンベンショナルファン
2段制御式ファンカップリング
レバー反動式ダイレクト型ブースター
アームタイプパワーウィンドゥレギュレーター

●4代目(1971)
アイシンの主な採用製品・技術
FR3速オートマチックトランスミッション「トヨグライド」

日本初バキューム式後二輪ABS
エンジンのバキューム(負圧)を動力源としたABSをクラウンのオプション装備として量産開始。これがアイシン初のABSとなった。米国ビッグ3も同時期にオプション設定を開始しており日本の技術が欧米に追いつきつつあったとアイシンは考えているようです。

●5代目(1974)
アイシンの主な採用製品・技術
FR3速オートマチックトランスミッション
アイシン初設計のAT。ボルグワーナーと設立したアイシンワーナーでは当初M35と言う機種を生産する予定だったが、後継機種の開発が進められていると知り、担当者2名を現地に派遣。ところが開発は完了しておらず試作品もない。仕方なく500点余りの部品だけ見せて貰い紙に転写して(注:アイシンさんこの手法好きねぇ)情報を日本に持ち帰った。様々な新技術を取り入れて高速走行フィーリングとシフトクオリティは大幅に向上した。立ち上げ時は全数検査を実施。立ち上がり品質はトヨタも驚くほどのレベルだったと言う。

O/D付きFR4速オートマチックトランスミッション

●6代目(1979)
アイシンの主な採用製品・技術
ロックアップ付きFR4速オートマチックトランスミッション
ATの燃費向上策としてギア比が1以下となるオーバードライブを採用してE/G回転を下げたが、第二の矢として採用されたのはロックアップクラッチ。これはトルコンの入出力の間に生じるスリップ損失をなくす為に、E/G回転数がトルク変動による振動が少なくなる領域に差し掛かり、入出力の回転数差が無くなったタイミングでクラッチで直接繋いでしまう(直結)もの。

元々ATの全長はロックアップ無しと同値にしなければならなかった為、従来円形だったトルコンの断面形状を楕円形に変更する必要が生じた。開発当初は狙い通りの性能が出せず、夏と冬の長期休暇をほとんど返上(注:コンプライアンス・・・)して対策に当たり、実験室の壁が性能曲線のグラフで埋め尽くされたほど試作と評価を繰り返したという。トルコンを扁平化する技術は後の横置きFF用ATの開発に大いに活かされた。

前後無段階調整式ヘッドレスト
2色バンパーモール
インナースライドムーンルーフ
ゴム反動式タンデムブレーキブースター

●7代目(1983)
アイシンの主な採用製品・技術
世界初マイコン電子制御式FR4速オートマチックトランスミッション
電子制御によって複数の変速パターンを選択可能とする世界初のマイコン電子制御式AT。機械とエレクトロニクスが組み合わされた1980年代らしい一品。マイコンとは「マイクロコンピュータ」や「マイクロプロセッサ」を意味する略語で当時はマイコンが着いたらハイテクな物という雰囲気があった。トランスミッションをマイコンによって制御し、燃費を優先するスケジュールにしたり、ロックアップを作動を抑えて山岳路に向いた味付けにするなどができた。

8WAYマイコンパワーシート
金属二層式サイドモール

電動チルト&テレスコピックステアリングシステム
世界最高級のプレステージサルーンにふさわしい装備として従来手動式だった
ステアリングの角度・距離調整を電動化した世界初の機構を開発した。

ステアリングコラム
油圧式4輪ABS
リフレッシングシート



●8代目(1987)





アイシンの主な採用製品・技術
高容量FR4速オートマチックトランスミッション
石油危機を乗り越えて再び高級・高出力化のニーズに対応。従来品に比べトルク容量は1.5倍、全長は同等以下にするという一段高い目標が掲げられた。手書きの構想図を客先(トヨタ)に見せて採用を勝ち取るも、1年半という短期開発となった。手書き構造図は寸法入りの基本計画図を発行し、そこから部品図を展開。車内から人を集めてわずか二ヶ月で500点にも及ぶ新設品の試作図を出図。(注:2ヶ月=稼働60日で500点出図と言うことは毎日25もの図面にサインが入ったことになる)ミッションケースは大物ダイカスト部品の為足が長い。試作部と西尾工場の応援により、寸法の入っていない絵だけの図面を頼りに、図面出図と同時並行で試作品を完成させるという常識外れのウルトラCをやってのけた。本製品はその後34年11ヶ月で1600万台生産された。

電動式トラクションコントロール
電動式4輪ABS
自動車用ファクシミリ
4輪フルエアサスペンション



●9代目(1991)
アイシンの主な採用製品・技術
FR5速オートマチックトランスミッション
多段化が進み始め、他社で5速ATが商品化されはじめた。この5速ATは二つの変速機構を同時に変速させることで新たなギア段を得る従来にはない新しい技術により、安易にギアを増やすこと無く5速かを実現出来る。この同時変速技術は0.1秒のズレが変速ショックとなってしまう点が難しさである。この課題を克服する為に社内外から人が集められ、従来品より小型高精度高応答のリニアソレノイドを開発。更に動じ変速をきめ細かく制御するためにブレーキやクラッチにかかる油圧を電子制御化した。

フルタイム4WD
GPSアンテナ&レシーバー
電動コラム
ヘッドレスト用超音波モーター
バイブレーションシート
超音波雨滴除去ミラー
G-MAP(地図帳ナビ)
形鋼ヒンジ




●10代目(1995)
アイシンの主な採用製品・技術
FR5速オートマチックトランスミッション
ギアリング、ギアノイズの低減、クラッチ・トゥ・クラッチ制御技術が採用。ギアトレイン98件、コントロール132件もの特許を出願している。1070機もの試作品を用いて開発されたこのスーパーECTは1997年6月にラインオフされた。

ESC一体型ハイドロブースター
旋回時の横滑りを抑制するESC機能を製品化。交通事故低減に貢献する画期的な技術として2011年以降、各国での標準化に繋がった。

アルミダイカスト製直噴用FDP

●11代目(1999)
アイシンの主な採用製品・技術
FR5速マイルドイブリッドトランスミッション
各社が燃費競争で多段化に走る中で、既存のATをベースにハイブリッド化するというマイルドハイブリッド構想が浮上した。E/Gとベルトにより連結された小型モーター・ジェネレータを組み合わせたシンプルな構成。特徴は①車両停止時にエンジンを自動停止②モーターの力で車両を発進させると同時にE/Gを始動する③減速時に回生を行い廃棄されていたエネルギーを利活用、の3つである。

FR5速ATをベースとしながら電動オイルポンプを追加、アイドルストップ時に電動オイルポンプで油圧を維持してクラッチを繋いでE/G始動まで耐える。(注:新車時代にの感想としては言葉通りマイルドな存在で電動感は皆無。アイドルストップのためのシステムと言った方が正しいようなシステムだった)

DVDナビゲーションシステム
アイシン製ナビとして初めてクラウンで採用。高級車らしくディスプレイを拡大。従来のEGAからVGAディスプレイに変更。画素数が4バイトなり高画質になった。

フロントクラッシュボックス
ヒドゥンドアフレーム





●12代目(2003)
アイシンの主な採用製品・技術
FR6速オートマチックトランスミッション
本製品は、量産に向け最終調整をするランドクルーザー用5速ATとのツイン開発を行った。5速ATと6速ATの部品を共通化し部品種類削減を目論んだが、既に5速向けに最適化したギアトレインを6速化する為には、様々な課題があった。世界トップレベルのATにする為に軽量化も必要で、従来の鉄部品をアルミ製に置き換えた。開発中ギアノイズに悩まされ、安城第一工場の会議室をギアノイズ対策室として占有し評価と議論を繰り返した甲斐があり、ランドクルーザー用5速ATと共に
トヨタ技術開発賞をダブル受賞した。

E/Gフロントモジュール
組み立て工程で複数の部品を組み付けるのでは無く、サプライヤで既に組み付けた状態で車両工場へ運ぶことでコスト削減を図るフロントエンドモジュール。クラウンではチェーンカバーにウォーターポンプ、オイルポンプ等の機能部品と水・油通路を一体化することで小型化と低コスト化を両立した。

油圧回路一体型シリンダヘッドカバー
フロントクラッシュボックス
リアアルミフレーム
電子制御ブレーキシステム[アドヴィックス]
スマートハンドル
ラゲージアンテナ


●13代目(2008)
アイシンの主な採用製品・技術
FR2モーターハイブリッドトランスミッション
高級車用ハイブリッドの先駆け。2002年初めにV12を凌駕するプレミアムな走行性能と断トツの低燃費を両立したV8ハイブリッドの企画検討が始動。モーターはトヨタ設計、ユニットはトヨタとアイシンの共同開発体制をとった。コンパクトかつ圧倒的な加速性能を実現する為、シングルリダクションからダブルリダクション機構を採用。最高車速250km/hを実現する為モーターを二段変速化し高速時のモーター回転数を抑えて強度を確保。トヨタ技術開発賞と自動車技術会技術開発賞を受賞。

FR8速オートマチックトランスミッション
HDDナビ(マップオンデマンド)
ナビマチック
プリクラッシュシートバック
回生強調ブレーキシステム[アドヴィックス]
高機能ESCモジュレータ[アドヴィックス]
スマートハンドル
スイングドアロッククローザー
プリクラッシュインテリジェントヘッドレスト




●14代目(2012)
アイシンの主な採用製品・技術
FR2モーターハイブリッドトランスミッション
FR高級車市場のハイブリッド普及に貢献する為のシステム。更なる拡販のためシンプルで価格が安いハイブリッドトランスミッションを目指した。従来は3.5LのV6だったが2.5LのL4が搭載できるようにした。シングルリダクション機構を採用するなど大幅なコストダウンを実現。この頃からクラウンユーザーの半数がハイブリッドを求めており、高まる電動化ニーズに応えた。

ピストンジェット停止システム一体型サイドモジュール
半数のユーザーがハイブリッドを求める一方、残る半分はガソリン車へのニーズも根強い。V6の置き換えで直4ターボの設定があった。暖機中にE/Gオイルをピストンに噴射するピストンジェットを低温時に停止する機能を付与。このシステムをウオーターポンプや油路のあるサイドモジュールに組み込んで単純かを達成。全体のコスト低減に寄与。

FR8速オートマチックトランスミッション
ハイブリッドダンパー
ラゲージアンテナ


●15代目(2018)
アイシンの主な採用製品・技術
マルチステージFR2モーターハイブリッドトランスミッション
本品は2005年に企画開始するもほかのPJT優先で規模を縮小、2012年にプレミアム車両にふさわしいシステムはマルチステージであると結論付けて再始動。当初企画していた構造では搭載性NGのため構造図をトヨタと議論して数ミリずつ前兆を短縮して現在の構造に到達。ハイブリッドは加速感がないという欧米からの声を払拭する加速感、ダントツの低燃費を目指して動力分割用プラ寝たりギアの出力側に4速部を直列にレイアウト。アイシンの4速ATのノウハウを最大限活かしたシステムである。開発を再スタートした初期の試作ではギアが真っ黒に焼き付くなど苦労があった。

減衰力調整式アブソーバー
FR8速オートマチックトランスミッション
アウトサイドドアハンドル
構造用接着剤「フェルコ8000」
キャリパー一体式電動パーキングブレーキ


~おわりに~
・・・以上、純国産セダンを代表したクラウンとアイシンの関わりを勉強させていただきました。期間限定の特別展なので丁度いい時期に子守イベントがあって良かったです(笑)

日本のクルマ作りは車両メーカーとサプライヤーの阿吽の呼吸できめ細やかなすりあわせ型開発が特徴でした。特にアイシンの様なメーカーに技術力があるサプライヤによって魅力的な車が作られて来たことがよく分かりました。

最後にご紹介するのは恐らく社内の方が手書きでまとめられた資料です。



ここ3年くらいでリモートワークが躍進することで手書き・紙文化が衰退しました。私自身も図面を原寸大で出すようなことも、帳票にサインを入れて上司に手持ち回覧することが無くなりPC画面で共有しやすいパワポで資料を作る事が増えました。修正も簡単だし、生煮えの見切り発車でも作業が出来ます。更に字が汚い私にとって綺麗なフォントで文字が打ち込める点は大変有り難いと感じます。

この手書き資料が凄いのは、作者が恐らく頭の中で書く文言や載せる絵などの構成が決めてあり、大きい方眼紙を拡げて一気に書き上げた感じがするところです。恐らく長年開発に携わってきた紙文化で育ったベテランが作成した資料なんじゃないでしょうか。

私が仕事で関わってきた最近減りつつある昭和のおじさん達は手書きのポンチ絵で大抵の事は説明してくれました。若き日の私が質問をしに行くと机には大きめの裏紙が置いてあって説明しながらメモを描いてくれました。私が説明していないのに部品の断面を書いたり、検索しても居ないのに規格の番号が書かれていたり。私はそのメモを貰って自分のノートに貼付けて大切に読み直していました。今だとイントラネットのシステムですぐPDFが見られたり、或いは3次元CADの画面をキャプチャしたりするような世界がパッと裏紙に広がっていくのです。若かった私は凄いなぁと素直に感心していました。こういう人が書いたポンチ絵のメモを貰って自席にかえって定規を当てたら、ほぼ実寸で書かれていたことがあって驚いたこともありました。

今回の展示で示されたトヨグライドやボルグワーナーとのエピソードの中でも高度な測定機器や詳細な図面が無くても、アナログな紙と鉛筆と現地現物で乗り切ってきたアイシンの「ど根性」があり、この資料からもその片鱗を感じ取ることが出来ました。

時代の変化で新しい考え方が主流になることはあります。一方で放っておくと失われる技術・方法があり意識的にこれを忘れないように維持することも必要です。

あのディズニーですらアニメーション用にCGアニメ時代になってからセル画に絵が描ける職人が居なくなっていたらしく、「メリーポピンズリターンズ」のワンシーンの作画の為に定年退職した人を呼び戻したなんて話を目にした記憶があります。昔ながらのやり方を旧いと切捨てて安易にロストテクノロジーにしてしまうのは勿体ない気がします。

生き残る為に新しいやり方を開拓することも大事だけど旧い技術やノウハウもをしっかり残す。難しいことですがどっかの会社が言っている年輪的な成長やスパイラルアップ的な考えからも外れないと思うんですよね。

Posted at 2022/12/14 15:45:33 | コメント(2) | トラックバック(0) | イベント | 日記
2022年12月09日 イイね!

2022年式シエンタHEV_Z(7人乗り)感想文

2022年式シエンタHEV_Z(7人乗り)感想文●要旨
Bセグベースで3列シートを成立させたシエンタは今やトヨタ車の中で小型車枠に収まる唯一のMPVとなった。新型はTNGAのスケールメリットを最大限活かし、大雑把に言えばアクアのエンジンコンパートメントに先代シエンタのフロアを組み合わせてラテン系欧州車のエッセンスを恥ずかしげも無く盗用して成立している。シートとステアリングセンターが見事にズレている。ドライバーズカーとしては全く評価できないのだが、運転席以外の助手席は運転装置が無いので収まりが良く、2列目は低床で足の置き場も十分あってミニバン的な世界観が堪能できる。緊急用の3列目も先代キャリーオーバーながら、何とか身体が収まり十分にミニバンらしい。運転席以外の座席では辻褄が合っており、よりによって運転席がその調整弁となるのである。走らせるとE/Gの振動感が気になる印象だが、段差で角を感じさせずに乗り越えた柔らかいサスは気に入った。価格はアップ。新型シエンタは内容は内容的に酷評するほどでは無いがフリードとどちらを選ぶべきかと聞かれると意外と新型シエンタが圧勝!と言うわけではない。モデルライフは長いだろうから、地道な商品改良に期待。

●美味しくなって新登場(収益的な意味で)

2022年8月、5ナンバーコンパクトミニバンのシエンタがFMCされて3代目となった。RVブームによって多人数乗車モデルが大衆化していた1997年、カローラスパシオによって3列シート車をコンパクトな車体の中で実現する試みが開始された。



競合他社では2001年にモビリオ、2003年のキューブキュービックなどそれまで持てはやされたミニバンのコンパクト化が進んでいた。




トヨタも2003デビュー初代シエンタを投入。初代ヴィッツのP/Fをベースに薄型燃料タンクを使って低床化を実施。「片手でポン!」のセカンドシート格納スライド機構を使って3列目への乗降性を確保。今まで不可能とされてきたわずか4100mmの全長に6人乗れるミニバンを構築した。



フロアが低く、しっかりヒールヒップ段差が確保された2列目、3列目シートは薄く小振りながら意外と座れるミニバン入門用としてはよく出来たモデルであった。メーカーとしては2008年に後継として開発されたパッソセッテに最小ミニバンの座を譲りフェードアウトするつもりだったのだが、後継のパッソセッテが極端な不振に見舞われた。



パッソセッテの不振により初代シエンタは2010年に一旦生産が打ち切られた後、1年で法規対応を済ませて復活となり2015年まで販売された。2代目は2015年に登場。待望のHEVが設定された事が最大のトピックである。



アクア譲りの1.5L4気筒THSは非力ながら燃費の良さとミニバンの機能性をコンパクトサイズで実現したいいとこ取りのモデルであった。実は最大のライバルであるフリードはIMAを搭載したHEVがあり、クラス唯一のHEVとして君臨しておりシエンタへのストロングHEV搭載は悲願であった。

更に当時のトヨタ車は麻疹にかかったようにエモーショナルを叫び、シエンタもスポーツバッグをイメージした奇抜なスタイリングを採用し、性能と個性でフリードを迎え撃とうとした。

一方で2016年にフリードが2代目へ切り替わった。i-DCDという弱点がありながらシエンタが手薄だった先進安全機能を充実させ、背が高いミニバン的なスタイリングを維持した。結果、フリードはCM出演タレントの不祥事などに見舞われつつも手堅いセールスを続けた。特にステップワゴンが不振でホンダ内でも顧客が流れただけで無くシエンタのアクの強いデザインや安全装備の物足りなさを補う存在としてフリードが選ばれた側面もあった。



この様な状況で生まれた3代目シエンタは、扱いやすさを維持しながらTNGAによって熱効率を追求したTHSを採用し、優れた燃費を実現。加えて遊び心と実用性を感じさせるデザインを採用した。アウトドアブームの要素を取り入れて、道具感をスパイスにしたシエンタはカワイイだけではないデザインを手に入れたのである。ただし、欧州ブランドのモデルを拝借したと思われるデザインは分かる人が見ると気恥ずかしい。



もう少し匂わせる程度に留める配慮が出来なかったのか。トヨタは模倣から脱却できる実力を持っているはずなのに他車に似せてしまうのは自信が無かったのだろうか。新型のエクステリアデザインに機能性やまとまりを感じたとしても、所詮オリジナルの良さだと指摘せざるを得ない。

一方でパッケージングも家族の最大幸福を願った効率の良さが特徴である。運転席に座るとヤリスやアクアよりもシート-ステアリング-ペダルの関係がぐちゃぐちゃなのだが、運転席以外はサイズを考えると広々としたキャビンで3列目にもキチンと座れてしまうのは難解な3Dパズルの成果である。

面白いのは、どの席を犠牲にするかという判断で迷わず運転席を選んでいるところだ。ドライバーが快適に運転できて初めて家族との安全なドライブが可能、という考え方は正論である。私もその考えに近いのだが、運転する妻なのか夫が、己よりも家族を優先するだろうという思考パターンをトヨタは知っているのだろう。この車格では全ての性能を満足させることは難しい。「あちらを立てればこちらが立たず」を地で行く開発だったことだろう。全ての前提条件の中でギリギリで成立させているのがBセグミニバンなのである。自動車をマニア的立ち位置の私の審美眼では新型シエンタの行った選択と集中は許容しがたいのだが、シエンタの主戦場である市街地では大きな欠点にならない事も事実だ。



価格は最近のトヨタの法則通りZ/G/Xの3種類にガソリン車と約35万円高でHEVが選べる。2列仕様最廉価が税込195万円、売れ筋となりそうな3列仕様GのHEVで269万円。最上級のZなら291万円に至る。もうこれはかつてのノア・ヴォクシーの価格帯に置き換わっていると言っても過言では無い。今まで普通車が買えた人が軽自動車しか買えない時代だが、今までノアを買えた人がシエンタすら買えない時代になってきた。

しかも、現在は生産する仕様を絞っており、実質的に収益性の高い上級仕様を優先した生産計画になっている。必要なメーカーオプションを厳選しないと支払い総額400万円に達しそうなレベルである。

個人的には中級のGに必要最低限のオプションで十分役目を果たせると思われるが、そんな成果に繋がらない仕様の生産は来年度に後回しだ。実は粗利の低いグレードは生産計画すら後回しにして「売らない」戦略を立てている。受注が落ち着いてきて安いグレードを作るヒマが出来たら生産して下さるという実に資本主義的に正しいやり方なのだ。

日本経済新聞の記事では「お客様のご要望の多い仕様に絞ることで少しでも納期を短縮する・・・」というコメントをしている。半導体不足の中で工夫しているんだなとイノセントな方は感心するだろうが、底意地の悪い私はなんとなく900mlになって「従来品に比べ、筋肉への負担が約1割軽減」とコメントした某牛乳を思い出して苦笑いする他なかった。
Posted at 2022/12/09 01:11:11 | コメント(1) | クルマレビュー

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何シテル?   06/13 18:13
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