何といっても一見普通のA3から繰り出される400馬力/48.9kgmのパワーは大変魅力的です。おそらく高速道路の加速レーンであってもベタ踏みできる場面はまずないと思われ、一般道では完全に持て余します。一方、その無駄とも思える動力性能は、精神面も含めた運転の余裕にもつながります。また、圧倒的なパワーを持ちつつも扱いづらいということはなく、四輪駆動と電子制御が安全な運転をサポートしてくれます。逆に言えば、このクルマに乗っていると運転がうまくなった気がしてしまいますが、それはクルマ側の制御が優秀なのであり自分の腕ではありません。勘違いするなよ、自分。
ただしこの誰でも使える高性能と引き換えに、後席の居住性の低さや排気音などのせいで普通のクルマとしての使い勝手はベースモデルに比してやや低くなっており、ここがアウディのSモデルとRSモデルの違いだと思います。端的に表すとSモデルは高いレベルでのバランス、RSモデルは性能への特化、といったところでしょうか。性能特化ならスポーツカー買えよ、と考える方もおられるかと思いますが、このクルマを選ぶ人は私を含め変態ぞろいかと思いますので、そのようなご指摘は野暮というもんです(ただし私の場合は金銭的に2台持ち出来ないという残念な面も大きい)。なお、同じドイツのAMGやMでも同じようなグレード設定になっていますので、それらのブランドの中でどのように棲み分けているのか気になるところです。