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2021年01月22日 イイね!

なぜ太平洋側のブリはまずいのか

なぜ太平洋側のブリはまずいのか今更ですが明けましておめでとうございます。

結局、2020年は釣り人生始まって以来の散々な1年のまま幕を閉じてしまいました。以前ブログに載せた釣行の後も何度か行きましたが、結局まともな獲物のないまま、ワームで釣れたダイナンウミヘビが釣り納めでした。


今年こそは!と意気込むとロクなことが無いのは分かり切っていましたので、先日なんとなく釣れたらいいなと伊豆へショアジギングへ出かけたら、あっけなく釣れてしまいました。しかも自己記録更新のワラサ65cm!



ワラサはブリの若魚で、ブリの前、イナダの次に当たります。水温的にぎりぎりいけるだろうという読みが見事に当たりました。昨年3月以来のまともな獲物です。してやったりです。

今晩は寒ブリの刺身だぜ!と意気揚々と帰ってきたのですが、魚体の重さを測ってびっくり、3.0kgにすら全く届きません(安い体重計で手持ちで測ったので正確な重さは不明)。本格的に脂が乗り始める前のワラサとは言え、冬だからもっと肥えていても良いはず。何故でしょうか。

2019年に下北半島(釣行長駆2,500㎞ ──最果ての地を目指して)で釣り上げたイナダ53cm(上)と比べても、今回のワラサ65cm(下)はだいぶスマートな体型であることが分かると思います。





早速お刺身にしてみました。



ぜんぜん脂乗ってないですね…。
これはこれで青魚の酸味が感じられて美味しいのですが、私が期待していたのはこれじゃない。ラーメンに例えると、横浜家系を食べに行って神奈川淡麗系を出されたような感覚です。
美味しいけどコレジャナイ。正直言って物足りない。お刺身やフライなどは美味しく食べられるでしょうが、塩焼きやブリ大根などにしたらパサパサで食べられたもんじゃないでしょう。


何故でしょうか。

気になります。

ということで色々と調べてみました。


なぜ太平洋側のブリは
食味が落ちるのか。



ここでは食味が良い=適度に脂がのっている。と定義します。


最初にブリという魚についてのおさらいです。
主な生息域は北西大西洋。水温は16℃~20℃くらいを好むそうです。この水温に合わせて、日本近海で南下と北上を繰り返します。春に九州近海で産卵してから北上を開始。夏には北海道まで到達し、秋には南下を始めます。産卵のために九州近海まで戻る途中、富山湾で漁獲され氷見漁港に水揚げされるものが、かの有名な氷見寒ブリです。



Ⅰ.生息海域が食味を左右する要因を突き止める

①そもそも個体差であるという説
まず考えなくてはならないのが個体差ではないかという見方ですが、それは無いと思います(そもそもこの段階で個体差で片づけてしまうと、このブログはそこで試合終了となってしまうので(笑))。今回釣り上げたワラサは捌いた限りでは健康な個体で、見た目にも異常はありませんでした。身中にブリ糸状線虫が複数潜んでいましたが、線虫の存在は天然物の証で、とくに食味に影響が出るようなものではないようです。

また、太平洋側のブリは痩せている、あるいは脂の乗りが悪いというのは世間一般でも知られている傾向のようで、検索するといくらでも出てきます。確かにこの寒ブリの時期でさえ、太平洋側で水揚げされたブリはほとんど出回っていません。基本安値安定のブリの中で高値が付くものは、北陸・佐渡・山陰などいずれも冬季の日本海側で上がった個体です。太平洋側のブリには高値が付きにくいのです。もちろん食味が良くないからでしょう。

なお、千葉県は全国でも有数のブリの水揚げ量を誇りますが、これは色々なスーパーの陳列状況を見るに、そもそもブリに至らないイナダ・ワラサクラスが大部分ではないかと推測されます。


②潮流の速さが影響する説

太平洋側のブリをキーワードに色々と調べていくと、太平洋側を流れる黒潮は日本海を流れる対馬海流に比べ潮流が速く、運動量が増えることによって瘦せてしまうという説がありました。なるほどと思い、そのホームページにあったリンクから、試しに氷見寒ブリ宣言が発せられた2020年11月21日の日本近海の潮流速度を調べてみました。

出典:気象庁ホームページ「日別海流」



確かに黒潮の本流というのはかなり流速がありますね。人間と同じで、運動を続けていると脂肪が落ちてスマートになるということでしょうか。一方、日本海は黒潮に比較すると非常にゆっくり。だからブリが肥えるのでしょうか。

でもちょっと待ってください。例えば関アジと関サバ。脂がのって身が締まっていると言われる超一流のブランド魚ですが、豊後水道の激しい潮流に育まれた、というのが売り文句だったはずです。また、瀬戸内海産の魚が高い評価を得ているのも速い海流によるものだとされています。潮流の速さは本当に食味を落とすのでしょうか。いったん潮流説は保留とします。


③海の豊かさの差による説
関ブランドや瀬戸内海産の魚介類が美味しいといわれる理由は、潮流の他にもう一つあります。それは海の豊かさ=プランクトンの多さです。瀬戸内の激しい潮流は海水を攪拌して栄養を巡らせ、植物プランクトンの発生を促すそうです。豊富な植物プランクトンは動物プランクトンを発生させ、それらを食べる小型魚が育まれます。そして、さらにそれらを食べる大型魚も育まれていくのです。

となると、ブリに限らず魚の食味に最も影響を与えるのは、やはり②の潮流ではなく③海の豊かさ=プランクトンの多さであると言えます。もちろん身を引き締めるために適度な運動は必要でしょうから、副次的な要因として②潮流の速さも必要だと思います。

さて、それでは日本海や瀬戸内海と太平洋とでは、本当に海の豊かさ=プランクトンの多さに差があるのでしょうか。



Ⅱ.日本周辺海域のプランクトン量

①プランクトン量を表す指標
色々調べていくと、プランクトン量を表す指標があることが分かりました。それが「クロロフィルa濃度」と呼ばれるものです。簡単に言うと植物プランクトンの濃度を表します。植物プランクトンは食物連鎖の基礎となるものですから、一般的にクロロフィルa濃度が高いほど豊かな海であるということになります。


②日本周辺海域のクロロフィルa濃度
では実際に、日本周辺海域のクロロフィルa濃度はどのようになっているのでしょうか。クロロフィルa濃度というのは世界的にもモニタリングされている指標のようで、人工衛星による測定データがダウンロードできます。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供のJASMESより
MODIS準リアル(日本海洋関連物理量)から

日本周辺のクロロフィルa濃度の平均値:2019年4月と2020年4月


日本周辺のクロロフィルa濃度の平均値:2019年11月と2020年11月下旬

※2020年11月は全体データなしのため下旬のみのデータで代替


黒潮は年によっては大蛇行するのでとりあえず2年分載せましたが、どちらを見ても一目瞭然です。太平洋側、特に黒潮の流れる海域はクロロフィルa濃度が非常に低くなっています。黒潮というのは実は痩せた海流だったのです。太平洋側の住人としては非常に衝撃的な結果です…。
一方、日本海側はどの海域でも太平洋側に比べクロロフィルa濃度が高くなっています(朝鮮半島西岸とか黄海とかの超高濃度は何なんでしょうね?)。

ちなみに4月を選んだのはブリが産卵を終えて北上を始める時期だからで、11月を選んだのは氷見寒ブリ宣言が出される月だからです。間の高温になる期間は基本的にどこもクロロフィルa濃度は低くなる傾向があります。


③クロロフィルa濃度を左右する要因
これで魚の食味はクロロフィルa濃度に左右されることが分かりました。ではクロロフィルa濃度はどのようにして差が生じるのでしょうか。
クロロフィルa濃度は植物プランクトンの量を表しています。そしてその植物プランクトンの量を左右するのは栄養塩と呼ばれるものだそうです。ガーデニングで言うN/P/Kとかミネラル分と考えれば良さそうです。この栄養塩というのは寒帯ほど多く、熱帯ほど少なくなる傾向があるそうです。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供のJASMESより
MODIS準リアル(日本海洋関連物理量)から
日本周辺の表面温度の平均値を取得し、そのままクロロフィルa濃度と上下に並べると、明確な相関があるのが分かります。

2019年4月と2020年4月
上がクロロフィルa濃度、下が表面温度




2019年11月と2020年11月下旬
上がクロロフィルa濃度、下が表面温度




温度と栄養塩の相関メカニズムを解説してくれているページ(北海道大学水産学部の記事)があったので読んでみたのですが、非常によく理解できました。難しく表現すると鉛直混合というらしいですが、簡潔に言えば、攪拌しないお風呂のように冷たい水は海底に向かい、温かい水は表層に向かうというものです。つまり、熱帯域は温かいので温められた海水は表層に留まったままになり、逆に寒帯域は寒いので冷やされた水が海底に向かうことで鉛直方向での海水の攪拌を促し、栄養塩豊富な深層水が表層へ向かう、ということです。
なお、栄養塩は人間の活動による排出や河川による流入など陸地から供給されるものもありますので、沿岸海域のクロロフィルa濃度は総じて高くなっています。

ここまで来てようやく色々分かってきました。海洋深層水が栄養塩豊富なのは沈殿物が巻き上げられるからだと推測しますが、そのあたりの詳細なメカニズムまで追求していくと一般人の手に負える範疇を越えそうなので、この先は割愛させていただきます。



Ⅲ.結論と裏付け

結論
クロロフィルa濃度の低い海域を主な生息域とする個体は、そうでない海域の個体と比べ食味が劣る可能性が高いことが分かりました。そしてクロロフィルa濃度が高い海域には、鉛直混合の生じやすい冷水域もしくは陸地からの栄養塩供給量の多い沿岸部が当てはまります。
つまり、日本海や太平洋側の中でも親潮の影響のある海域と、東京湾、瀬戸内海といった比較的人口集積が進んだ地域の内海の魚は美味しくなる傾向があるということです。よって、クロロフィルa濃度が全体的に高い日本海側を南下するブリに比べ、クロロフィルa濃度の低い太平洋側の黒潮流域まで南下してきたブリはエサの量の減少から食味が落ちることになります。
もし太平洋側のブリを選ぶとしたら、晩秋に東北の北の方で獲れたものを選ぶといいかもしれません。あるいはさっぱりしたブリが食べたいのならば、冬から春にかけて関東~九州で漁獲されたものを選ぶと良いでしょう。


裏付けの例
戻りガツオと迷いガツオ
クロロフィルa濃度の高い親潮海域まで北上して栄養を蓄え、秋になると高水温域を求めて太平洋を南下する個体が戻りガツオです。であるならば、日本海の寒ブリと同様、全体的にクロロフィルa濃度の高い日本海側を南下する個体の方が美味しいのではないかと思いました。
ということで調べてみたら既にありました。「迷いガツオ」と呼ばれ、戻りガツオはおろか、寒ブリをも超える高値で取引されることもあるそうです。もしかしたらサバにも同じことが言えるかもしれません。

黄金アジと通常のマアジ
内房のブランドである黄金アジ。この黄金アジは沿岸に居ついて広範囲の回遊を行わない個体群です。クロロフィルa濃度の高い沿岸で豊富なエサが供給されることにより、通常のマアジに比べ脂が乗って美味しいと言われています。

瀬戸内海の貧栄養化
近年の瀬戸内海は環境対策の結果、綺麗になりすぎて貧栄養化してしまい、逆に魚が取れなくなってきているようです。陸地からの栄養塩供給はそれほどまでに影響が大きいということだと思います。


このような結論とはなりましたが、あくまで同一種間で比較した場合の考察でありますので、南方系の魚でも程よく脂の乗っている魚種もありますし、その逆もまたあり得ることを追記しておきます。
また、魚の食味は産卵期や食べているエサによっても大きく変わってきますので、必ずしも今回の理論通りになるとは限りませんのでご承知おき下さい。


桜ブリ ※2023/06/11追記
これは逆に裏付けではない例です。「桜ブリ」というブランド名で市場に流通している三重県産のブリ。これは適度に脂が乗ってとても美味しいです。三重県沖というのは黒潮の蛇行でクロロフィル濃度が高くなる海域なのですが、そのせいなのでしょうか。これは今後調査する必要性があります。



Ⅳ.今回の考察から気づいたこと

日本海の荒波にもまれた魚は美味しいというイメージ
「荒波にもまれた」というのは間違い。日本海の海流は、夏でも冬でもそれほど速くないです。黒潮の方がよっぽど速い、というか世界的に見ても相当に速いレベルです。そもそも冬の荒れた海がそうイメージさせるからで、表層が荒れているからと言って中層や底層まで荒れているわけではないです。
日本海の魚が美味しいのは高いクロロフィルa濃度によるものでしょう。ただし潮流は遅めなので、脂の乗りと身の引き締まり具合のバランスに関しては(私の舌で感じられるかは別として)疑問符が付きます。

北の方の魚は美味しいという漠然とした認識
これは合ってます。ただし直接的に水が冷たいから美味しいのではなく、水が冷たいからプランクトンが発生しやすく魚のエサがたくさんあって美味しいという、間に段階を一つ踏むのが正しい理論だと思います。
ただしクロロフィルa濃度的には東北周辺と北海道周辺ではさして変わらないので、同一魚種であれば東北産でも北海道産に肩を並べられるかも!?むかし北海道旅行の際に宿泊したとあるロッジのご主人は、海産物は北東北産であれば北海道産と遜色ないと仰っておられましたが、まさに的を射た意見だったのかもしれません。


以上


参考HP
・朝釣り❗️「太平洋のブリはマズイ❗️海水温と潮流を調べたら納得でした。」
 https://suruga-bay-tsuremasuka.com/2020/10/27/fat-amberjack/
・北海道大学水産学部LASBOS Moodle
 「海の基礎生産を制限する要因(表層への栄養塩供給)」
 https://repun-app.fish.hokudai.ac.jp/course/view.php?id=246
・JAMSTEC「黒潮親潮ウォッチ」
 http://www.jamstec.go.jp/aplinfo/kowatch/?p=621
・気象庁ホームページ「日別海流」
 https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/daily/current_HQ.html
・nippon.com
 「カツオの旬が年3回に?:冬の日本海産「迷いガツオ」に超高値」
 https://www.nippon.com/ja/guide-to-japan/gu900136/
・宇宙航空研究開発機構(JAXA)「JASMES」
 https://www.eorc.jaxa.jp/JASMES/




あとがき
まだ世間に認知されていない美味しい魚が、日本の地方のどこかに眠っていそうな気がします。今回の考察を応用して、そのような原石を見つけ出し、いつかご紹介できたらと思っています。
クルマに全く関係ない内容となりましたが、最後までお読みいただきまして有り難うございました。

旧題:初釣りの釣果から考察する、海域と魚の食味の関係

Posted at 2021/01/22 20:54:34 | コメント(0) | トラックバック(0) | 釣行 | 趣味

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「@danslemidiさん、素敵な写真ですねえ。5~6月の緑はほんとうに綺麗で癒されます。日々の中に散りばめられたちょっとした瞬間を大事にしていきたいですね。」
何シテル?   05/26 15:23
地方の県道や広域農道を寄り道しながらのんびり走るのが好きです。以前は山道を走り回るのが好きでしたが、最近ようやく落ち着いた走りを好むようになってきました(笑) ...
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