三井三池鉱山　断片回想　　3

梔子(くちなしの実）。隣に蠟梅があり庭はこの二つの香りが溶け合い、不思議な香りに包まれている。

時々カラスや猫が鳴く。それ以外の音はなく、Silent Spring(「沈黙の春」by Rachel Louise Carson)ならぬSilent Winterだ。…とてもよろしい。



そのレイチェルカーソンが警告した公害の恐ろしさは、日本では存在しないものとされ、隠しようがなくなると産業の発展と公害は調和すべきもの、産業のためには必要悪だという考えが政府によって広められた。

さらに水俣で死者が出ていることが分かるとそれは風土病であると教科書に乗せ、産業に奉仕する姿勢を政府は貫いた。


九州は田舎である。田舎には共産党アレルギーがある。権力者はそれを利用し、環境保護を言うものはすべて共産党か共産党の回し者であるというウソを喧伝した。






この日本政府の対応のまずさを見ると、アメリカの凄さが分かる。アメリカはカーソンに最高の勲章を与えた.。資本主義の牙城は、日本の人命軽視の近視眼的な前近代経営を嗤いアポロ11から見た地球上で唯一汚れた日本の空を皮肉った。

「あそこは何が住んでいるんだ」

現在ですら水俣市に行って公害の話をすることはご法度である。御法度を破ると水俣市民は態度を豹変しタダでは帰れない。殺人企業チッソは、永遠に安泰だ。





さて三井。ここも同様である。

大牟田川の橋の上に奇妙な看板がある。「ここでタバコを吸わないでjください」。この意味は健康のためではない。大牟田の土地も川も空も海も三井のものだった。だから何をしてもよく、何を流してもよく何を排出してもよかった。

川に引火し川が燃え出すから、その看板はあるのだ。現実に火災は何度も起きた。強アルカリの排水はあらゆる生物を死滅させそのまま写真の現像に使えた。大牟田の子供はほとんどが喘息になった。



ぼくは大牟田の近所の海で、背骨が90度に曲がった魚を釣をった。僕は食べない。親に食わせてみた。もともと心が曲がっているのでとくに症状は出なかった。





ところがそんな環境に住む市民は黙る。Silent Citizenだな。企業城下町ではお殿様に逆らうと村八分に遭う。現在でも20000PPMのPCBは、川底に眠る。コンクリートを塗りごまかしただけだ。




ほとんどが三井関連で飯を食う大牟田市民は、会社からとどめの一言を言われると泣き寝入りする。とどめの一言。「いやなら出て行けよ」。


この論理は現代でも主流だ。「学校が不満なら辞めたら？」。「会社が不満ならや辞めたら？」。

ほう、えらいもんだな。三井は、DENTSUは。

僕は、高橋まつりさんを忘れない　殺人企業　電通